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02 第二公子宮殿での暮らし
3 イメージ作りの効果は絶大
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「えっ!? えっと……、侍女さんが私に似合いそうなドレスを、持ってきてくれたみたいで。びっくりするくらい、似合うと思いませんか? ははは……」
似合っていないのなら侍女に文句も言えようが、この通りあつらえたかのように似合っているのだ。侍女も、嫌がらせで持ってきたのではないと思うしかない。
「そうかな……。リズには、もっと可愛いドレスを着てほしいな……」
「え?」
「いや……。それより、ここで何をしていたの?」
ぼそっと呟くアレクシスにリズは聞き返したが、すぐに話題を変えられてしまった。
しかし、その話題も一難去ってまた一難と言うべきか。侍女に食堂の場所を聞き忘れたせいで彷徨っていたとは、恥ずかしくて言いにくい。
「えーっと、朝食の前に宮殿内の散策でもしようかなーと」
「リズ一人で?」
「駄目でした?」
(まだ正式な養女にもなっていないのに、勝手に出歩いちゃダメだったかな?)
まずいことをしたかもしれないと思いつつアレクシスを見ると、彼は考え込むように拳を顎に添える。
「宮殿内は好きに利用して構わないけれど……。ともかく、朝食がまだなら、一緒に行こう」
「はいっ、もうお腹ぺこぺこです!」
進行方向へと向き直るリズを見ていたアレクシスには、あるものが目に飛び込んできた。
髪の毛の隙間から見えた彼女の華奢な背中を、美しく結んであるであろう編み上げが、不自然に左右非対称でリボンも縦結びなっていたのだ。
明らかに、侍女が整えたとは思えない着こなし。アレクシスは眉をひそめた。
食堂へ入ると、アレクシスがわざわざ椅子を引いてリズを座らせてくれた。生まれてこのかた、前世も含めて、男性に紳士的な仕草を取られたことがないリズは、不覚にも少しときめいてしまった。
(さすが公子様、紳士的な態度が絵になるわ。それにしても……)
食堂内が妙な雰囲気だ。給仕の男性達が、緊張した様子でアレクシスやリズの一挙一動に、注目しているように見える。公子の給仕は、それほど緊張するのだろうか。
こんな状況での食事は遠慮したいと思ったリズは、あることを閃いた。
(私だって、ヒロインの端くれ。この場の雰囲気を和ませるのは、私の仕事よね)
『ヒロインが微笑めば、誰もが彼女に心を奪われる』小説でのヒロインは、そういう美貌を持ち合わせていた。
早速、スープを配膳してくれた給仕に「ありがとう」と微笑んでみると、彼は「ひぃっ!」とわずかに顔を怯えさせながら、半歩ほど下がった。
(あれ……。今のって、悲鳴……?)
同じヒロインなのに、どうして印象が違うのだろう。真剣に考え込んだリズだったが、彼女は知らない。
リズが湯浴みをしていた間に、『彼女は怖い魔女』だと宮殿中に知れ渡ってしまったことを。
「君、その態度は何?」
「申し訳ございません。公子殿下……」
「不愉快だ。下がりなさい」
アレクシスにお叱りを受けて、リズに配膳した給仕が下がると、室内はさらに緊張した雰囲気に包まれる。
良かれと思ってしたことが裏目に出てしまい、リズが申し訳なく思っていると、アレクシスがリズに向けて微笑んだ。
「リズは公女になるんだから、使用人に気を遣う必要はないんだよ」
「はい……、公子様。余計なことをしてしまいました」
「怒っているわけではないからね。君の笑顔は、僕に向けてほしいな。今は僕との朝食だから」
アレクシスの柔らかい雰囲気で安心をしたのか、給仕達の表情が和らいでいる。アレクシスのフォローに感謝しながら、リズも「はい」と微笑んだ。
それからアレクシスは、これからのリズの生活について教えてくれた。
まずは養女となるために、公王へ挨拶に行かなければならないそうだが、庶民であり魔女でもあるリズは、貴族の礼儀作法からみっちり覚えなければならないらしい。
(小説のヒロインは、その教育でめちゃくちゃ虐められるのよね)
ドアマットのごとく、使用人や先生に虐められたあとに、ヒーローである王太子によって助け出されるという展開だ。
(でも、大丈夫。虐められないように、しっかりと予習してあるんだから!)
リズも、逃げることばかり考えていたわけではない。逃げ切れなかった時には、少しでも環境を良くしたいと思い、礼儀作法なども勉強してきた。今現在も、その成果を発揮している最中だ。
貴族顔負けの優雅さで食事をしているリズを目にして、アレクシスは「リズに教育は、必要なさそうだけれどね」と付け加えた。
リズは街で貴族の姿を目にするたびに、目を皿のようにして動作を学んだり、前世でのマナーを参考にしてきた。アレクシスの目からは合格に見えるようなので、リズはほっとする。
リズが礼儀作法を身につけていることを疑問に思わないのは、前世の記憶があるからだと彼は判断したようだ。
(よしっ。これで、虐められルートは回避できる!)
リズが近い未来に希望が持てたところで、アレクシスが再び口を開いた。
「それから、リズの護衛騎士を選ばなければね」
(護衛騎士? 小説にはなかった展開だわ)
この時点での小説のヒロインは、誰にも庇護されていなかったので、護衛騎士をつけようと思う者もいなかった。
持つべきものは、優しい兄だと思いながら、リズは瞳を輝かせた。
「それなら、ローラント様が良いです! 彼は、村の魔女達にも親切にしてくれたんです」
「そう。ならば、護衛騎士はローラントにしよう」
(これで、逃げる方法も確保できたんじゃない?)
似合っていないのなら侍女に文句も言えようが、この通りあつらえたかのように似合っているのだ。侍女も、嫌がらせで持ってきたのではないと思うしかない。
「そうかな……。リズには、もっと可愛いドレスを着てほしいな……」
「え?」
「いや……。それより、ここで何をしていたの?」
ぼそっと呟くアレクシスにリズは聞き返したが、すぐに話題を変えられてしまった。
しかし、その話題も一難去ってまた一難と言うべきか。侍女に食堂の場所を聞き忘れたせいで彷徨っていたとは、恥ずかしくて言いにくい。
「えーっと、朝食の前に宮殿内の散策でもしようかなーと」
「リズ一人で?」
「駄目でした?」
(まだ正式な養女にもなっていないのに、勝手に出歩いちゃダメだったかな?)
まずいことをしたかもしれないと思いつつアレクシスを見ると、彼は考え込むように拳を顎に添える。
「宮殿内は好きに利用して構わないけれど……。ともかく、朝食がまだなら、一緒に行こう」
「はいっ、もうお腹ぺこぺこです!」
進行方向へと向き直るリズを見ていたアレクシスには、あるものが目に飛び込んできた。
髪の毛の隙間から見えた彼女の華奢な背中を、美しく結んであるであろう編み上げが、不自然に左右非対称でリボンも縦結びなっていたのだ。
明らかに、侍女が整えたとは思えない着こなし。アレクシスは眉をひそめた。
食堂へ入ると、アレクシスがわざわざ椅子を引いてリズを座らせてくれた。生まれてこのかた、前世も含めて、男性に紳士的な仕草を取られたことがないリズは、不覚にも少しときめいてしまった。
(さすが公子様、紳士的な態度が絵になるわ。それにしても……)
食堂内が妙な雰囲気だ。給仕の男性達が、緊張した様子でアレクシスやリズの一挙一動に、注目しているように見える。公子の給仕は、それほど緊張するのだろうか。
こんな状況での食事は遠慮したいと思ったリズは、あることを閃いた。
(私だって、ヒロインの端くれ。この場の雰囲気を和ませるのは、私の仕事よね)
『ヒロインが微笑めば、誰もが彼女に心を奪われる』小説でのヒロインは、そういう美貌を持ち合わせていた。
早速、スープを配膳してくれた給仕に「ありがとう」と微笑んでみると、彼は「ひぃっ!」とわずかに顔を怯えさせながら、半歩ほど下がった。
(あれ……。今のって、悲鳴……?)
同じヒロインなのに、どうして印象が違うのだろう。真剣に考え込んだリズだったが、彼女は知らない。
リズが湯浴みをしていた間に、『彼女は怖い魔女』だと宮殿中に知れ渡ってしまったことを。
「君、その態度は何?」
「申し訳ございません。公子殿下……」
「不愉快だ。下がりなさい」
アレクシスにお叱りを受けて、リズに配膳した給仕が下がると、室内はさらに緊張した雰囲気に包まれる。
良かれと思ってしたことが裏目に出てしまい、リズが申し訳なく思っていると、アレクシスがリズに向けて微笑んだ。
「リズは公女になるんだから、使用人に気を遣う必要はないんだよ」
「はい……、公子様。余計なことをしてしまいました」
「怒っているわけではないからね。君の笑顔は、僕に向けてほしいな。今は僕との朝食だから」
アレクシスの柔らかい雰囲気で安心をしたのか、給仕達の表情が和らいでいる。アレクシスのフォローに感謝しながら、リズも「はい」と微笑んだ。
それからアレクシスは、これからのリズの生活について教えてくれた。
まずは養女となるために、公王へ挨拶に行かなければならないそうだが、庶民であり魔女でもあるリズは、貴族の礼儀作法からみっちり覚えなければならないらしい。
(小説のヒロインは、その教育でめちゃくちゃ虐められるのよね)
ドアマットのごとく、使用人や先生に虐められたあとに、ヒーローである王太子によって助け出されるという展開だ。
(でも、大丈夫。虐められないように、しっかりと予習してあるんだから!)
リズも、逃げることばかり考えていたわけではない。逃げ切れなかった時には、少しでも環境を良くしたいと思い、礼儀作法なども勉強してきた。今現在も、その成果を発揮している最中だ。
貴族顔負けの優雅さで食事をしているリズを目にして、アレクシスは「リズに教育は、必要なさそうだけれどね」と付け加えた。
リズは街で貴族の姿を目にするたびに、目を皿のようにして動作を学んだり、前世でのマナーを参考にしてきた。アレクシスの目からは合格に見えるようなので、リズはほっとする。
リズが礼儀作法を身につけていることを疑問に思わないのは、前世の記憶があるからだと彼は判断したようだ。
(よしっ。これで、虐められルートは回避できる!)
リズが近い未来に希望が持てたところで、アレクシスが再び口を開いた。
「それから、リズの護衛騎士を選ばなければね」
(護衛騎士? 小説にはなかった展開だわ)
この時点での小説のヒロインは、誰にも庇護されていなかったので、護衛騎士をつけようと思う者もいなかった。
持つべきものは、優しい兄だと思いながら、リズは瞳を輝かせた。
「それなら、ローラント様が良いです! 彼は、村の魔女達にも親切にしてくれたんです」
「そう。ならば、護衛騎士はローラントにしよう」
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