【R18完結】編集長は強がる男

石塚環

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感じたいから目は閉じない

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浴室から水が跳ねる音が聞こえた。逢坂はタオルを取って布団に潜り込んだ。
一度中島に抱かれたはずなのに、初めて抱かれるような気分だった。どんなことをされるか、もう全部わかっている。でも、まだ知らないことのように思えた。
怖さが混じった期待が自分の中にあった。
中島の布団はシーツも掛け布団も淡い緑色だった。枕カバーに描かれていた葉っぱの模様を指で辿った。
浴室のドアが開く音が聞こえた。布団を被ろうかと思ったが、そこまで怯えなくてもいいと自分に言い聞かせた。
「お待たせしました。顔、見せてください」
うつ伏せに寝ていたら、躯をつかまれ引っくり返された。
「やっぱり赤くなっている」
巻いていたタオルを取り、中島が覆い被さってくる。近づいてくる顔を押した。あまり見られたくなかった。
「おまえは恥ずかしくないのか」
「恥ずかしくないけれど、ドキドキしています」
中島の胸に触れた。鼓動が早い。彼の手を取って、自分の胸に押しつけた。
「俺のほうがドキドキしている。熱くて早くて、少し苦しい」
「もっと熱くさせます。心臓が溶けてなくなるくらい」
死んじゃうだろ、と言って逢坂は笑った。
ゆっくりと、中島の手が逢坂の肌を撫でていく。触れられたところが甘く痺れるように感じて、逢坂は身を捩った。
「怖いなと思ったら、ちゃんと言ってください」
逢坂は頷いた。ずっと目を開けていた。
「信司」
「はい」
中島は手を止めた。逢坂は中島の手を取った。引っ張って、腕に軽く歯を立てた。
「ん、何するんですか」
「痕つけたくなった。いつも噛んでくるおまえの気持ちがわかったよ」
赤く色づいた痕を撫でた。
愛しているものには自分の印をつけたかった。舌を腕の内側に這わせて何度も唇だけで皮膚を食む。
甘くて温かい汗の味がした。
弄りすぎたかなと気になったので、反応を窺った。
中島は微笑んで、逢坂を見下ろしている。
「いたずらするなら泣かせますよ」
「いいよ。おまえはひどいことはしないんだろ」
キスをされる度に、躯の底が疼いている。噛まれる度に身を捩った。胸の先端はもう尖っていた。からかうように、中島が摘んでくる。
「うっ。そこは触るな……」
「感じているのに、いやなんですか」
「変になるから、ん、ん」
唇で弄ってくる中島の髪を引っ張った。躯を起こして、中島が離れていく。棚の一番下にあった袋から、何かのボトルを持ってきた。
「これを使えば、もっと変になりますよ」
「何だ?」
「ローションです」
中島は笑って答えた。蓋を開けると、透明の液体を手に垂らす。
逢坂の中心に、ローションをつけている。擦りつけるように手を動かして、屹立を形作ろうとした。すぐに欲望は立ち上がり、液体が溢れてくる。
中島の手の動きに合わせて、粘りのある音がする。音が聞こえるのはローションのせいだけではないと逢坂はわかっていた。中島も気づいているだろう。
あからさまな自分の反応が恥ずかしい。逢坂は首を振った。
「あ、待って、早いって」
「待てません」
中島も首を振った。逢坂の先端から根元へ、そしてもっと深い奥へと手を動かしていく。
「ん、まだ、指はだめだ……くっ」
二本の指が侵入してきた。ローションで滑るから楽に呑み込んでしまう。
わかりきっていると言わんばかりに、逢坂のもっとも感じるところに中島は指を突き刺してくる。より強く水音が部屋に響いた。
内側を擦られると声を上げてしまう。中が求めるように収縮してしまう。
中島は穏やかに笑いながら、攻め立ててくる。とても嬉しそうに見えたから、逢坂は中島を睨んだ。
手を離し、中島が膝立ちになった。自分の欲望にローションを擦りつけている。中心はもう充分なほど漲っていた。中島が近づいてくる。
見上げながら、逢坂は膝を立て腰の位置をずらした。
両腿を抱えられる。逢坂の腰が上がり、中島を受け入れる形になっていく。
「ゆっくりでいいから、息はしてください」
初めて抱かれたときと同じ台詞だった。逢坂は中島のうなじに腕を回した。
「今度は目は閉じないよ。おまえを感じたいから」 
中島は微笑んだ。中島の笑顔を見るだけで、愛しさが伝わってくる。
本当は少し怖かった。また、相手の思うままにされるのではないかと思った。でも怖くても、怖いと思う先に快楽があるだろう。中島なら惜しみなく与えてくれるはずだ。
「ん、ん――」
濡れた音を立てて、中島の雄刀が逢坂の秘所を貫いた。痛いと思ったのはいっときだった。全て埋められると、そこが疼いてくる。躯が、中島を欲しがっている。
「つらかったら、言ってください」
中島は優しかった。
腰を揺らしながら、緩やかに逢坂の屹立に刺激を与えてくれた。逢坂の顔を窺いながら、角度を変えて貫いてくる。
声を上げれば、くちづけられた。涙を零せば、拭ってくれた。
いやだと言えば、笑って攻め込んできた。
逢坂は中島の肌へ指を滑らせた。頬を撫で背中を擦り、胸に手を当てて鼓動を聞いた。
熱く震える心音を感じた。
「あ、んっ……ん、ああ」
固い切っ先で繰り返し抉られ、快感のあまり意識が遠のく。
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