22 / 22
六、龍の祝福
21.
しおりを挟む 後日、百家神社の宮司とお兄さんのお父さんが今後の話をするという話を聞いた。
宮司さんは百家くんのお祖父ちゃんだ。宮司ってお宮の代表者の事らしい。
彗煉寺ではお兄さんとしばらく話をして、時間になったので帰ることを伝えると、
「あの、君は携帯電話持ってるの?」
「うん、持ってるよ。アドレス交換する?」
「出来たら、そうしてもらえないかと思って」
「いいよ、家族以外でアドレス交換するのはこれで二人目」
私の言葉にクッと笑うと、お兄さんはいぶし銀のような渋い銀色の薄い二つ折りの携帯を取り出した。どっかの携帯会社が限定販売で出していたやつに似てる。
アドレスを交換して携帯をポケットに入れると、その上を大切そうに手で押さえて私を正面から見た。
「ありがとう。今日は会えてよかった」
「私も会えて嬉しかった。じゃあね」
手を振って別れる。
待ち合わせの場所に歩いて行く途中、お母さんとお祖父ちゃんも丁度用事が終わって本堂から出た所だったので声をかける。
「おお、麻美、暑いのにどこにおったんかの。いや~今日は暑いのお」
お祖父ちゃんは首に下げたタオルで顔を拭いている。
「えっと、知り合いに会ったから木陰で話をしてたの」
「知り合い?珍しいのお、アルバイトの道の駅の人か?」
「うん」
「本堂の中は涼しかったし、和菓子とお茶も頂いたよ、麻美も一緒にくれば良かったねって話てたの」
お母さんは帽子を被りながらそう言った。
「え~いいなあ。喉乾いたから自販でジュース買って車に乗るね」
「そうしなさい。ほら、そこの休憩所の右に置いてあるわよ」
緑茶のペットボトルを購入して飲みながら家に帰った。
家に帰ってから、お兄さんから『今日は話を聞いてくれてありがとう』というめメールがきたので。私は『会えて良かった。色々教えてくれてありがとう』と返事を返した。
それから百家くんにもお兄さんに彗煉寺で会った事をメールで知らせると直ぐに電話がかかってきた。
「白狐に東神家の事を注意するように言われたから、祖父ちゃんに東神家の事を相談したんだ。それで祖父ちゃんが動いてくれた。祖父ちゃんも前に向こうにはお祓いを拒否されたけど、ずっと気になってたらしい。この間、東神家に祖父ちゃんが行った時、俺も付いて行ったんだ」
「えっそうなの、どんな感じだった?」
「悪いモノが引き寄せられて来ていた。井戸の障りは家自体に憑いてる感じだな。取り敢えず、外からの邪気は跳ね返し、中の悪いモノは出せない様に護符を貼りつけて、結界石を置いて帰ったけど」
百家くんが先に動いてくれたらしい。頼りになる人だ。お寺でも白狐が私の周りで跳ね回っていたけど、どうやら私がお兄さんに会った事も私が連絡するよりも先に白狐から聞いていたらしい。
白狐はお兄さんが悪いモノに憑かれないように守ってくれているようだ。
「東神家には塙宝も一緒に行った方がいいと白狐が言ってる。来てくれるか?」
「うん、行ってもいいなら行かせてもらうよ。でも、関係者じゃないのに行っても大丈夫かな?」
「白狐はお前は関係者だって言ってるけど、確かに東神家にとっては神社の者じゃないのに来てるのは変に感じるかもしれないから、巫女としてついて来てもらうよ。装束をそれなりにして行けば見た目問題ないだろ。そのつもりだったし」
「え、う、うん?」
正直、そんな事を言われるとも思っていなかったので、ものすごく驚いた。
「今年の年末は巫女さんのアルバイトするんだろ、先に練習出来ていいじゃないか?」
「そんな簡単にいうけど、着付けとか教えてもらえるの?」
「伯母さんに頼んでおくよ。いつもアルバイトの子達にも教えてるから大丈夫。行く前に少し練習すればいいよ。ああ、それに祖父ちゃんが来てくれるならアルバイト代を出すって言ってた」
「えっ、アルバイト代まで貰えるの?」
「そりゃ巫女さんとしてついて来てもらうし、塙宝は俺の神力を上げてくれる相手だから、そのあたりも家で話をしてる」
百家という家がどんな歴史を辿ってきた家なのかよく知らないけど、不思議な力を代々持ち続けてきた一族なのだろうと何となく推測した。でなければ常識から外れたこういう話は普通に受け入れられはしない。
「なんか至れり尽くせりで申し訳ないかんじ」
「お前はちゃんと分かってないけど、俺の貴重な相棒だからな」
「相棒かあ・・・」
「何だよ、そのあんまり嬉しそうじゃない返事は」
「そんなことないよ、聞きなれない響きだから噛み締めてただけ。東神家の事で動いてくれて正直すごく嬉しいし感謝してるよ。ありがとう」
「え、そ、そうか。何だよ、突然。ほんとお前って面白いやつだな」
私がお礼を言うと、百家くんは突然あわあわした。百家くんこそ面白いと思う。
次の日に冷房の効いた部屋で衣装合わせをしようと百家くんが言ってきたので、お母さんには少し早いけど巫女さんのアルバイトの為に着付けを習いに行くと言ったら、コンタクトレンズにしていきなさいと言われた。
ついでに私の適当に切ってある髪の毛をカット用のハサミで揃えてくれた。
「麻美も今度から美容室で髪をちゃんとしてもらおうね。三つ編みもそろそろ卒業かな」
「えっ何で?」
「だってお母さん高校生で三つ編みしてる女の子見たこと無いし、逆にその眼鏡と三つ編み目立ってるよ」
うっと痛い所を突かれた。逆に目立っているとは、それも困る。
「眼鏡はもっと薄いレンズで作れるそうだから今度作りに行こうか、今は可愛い眼鏡もたくさんあるし」
「そんなに私の為に散財しなくていいのに」
「まあっ、娘の為に使わなくていつ使うの?それにその程度は何でもないよ。お母さんにもっと頼ってね」
「・・・ありがとう、お母さん」
そうして、新しい眼鏡は直ぐに作ってもらった。お母さんの行動力は凄いと思う。
眼鏡のレンズは薄く、ちょっとモード系というのか、おしゃれな眼鏡を買ってもらった。眼鏡一つで印象が変わるのでとても驚いた。
前後して百家神社に巫女装束の着付け等を習いに何回か行くことになった。百家くんの伯母さんはとても面白くて優しい人だ。そして、おやつは美味しかった。
宮司さんは百家くんのお祖父ちゃんだ。宮司ってお宮の代表者の事らしい。
彗煉寺ではお兄さんとしばらく話をして、時間になったので帰ることを伝えると、
「あの、君は携帯電話持ってるの?」
「うん、持ってるよ。アドレス交換する?」
「出来たら、そうしてもらえないかと思って」
「いいよ、家族以外でアドレス交換するのはこれで二人目」
私の言葉にクッと笑うと、お兄さんはいぶし銀のような渋い銀色の薄い二つ折りの携帯を取り出した。どっかの携帯会社が限定販売で出していたやつに似てる。
アドレスを交換して携帯をポケットに入れると、その上を大切そうに手で押さえて私を正面から見た。
「ありがとう。今日は会えてよかった」
「私も会えて嬉しかった。じゃあね」
手を振って別れる。
待ち合わせの場所に歩いて行く途中、お母さんとお祖父ちゃんも丁度用事が終わって本堂から出た所だったので声をかける。
「おお、麻美、暑いのにどこにおったんかの。いや~今日は暑いのお」
お祖父ちゃんは首に下げたタオルで顔を拭いている。
「えっと、知り合いに会ったから木陰で話をしてたの」
「知り合い?珍しいのお、アルバイトの道の駅の人か?」
「うん」
「本堂の中は涼しかったし、和菓子とお茶も頂いたよ、麻美も一緒にくれば良かったねって話てたの」
お母さんは帽子を被りながらそう言った。
「え~いいなあ。喉乾いたから自販でジュース買って車に乗るね」
「そうしなさい。ほら、そこの休憩所の右に置いてあるわよ」
緑茶のペットボトルを購入して飲みながら家に帰った。
家に帰ってから、お兄さんから『今日は話を聞いてくれてありがとう』というめメールがきたので。私は『会えて良かった。色々教えてくれてありがとう』と返事を返した。
それから百家くんにもお兄さんに彗煉寺で会った事をメールで知らせると直ぐに電話がかかってきた。
「白狐に東神家の事を注意するように言われたから、祖父ちゃんに東神家の事を相談したんだ。それで祖父ちゃんが動いてくれた。祖父ちゃんも前に向こうにはお祓いを拒否されたけど、ずっと気になってたらしい。この間、東神家に祖父ちゃんが行った時、俺も付いて行ったんだ」
「えっそうなの、どんな感じだった?」
「悪いモノが引き寄せられて来ていた。井戸の障りは家自体に憑いてる感じだな。取り敢えず、外からの邪気は跳ね返し、中の悪いモノは出せない様に護符を貼りつけて、結界石を置いて帰ったけど」
百家くんが先に動いてくれたらしい。頼りになる人だ。お寺でも白狐が私の周りで跳ね回っていたけど、どうやら私がお兄さんに会った事も私が連絡するよりも先に白狐から聞いていたらしい。
白狐はお兄さんが悪いモノに憑かれないように守ってくれているようだ。
「東神家には塙宝も一緒に行った方がいいと白狐が言ってる。来てくれるか?」
「うん、行ってもいいなら行かせてもらうよ。でも、関係者じゃないのに行っても大丈夫かな?」
「白狐はお前は関係者だって言ってるけど、確かに東神家にとっては神社の者じゃないのに来てるのは変に感じるかもしれないから、巫女としてついて来てもらうよ。装束をそれなりにして行けば見た目問題ないだろ。そのつもりだったし」
「え、う、うん?」
正直、そんな事を言われるとも思っていなかったので、ものすごく驚いた。
「今年の年末は巫女さんのアルバイトするんだろ、先に練習出来ていいじゃないか?」
「そんな簡単にいうけど、着付けとか教えてもらえるの?」
「伯母さんに頼んでおくよ。いつもアルバイトの子達にも教えてるから大丈夫。行く前に少し練習すればいいよ。ああ、それに祖父ちゃんが来てくれるならアルバイト代を出すって言ってた」
「えっ、アルバイト代まで貰えるの?」
「そりゃ巫女さんとしてついて来てもらうし、塙宝は俺の神力を上げてくれる相手だから、そのあたりも家で話をしてる」
百家という家がどんな歴史を辿ってきた家なのかよく知らないけど、不思議な力を代々持ち続けてきた一族なのだろうと何となく推測した。でなければ常識から外れたこういう話は普通に受け入れられはしない。
「なんか至れり尽くせりで申し訳ないかんじ」
「お前はちゃんと分かってないけど、俺の貴重な相棒だからな」
「相棒かあ・・・」
「何だよ、そのあんまり嬉しそうじゃない返事は」
「そんなことないよ、聞きなれない響きだから噛み締めてただけ。東神家の事で動いてくれて正直すごく嬉しいし感謝してるよ。ありがとう」
「え、そ、そうか。何だよ、突然。ほんとお前って面白いやつだな」
私がお礼を言うと、百家くんは突然あわあわした。百家くんこそ面白いと思う。
次の日に冷房の効いた部屋で衣装合わせをしようと百家くんが言ってきたので、お母さんには少し早いけど巫女さんのアルバイトの為に着付けを習いに行くと言ったら、コンタクトレンズにしていきなさいと言われた。
ついでに私の適当に切ってある髪の毛をカット用のハサミで揃えてくれた。
「麻美も今度から美容室で髪をちゃんとしてもらおうね。三つ編みもそろそろ卒業かな」
「えっ何で?」
「だってお母さん高校生で三つ編みしてる女の子見たこと無いし、逆にその眼鏡と三つ編み目立ってるよ」
うっと痛い所を突かれた。逆に目立っているとは、それも困る。
「眼鏡はもっと薄いレンズで作れるそうだから今度作りに行こうか、今は可愛い眼鏡もたくさんあるし」
「そんなに私の為に散財しなくていいのに」
「まあっ、娘の為に使わなくていつ使うの?それにその程度は何でもないよ。お母さんにもっと頼ってね」
「・・・ありがとう、お母さん」
そうして、新しい眼鏡は直ぐに作ってもらった。お母さんの行動力は凄いと思う。
眼鏡のレンズは薄く、ちょっとモード系というのか、おしゃれな眼鏡を買ってもらった。眼鏡一つで印象が変わるのでとても驚いた。
前後して百家神社に巫女装束の着付け等を習いに何回か行くことになった。百家くんの伯母さんはとても面白くて優しい人だ。そして、おやつは美味しかった。
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
異世界転移したよ!
八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。
主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。
「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。
基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。
この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる