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βからΩになったばかりの高校生が、無理矢理番にされる話
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高校二年生に進級したばかりのその日、βの身ながら市内有数の進学校に通う中野聡司は熱っぽさを感じていた。
朝食を摂る前に熱を測ると三十七度を少し超えており、今日は欠席したほうが良いかどうか少し悩む。しかし今日は前年の履修内容を対象とした数学の小テストがある日だった。休めば零点扱いとなり、成績に響く。αの多い高校の中で奨学金を得るため必死に勉強を続けている聡司にとって、それは死活問題に等しかった。
朝食のあと風邪薬を飲み、もう一回分鞄にも入れる。なんとか今日を乗り切り、明日も体調が悪ければ休もう。そんな風に考え、聡司は学校へと向かった。
◆
おかしい、と聡司は感じていた。
薬を飲んだというのに体調は悪化の一途を辿る。二限目にあった数学の小テストはなんとか受けられたものの、とうとう三限目の途中で聡司は手を挙げ、教師から保健室へ行く許可を得た。あまりに体調の悪そうな聡司を見かねてか、クラス委員の男子生徒が付き添ってくれるというので、有り難く申し出を受けた。普段の聡司ならば断るところだが、保健室まで一人でたどり着けるか不安になるほど体調が悪化していたのだ。
その不安は現実のものとなった。
途中でクラス委員の肩を借り、保健室に着くとベッドへ倒れ込む。保健室の教師はおらず、不在の文字が表示されたドアプレートには一年生の教室で授業中というメモが貼られていた。体育の教師が体調不良で早退したため、代わりに駆り出されたらしい。教師まで体調不良だなんて、タチの悪い風邪が流行っていて、自分もそれにかかってしまったのかもしれない、と聡司はあまり働かない頭で考えた。
「あ、ありがとう、連れてきてくれて」
薬でも探しているのか、室内の棚を何やら探っていたクラス委員の男子生徒に礼を言う。委員をするだけあって彼もまた成績優秀な生徒だった。自分のせいで大切な授業を抜け出させるような真似をさせてしまって申し訳ない、と聡司は頭を下げる。
「寝てれば治ると思うから、あ、あの、もう戻ってくれて……」
しかしその言葉は途中で遮られた。
「ハハッ。戻るわけねぇじゃん」
「え?」
普段の丁寧で穏やかな口調とは異なる様子を見せ、棚から何かを取り出した男子生徒は、保健室の扉に内側から鍵をかける。カチャン、という軽い音が聡司にはとてつもなく重く響いた。
「や……屋敷くん?」
男子生徒の名前を呼ぶ。いつも爽やかで落ち着いた表情しか見せたことのない彼は、ギラついた目を隠そうともせず、聡司の横たわるベッドへジリジリと近づいた。
「うまそうな匂いプンプンさせやがって。良く今まで隠せてたよなぁ?」
「な、なにを……?」
「とぼけてんじゃねぇよッ」
怒鳴りつけるように言われた聡司は体をビクッと震わせた。
とぼけている訳じゃない、と言いたかったが口を開けなかった。怖い。動けない。目の前の同級生に逆らってはいけない、と本能が訴える。何故かは分からないが、体が動かなかった。酷い威圧のようなものを感じる。
「……ほら、やっぱりな」
怯える聡司の様子に、屋敷は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。額に汗を光らせ、制服のネクタイを緩めながら聡司のほうへ歩みを進める。先ほどまで体調の悪い自分を保健室まで連れてきてくれるという優しさを見せていた同級生の豹変に、聡司は戸惑いを隠せない。
聡司のそばまで近寄った屋敷は、膝をついてベッドへと乗り上げた。
金縛りにあったように動きを封じられた聡司は、そこで初めて屋敷から流れてくる匂いに気付く。リンゴのような、甘くて爽やかな匂い。こんな状況だというのに一瞬それを忘れ、聡司は本能に導かれるように目を閉じてその匂いを吸い込んだ。
良い匂いだった。このままずっと嗅いでいたいような……。
「聡司」
肩に手が触れた。名前を呼ばれ、吐息が唇にかかる。熱い。
目を開けると、屋敷の顔が目の前にあった。これまで彼に下の名前を呼ばれたことなど無かった。名字でさえ一度呼ばれたことがあったか無かったか、怪しいところだ。しかし、名前を呼ばれた聡司はそれが当たり前で、それに違和感を覚えること自体がおかしいことなのだ、と感じる。
「口、開けろ」
聡司は命じられるがままに唇を開いた。屋敷の熱っぽい目に見つめられ、頭の芯がジンと痺れる。この雄を受け入れたい、という欲求が体から溢れそうになった。
βの男であり、恋愛対象はこれまでずっと女性だった聡司は、これまでそんなことを考えたことはない。初恋も女の子で、今こっそりと好意を抱いているのも同級生の女の子だ。なのに今、聡司は目の前の男子生徒にそれ以上の感情を抱いている。
普通ならば急激な己の変化に戸惑うどころではないだろう。けれど屋敷の匂いーー甘くて爽やかなそれを嗅いでしまった瞬間から、聡司はそれを自然なものとして受け入れ、欲した。
唇が重なり、舌が入ってくる。分厚いそれは聡司の口内を思うがままに蹂躙し、聡司の舌を捉えて絡んだ。唾液を流し込まれたが、それさえも嬉しいと感じる。飲み込み、もっと、とねだるように舌を突き出すと、あやすように頭を撫でられた。
嬉しい。
屋敷にそうされ、聡司は幸福感に包まれる。これまで生きてきて、感じたことのない多幸感だった。
もう一度口づけられ、聡司は屋敷の背中に自分から腕を回す。二度目は互いに舌を絡ませ合い、吸い合った。濃厚な口づけを交わしつつ、屋敷の手が聡司のシャツのボタンを外す。中に着ていたアンダーシャツを捲り上げられ素肌に触れられると、更なる快感が聡司を襲った。
「ん、ん……ッ」
乳首を指で弾かれ、優しくつままれると、頭の先から腰へと衝撃が走る。と同時に、腰の奥に熱いものを感じた。
「ハァッ、……すっげぇ匂い……Ωでもここまですげぇのは初めてだ」
唇を離した屋敷が唾液を拭いながら呟いた。手の甲で乱暴に拭うその姿にさえ魅力を感じる。ぼんやりした目で彼を見つめていた聡司は、しかし屋敷の言葉で我に返った。
Ω。彼はΩだと言った。
しかし聡司はΩではない。中学三年生の時に受けたバース検査ではβという判定だったし、何より両親も祖父母も、親族に至るまで聡司の家系にはβしかいない。だから自分はβで、Ωであるはずなどなかった。
「……っ、ちが、ぼ、僕はβで、Ωじゃ……」
「嘘つけ」
体を触られ、それが気持ちよくて熱い呼吸を止められない聡司がなんとか絞り出した言葉を、屋敷はいとも簡単に否定してしまう。それでも聡司は言葉を続けようとしたが、乳首を強くつままれてしまい、出来なかった。
屋敷は口をつぐんだ聡司を一瞥すると、乳首をつまんでいた手を離し、制服のスラックスの中へ乱暴に突っ込んだ。下着の上からではあるが、手が性器に触れる。
「あっ」
自分が出したとは思えないような声が出た。聡司は思わず顔を赤らめ、両手で口を押さえる。その様子を見てニヤッと笑いを浮かべた屋敷は、そのまま手を奥に進めた。
「ここ」
下着の上から尻を押される。正確には尻の穴を指でグリグリと刺激された。自分でも触れたことなどないそこは何故か柔らかく、押されるだけでチュプチュプと濡れた音を立て、指を受け入れようとしている。
「ヒッ、や、やめてッ」
「やめて、じゃねぇだろ。こんなに濡らして……αが欲しくてたまんねぇって言ってる」
「いや、いやだぁっ」
下着の裾をずらし、屋敷の指が直接穴に触れる。そこは愛液に濡れ、ヒクヒクと雄を誘うように収縮を繰り返していた。
「何が嫌だよ。Ωのくせに生意気だな、おい」
屋敷はそう言いながら聡司のスラックスに両手をかけると一気に下へとずらし、脱がせてしまった。つられて下着もずり下がり、緩く勃起した聡司のペニスが露わになる。それは後ろと同じく、多量の液体で濡れていた。太腿に引っかかった下着もネットリと濡れていて、その部分の色が変わっている。
「あ、あ……ッ」
しかし、それに構っている余裕など聡司には無かった。聡司のスラックスをベッドの下へと無造作に投げ捨てた屋敷が聡司の体に覆い被さってきたからだ。息を荒くしながら乳首に舌を這わせ、無理矢理割り開いた足の付け根を手で撫でる。しかし屋敷は刺激を求めてフルフルと震えるペニスには触らず、薄い尻の肉を広げて、パクパクと開閉を繰り返すアナルに指を入れた。
チュプッ、ニュプッ♡
屋敷という圧倒的な雄を感じたことで更に愛液が分泌される。その滑りを生かして、浅いところを擦られるだけで気持ちがいい。
「ん、あ、あ、あっ」
指の動きに合わせて声が出る。先ほどは恥ずかしいと思ったのに、今はもう頭に靄がかかったようになってしまい、そうは思えなかった。それよりも、もっと欲しい、して欲しい、と目の前のαを求める気持ちが高まっている。聡司は屋敷がαであると知っているわけではなかったが、本能でそれを感じとっていた。なぜそう感じるのかは分からない。しかしそれは重要ではなかった。重要なのは屋敷がαで、聡司が今、彼という雄を欲しているという事実だけだ。
「気持ちいいだろ?」
「ん、んっ、ぁ、ん……きもち、いっ」
甘えるような声が口から出る。
「すっげ、めちゃくちゃ濡れてる……一応ローション準備したけど、要らなかったな」
屋敷が保健室の棚から取り出したプラスティック製の入れ物はベッドの隅に置いたままだった。それに屋敷がチラリと視線を向けたことに対し、聡司は説明の出来ない不安を感じた。自分から少し視線を外されただけなのに、ひどく寂しいと感じてしまう。
(僕だけ……見ていて欲しいのに)
けれどαの屋敷にそれを強要はできない。選ぶのは屋敷で、自分は彼が選んでくれるのを期待することしか出来ない。たとえ選ばれなくても不満を持つことなど許されない。βの自分なら絶対に拒否していただろうそんな考えを、聡司はすんなりと受け入れていた。
屋敷はすぐに視線を戻し、指の動きを再開する。屋敷の行為に安堵を覚えた聡司は自分から足を開き、二本目の指も、三本目の指も、抵抗なく受け入れた。
「前からさ……お前、いい匂いがするなって思ってたんだ」
「あ、あっ、あ、あ、…もち、いいっ、ん、あ、いいっ」
自分だけに集中して欲しくて、多少感じていた羞恥の心を払い、聡司は素直に快感の声をあげる。屋敷の指に翻弄されてはいるけれど、そんな自分を熱っぽい目で見つめてくる彼の姿は心を満たしてくれた。
「でもまさかΩだったなんてな」
「ん、ぁっ」
指を抜かれ、再び寂しさを感じる。そこを埋めて欲しい、と思うまもなく、開いたままの穴に屋敷のペニスが当てられた。
「薬飲んで隠して、おおかた番探しで入学したんだろうけど、よっ」
「ひぁっ、あ……」
屋敷が腰を進め、太い亀頭がメリメリと挿入される。αらしいペニスの大きさに聡司は慄いたが、それは杞憂に終わった。解されたそこは嬉しそうに屋敷を飲み込み、それどころか更に貪欲に中へと誘い込む。優秀なαのペニスが欲しいと、言外にそう言っているような反応だった。
「あー、すげ、気持ち良いっ。……Ωのヒート、すげぇな」
「あ、あぅ、あん、ああっ」
「抑制剤飲んでてもあてられるって、どんなだよ、ハハッ」
ゆっくりと中を開かれ、聡司は喘いだ。指で解された場所はとうに越え、まだ誰も挿れたことのない奥を屋敷のペニスが開いていく。閉じた場所を開かれるのは苦しいけれど、満足感もあった。何より、αのものになれたのだ、という達成感のようなものが心を占めている。雄に組み敷かれ、受け入れることが、何にも変え難い一番の幸せなのだということを聡司は理解した。
「あっ」
トン、と一番奥に亀頭が当たる。
「まだ全部入ってねぇんだけど。ここ、子宮口だろ? 入れろよ」
「ん、わ、分から、ないっ、あ、あっ」
行き止まりでそれ以上入らないというのに、屋敷はそれ以上の侵入を試みようとペニスを押し付けてくる。内臓の、それも、βである自分の体にあるかどうかも分からない子宮口の開けかたなど知る由もなかった。
「オラ、入れろって、オラ、オラッ」
「んんーっ、ん、あ、ごめ、な、さっ、あ、あっ」
奥を突かれるたび全身に快感が走る。無理矢理こじ開けられるその行為はともすれば痛みを伴うはずなのに、αに求められている、というただその一点だけで快感へとすり替わった。
(嬉しい、僕なんかの中に入りたいって、嬉しい)
とろけた表情を見せ始めた聡司の様子に、屋敷は生唾を飲み込む。目をギラつかせ、欲望に駆られるまま滅茶苦茶に突いているというのに、痛がる様子もなく自分の下で喘ぐ聡司をじっと見つめた。額から流れ落ちた汗が顎を伝い、落ちる。
屋敷は途中までペニスを抜いたところで聡司の体を掴み、強引にうつ伏せにした。尻の中でペニスが擦れたが、溢れるほど分泌されていた愛液のせいで、それは痛みではなく更なる快楽を聡司にもたらした。
「あ、あん、んっ、んんっ」
自分から腰をあげ、屋敷のペニスが奥まで届き易い姿勢をとる。バックからされているせいで屋敷がどんな表情をしているか分からなかったが、余裕の無いピストンの速さが彼の快楽を物語っていた。聡司はそれだけで満足し、快感を得る。獣のような姿勢で精子をねだるこの行為が、本能に従う自分にとって、とても正しい行為なのだと、そう思えた。
「……んっ、くそ、Ωがっ……んな締めんなっ……!」
後ろから聞こえる、切羽詰まった声が嬉しい。
そう思うと体は勝手に動き、屋敷の子種を搾り取る動きをする。成績優秀な多数のαと少数のβで構成されるこの高校で、屋敷は常にトップの成績を保っていた。だから彼は優秀なαと言っても過言ではない。その子種が欲しい。孕みたい。
うっとりとした表情のまま聡司は本能に支配され、目を閉じる。
「僕の、僕の中に、せ、精液、出してっ、ん、ほ、欲しいっ」
熱に浮かされた頭のまま、そう口走る。白いシーツを両手で掴み、もっと、とねだるように足を開いた。
屋敷は聡司の望み通りペニスを奥まで差し込み、そこで射精する。屋敷のペニスの根本が膨んで栓の代わりをする。知識では知っていたが、体感するのは勿論初めてだった。
抜けないよう念押しするためか、体を上から押さえつけられたが、聡司は精を放ってもらえたことが嬉しかったので抵抗もしない。αにセックスをしてもらい、種付してもらえたのだから、何をされても聡司が不満を感じることなどあるはずもないのだ。
αの射精は長い。大人の男性だと平均五分ほどかかると授業で習った。
そしてΩのヒートはαの精液を摂取することで落ち着く。これも授業で習ったことだったが、自分には関係ないことだと聡司は思っていた。なぜなら聡司はβであり、決してΩなどではないからだ。
浮かされた熱が引き、理性が復活して本能が姿を潜める。うつ伏せのまま頭を下げ、腰だけを高く上げたポーズで中に屋敷の精子を受け止めているうち、聡司の思考に冷静さが戻った。
(クラスメイトとセックスしている)
それも、βの自分がαの屋敷を誘ってセックスに持ち込むという形で。
客観的に見れば、これはそういう状況だった。屋敷の射精は長く、未だ終わらない。直腸の中にビュルビュルと吐き出され、βの体ゆえに行き場のないそれは腹の中に溜まっていく。
苦しい。そう思うと同時に熱狂は完全に去り、代わりに嫌悪感が急速に湧き上がった。男とセックスをしてしまった、と目眩を感じ、吐き気を催す。聡司はそれらをなんとか堪え、ベッドの上でもがき始めた。尻に突っ込まれたαのペニスを抜いてしまいたい。そう思ってベッドの柵に向かってズリ上がろうとするが、上手くいかなかった。
「逃げんじゃねぇっ」
熱に浮かされたままの屋敷の手が聡司の背中を押さえつける。体重をかけられているとは言え、片手でされただけなのに、全く動けなかった。Ωよりは力のあるβでも、αとはこんなに力が違うのだ、と自覚させられる。
「お前はもう俺のΩなんだよッ」
違う、βだ、と言う前に腰を動かされ、奥を突かれた。ゴリゴリと奥を擦られ、その刺激は収まった熱を呼び覚ます。奥へ、奥へとペニスを押し付けられ、何度もこじ開けられようとしたそこは、とうとう口を開いた。
グポッっとペニスがそこに嵌り、中へと大量に射精される。聡司は助けを呼ぼうと口を開いたが、声を出すことは叶わなかった。背中を押さえつけた屋敷が首筋に歯を当てたからだ。
「ひぅっ」
息が止まる。本能的な恐怖心が聡司を支配し、抵抗できなくなる。
「俺の、だ……ッ!!」
振り返ろうとした頭を反対の手で押さえつけられた。怖い、恐ろしい、とそれだけが聡司の頭に浮かび、逃げ出すことさえ考えられない。αに従え、逆らうな、と、再び本能が命じてくる。
「ぁ……っ、ぁ……」
そしてそのまま、屋敷は聡司の首筋を噛んだ。
「あっ、あああああっ!」
中に射精されている状態のまま、首筋に歯が食い込む。目の前に星が飛び散り、視界が真っ白に染まった。
首筋から全身に向かって快感が駆け抜け、直後、背筋に悪寒が這い上る。その感覚に慄いているうちに、聡司の尻は屋敷のペニスを勝手に食い締め、更なる射精を促した。
「ひ、あ、あーーっ」
そして自分もたまらないほどの快感を感じて射精する。自分の体と保健室の硬いベッドに挟まれたペニスは、触れられもしないのにピュルッと精液を吐き出した。
しかし射精が終わっても快感は途切れない。体内でまだ続く屋敷の射精に引きずられるように、聡司が感じる絶頂はしばらく続いた。直腸は勝手にうねり、その締め付けに耐えるためか、屋敷はうつ伏せの聡司の体をしっかりと抱きしめている。うなじから歯は離したものの、傷ついたそこを舌で丁寧に舐めていた。
「はぁっ、すげ、気持ち良いッ……Ωを番にするのって、こんな……なのかよっ」
「い、いやっ、嫌だっ、あああっ」
聡司の頬を涙が流れる。βだからΩのようにαと番になるわけがない。しかし聡司は己の変化に気づいていた。言葉にするのは難しいが、自分の有り様そのものが作り替えられてしまったかのような、今までの自分とは確実に異なる何かを感じる。
「……んー? 嫌じゃねぇだろ」
「…………っ」
背後に覆い被さられたまま聡司は動きを止めた。その聡司の首筋に屋敷が唇を押し付ける。
「俺の番にしてやったんだから、嬉しいだろ?」
長かった屋敷の射精はようやく終わり、聡司の体内からズルリとペニスが抜かれる。全て出し切ったのか、根本の瘤も小さくなっていた。抜かれた尻の穴は、あまりに太いものを咥え込んでいたせいか、しばらく元に戻らず、ヒクヒクと震えながら飲みきれなかった屋敷の精液をトロトロと垂らす。その感触に耐えながら聡司は懸命に口を開いた。
「ぼ、僕はΩじゃなくて、βで……」
「はぁ? まーだんなこといってんの、お前。ちょっとしつこすぎ。良いかげん理解しろよ、聡司。頭良いんだからさ、お前」
言葉を遮った屋敷は片手の指を三本、グイッと聡司の尻の中へ挿入した。
「あ、ん、はぁっ」
思わず声が出てしまった聡司に構わず、屋敷は指で中を掻き回す。そこは精液と愛液が混ざりあっているせいか、屋敷の指をすんなりと受け入れた。
「βはこんな風に濡れねぇんだよ。処女なのにαのデカいチンポ、全部飲み込めたのもΩだからだろ? それにお前……番にしてやったからか? さっきまでよりすげぇ良い匂いしてるし」
「そ、んな……」
「あ? なら、分からせてやるよ、お前が俺のΩだって」
不満げな顔を見せた屋敷は聡司の中から指を抜き、そこへペニスを押し当てる。
「お前、どうせヒートなんだから一回も二回も一緒だろ。ハハッ」
ニヤリと笑った屋敷はそう言って聡司の中に己のペニスを押し込んだ。最初は拒んでいた聡司の体は、やがて喜んでそれを迎え入れ、再び射精をねだり、最後には屋敷の体にしがみついて自分から腰を振る始末だった。
◆
数日後、聡司は屋敷に連れられ、彼の親族が経営している病院で精密なバース検査を受けさせられた。結果は即日判明し、診察室で説明を受ける。最もプライベートな空間であるべきその場所には屋敷が当然といった顔で座っていた。
退社後に急いで駆けつけた両親は屋敷にペコペコと頭を下げ、椅子に座る。何故だろうと思っていると、母親が小さな声で教えてくれた。共働きの両親の勤務先が、屋敷の両親が経営する会社の子会社なのだ。
説明されたバース性は、Ω。元々Ω寄りのβだったのが、αの多い高校へ進学したせいでΩ因子を誘発させてしまったらしい。後天的Ωという性は不安定らしく、ヒートも不定期に起こるので、なるべくパートナーのαと一緒にいることが望ましい、と医師から説明された。
「……はい、……はい」
渡されたΩ用のパンフレットを手に、聡司は機械的に返事をする。頷き、医師の言葉を聞いてはいるが、何一つ理解できなかった。
中野聡司は十七歳の今日からΩとして生きることになった。番は、同じクラスで両親の勤め先の親会社の御曹司である屋敷昴だ。αは番を複数持てるが、Ωの番は一生に一人だけ。番を解消したとしても、それは変わらない。
目の前が真っ暗になった。
高校二年生で自分の人生が決まってしまった。
「聡司」
隣に座った屋敷が聡司の手を握り、肩を抱く。聡司の両親がそこにいるというのに遠慮もない。しかし、その両親は、聡司の人生は安泰だと喜んでいた。番にしてくださってありがとうございます、などと礼まで言っている。
医師のお墨付きをもらったことで、聡司は屋敷と共に暮らすことになった。
自分のような一般家庭の、それもβから変異したΩなど屋敷の親が反対するだろうと思っていたのだが、予想は見事に外れた。統計的に後天的Ωは優秀なαを産む可能性が高いらしい。代々優秀なαを輩出することで続いてきた屋敷の家にとって、これほど喜ばしいことはないらしい。
屋敷の両親は喜んで二人の住まいを用意し、聡司は屋敷とそこで暮らすことになった。
番になり、他のαを惑わす心配が無いという理由で高校には変わらず通えることになったが、その先は分からない。後天的Ωは子宮が未発達で、妊娠可能になるまで数年かかると説明された。高校を卒業すればこの部屋に閉じ込められ、子供が出来るまでセックス漬けの毎日になるのだろうか。不安は尽きない。
(僕だって将来の夢があって、やりたいことだって沢山……。……普通に生活して、そのうち女の子と付き合って、結婚して、……そんな風になるって思っていたのに)
屋敷は片時も聡司を離さない。何の特権なのか、教室での席も隣へと変更された。休み時間も常に隣にいる。クラブに入っていない聡司に合わせて、屋敷は一年生の頃から続けていたバスケ部も辞めてしまった。
今日も二人の家に一緒に帰り、玄関の扉を閉じた途端、キスをされる。
(嫌だ、僕はΩなんかじゃない、βなんだ、僕は、僕は……)
高校生らしくない濃厚なそれを受けながら、聡司は必死に抗っていた。しかし口内に舌を入れられ、上顎を舐められると意志が鈍る。
「ん、んぁっ……」
「ほら、手、どけろ」
αに命令されると抗えない。手を下におろし、性急にベルトを外す屋敷の手をじっと見ているだけだ。
スラックスが床に落ちる。露わになった下着は既に濡れていた。キスだけで前も後ろもそんな風になってしまう。それを自覚すると、嫌だという意志を持っているのに、腹の奥がジュンと濡れる気配がした。
「ぁ、……ぁ……」
「エロい顔しやがって……。チンポもケツも、もうトロトロじゃん……俺ももう限界だけど」
下着を乱暴に脱がされ、廊下に押し倒される。正常位の形で足を肩に抱え上げられるともう駄目だった。
「……れてっ、挿れてっ、昴くんっ……!」
舌足らずな発音で番の名前を呼ぶ。自分を見つめる屋敷の顔がひどく魅力的に映った。このαを自分だけのものにしたい、他のΩに渡したくない、と、独占欲が一気に湧き上がる。そのためなら何でもする。自分の夢なんてものはどうだっていい。そんなものは、このαに比べたらゴミのようなものだった。
聡司は自分の尻に手をやり、屋敷が挿入しやすいようにと穴を広げた。屋敷はそれを見て嬉しそうに笑う。そして問うた。
「聡司。お前は俺の、何?」
「す、昴くんの、昴くんだけのΩです……っ」
答えに満足した屋敷が挿入しながらキスをすると、聡司はこれまでの人生の中で一番の幸せを感じ、最高の笑顔を見せた。
朝食を摂る前に熱を測ると三十七度を少し超えており、今日は欠席したほうが良いかどうか少し悩む。しかし今日は前年の履修内容を対象とした数学の小テストがある日だった。休めば零点扱いとなり、成績に響く。αの多い高校の中で奨学金を得るため必死に勉強を続けている聡司にとって、それは死活問題に等しかった。
朝食のあと風邪薬を飲み、もう一回分鞄にも入れる。なんとか今日を乗り切り、明日も体調が悪ければ休もう。そんな風に考え、聡司は学校へと向かった。
◆
おかしい、と聡司は感じていた。
薬を飲んだというのに体調は悪化の一途を辿る。二限目にあった数学の小テストはなんとか受けられたものの、とうとう三限目の途中で聡司は手を挙げ、教師から保健室へ行く許可を得た。あまりに体調の悪そうな聡司を見かねてか、クラス委員の男子生徒が付き添ってくれるというので、有り難く申し出を受けた。普段の聡司ならば断るところだが、保健室まで一人でたどり着けるか不安になるほど体調が悪化していたのだ。
その不安は現実のものとなった。
途中でクラス委員の肩を借り、保健室に着くとベッドへ倒れ込む。保健室の教師はおらず、不在の文字が表示されたドアプレートには一年生の教室で授業中というメモが貼られていた。体育の教師が体調不良で早退したため、代わりに駆り出されたらしい。教師まで体調不良だなんて、タチの悪い風邪が流行っていて、自分もそれにかかってしまったのかもしれない、と聡司はあまり働かない頭で考えた。
「あ、ありがとう、連れてきてくれて」
薬でも探しているのか、室内の棚を何やら探っていたクラス委員の男子生徒に礼を言う。委員をするだけあって彼もまた成績優秀な生徒だった。自分のせいで大切な授業を抜け出させるような真似をさせてしまって申し訳ない、と聡司は頭を下げる。
「寝てれば治ると思うから、あ、あの、もう戻ってくれて……」
しかしその言葉は途中で遮られた。
「ハハッ。戻るわけねぇじゃん」
「え?」
普段の丁寧で穏やかな口調とは異なる様子を見せ、棚から何かを取り出した男子生徒は、保健室の扉に内側から鍵をかける。カチャン、という軽い音が聡司にはとてつもなく重く響いた。
「や……屋敷くん?」
男子生徒の名前を呼ぶ。いつも爽やかで落ち着いた表情しか見せたことのない彼は、ギラついた目を隠そうともせず、聡司の横たわるベッドへジリジリと近づいた。
「うまそうな匂いプンプンさせやがって。良く今まで隠せてたよなぁ?」
「な、なにを……?」
「とぼけてんじゃねぇよッ」
怒鳴りつけるように言われた聡司は体をビクッと震わせた。
とぼけている訳じゃない、と言いたかったが口を開けなかった。怖い。動けない。目の前の同級生に逆らってはいけない、と本能が訴える。何故かは分からないが、体が動かなかった。酷い威圧のようなものを感じる。
「……ほら、やっぱりな」
怯える聡司の様子に、屋敷は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。額に汗を光らせ、制服のネクタイを緩めながら聡司のほうへ歩みを進める。先ほどまで体調の悪い自分を保健室まで連れてきてくれるという優しさを見せていた同級生の豹変に、聡司は戸惑いを隠せない。
聡司のそばまで近寄った屋敷は、膝をついてベッドへと乗り上げた。
金縛りにあったように動きを封じられた聡司は、そこで初めて屋敷から流れてくる匂いに気付く。リンゴのような、甘くて爽やかな匂い。こんな状況だというのに一瞬それを忘れ、聡司は本能に導かれるように目を閉じてその匂いを吸い込んだ。
良い匂いだった。このままずっと嗅いでいたいような……。
「聡司」
肩に手が触れた。名前を呼ばれ、吐息が唇にかかる。熱い。
目を開けると、屋敷の顔が目の前にあった。これまで彼に下の名前を呼ばれたことなど無かった。名字でさえ一度呼ばれたことがあったか無かったか、怪しいところだ。しかし、名前を呼ばれた聡司はそれが当たり前で、それに違和感を覚えること自体がおかしいことなのだ、と感じる。
「口、開けろ」
聡司は命じられるがままに唇を開いた。屋敷の熱っぽい目に見つめられ、頭の芯がジンと痺れる。この雄を受け入れたい、という欲求が体から溢れそうになった。
βの男であり、恋愛対象はこれまでずっと女性だった聡司は、これまでそんなことを考えたことはない。初恋も女の子で、今こっそりと好意を抱いているのも同級生の女の子だ。なのに今、聡司は目の前の男子生徒にそれ以上の感情を抱いている。
普通ならば急激な己の変化に戸惑うどころではないだろう。けれど屋敷の匂いーー甘くて爽やかなそれを嗅いでしまった瞬間から、聡司はそれを自然なものとして受け入れ、欲した。
唇が重なり、舌が入ってくる。分厚いそれは聡司の口内を思うがままに蹂躙し、聡司の舌を捉えて絡んだ。唾液を流し込まれたが、それさえも嬉しいと感じる。飲み込み、もっと、とねだるように舌を突き出すと、あやすように頭を撫でられた。
嬉しい。
屋敷にそうされ、聡司は幸福感に包まれる。これまで生きてきて、感じたことのない多幸感だった。
もう一度口づけられ、聡司は屋敷の背中に自分から腕を回す。二度目は互いに舌を絡ませ合い、吸い合った。濃厚な口づけを交わしつつ、屋敷の手が聡司のシャツのボタンを外す。中に着ていたアンダーシャツを捲り上げられ素肌に触れられると、更なる快感が聡司を襲った。
「ん、ん……ッ」
乳首を指で弾かれ、優しくつままれると、頭の先から腰へと衝撃が走る。と同時に、腰の奥に熱いものを感じた。
「ハァッ、……すっげぇ匂い……Ωでもここまですげぇのは初めてだ」
唇を離した屋敷が唾液を拭いながら呟いた。手の甲で乱暴に拭うその姿にさえ魅力を感じる。ぼんやりした目で彼を見つめていた聡司は、しかし屋敷の言葉で我に返った。
Ω。彼はΩだと言った。
しかし聡司はΩではない。中学三年生の時に受けたバース検査ではβという判定だったし、何より両親も祖父母も、親族に至るまで聡司の家系にはβしかいない。だから自分はβで、Ωであるはずなどなかった。
「……っ、ちが、ぼ、僕はβで、Ωじゃ……」
「嘘つけ」
体を触られ、それが気持ちよくて熱い呼吸を止められない聡司がなんとか絞り出した言葉を、屋敷はいとも簡単に否定してしまう。それでも聡司は言葉を続けようとしたが、乳首を強くつままれてしまい、出来なかった。
屋敷は口をつぐんだ聡司を一瞥すると、乳首をつまんでいた手を離し、制服のスラックスの中へ乱暴に突っ込んだ。下着の上からではあるが、手が性器に触れる。
「あっ」
自分が出したとは思えないような声が出た。聡司は思わず顔を赤らめ、両手で口を押さえる。その様子を見てニヤッと笑いを浮かべた屋敷は、そのまま手を奥に進めた。
「ここ」
下着の上から尻を押される。正確には尻の穴を指でグリグリと刺激された。自分でも触れたことなどないそこは何故か柔らかく、押されるだけでチュプチュプと濡れた音を立て、指を受け入れようとしている。
「ヒッ、や、やめてッ」
「やめて、じゃねぇだろ。こんなに濡らして……αが欲しくてたまんねぇって言ってる」
「いや、いやだぁっ」
下着の裾をずらし、屋敷の指が直接穴に触れる。そこは愛液に濡れ、ヒクヒクと雄を誘うように収縮を繰り返していた。
「何が嫌だよ。Ωのくせに生意気だな、おい」
屋敷はそう言いながら聡司のスラックスに両手をかけると一気に下へとずらし、脱がせてしまった。つられて下着もずり下がり、緩く勃起した聡司のペニスが露わになる。それは後ろと同じく、多量の液体で濡れていた。太腿に引っかかった下着もネットリと濡れていて、その部分の色が変わっている。
「あ、あ……ッ」
しかし、それに構っている余裕など聡司には無かった。聡司のスラックスをベッドの下へと無造作に投げ捨てた屋敷が聡司の体に覆い被さってきたからだ。息を荒くしながら乳首に舌を這わせ、無理矢理割り開いた足の付け根を手で撫でる。しかし屋敷は刺激を求めてフルフルと震えるペニスには触らず、薄い尻の肉を広げて、パクパクと開閉を繰り返すアナルに指を入れた。
チュプッ、ニュプッ♡
屋敷という圧倒的な雄を感じたことで更に愛液が分泌される。その滑りを生かして、浅いところを擦られるだけで気持ちがいい。
「ん、あ、あ、あっ」
指の動きに合わせて声が出る。先ほどは恥ずかしいと思ったのに、今はもう頭に靄がかかったようになってしまい、そうは思えなかった。それよりも、もっと欲しい、して欲しい、と目の前のαを求める気持ちが高まっている。聡司は屋敷がαであると知っているわけではなかったが、本能でそれを感じとっていた。なぜそう感じるのかは分からない。しかしそれは重要ではなかった。重要なのは屋敷がαで、聡司が今、彼という雄を欲しているという事実だけだ。
「気持ちいいだろ?」
「ん、んっ、ぁ、ん……きもち、いっ」
甘えるような声が口から出る。
「すっげ、めちゃくちゃ濡れてる……一応ローション準備したけど、要らなかったな」
屋敷が保健室の棚から取り出したプラスティック製の入れ物はベッドの隅に置いたままだった。それに屋敷がチラリと視線を向けたことに対し、聡司は説明の出来ない不安を感じた。自分から少し視線を外されただけなのに、ひどく寂しいと感じてしまう。
(僕だけ……見ていて欲しいのに)
けれどαの屋敷にそれを強要はできない。選ぶのは屋敷で、自分は彼が選んでくれるのを期待することしか出来ない。たとえ選ばれなくても不満を持つことなど許されない。βの自分なら絶対に拒否していただろうそんな考えを、聡司はすんなりと受け入れていた。
屋敷はすぐに視線を戻し、指の動きを再開する。屋敷の行為に安堵を覚えた聡司は自分から足を開き、二本目の指も、三本目の指も、抵抗なく受け入れた。
「前からさ……お前、いい匂いがするなって思ってたんだ」
「あ、あっ、あ、あ、…もち、いいっ、ん、あ、いいっ」
自分だけに集中して欲しくて、多少感じていた羞恥の心を払い、聡司は素直に快感の声をあげる。屋敷の指に翻弄されてはいるけれど、そんな自分を熱っぽい目で見つめてくる彼の姿は心を満たしてくれた。
「でもまさかΩだったなんてな」
「ん、ぁっ」
指を抜かれ、再び寂しさを感じる。そこを埋めて欲しい、と思うまもなく、開いたままの穴に屋敷のペニスが当てられた。
「薬飲んで隠して、おおかた番探しで入学したんだろうけど、よっ」
「ひぁっ、あ……」
屋敷が腰を進め、太い亀頭がメリメリと挿入される。αらしいペニスの大きさに聡司は慄いたが、それは杞憂に終わった。解されたそこは嬉しそうに屋敷を飲み込み、それどころか更に貪欲に中へと誘い込む。優秀なαのペニスが欲しいと、言外にそう言っているような反応だった。
「あー、すげ、気持ち良いっ。……Ωのヒート、すげぇな」
「あ、あぅ、あん、ああっ」
「抑制剤飲んでてもあてられるって、どんなだよ、ハハッ」
ゆっくりと中を開かれ、聡司は喘いだ。指で解された場所はとうに越え、まだ誰も挿れたことのない奥を屋敷のペニスが開いていく。閉じた場所を開かれるのは苦しいけれど、満足感もあった。何より、αのものになれたのだ、という達成感のようなものが心を占めている。雄に組み敷かれ、受け入れることが、何にも変え難い一番の幸せなのだということを聡司は理解した。
「あっ」
トン、と一番奥に亀頭が当たる。
「まだ全部入ってねぇんだけど。ここ、子宮口だろ? 入れろよ」
「ん、わ、分から、ないっ、あ、あっ」
行き止まりでそれ以上入らないというのに、屋敷はそれ以上の侵入を試みようとペニスを押し付けてくる。内臓の、それも、βである自分の体にあるかどうかも分からない子宮口の開けかたなど知る由もなかった。
「オラ、入れろって、オラ、オラッ」
「んんーっ、ん、あ、ごめ、な、さっ、あ、あっ」
奥を突かれるたび全身に快感が走る。無理矢理こじ開けられるその行為はともすれば痛みを伴うはずなのに、αに求められている、というただその一点だけで快感へとすり替わった。
(嬉しい、僕なんかの中に入りたいって、嬉しい)
とろけた表情を見せ始めた聡司の様子に、屋敷は生唾を飲み込む。目をギラつかせ、欲望に駆られるまま滅茶苦茶に突いているというのに、痛がる様子もなく自分の下で喘ぐ聡司をじっと見つめた。額から流れ落ちた汗が顎を伝い、落ちる。
屋敷は途中までペニスを抜いたところで聡司の体を掴み、強引にうつ伏せにした。尻の中でペニスが擦れたが、溢れるほど分泌されていた愛液のせいで、それは痛みではなく更なる快楽を聡司にもたらした。
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自分から腰をあげ、屋敷のペニスが奥まで届き易い姿勢をとる。バックからされているせいで屋敷がどんな表情をしているか分からなかったが、余裕の無いピストンの速さが彼の快楽を物語っていた。聡司はそれだけで満足し、快感を得る。獣のような姿勢で精子をねだるこの行為が、本能に従う自分にとって、とても正しい行為なのだと、そう思えた。
「……んっ、くそ、Ωがっ……んな締めんなっ……!」
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うっとりとした表情のまま聡司は本能に支配され、目を閉じる。
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屋敷は聡司の望み通りペニスを奥まで差し込み、そこで射精する。屋敷のペニスの根本が膨んで栓の代わりをする。知識では知っていたが、体感するのは勿論初めてだった。
抜けないよう念押しするためか、体を上から押さえつけられたが、聡司は精を放ってもらえたことが嬉しかったので抵抗もしない。αにセックスをしてもらい、種付してもらえたのだから、何をされても聡司が不満を感じることなどあるはずもないのだ。
αの射精は長い。大人の男性だと平均五分ほどかかると授業で習った。
そしてΩのヒートはαの精液を摂取することで落ち着く。これも授業で習ったことだったが、自分には関係ないことだと聡司は思っていた。なぜなら聡司はβであり、決してΩなどではないからだ。
浮かされた熱が引き、理性が復活して本能が姿を潜める。うつ伏せのまま頭を下げ、腰だけを高く上げたポーズで中に屋敷の精子を受け止めているうち、聡司の思考に冷静さが戻った。
(クラスメイトとセックスしている)
それも、βの自分がαの屋敷を誘ってセックスに持ち込むという形で。
客観的に見れば、これはそういう状況だった。屋敷の射精は長く、未だ終わらない。直腸の中にビュルビュルと吐き出され、βの体ゆえに行き場のないそれは腹の中に溜まっていく。
苦しい。そう思うと同時に熱狂は完全に去り、代わりに嫌悪感が急速に湧き上がった。男とセックスをしてしまった、と目眩を感じ、吐き気を催す。聡司はそれらをなんとか堪え、ベッドの上でもがき始めた。尻に突っ込まれたαのペニスを抜いてしまいたい。そう思ってベッドの柵に向かってズリ上がろうとするが、上手くいかなかった。
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熱に浮かされたままの屋敷の手が聡司の背中を押さえつける。体重をかけられているとは言え、片手でされただけなのに、全く動けなかった。Ωよりは力のあるβでも、αとはこんなに力が違うのだ、と自覚させられる。
「お前はもう俺のΩなんだよッ」
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聡司の頬を涙が流れる。βだからΩのようにαと番になるわけがない。しかし聡司は己の変化に気づいていた。言葉にするのは難しいが、自分の有り様そのものが作り替えられてしまったかのような、今までの自分とは確実に異なる何かを感じる。
「……んー? 嫌じゃねぇだろ」
「…………っ」
背後に覆い被さられたまま聡司は動きを止めた。その聡司の首筋に屋敷が唇を押し付ける。
「俺の番にしてやったんだから、嬉しいだろ?」
長かった屋敷の射精はようやく終わり、聡司の体内からズルリとペニスが抜かれる。全て出し切ったのか、根本の瘤も小さくなっていた。抜かれた尻の穴は、あまりに太いものを咥え込んでいたせいか、しばらく元に戻らず、ヒクヒクと震えながら飲みきれなかった屋敷の精液をトロトロと垂らす。その感触に耐えながら聡司は懸命に口を開いた。
「ぼ、僕はΩじゃなくて、βで……」
「はぁ? まーだんなこといってんの、お前。ちょっとしつこすぎ。良いかげん理解しろよ、聡司。頭良いんだからさ、お前」
言葉を遮った屋敷は片手の指を三本、グイッと聡司の尻の中へ挿入した。
「あ、ん、はぁっ」
思わず声が出てしまった聡司に構わず、屋敷は指で中を掻き回す。そこは精液と愛液が混ざりあっているせいか、屋敷の指をすんなりと受け入れた。
「βはこんな風に濡れねぇんだよ。処女なのにαのデカいチンポ、全部飲み込めたのもΩだからだろ? それにお前……番にしてやったからか? さっきまでよりすげぇ良い匂いしてるし」
「そ、んな……」
「あ? なら、分からせてやるよ、お前が俺のΩだって」
不満げな顔を見せた屋敷は聡司の中から指を抜き、そこへペニスを押し当てる。
「お前、どうせヒートなんだから一回も二回も一緒だろ。ハハッ」
ニヤリと笑った屋敷はそう言って聡司の中に己のペニスを押し込んだ。最初は拒んでいた聡司の体は、やがて喜んでそれを迎え入れ、再び射精をねだり、最後には屋敷の体にしがみついて自分から腰を振る始末だった。
◆
数日後、聡司は屋敷に連れられ、彼の親族が経営している病院で精密なバース検査を受けさせられた。結果は即日判明し、診察室で説明を受ける。最もプライベートな空間であるべきその場所には屋敷が当然といった顔で座っていた。
退社後に急いで駆けつけた両親は屋敷にペコペコと頭を下げ、椅子に座る。何故だろうと思っていると、母親が小さな声で教えてくれた。共働きの両親の勤務先が、屋敷の両親が経営する会社の子会社なのだ。
説明されたバース性は、Ω。元々Ω寄りのβだったのが、αの多い高校へ進学したせいでΩ因子を誘発させてしまったらしい。後天的Ωという性は不安定らしく、ヒートも不定期に起こるので、なるべくパートナーのαと一緒にいることが望ましい、と医師から説明された。
「……はい、……はい」
渡されたΩ用のパンフレットを手に、聡司は機械的に返事をする。頷き、医師の言葉を聞いてはいるが、何一つ理解できなかった。
中野聡司は十七歳の今日からΩとして生きることになった。番は、同じクラスで両親の勤め先の親会社の御曹司である屋敷昴だ。αは番を複数持てるが、Ωの番は一生に一人だけ。番を解消したとしても、それは変わらない。
目の前が真っ暗になった。
高校二年生で自分の人生が決まってしまった。
「聡司」
隣に座った屋敷が聡司の手を握り、肩を抱く。聡司の両親がそこにいるというのに遠慮もない。しかし、その両親は、聡司の人生は安泰だと喜んでいた。番にしてくださってありがとうございます、などと礼まで言っている。
医師のお墨付きをもらったことで、聡司は屋敷と共に暮らすことになった。
自分のような一般家庭の、それもβから変異したΩなど屋敷の親が反対するだろうと思っていたのだが、予想は見事に外れた。統計的に後天的Ωは優秀なαを産む可能性が高いらしい。代々優秀なαを輩出することで続いてきた屋敷の家にとって、これほど喜ばしいことはないらしい。
屋敷の両親は喜んで二人の住まいを用意し、聡司は屋敷とそこで暮らすことになった。
番になり、他のαを惑わす心配が無いという理由で高校には変わらず通えることになったが、その先は分からない。後天的Ωは子宮が未発達で、妊娠可能になるまで数年かかると説明された。高校を卒業すればこの部屋に閉じ込められ、子供が出来るまでセックス漬けの毎日になるのだろうか。不安は尽きない。
(僕だって将来の夢があって、やりたいことだって沢山……。……普通に生活して、そのうち女の子と付き合って、結婚して、……そんな風になるって思っていたのに)
屋敷は片時も聡司を離さない。何の特権なのか、教室での席も隣へと変更された。休み時間も常に隣にいる。クラブに入っていない聡司に合わせて、屋敷は一年生の頃から続けていたバスケ部も辞めてしまった。
今日も二人の家に一緒に帰り、玄関の扉を閉じた途端、キスをされる。
(嫌だ、僕はΩなんかじゃない、βなんだ、僕は、僕は……)
高校生らしくない濃厚なそれを受けながら、聡司は必死に抗っていた。しかし口内に舌を入れられ、上顎を舐められると意志が鈍る。
「ん、んぁっ……」
「ほら、手、どけろ」
αに命令されると抗えない。手を下におろし、性急にベルトを外す屋敷の手をじっと見ているだけだ。
スラックスが床に落ちる。露わになった下着は既に濡れていた。キスだけで前も後ろもそんな風になってしまう。それを自覚すると、嫌だという意志を持っているのに、腹の奥がジュンと濡れる気配がした。
「ぁ、……ぁ……」
「エロい顔しやがって……。チンポもケツも、もうトロトロじゃん……俺ももう限界だけど」
下着を乱暴に脱がされ、廊下に押し倒される。正常位の形で足を肩に抱え上げられるともう駄目だった。
「……れてっ、挿れてっ、昴くんっ……!」
舌足らずな発音で番の名前を呼ぶ。自分を見つめる屋敷の顔がひどく魅力的に映った。このαを自分だけのものにしたい、他のΩに渡したくない、と、独占欲が一気に湧き上がる。そのためなら何でもする。自分の夢なんてものはどうだっていい。そんなものは、このαに比べたらゴミのようなものだった。
聡司は自分の尻に手をやり、屋敷が挿入しやすいようにと穴を広げた。屋敷はそれを見て嬉しそうに笑う。そして問うた。
「聡司。お前は俺の、何?」
「す、昴くんの、昴くんだけのΩです……っ」
答えに満足した屋敷が挿入しながらキスをすると、聡司はこれまでの人生の中で一番の幸せを感じ、最高の笑顔を見せた。
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