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対シルヴァドラゴン編
第3話 クラスにシルヴァドラゴンってなんなんだ?
しおりを挟む「あんたにお似合いのクエストを取ってきてやったわ」
そういってリアンが見せてきたのは一枚の萎びた羊皮紙だった。茶色っぽいインクで書かれた内容は一見読めない文字で書かれているが、内容は自然に頭に入ってきた。おそらく、スキル「自動翻訳」のおかげなのだろう。
リアンが出してきた紙にクレアも覗き込むように顔を近づける。
「だ、駄目ですよ! 記憶がない人にSクラスクエストなんて難しすぎます!」
「Sクラス?」
ふとした疑問にクレアはこくりと頷いて、続ける。
「ギルドが仲介するクエストには、適正経験値を積んだ冒険者を当てるためにランクが存在するんです。新入りの方しか取得できないDクラスを除けば、C、B、A、S、SS、SSSの六種類はお仕事を取れる方が経験値で決まっていて、Cクラスから500ずつ上がっていくんです。Sクラスは1500から2000経験値の人向けですね」
「なんか込み入った話だな。一言で言えばどういうことだ」
「クラス適正を満たす経験値をタクミさんが持っているかどうかが分からない以上、行くべきではないということです」
そういってクレアは眉尻を釣り上げ、頬を膨らませて、リアンの方を見る。
「逆よ、逆! 私のことを足手まとい扱いするんだったら、これくらい簡単にこなせて当然よ。もともと私達二人で倒せる敵なんだから」
クレアは一歩も引かない姿勢のリアンを呆れた様子で見つめる。一方で俺はリアンのクエスト書の内容を読み込んでいた。
「なになに? 魔駒『シルヴァドラゴン』の討伐……どういう奴なんだ? そのシルヴァドラゴンってのは」
「森林に現れる魔駒で、火を吹いて攻撃することが多いです。動き回るタイプではないので魔駒としての脅威レベルは低いのですが、一度暴れ始めると木々に引火して山火事になっちゃうんですよ。それで木こりさんとか周辺に住んでいる人たちが亡くなったりするのでSレベルの任務になっているんです」
「リアン、もしかして俺に配慮してSランクの中でも安全なものを選んでくれたのか?」
単純な疑問で言ったつもりだったが、リアンは俺の言葉に顔を真っ赤にして否定を身体で表すがごとく腕を振り始めた。
「そ、そ、そ、そんなわけないでしょ! あ、アンタなんかどうなったって良いんだからっ!!」
(あぁ、ベッタベタのベタなツンデレだ)
俺はそんなことを思いつつ、準備を始めた二人の背中を追った。
***
リアンとクレアについて行った先は、鬱蒼とした森だった。この辺の地理に不自由な俺が適当に歩いたら、迷いかねないようなそんな野生林が広がっている。
「それにしても、そのままで本当に良かったわけ?」
「ん、ああ」
リアンの疑問に適当に頷く。二人はこの森に来る前にポーションやら包帯を買っていた。しかし、俺は何も買ってこなかった。なぜなら、装備無しの状態で、どれくらい戦えるのか試してみたかったからだ。まともに戦えなければ二人が助けてくれるし、何も心配はない。
まあ、その場合はこのパーティーからは追い出されることになるが、最初からこのパーティーに残るつもりも無かったので後腐れ無く別れられるなら、そっちのほうが良かった。
「二人とも静かに、ここがシルヴァドラゴンの居場所です」
クエスト書に付属していた地図を持つクレアが囁いて伝える。そうは言うものの周りにそれらしき怪物は見えなかった。
「瘴気が見えないが、本当にここなのか?」
「あの煙が出てくるのは、魔駒が出現するときだけなんですよ」
「でも本当にどこにも見当たらないわね。このクエスト、悪戯だったのかしら?」
リアンは少し残念そうな顔をする。俺はそんな二人の前に出て、周りを確認した。
「タクミさん?」
「ちょっと、試したいことがあるんだ」
そういってから、先の『感覚』を思い起こす。ステータスに表記されていたスキル「スキャン」――あれはきっと某FPSゲームのキャラクターみたいに周囲に居る敵などを見通せるスキルなんじゃないだろうか。
腕を薙いで、精神を統一して「スキャン」と呟いてみる。
瞬間、周囲に薄っすらとした青色の波動が伝播していき、情報が脳内に入ってくる。その結果はあまりにも信用するには突拍子もないものだった。
「す、凄い! 今のは高位魔法の『スキャン』じゃないですか!!」
「って、ことはどこに討伐対象が居るのか分かったってこと?」
「ええ、そのはずですけど……」
「どこなのよ、さっさと教えなさい!」
「下だ」
リアンは「下ぁ?」と惚けたような声で答える。しかし、俺はそうとしか答えられなかった。「スキャン」の結果、シルヴァドラゴンの反応が脳内に流れ込んできた。その居場所は俺たちの立っているこの地面それ自体だったのだ。
二人がきょとんとしているうちに地面が振動し始める。リアンとクレアも俺の言ったことの意図を理解したのか、顔を青くしてわななき始める。
「ま、まさか、こんな大きさのシルヴァドラゴンなんて、居るわけが――」
リアンがそう言ったが最後、地面は一瞬にして空高く隆起した。いや、地面ではない。羽を羽ばたかせ、巨大な頭を振り回す怪物――魔駒と言われて不思議のない存在。俺たち三人はその上に呆然と立ち尽くしていたのだった。
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