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いんもらる ぷれい〜中
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180センチはゆうにある達也の身体が、前屈みに折れ曲がって床に崩れた。
「心配しなくて大丈夫だよ~。急所はちゃ~んと外してあっからさぁ~」
男たちに肩を担がれながら、智紀は、お腹を押さえて床の上に蹲る達也のTシャツから伸びる日焼けした腕と、それを見下ろす池亀の残忍な薄ら笑いをぼんやりと眺めていた。
ちゃんと歩け、と言われ、もつれる足を引きずるように前に出す。
身体が思うように動かない。
自分の重みを感じられず、足元がフワフワとして地面を踏みしめている感覚が無かった。
そのくせ神経だけはやけに研ぎ澄まされていて、池亀に詰め寄る達也の情熱的な真っ直ぐな瞳と、それとは対照的な池亀の仄暗い冷ややかな瞳、二つの視線が交差した瞬間、達也の肩がガクンと揺れ、大きな身体が足元に崩れ落ちていくのがスローモーションのように目の前を流れた。
達也に迷惑を掛けてしまった、と思った。
迷惑は掛けないと約束したのにまた破ってしまった。
一度破ると癖になってしまう。癖になる前に直さなければならない。これ以上達也に迷惑を掛けるわけにはいかなかった。
引き止めようとする達也に、大丈夫だから、と答え、智紀は足を引きずりながら達也の横を通りすぎた。
部屋に入ると、
「うへー。ホント、生活感ない。これ、まんまヤリ部屋じゃん!」
仲間の一人が大袈裟に笑い、肩に担いだ智紀の腕を自分の首から剥がしてベッドの上に仰向けに放り投げた。
「あれれ、ひょっとして効きすぎちゃってる? おーい、寝るなー、智紀くん!」
やけに苦いお酒を飲まされたのを思いした。眠いのはそのせいか。
タバコ臭い手で頬をペチペチと叩かれ、半分閉じていた瞼をうっすらと開く。
至近距離に男の顔があった。
「おっと。ダメだよ、よそ見しちゃ~」
顔を背けたところを、顎を掴まれ強引に口を塞がれた。
舌の先で唇を割られ、こじ開けられた隙間から粘っこい舌が強引に押し入ってくる、
激しいキスだ。舌を思い切り奥まで入れられめちゃめちゃに掻き回される。息苦しさに、イヤイヤと首を振って息継ぎを求めると、別の男がケラケラ笑いながら頭を押さえつけ、池亀が、「窒息させるなよ」と低く笑った。
涙でぼやけた視界の先で何かが光っていた。
カメラのレンズ。
横たわる智紀の真横に立ち、池亀がカメラを構えて智紀を見下ろしている。
「これか? 後でおかずにすんだよ。まぁ、気にすんな」
足元から順に舐めるようにカメラを回し、頭の先にきたところで一旦止まって顔をズームする。
智紀が恐怖に目を見開くと、「怯えた顔もそそるねぇ~」と口の端を歪めていやらしく笑った。
「じゃあ次は笑ってみよっか。ほら、こっち見て笑ってみな」
咄嗟には反応出来なかった。
池亀は、「つまんねぇ奴」
吐き捨て、
「んじゃ、そろそろおっぱじめようか」と、勉強机の椅子をベッドの側に引っ張り出し、どっかりと座ってカメラを構えた。
それを合図に、太ももの上に乗っていた男が智紀のシャツに手を掛け、ボタンを引き千切らんばかりの勢いで左右に開く。蛍光灯の眩しい光に、智紀の剥き出しになった白い胸がよりいっそう白く浮かび上がり、手前の男が、ひゅう、っと唇を鳴らした。
「やべぇ。乳首可愛い。めちゃ美味そう」
「食べちゃう?」
「いいね、乳首、食べちゃおか!」
両方の乳首を指先で摘まれ、捻り上げられ、平坦だった乳輪が卑猥に膨らみ、乳首がみるみる充血して硬く盛り上がる。
身を捩って抵抗すると、今度は、乳輪を執拗に舐められ、唇を当てて吸い上げられ、尖った乳首を舌の先で捏ねくり回され根元に歯を立てられた。
「痛っ!!」
「動くからだよ。大人しくしてないと本当に食いちぎっちゃうよ?」
ビリリッ、と、電気が流れるような衝撃が乳首の奥からお腹の底に走り抜ける。
逃れようにも、背後の男が羽交締めにした腕をギュッと締め、ますます逃れられなくなってしまった。
なすすべもなく、唇を噛んで堪えるだけの智紀を面白がるように、男は、智紀の乳首を舐め回しては舌で包んで強く吸い上げ、唇を離して、赤く腫れ上がった乳首を満足そうに眺めた。
「見ろよ。色が白いからこんな真っ赤。めちゃエロい」
「お前ばっかズルイだろ! 俺にもやらせろよ!」
背後の男が、胸元にむしゃぶりつく男の脇腹を足で小突き、胸元の男が仕返しとばかり向かってくる足を捕まえて振り回す。
喧嘩に発展しそうな勢いだったが、池亀はそれすらも楽しむようにカメラを回し続け、男たちがヒートアップしたところで、ふいに、「仲良く犯れよ」と、ポケットの中から何かを取り出し放り投げた。
手錠のようだ。
男が、「こりゃあいい」と声を弾ませながら空中でキャッチし、智紀に見せつけるように、輪っかに指を入れて左右に広げてみせた。
瞳に残忍な光が宿ったのは気のせいではない。
一瞬の目配せの後、示し合わせたように、背後の男が智紀をうつ伏せに押さえ付け、両腕を背中でクロスさせた状態で手錠を装着した。
再び仰向けにひっくり返され、羽交締めから解放された男が、ようやくありつけるとばかり智紀の胸元にむしゃぶり付く。チュパチュパと卑猥な音を立てて乳首を舐めしゃぶり、時折、顔を上げて智紀を見、伸び上がっては唇といわず鼻から下一帯をベロベロと舐め回した。
「こっちも気分出てきたじゃ~ん」
いつの間にかズボンは剥ぎ取られ、先ほどまで乳首を噛んでいた男が、下着の上からペニスを握って先端を舐めていた。
布を一枚挟んだじれったさが、智紀に、自分から甘い疼きを求めるよう仕向け、男の口へと腰を振らせる。
下着を下され直接しゃぶられる頃には、先走りがトロトロと裏すじを伝い流れた。
「すっげぇ。べちょべちょ……ヤバい。めちゃ興奮する……」
「ん、んっ……んあっ……あンッ……」
下着を足首から抜き取ると、もう一人が暗黙の了解で再び背後に回り、智紀を自分の膝の上に持ち上げて後ろから両膝を担ぎ上げた。
そのまま腰を上向きに反らし、智紀のお尻の割れ目がよく見えるよう突き出すと、池亀が待ち構えたように前に回り、智紀の恥ずかしい部分にカメラを向ける。
「綺麗なケツだな。ケツ毛、剃ってんの? これ」
「もとからだ」
至近距離でかかる息。上ずった声。まるで視姦されているようだった。
口角をいらやしく吊り上げ、舐めるように智紀の股間を撮ると、池亀は、ふいにカメラを置き、予め用意したローションを陰嚢の上部から後孔にかけてたっぷりと垂らし、お尻の肉を左右に開いて後孔に指先をねじ込んだ。
「んあっ……」
円を描くように中を広げながら埋め込み、根本まで行ったらゆっくり引き返してまた埋め込む。指を増やして捻るように回転させると、まるで自分から感じるポイントに擦りつけて行くかのように、智紀がお尻をくねらせて喘いだ。
「いやぁあっ、あっあ……ん、あぁ……やぁ…」
「ああもう堪んねぇよコイツ。早くぶち込んじゃおうぜ…」
池亀は、
「慌てるな」
隣の男に自分の代わりに後ろをほぐすよう指示すると、立ち上がり、智紀の顔の上に中腰に跨った。
ジーンズを降ろしてペニスを引っ張り出し、智紀の顎を掴んで亀頭を唇にグリグリと押し付けて口を開かせる。先っぽを舌に乗せてさらに広げると、そこから一気に押し込み、後頭部を掴んで喉の奥に向かって激しく腰を振った。
「んグッ……んんんっ……ングッ……」
「そうだ……。歯を立てるんじゃねーぞ」
硬くなったモノを奥の奥まで押し込まれ、智紀が苦しそうに眉を顰めながら、ウッ、ウッ、とえづく。
その間も別の男に後孔をいじられ、同時にペニスもしゃぶられ、一方で、背後の男にうなじをキツく吸われ、耳の後ろから肩にかけてを繰り返し舌の先でなぞられる。全身が恐ろしく敏感になり、池亀のモノを口一杯に頬ばり涎を垂らしながらも、智紀は興奮に目のふちを赤らめ、腰をよじってねだるようにお尻を振った。
「俺もう我慢できねぇよ、池亀…」
「だから、おめえらばっかズルいっつってんだろ! 早く俺にもやらせろよっ!」
智紀の反応に触発されたのか、後ろをいじっていた男がズボンを降ろして下着の合わせ目から猛々しく反り勃つペニス を引っ張り出した。
今すぐにでも挿入しそうな勢いだったが、それを止めたのは池亀だった。
「俺が先だ」
男を乱暴に押し退けると、池亀は、智紀の足元に割り込み智紀のくびれたウエストを掴んでうつ伏せにひっくり返した。
後ろ手に手錠をかけられているせいで、智紀は何も抵抗出来ない。ベッドに突っ伏していると、ケツを上げろ、とお尻を叩かれ、後ろ手に固定された腕でバランスをとりながら背中をくねらせて膝を立てた。
頬だけで上半身を支えているからだろう。自然と背中が窪み、お尻を高く突き出すような格好になり、誘っているようなポーズに池亀が傍にいる男に、「カメラを回せ」と命令した。
「俺は映すなよ?」
録画ランプが点灯するのを確認すると、池亀は、智紀の細くくびれたウエストをがっつりと掴み、赤黒く反り勃つペニスを突き上げるように押し込んだ。
「ひぃぃっ……ひゃっ…あっ、ああっ……いっ……やっ……ああぁん」
「どうだ。気持ちいいか?」
「……もち……いっ…」
「どこがいいんだ」
「おっ、奥っ…も……っと……」
「ここか?」
ズシン、と腰を突き上げられ、智紀が、「ああああんっ!」と甘えた声を上げながら眉を顰める。
悩ましい姿に触発され、男の一人が、智紀の顔の横にしゃがみ、腰を突き出してペニスを咥えさせ、カメラを構えた男が結合部分を執拗にズームする。
「ほら、いいだろ智紀。繋がってるとこ丸見えだぞ。もっと見てもらうか? ほら、出たり入ったり…」
言いながら、深く埋めた男根をゆっくりと引き摺り出し、また、ズブズブと奥深くに埋め込んでいく。
ぬらぬらと赤黒くテカる陰茎が抜き差しされる度、溢れたローションがぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。
喘ぎ声は泣き声に変わり、智紀の意思とは関係なく、息を吐くたびに口から漏れた。
その声がワンオクターブ上がった頃、ふいに池亀が、智紀の手錠を外すよう指示し、自由になった両腕を掴んで上体を起き上がらせた。
身体が離れていかないよう脇腹から胸元に腕を回して背後にピッタリとくっつき、うなじに吸い付きながら激しく腰を突き立てる。
池亀が腰を振るたび、智紀が華奢な身体をベッドに大きく弾ませながら、あああぁん、と愚図るような泣き声を上げた。
「こっちも良くしてやっから待ってなよ」
男の一人を呼び寄せ、智紀のペニスをしゃぶらせた。
「いたせり尽せりだな、なぁ、智紀。こんだけしてやってまさかイケねぇとか無ぇだろう…」
智紀は快感に身を任せていた。
身体の芯がぞくぞくするような、身悶えるような快感が全身を駆け巡る。
池亀の乱暴な腰使いと男の舌の動き、カメラを構える男のレンズ越しの欲情した目に、智紀は神経を集中させた。
「イキたくなったら何時でもイッていんだかんな……」
乱暴に突き入れ、揺さぶり、ゆっくりと引き戻す。ねちねちと攻め込むのと激しく突まくるのと、力加減や速さにメリハリをつけながら、池亀が、智紀の中に肉棒を打ち込んで行く。腰を振るたびお尻が腰にぶつかりパンパンと音を立て、ベッドがギシギシと軋む。何度目かの繰り返しの後、ふいに池亀が、一番奥まで突き入れたところで動きを止め、ビクッと身震いした後、慌ただしくペニスを引き抜いた。
「チクショウ! 俺の方が先にイッちまったじゃねーか!」
智紀を乱暴に突き放してベッドから飛び降り、ドカドカと歩いてドアへ向かう。
「そこにいるんだろ!?」
池亀の怒鳴り声とどちらが早かったか、いきなりドスンと大きな音が響き、何かがドタドタと部屋に入って来た。
「達也…」
ベッドの上にうつ伏せに倒れ込む智紀の視界の中で、達也が池亀に腕を掴まれ立っていた。
「おら、連れてきてやったぜ? 嬉しいか?」
池亀は、智紀を睨み付けながら言うと、ベッドの側に出しっぱなしになっていた椅子に達也を座らせ、「ここで見てろ」と命令した。
「勘違いするな。俺はべつにコイツがイこうがイかまいが関係ねぇ。これは単なる確認だ」
「確認……?」
「俺はコケにされるのが我慢ならねぇんだ」
吐き捨て、ベッドにいる男からカメラを取り上げ再び達也の隣に戻ってカメラを構えると、池亀は、低い抑揚の無い声で仲間の男たちに、「やれ」と命令した。
二人の男は示し合わせたように智紀の身体を抱き上げ、それぞれ思い思いになぶり始めた。
男たちに後ろを貫かれ、前をいじくられ、智紀が再び快楽の中へと放り込まて行く。
ペニスがびくびくと脈を打ち、痛いくらいに張り詰めた。
「どうしたイケよ」
池亀の噛み付くような視線の横で、達也が、何かを思い詰めたような、泣き出しそうな目で智紀を見ていた。
見た瞬間、智紀の身体の中心に甘い痺れが走り、お腹の奥から熱い疼きが込み上げた。
「はっ……やめ……も、もうっ…」
ーーーイク。
ビクビクッと肩を震わせながら、智紀は達也を見ながらシーツの上に精液を吐き出した。
智紀の後ろを犯す男が、「ひくひくしてる」とはしゃきながら腰を突き立てる。
眉一つ動かさず硬い表情で固まる達也の横で、池亀が、やけくそ混じりにゲラゲラ笑った。
「ははははっ。こいつぁいいや。どんだけ解りやすいんだよ、お前!」
バカ笑いしながら、項垂れる達也の肩を組んでバンバンと叩く。
不気味にはしゃぐ池亀とは対照的な達也の深く沈んだ目が智紀を貫いていた。
「俺がどんだけ突いてもイかなかったってのに、コイツが来たら一発かよ。全く舐められたもんだぜ、なぁ、達也くんよ」
「どういう意味だ…」
「どういう意味だぁ? てめぇが智紀をこんな身体にしやがったんだろうがよ。何が、『誰かに見られてないと』だ、笑わせんな!」
高笑いから一転、恐ろしくドスの効いた声で言うと、池亀は、達也の座る椅子の脚を蹴り、再びベッドに近付いた。
「せっかく達也くんに来てもらったし、今日はとことんイッてもらおうか、なぁ、智紀……」
池亀の言葉に男たちが、ヒュウ、と口笛を吹いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「てか、お前、気付いてんだろ?」
池亀の唐突な問い掛けに、達也は、サンダルを揃えていた手を止めた。
行為の後、仲間を先に車に向かわせ、玄関先で池亀は突然切り出した。
「気付く、って何を…」
「とぼけるな。お前、気付いててわざとやってるんだろ?」
何もかも見透かしたような顔だった。意味深なニヤケ笑いを浮かべ自信たっぷりに。しかし達也は池亀の表情の意味を理解することは出来なかった。なぜなら、心当たりが無いからだ。
池亀は何か言いたそうな顔で達也を伺っていたが、達也の反応に答えを得たのか、ふいに、はははっ、とバカにしたように笑った。
「わかった、わかった、質問、変えるわ」
瞬間、池亀の目に好奇が宿り、達也は咄嗟に身構えた。
自分の方が体格も良く腕力もあるのは一目瞭然だが、池亀の突如現れる嗜虐性には底知れない恐ろしさを感じた。
達也の気持ちを知ってか知らずか、池亀は、しゃがみ込んだままの達也を覗き見るように背中を曲げて顔を近付けた。
「お前、わざと見つかるように覗いてるだろ? ドアの外で」
「なっ、なにを根拠に……」
「根拠? そうやって聞き返すこと自体が既に根拠だろ……」
達也は、震え出した手を池亀に見付からないよう、もう片方の手で押さえた。
「俺には何のことだか…」
「またまたぁ。わざと見つかって、相手の男が智紀から離れてくようにしてんだろ? 健気だねぇ。智紀が特定の男を作るのがそんなに嫌か?」
心の内側にえぐり込むような視線だった。息が詰まり、目を逸らして唾を飲み込んだ。
池亀は、「図星だろ」と鼻で笑った。
「どうせ俺のこともさっさと智紀の前から居なくなりゃいいと思ってんだろ? でも残念。俺は離れてやんねぇぜ? だってお前ら面白れーもん」
言うなり、達也の背中を拳骨で小突き、池亀は、達也の指先からサンダルを剥ぎ取るように足先には引っ掛けた。
「本当、久々、面白れーよ。悪ィが当分楽しませてもらっから…」
達也は玄関先にしゃがみ込んだまま、サンダルを鳴らして歩いていく池亀の足音を聞いていた。
池亀の顔が頭を離れなかった。余裕たっぷりのしたり顔に悪寒が走る。
何とかしなければと焦る一方で、恐ろしさに思考が麻痺し、何もする気が起きなかった。
逃げ出したい衝動に駆られたが、智紀をそのままにしてきた事を思い出し、仕方なく、濡れタオルを持って智紀の元へ向かった。
智紀は、池亀の宣言通り達也の前で何度もイカされ、気を失ったまま眠りこけていた。
精液まみれの身体をタオルで拭き取り、濡れたシーツをゆっくり引き抜く。身体はひどく汚れていたが、中出しされていないのが救いだった。
身体を拭き終え、タオルを濯いで顔を拭いた。
泣き腫らしたような、殴られたような腫れぼったい目元。唇の端に出来た血の塊が血の気の引いた顔にやけに赤々と存在を主張していた。
無意識に手でなぞると、柔らかい唇がキュッと尖り、智紀がうっすらと瞼を開けた。
「ごめん、起こしちゃったな…」
長い睫毛が立ち上がり、白目の赤い瞳がうろうろと周りを彷徨い達也に戻る。精気の抜けた身体が息を吹き返し、血を巡らせていくように頬に赤みがさした。
「俺…」
「話さなくて良いから、寝てな…」
「ごめん…」
小さいながらも程よく質感のある赤いくちびるを震わせ、智紀は、悩ましげに眉を顰めた。
「俺、また達也に迷惑かけて……。達也に嫌な思いにさせちゃって…」
「もういいよ。そんなことよりこの傷……あいつにやられたのか?」
「解らない……お酒飲んで目ぇ回ってたから……。どこかでぶつけたのかも知れないし……」
「どうせ無理に飲まされたんだろ……」
「違うよ。ほんの一杯だけ……」
「一杯だけ?! 一杯でこんなフラフラになるわけ無いだろう!」
なるとしたらそれは酒じゃなく別のモノだ。喉元まで出掛かった言葉を飲み込み、達也は智紀の唇の端の傷を指先でなぞった。
「もうアイツとは会わない方がいい」
これ以上一緒にいさせるわけにはいかない、引き離さなければと思った。
達也は、智紀の肩を押さえつけ、訴えるように瞳を睨んだ。
「アイツは危険だ。悪いことは言わないからもう会うな」
「達也……どうしたんだよ、急に……なんでそんなこと……」
「急じゃない。最初に見た時から思ってた。アイツはお前には合わない。アイツ、絶対まともじゃないよ。アイツといたら今にとんでもないことになる!」
「達也……」
「なぁ、頼むからもうアイツとは会わないでくれ。あんなヤツじゃなくたって、お前だったら他にいくらでも良い相手がいるだろう!」
瞬間、智紀の細く頼りない肩がビクンと跳ね、赤く潤んだ瞳が、一瞬、大きく見開き、達也を捉えた。
「他にいくらでも? なに言ってんの! そんな奴いないことぐらい達也が一番良く知ってんじゃん!」
「どういう意味だよ……」
「俺が……見られてないとダメなの知ってんだろ? そんなん誰が理解してくれんの? 実際、みんな気持ち悪がって逃げて行くじゃん!」
弱った見た目には不釣り合いな噛み付くような視線だった。
智紀の視線に射抜かれながら、達也は、池亀に言われたことを思い出していた。
わざとだろ。わざと見つかって、相手の男が智紀から離れてくようにしてんだろ。
まさか、智紀は知っていたのだろうか。知ってて、責めることもせずに次の相手を探していたんだろうか。
何のために。
「あの人……池亀さんは、確かに気分屋なとこはあるけど、俺のこと理解してくれてるんだ」
「理解…? お前に変なモン飲ませて、変な奴まで連れ込んで……あんな……あんなことして……なのに、理解してる、って、お前、一体なに言ってんの⁉︎」
智紀は静かに頷いた。
「池亀さんは、知ってて、離れないでいてくれるんだ。だから俺……」
「知ってて離れない? だったら俺だって……」
ーーー俺だって離れない。俺の方がよっぽど理解している。
思いが突き上げ、達也は、グッと奥歯を噛み締めた。込み上げた言葉が喉のすぐそこで止まっている。
どうして止まっているのか解らない。止まっているのか止めているのか、止めている理由も解らなければ、引き止めさせる原因も解らなかった。
ただ、言ってしまったら自分の中から何かが抜け落ちる気がした。
「達也が心配してくれるのは凄く嬉しいよ。でも、俺は大丈夫だから気にしないで」
達也は何も言わず、智紀の肩を掴む自分の震える腕を見ていた。
喉の奥に引き返していった言葉が胸の奥で冷たいシコリとなり、胸一帯を重苦しく押し潰した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
達也の気持ちを嘲笑うかのように、池亀はそれから三日と経たぬうちにマンションにやって来た。
熱っぽい目をしてしなだれかかる智紀を玄関先でひょいと抱き上げると、池亀は、我が物顔で智紀の部屋に向かい、ベッドの上にストンと落とした。
達也が追ってきた事を知りながら、Tシャツを脱ぎ捨て、自慢の腹筋とタトゥーを見せ付ける。美しく割れた腹筋を作り上げた事は素直に称賛するが、達也は池亀のこういう自己顕示欲が強そうなところも嫌いだった。
「そんな怖い顔するなよ。これでも達也くんに気を使って一人で来たんだからぁ~」
池亀の戯言に付き合うつもりは無かった。それよりも、ベッドの上で不自然に身体を縮める智紀が気になった。
来た時から様子がおかしかった。目の周りは発熱したように赤らみ、吐く息も荒かった。また変なモノを飲まされたのかも知れない。不審に思っていると、察したのか、池亀が達也を見上げ、からかうように笑った。
「ああこれ? 心配すんな。ちょっと気持ち良くなってるだけだから」
「まさかヤバい薬とかじゃ…」
「怖ぇこと言うなバーカ。いいからちょっと黙って耳澄ませてみ?」
言われるままに耳を澄ますと、何処からともなく、ブゥゥゥンという虫の羽音のような音が微かに響いた。
「これは……」
「へへへっ。見たいか?」
池亀の、人を小馬鹿にしたような半開きの目が興奮に潤み出す。
悪巧みする顔で笑うと、池亀は、達也の返答を待たず、智紀のハーフパンツを下着ごと乱暴に引き下げ、両足を抱えて剥き出しになったお尻を持ち上げた。
「これは一体……」
一見しただけでは解らない。お尻の割れ目を広げられて初めて後孔の位置から黒いフックのようなものが飛び出しているのが解った。
「バイブ付きのアナルプラグ。……こう見えて、中はエゲツないくらいデッカイのでギチギチになってんだ。これ抜いたら、ここがぱっくり開いて、中がヒクヒクしてるとこ丸見えだぜ? すげー、くるよ。そうだ。お前、試しに抜いてみるか?」
達也は息を止めたまま立ち竦んだ。
「どうした……? 中、ヒクヒクしてるとこ見たくねぇの?」
「………めろ」
速まる呼吸を抑えながら、やっとの思いで声を絞り出した。
「なに? やるのかやらないのかハッキリしろよ」
「やめろ……。これ以上智紀をおもちゃにするな……」
池亀は一瞬黙り、しかし直ぐにケタケタと笑い出した。
「おもちゃにするな、とは笑わせてくれるな。一体どっちがおもちゃにしてんだよ。そもそも、智紀にケツの良さを教えたのはテメェだろ?」
ふいに、暴力的な衝動に駆られ、達也は弾かれたように池亀の腕を掴んだ。
「智紀と別れろ!」
力ではこちらの方が上だと思っていたが、喧嘩は池亀の方が数段上だった。達也は、眉間に頭突きを喰らい膝から崩れ落ちた。
「いきなり何を言い出すのかと思ったら。俺は何も智紀を無理やり側に置いてるわけじゃねぇよ? 智紀が、俺と付き合いたいって言うから付き合ってやってんだ。智紀が別れたい、って言うならいつでも別れてやるさ」
「なら、今すぐ別れてくれ」
「は? だから、何でお前に命令されんだよ。言っただろ? 智紀が別れたい、って言ったら別れてやるよ。ま、そんなこと言わないだろうがね…」
「なんでそんなことがお前に解る」
「解るさ。俺は智紀を理解してる。お前よりかずっとな」
ーーー理解。だと?
胸の奥のしこりが再び達也の心を重苦しく押し潰した。
怒りと悔しさをごちゃ混ぜにしたような憎らしさが込み上げ、感情にまかせて池亀を睨み殺すように睨んだ。
「お前が、智紀の何を理解してる、って言うんだ…」
池亀は、
「知りてぇか?」
動じるどころか達也から目を逸らさず、自分の鼻先を見るように、上から、恐ろしく坐った薄目で達也を見下ろした。
「知りたいなら教えてやってもいいぜ? その代わり、そこに座って最後まで見とけ」
達也は、智紀のお尻からプラグを引き抜く池亀の血管の浮いた二の腕と、ずるずると引き出されるグロテスクな黒い棒を震えながら眺めた。
「ほらな。パックリ開いて中丸見えだろ?」
大きく広げた脚の間で、智紀の後孔が別の生き物のように卑猥にヒクつき、池亀をねだった。
「心配しなくて大丈夫だよ~。急所はちゃ~んと外してあっからさぁ~」
男たちに肩を担がれながら、智紀は、お腹を押さえて床の上に蹲る達也のTシャツから伸びる日焼けした腕と、それを見下ろす池亀の残忍な薄ら笑いをぼんやりと眺めていた。
ちゃんと歩け、と言われ、もつれる足を引きずるように前に出す。
身体が思うように動かない。
自分の重みを感じられず、足元がフワフワとして地面を踏みしめている感覚が無かった。
そのくせ神経だけはやけに研ぎ澄まされていて、池亀に詰め寄る達也の情熱的な真っ直ぐな瞳と、それとは対照的な池亀の仄暗い冷ややかな瞳、二つの視線が交差した瞬間、達也の肩がガクンと揺れ、大きな身体が足元に崩れ落ちていくのがスローモーションのように目の前を流れた。
達也に迷惑を掛けてしまった、と思った。
迷惑は掛けないと約束したのにまた破ってしまった。
一度破ると癖になってしまう。癖になる前に直さなければならない。これ以上達也に迷惑を掛けるわけにはいかなかった。
引き止めようとする達也に、大丈夫だから、と答え、智紀は足を引きずりながら達也の横を通りすぎた。
部屋に入ると、
「うへー。ホント、生活感ない。これ、まんまヤリ部屋じゃん!」
仲間の一人が大袈裟に笑い、肩に担いだ智紀の腕を自分の首から剥がしてベッドの上に仰向けに放り投げた。
「あれれ、ひょっとして効きすぎちゃってる? おーい、寝るなー、智紀くん!」
やけに苦いお酒を飲まされたのを思いした。眠いのはそのせいか。
タバコ臭い手で頬をペチペチと叩かれ、半分閉じていた瞼をうっすらと開く。
至近距離に男の顔があった。
「おっと。ダメだよ、よそ見しちゃ~」
顔を背けたところを、顎を掴まれ強引に口を塞がれた。
舌の先で唇を割られ、こじ開けられた隙間から粘っこい舌が強引に押し入ってくる、
激しいキスだ。舌を思い切り奥まで入れられめちゃめちゃに掻き回される。息苦しさに、イヤイヤと首を振って息継ぎを求めると、別の男がケラケラ笑いながら頭を押さえつけ、池亀が、「窒息させるなよ」と低く笑った。
涙でぼやけた視界の先で何かが光っていた。
カメラのレンズ。
横たわる智紀の真横に立ち、池亀がカメラを構えて智紀を見下ろしている。
「これか? 後でおかずにすんだよ。まぁ、気にすんな」
足元から順に舐めるようにカメラを回し、頭の先にきたところで一旦止まって顔をズームする。
智紀が恐怖に目を見開くと、「怯えた顔もそそるねぇ~」と口の端を歪めていやらしく笑った。
「じゃあ次は笑ってみよっか。ほら、こっち見て笑ってみな」
咄嗟には反応出来なかった。
池亀は、「つまんねぇ奴」
吐き捨て、
「んじゃ、そろそろおっぱじめようか」と、勉強机の椅子をベッドの側に引っ張り出し、どっかりと座ってカメラを構えた。
それを合図に、太ももの上に乗っていた男が智紀のシャツに手を掛け、ボタンを引き千切らんばかりの勢いで左右に開く。蛍光灯の眩しい光に、智紀の剥き出しになった白い胸がよりいっそう白く浮かび上がり、手前の男が、ひゅう、っと唇を鳴らした。
「やべぇ。乳首可愛い。めちゃ美味そう」
「食べちゃう?」
「いいね、乳首、食べちゃおか!」
両方の乳首を指先で摘まれ、捻り上げられ、平坦だった乳輪が卑猥に膨らみ、乳首がみるみる充血して硬く盛り上がる。
身を捩って抵抗すると、今度は、乳輪を執拗に舐められ、唇を当てて吸い上げられ、尖った乳首を舌の先で捏ねくり回され根元に歯を立てられた。
「痛っ!!」
「動くからだよ。大人しくしてないと本当に食いちぎっちゃうよ?」
ビリリッ、と、電気が流れるような衝撃が乳首の奥からお腹の底に走り抜ける。
逃れようにも、背後の男が羽交締めにした腕をギュッと締め、ますます逃れられなくなってしまった。
なすすべもなく、唇を噛んで堪えるだけの智紀を面白がるように、男は、智紀の乳首を舐め回しては舌で包んで強く吸い上げ、唇を離して、赤く腫れ上がった乳首を満足そうに眺めた。
「見ろよ。色が白いからこんな真っ赤。めちゃエロい」
「お前ばっかズルイだろ! 俺にもやらせろよ!」
背後の男が、胸元にむしゃぶりつく男の脇腹を足で小突き、胸元の男が仕返しとばかり向かってくる足を捕まえて振り回す。
喧嘩に発展しそうな勢いだったが、池亀はそれすらも楽しむようにカメラを回し続け、男たちがヒートアップしたところで、ふいに、「仲良く犯れよ」と、ポケットの中から何かを取り出し放り投げた。
手錠のようだ。
男が、「こりゃあいい」と声を弾ませながら空中でキャッチし、智紀に見せつけるように、輪っかに指を入れて左右に広げてみせた。
瞳に残忍な光が宿ったのは気のせいではない。
一瞬の目配せの後、示し合わせたように、背後の男が智紀をうつ伏せに押さえ付け、両腕を背中でクロスさせた状態で手錠を装着した。
再び仰向けにひっくり返され、羽交締めから解放された男が、ようやくありつけるとばかり智紀の胸元にむしゃぶり付く。チュパチュパと卑猥な音を立てて乳首を舐めしゃぶり、時折、顔を上げて智紀を見、伸び上がっては唇といわず鼻から下一帯をベロベロと舐め回した。
「こっちも気分出てきたじゃ~ん」
いつの間にかズボンは剥ぎ取られ、先ほどまで乳首を噛んでいた男が、下着の上からペニスを握って先端を舐めていた。
布を一枚挟んだじれったさが、智紀に、自分から甘い疼きを求めるよう仕向け、男の口へと腰を振らせる。
下着を下され直接しゃぶられる頃には、先走りがトロトロと裏すじを伝い流れた。
「すっげぇ。べちょべちょ……ヤバい。めちゃ興奮する……」
「ん、んっ……んあっ……あンッ……」
下着を足首から抜き取ると、もう一人が暗黙の了解で再び背後に回り、智紀を自分の膝の上に持ち上げて後ろから両膝を担ぎ上げた。
そのまま腰を上向きに反らし、智紀のお尻の割れ目がよく見えるよう突き出すと、池亀が待ち構えたように前に回り、智紀の恥ずかしい部分にカメラを向ける。
「綺麗なケツだな。ケツ毛、剃ってんの? これ」
「もとからだ」
至近距離でかかる息。上ずった声。まるで視姦されているようだった。
口角をいらやしく吊り上げ、舐めるように智紀の股間を撮ると、池亀は、ふいにカメラを置き、予め用意したローションを陰嚢の上部から後孔にかけてたっぷりと垂らし、お尻の肉を左右に開いて後孔に指先をねじ込んだ。
「んあっ……」
円を描くように中を広げながら埋め込み、根本まで行ったらゆっくり引き返してまた埋め込む。指を増やして捻るように回転させると、まるで自分から感じるポイントに擦りつけて行くかのように、智紀がお尻をくねらせて喘いだ。
「いやぁあっ、あっあ……ん、あぁ……やぁ…」
「ああもう堪んねぇよコイツ。早くぶち込んじゃおうぜ…」
池亀は、
「慌てるな」
隣の男に自分の代わりに後ろをほぐすよう指示すると、立ち上がり、智紀の顔の上に中腰に跨った。
ジーンズを降ろしてペニスを引っ張り出し、智紀の顎を掴んで亀頭を唇にグリグリと押し付けて口を開かせる。先っぽを舌に乗せてさらに広げると、そこから一気に押し込み、後頭部を掴んで喉の奥に向かって激しく腰を振った。
「んグッ……んんんっ……ングッ……」
「そうだ……。歯を立てるんじゃねーぞ」
硬くなったモノを奥の奥まで押し込まれ、智紀が苦しそうに眉を顰めながら、ウッ、ウッ、とえづく。
その間も別の男に後孔をいじられ、同時にペニスもしゃぶられ、一方で、背後の男にうなじをキツく吸われ、耳の後ろから肩にかけてを繰り返し舌の先でなぞられる。全身が恐ろしく敏感になり、池亀のモノを口一杯に頬ばり涎を垂らしながらも、智紀は興奮に目のふちを赤らめ、腰をよじってねだるようにお尻を振った。
「俺もう我慢できねぇよ、池亀…」
「だから、おめえらばっかズルいっつってんだろ! 早く俺にもやらせろよっ!」
智紀の反応に触発されたのか、後ろをいじっていた男がズボンを降ろして下着の合わせ目から猛々しく反り勃つペニス を引っ張り出した。
今すぐにでも挿入しそうな勢いだったが、それを止めたのは池亀だった。
「俺が先だ」
男を乱暴に押し退けると、池亀は、智紀の足元に割り込み智紀のくびれたウエストを掴んでうつ伏せにひっくり返した。
後ろ手に手錠をかけられているせいで、智紀は何も抵抗出来ない。ベッドに突っ伏していると、ケツを上げろ、とお尻を叩かれ、後ろ手に固定された腕でバランスをとりながら背中をくねらせて膝を立てた。
頬だけで上半身を支えているからだろう。自然と背中が窪み、お尻を高く突き出すような格好になり、誘っているようなポーズに池亀が傍にいる男に、「カメラを回せ」と命令した。
「俺は映すなよ?」
録画ランプが点灯するのを確認すると、池亀は、智紀の細くくびれたウエストをがっつりと掴み、赤黒く反り勃つペニスを突き上げるように押し込んだ。
「ひぃぃっ……ひゃっ…あっ、ああっ……いっ……やっ……ああぁん」
「どうだ。気持ちいいか?」
「……もち……いっ…」
「どこがいいんだ」
「おっ、奥っ…も……っと……」
「ここか?」
ズシン、と腰を突き上げられ、智紀が、「ああああんっ!」と甘えた声を上げながら眉を顰める。
悩ましい姿に触発され、男の一人が、智紀の顔の横にしゃがみ、腰を突き出してペニスを咥えさせ、カメラを構えた男が結合部分を執拗にズームする。
「ほら、いいだろ智紀。繋がってるとこ丸見えだぞ。もっと見てもらうか? ほら、出たり入ったり…」
言いながら、深く埋めた男根をゆっくりと引き摺り出し、また、ズブズブと奥深くに埋め込んでいく。
ぬらぬらと赤黒くテカる陰茎が抜き差しされる度、溢れたローションがぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。
喘ぎ声は泣き声に変わり、智紀の意思とは関係なく、息を吐くたびに口から漏れた。
その声がワンオクターブ上がった頃、ふいに池亀が、智紀の手錠を外すよう指示し、自由になった両腕を掴んで上体を起き上がらせた。
身体が離れていかないよう脇腹から胸元に腕を回して背後にピッタリとくっつき、うなじに吸い付きながら激しく腰を突き立てる。
池亀が腰を振るたび、智紀が華奢な身体をベッドに大きく弾ませながら、あああぁん、と愚図るような泣き声を上げた。
「こっちも良くしてやっから待ってなよ」
男の一人を呼び寄せ、智紀のペニスをしゃぶらせた。
「いたせり尽せりだな、なぁ、智紀。こんだけしてやってまさかイケねぇとか無ぇだろう…」
智紀は快感に身を任せていた。
身体の芯がぞくぞくするような、身悶えるような快感が全身を駆け巡る。
池亀の乱暴な腰使いと男の舌の動き、カメラを構える男のレンズ越しの欲情した目に、智紀は神経を集中させた。
「イキたくなったら何時でもイッていんだかんな……」
乱暴に突き入れ、揺さぶり、ゆっくりと引き戻す。ねちねちと攻め込むのと激しく突まくるのと、力加減や速さにメリハリをつけながら、池亀が、智紀の中に肉棒を打ち込んで行く。腰を振るたびお尻が腰にぶつかりパンパンと音を立て、ベッドがギシギシと軋む。何度目かの繰り返しの後、ふいに池亀が、一番奥まで突き入れたところで動きを止め、ビクッと身震いした後、慌ただしくペニスを引き抜いた。
「チクショウ! 俺の方が先にイッちまったじゃねーか!」
智紀を乱暴に突き放してベッドから飛び降り、ドカドカと歩いてドアへ向かう。
「そこにいるんだろ!?」
池亀の怒鳴り声とどちらが早かったか、いきなりドスンと大きな音が響き、何かがドタドタと部屋に入って来た。
「達也…」
ベッドの上にうつ伏せに倒れ込む智紀の視界の中で、達也が池亀に腕を掴まれ立っていた。
「おら、連れてきてやったぜ? 嬉しいか?」
池亀は、智紀を睨み付けながら言うと、ベッドの側に出しっぱなしになっていた椅子に達也を座らせ、「ここで見てろ」と命令した。
「勘違いするな。俺はべつにコイツがイこうがイかまいが関係ねぇ。これは単なる確認だ」
「確認……?」
「俺はコケにされるのが我慢ならねぇんだ」
吐き捨て、ベッドにいる男からカメラを取り上げ再び達也の隣に戻ってカメラを構えると、池亀は、低い抑揚の無い声で仲間の男たちに、「やれ」と命令した。
二人の男は示し合わせたように智紀の身体を抱き上げ、それぞれ思い思いになぶり始めた。
男たちに後ろを貫かれ、前をいじくられ、智紀が再び快楽の中へと放り込まて行く。
ペニスがびくびくと脈を打ち、痛いくらいに張り詰めた。
「どうしたイケよ」
池亀の噛み付くような視線の横で、達也が、何かを思い詰めたような、泣き出しそうな目で智紀を見ていた。
見た瞬間、智紀の身体の中心に甘い痺れが走り、お腹の奥から熱い疼きが込み上げた。
「はっ……やめ……も、もうっ…」
ーーーイク。
ビクビクッと肩を震わせながら、智紀は達也を見ながらシーツの上に精液を吐き出した。
智紀の後ろを犯す男が、「ひくひくしてる」とはしゃきながら腰を突き立てる。
眉一つ動かさず硬い表情で固まる達也の横で、池亀が、やけくそ混じりにゲラゲラ笑った。
「ははははっ。こいつぁいいや。どんだけ解りやすいんだよ、お前!」
バカ笑いしながら、項垂れる達也の肩を組んでバンバンと叩く。
不気味にはしゃぐ池亀とは対照的な達也の深く沈んだ目が智紀を貫いていた。
「俺がどんだけ突いてもイかなかったってのに、コイツが来たら一発かよ。全く舐められたもんだぜ、なぁ、達也くんよ」
「どういう意味だ…」
「どういう意味だぁ? てめぇが智紀をこんな身体にしやがったんだろうがよ。何が、『誰かに見られてないと』だ、笑わせんな!」
高笑いから一転、恐ろしくドスの効いた声で言うと、池亀は、達也の座る椅子の脚を蹴り、再びベッドに近付いた。
「せっかく達也くんに来てもらったし、今日はとことんイッてもらおうか、なぁ、智紀……」
池亀の言葉に男たちが、ヒュウ、と口笛を吹いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「てか、お前、気付いてんだろ?」
池亀の唐突な問い掛けに、達也は、サンダルを揃えていた手を止めた。
行為の後、仲間を先に車に向かわせ、玄関先で池亀は突然切り出した。
「気付く、って何を…」
「とぼけるな。お前、気付いててわざとやってるんだろ?」
何もかも見透かしたような顔だった。意味深なニヤケ笑いを浮かべ自信たっぷりに。しかし達也は池亀の表情の意味を理解することは出来なかった。なぜなら、心当たりが無いからだ。
池亀は何か言いたそうな顔で達也を伺っていたが、達也の反応に答えを得たのか、ふいに、はははっ、とバカにしたように笑った。
「わかった、わかった、質問、変えるわ」
瞬間、池亀の目に好奇が宿り、達也は咄嗟に身構えた。
自分の方が体格も良く腕力もあるのは一目瞭然だが、池亀の突如現れる嗜虐性には底知れない恐ろしさを感じた。
達也の気持ちを知ってか知らずか、池亀は、しゃがみ込んだままの達也を覗き見るように背中を曲げて顔を近付けた。
「お前、わざと見つかるように覗いてるだろ? ドアの外で」
「なっ、なにを根拠に……」
「根拠? そうやって聞き返すこと自体が既に根拠だろ……」
達也は、震え出した手を池亀に見付からないよう、もう片方の手で押さえた。
「俺には何のことだか…」
「またまたぁ。わざと見つかって、相手の男が智紀から離れてくようにしてんだろ? 健気だねぇ。智紀が特定の男を作るのがそんなに嫌か?」
心の内側にえぐり込むような視線だった。息が詰まり、目を逸らして唾を飲み込んだ。
池亀は、「図星だろ」と鼻で笑った。
「どうせ俺のこともさっさと智紀の前から居なくなりゃいいと思ってんだろ? でも残念。俺は離れてやんねぇぜ? だってお前ら面白れーもん」
言うなり、達也の背中を拳骨で小突き、池亀は、達也の指先からサンダルを剥ぎ取るように足先には引っ掛けた。
「本当、久々、面白れーよ。悪ィが当分楽しませてもらっから…」
達也は玄関先にしゃがみ込んだまま、サンダルを鳴らして歩いていく池亀の足音を聞いていた。
池亀の顔が頭を離れなかった。余裕たっぷりのしたり顔に悪寒が走る。
何とかしなければと焦る一方で、恐ろしさに思考が麻痺し、何もする気が起きなかった。
逃げ出したい衝動に駆られたが、智紀をそのままにしてきた事を思い出し、仕方なく、濡れタオルを持って智紀の元へ向かった。
智紀は、池亀の宣言通り達也の前で何度もイカされ、気を失ったまま眠りこけていた。
精液まみれの身体をタオルで拭き取り、濡れたシーツをゆっくり引き抜く。身体はひどく汚れていたが、中出しされていないのが救いだった。
身体を拭き終え、タオルを濯いで顔を拭いた。
泣き腫らしたような、殴られたような腫れぼったい目元。唇の端に出来た血の塊が血の気の引いた顔にやけに赤々と存在を主張していた。
無意識に手でなぞると、柔らかい唇がキュッと尖り、智紀がうっすらと瞼を開けた。
「ごめん、起こしちゃったな…」
長い睫毛が立ち上がり、白目の赤い瞳がうろうろと周りを彷徨い達也に戻る。精気の抜けた身体が息を吹き返し、血を巡らせていくように頬に赤みがさした。
「俺…」
「話さなくて良いから、寝てな…」
「ごめん…」
小さいながらも程よく質感のある赤いくちびるを震わせ、智紀は、悩ましげに眉を顰めた。
「俺、また達也に迷惑かけて……。達也に嫌な思いにさせちゃって…」
「もういいよ。そんなことよりこの傷……あいつにやられたのか?」
「解らない……お酒飲んで目ぇ回ってたから……。どこかでぶつけたのかも知れないし……」
「どうせ無理に飲まされたんだろ……」
「違うよ。ほんの一杯だけ……」
「一杯だけ?! 一杯でこんなフラフラになるわけ無いだろう!」
なるとしたらそれは酒じゃなく別のモノだ。喉元まで出掛かった言葉を飲み込み、達也は智紀の唇の端の傷を指先でなぞった。
「もうアイツとは会わない方がいい」
これ以上一緒にいさせるわけにはいかない、引き離さなければと思った。
達也は、智紀の肩を押さえつけ、訴えるように瞳を睨んだ。
「アイツは危険だ。悪いことは言わないからもう会うな」
「達也……どうしたんだよ、急に……なんでそんなこと……」
「急じゃない。最初に見た時から思ってた。アイツはお前には合わない。アイツ、絶対まともじゃないよ。アイツといたら今にとんでもないことになる!」
「達也……」
「なぁ、頼むからもうアイツとは会わないでくれ。あんなヤツじゃなくたって、お前だったら他にいくらでも良い相手がいるだろう!」
瞬間、智紀の細く頼りない肩がビクンと跳ね、赤く潤んだ瞳が、一瞬、大きく見開き、達也を捉えた。
「他にいくらでも? なに言ってんの! そんな奴いないことぐらい達也が一番良く知ってんじゃん!」
「どういう意味だよ……」
「俺が……見られてないとダメなの知ってんだろ? そんなん誰が理解してくれんの? 実際、みんな気持ち悪がって逃げて行くじゃん!」
弱った見た目には不釣り合いな噛み付くような視線だった。
智紀の視線に射抜かれながら、達也は、池亀に言われたことを思い出していた。
わざとだろ。わざと見つかって、相手の男が智紀から離れてくようにしてんだろ。
まさか、智紀は知っていたのだろうか。知ってて、責めることもせずに次の相手を探していたんだろうか。
何のために。
「あの人……池亀さんは、確かに気分屋なとこはあるけど、俺のこと理解してくれてるんだ」
「理解…? お前に変なモン飲ませて、変な奴まで連れ込んで……あんな……あんなことして……なのに、理解してる、って、お前、一体なに言ってんの⁉︎」
智紀は静かに頷いた。
「池亀さんは、知ってて、離れないでいてくれるんだ。だから俺……」
「知ってて離れない? だったら俺だって……」
ーーー俺だって離れない。俺の方がよっぽど理解している。
思いが突き上げ、達也は、グッと奥歯を噛み締めた。込み上げた言葉が喉のすぐそこで止まっている。
どうして止まっているのか解らない。止まっているのか止めているのか、止めている理由も解らなければ、引き止めさせる原因も解らなかった。
ただ、言ってしまったら自分の中から何かが抜け落ちる気がした。
「達也が心配してくれるのは凄く嬉しいよ。でも、俺は大丈夫だから気にしないで」
達也は何も言わず、智紀の肩を掴む自分の震える腕を見ていた。
喉の奥に引き返していった言葉が胸の奥で冷たいシコリとなり、胸一帯を重苦しく押し潰した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
達也の気持ちを嘲笑うかのように、池亀はそれから三日と経たぬうちにマンションにやって来た。
熱っぽい目をしてしなだれかかる智紀を玄関先でひょいと抱き上げると、池亀は、我が物顔で智紀の部屋に向かい、ベッドの上にストンと落とした。
達也が追ってきた事を知りながら、Tシャツを脱ぎ捨て、自慢の腹筋とタトゥーを見せ付ける。美しく割れた腹筋を作り上げた事は素直に称賛するが、達也は池亀のこういう自己顕示欲が強そうなところも嫌いだった。
「そんな怖い顔するなよ。これでも達也くんに気を使って一人で来たんだからぁ~」
池亀の戯言に付き合うつもりは無かった。それよりも、ベッドの上で不自然に身体を縮める智紀が気になった。
来た時から様子がおかしかった。目の周りは発熱したように赤らみ、吐く息も荒かった。また変なモノを飲まされたのかも知れない。不審に思っていると、察したのか、池亀が達也を見上げ、からかうように笑った。
「ああこれ? 心配すんな。ちょっと気持ち良くなってるだけだから」
「まさかヤバい薬とかじゃ…」
「怖ぇこと言うなバーカ。いいからちょっと黙って耳澄ませてみ?」
言われるままに耳を澄ますと、何処からともなく、ブゥゥゥンという虫の羽音のような音が微かに響いた。
「これは……」
「へへへっ。見たいか?」
池亀の、人を小馬鹿にしたような半開きの目が興奮に潤み出す。
悪巧みする顔で笑うと、池亀は、達也の返答を待たず、智紀のハーフパンツを下着ごと乱暴に引き下げ、両足を抱えて剥き出しになったお尻を持ち上げた。
「これは一体……」
一見しただけでは解らない。お尻の割れ目を広げられて初めて後孔の位置から黒いフックのようなものが飛び出しているのが解った。
「バイブ付きのアナルプラグ。……こう見えて、中はエゲツないくらいデッカイのでギチギチになってんだ。これ抜いたら、ここがぱっくり開いて、中がヒクヒクしてるとこ丸見えだぜ? すげー、くるよ。そうだ。お前、試しに抜いてみるか?」
達也は息を止めたまま立ち竦んだ。
「どうした……? 中、ヒクヒクしてるとこ見たくねぇの?」
「………めろ」
速まる呼吸を抑えながら、やっとの思いで声を絞り出した。
「なに? やるのかやらないのかハッキリしろよ」
「やめろ……。これ以上智紀をおもちゃにするな……」
池亀は一瞬黙り、しかし直ぐにケタケタと笑い出した。
「おもちゃにするな、とは笑わせてくれるな。一体どっちがおもちゃにしてんだよ。そもそも、智紀にケツの良さを教えたのはテメェだろ?」
ふいに、暴力的な衝動に駆られ、達也は弾かれたように池亀の腕を掴んだ。
「智紀と別れろ!」
力ではこちらの方が上だと思っていたが、喧嘩は池亀の方が数段上だった。達也は、眉間に頭突きを喰らい膝から崩れ落ちた。
「いきなり何を言い出すのかと思ったら。俺は何も智紀を無理やり側に置いてるわけじゃねぇよ? 智紀が、俺と付き合いたいって言うから付き合ってやってんだ。智紀が別れたい、って言うならいつでも別れてやるさ」
「なら、今すぐ別れてくれ」
「は? だから、何でお前に命令されんだよ。言っただろ? 智紀が別れたい、って言ったら別れてやるよ。ま、そんなこと言わないだろうがね…」
「なんでそんなことがお前に解る」
「解るさ。俺は智紀を理解してる。お前よりかずっとな」
ーーー理解。だと?
胸の奥のしこりが再び達也の心を重苦しく押し潰した。
怒りと悔しさをごちゃ混ぜにしたような憎らしさが込み上げ、感情にまかせて池亀を睨み殺すように睨んだ。
「お前が、智紀の何を理解してる、って言うんだ…」
池亀は、
「知りてぇか?」
動じるどころか達也から目を逸らさず、自分の鼻先を見るように、上から、恐ろしく坐った薄目で達也を見下ろした。
「知りたいなら教えてやってもいいぜ? その代わり、そこに座って最後まで見とけ」
達也は、智紀のお尻からプラグを引き抜く池亀の血管の浮いた二の腕と、ずるずると引き出されるグロテスクな黒い棒を震えながら眺めた。
「ほらな。パックリ開いて中丸見えだろ?」
大きく広げた脚の間で、智紀の後孔が別の生き物のように卑猥にヒクつき、池亀をねだった。
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