そして彼は魔王となった

葉月

文字の大きさ
上 下
4 / 22
一、ジーンの都

3.

しおりを挟む
 それでもそんな不思議な光景も、慣れるといつもの風景になるもんだからまた不思議だよなぁ。
 道行く人は誰も綺麗な景色を眺めることも、見上げることすらない。

 なんでも、作られてから1万年以上は経ってるって話だった。

 五ぼう星をえがいてみればわかると思うけど、エルザの都には尖った三角が全部で五つあって、トラインって呼ばれてた。

 それぞれにドワーフやホビット、フェアリーとか色々。
 まぁ大雑把おおざっぱに住み分けてた感じ。それぞれのトラインに名前があった気がするけど……、うん。おいおい話すよ。

 真ん中の正五角形の区画には高慢こうまんちきなエルフが住んでて、そのはるか上空には、目では見えないくさりだか何かでぷかぷか浮いてる王族の城があるんだか無いんだかって話。見たことないからわかんないけどな。

 一番外側の先端五つにそれぞれ外部からの侵入を監視する関所があって、開放的なようで、実はとっても堅牢けんろうな都市だったね。

 広さ?
 あぁ、今簡単に話したけど、一個の三角…トラインが5200メンデくらいあったかな。
 あ、今使われてる単位だと、4000エーテル……、え? 使われてない?
 じゃあそこのちっこい女の子の背丈がたぶん1メンテくらいって考えると、それを縦400個、横13個並べて出来る四角形くらいの広さだなー。
 っと、メンデはメンテを長さの単位として使う時の、広さの単位だよ。
 ん? 空色君と鎧君は何が何だかな顔してるなぁ。
 オイラ馬鹿だけど、レシェスさまに色々教えてもらったから、そういうの一言一句間違えないで覚えてるんだ! えらいだろ?
 そんじょそこらの馬鹿と一緒にしてもらっちゃあ困るなっ。
 え? そんじょそこらの馬鹿に失礼だって? だろっ、だろっ!?
 ちっこいの、なかなか話がわかるなぁ。

 はっはっはっ!
 
 オイラ達が訪れたのは、エルザ北東の三角区画で、ハーフエルフとホビットが多く住んでるところだったよ。

 トーラスだったかな。名前。

 ん? ちっこいのハーフエルフなのか?
 ほえぇ。
 ホビットとエルフのハーフエルフと、エルフの子? それじゃあ4分の1がホビットで、残りはエルフってことかい。
 じゃあちっこいこと以外はほとんどエルフってことだなぁ。
 え? 細工や航海術もそれなりに得意?
あぁそうそう。

 ホビットの連中は、その辺が得意だって話で、もともとは海側の北西の区画に多く住んでたらしいけど、何かエルフのやつらにいちゃもんつけられて、色々あって移住させられたとか何とか言ってたよ。

 んで、何やら商隊の人たちとは関所の少し前で別行動になって、オイラとレシェスさまは長い行列に並んで外壁の中に入ったんだ。

 えっと、鎧君は人間? だよね?
 うん。あ、いやー…その頃人間は少なかったからさー。

 外壁の中に入ると、石だたみの路地が続いていた。入って間もなくは両替商を始め、生活雑貨や食料品の店が続いてて、大きな三角形の区画ってことをすっかりさっぱり忘れるくらいには、複雑な街並みをしていたよ。もちろん同じような業種の店も、一個や二個じゃなかった。

 大きな通りから外れたあたりに住宅地があって、レシェスさまは両替をした後、食料を少し買って、その住宅地と商店街の間あたりに位置する野外の酒場で果実酒のカクテルを注文したんだ。
 オイラもチーズと葡萄ぶどう酒をいただいたけど……あの頃はしぶいってしか思わなかった。
 ぺっぺっぺってなって、残りはレシェスさまにあげちゃったよ。
 少し小さめの椅子に座ってチーズだけもりもり食べたんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...