10 / 24
✯第一章 西の国〜前編〜✯
9話✯黙れ‼︎✯
しおりを挟む二人はシャーゼンの街に泊まった。
翌日帰ろうとして街を出ようとしたが、街の衛兵でない三十人程の兵が二人を止めた……
「お前達が白金か?
国王様が護衛として雇うとの事、バルゲルまで来い!」
「丁重にお断りします。
宮廷の警護は上級魔道士がいらっしゃるはず。
私達の入る余地は無いと思いますし」
セリエが丁寧に断ろうとしたが、兵達は囲み通さない様に槍を向けて来た。
「へー、みんな槍を使うんだ」
セリアが前に出て兵達の槍を笑いながら見ている。
「お姉ちゃん嫌だってよ?
ど~しよ~かなぁ~?」
その様子を街の人々は心配そうに見ていた。
「おい、国王様だってよ……今の国王様は欲しい物なら何でも手に入れないと気が済まないって言うじゃないか……
可哀想に……」
「まだ子供じゃない……」
街の人々は心配そうに話し出した。
「大丈夫よ、あの二人は白金だから心配ないわ」
一人の女性がそう街の人々言った……クルムが様子を見に来たのだ。
「白金……マジかよ……」
「こりゃあいい物が見れそうだな!」
街の人々がそう言いはじめる。
「う~ん、そうね!
私に槍で勝ったら、ついて行ってあげるぅぅぅぅぅぅ!」
セリアはとても楽しそうに言った。
「おう?いいぜ少し遊んでやろう、お嬢ちゃん」
「ハハハハッ俺たちが魔道士に槍で負ける筈ないだろ……クハッ」
兵がセリアを馬鹿にした瞬間、凄まじい一撃が笑った兵の腹部を襲った。
セリアが炎の槍を出して薙ぎ払う様に重い一撃をお見舞いしたのだ。
その一撃で一人の兵が飛ばされた。
「きっさまーー‼︎」
「早くおいで!兵隊さん!」
「構わん!痛めつけてやれ‼︎」
五人程の兵が襲い掛かる、セリアは簡単に兵達の突きを躱す、兵達は殺さない様に急所を外して狙っているが、セリアに次々とはたかれて行く……
「みんな槍の使い方しぃ~らないのぉ?」
セリアは遊んでいる。
「よーく考えてごらんよぉ?
なんで女の子の私が槍を使うかさ!」
セリアの身のこなしは軽くて速い、だが一撃一撃に槍の反動を使い、槍のしなりを使い少女とは思えない重い一撃を放ち続ける。
そう……槍は本来叩く物であり、突きはトドメを刺す為である、セリアはその基本を知っていた。
そして何よりも槍のしなりと反動を活かした打撃は重く、少女のセリアでも放てるのだ。
兵達はその一撃一撃で膝をついて倒れ込む、腕で止めようとすれば腕の骨にヒビが入り、腹部に食らえば息が止まりそうになる。
三人四人……六人七人と立てなくなって行く。
「なんだコイツ………
魔道士じゃねぇのかよ……
一斉にかかれ!」
兵達が十人以上で一斉にかかり、セリアは槍を活かして高い跳躍を見せ背後に周り、また襲いかかる。
「みんな大丈夫?準備運動にもならないよぉ~」
セリアは遊んでいる、活発なセリアは魔法学校にいた時に気付いたのだ。
魔力が尽きた時、魔道士は弱いと、そして武術も身につけようとセリエと少しづつ毎日稽古していた。
その様子を精霊達が楽しそうに見てて手伝ってくれ、昔からの達人の技も教えてくれ、それを更に魔法を使い身につけていった。
セリアは自分が強くなる為に、セリアなりの努力をしていたのだ。
ただの兵達の槍が敵うはずは無かった。
「お前!我らにこんな事をして、ただで済むと思っているのか‼︎」
兵の一人が叫んだ……
「うん?手加減しちゃダメなの?」
セリアは笑顔で応える。
「きっさまー‼︎」
叫んだ兵が剣で襲い掛かかり、セリアは初めて受け止めた。
その瞬間に他の兵達がセリアを突き刺し、明らかに殺そうした。
セリアの背中から炎の翼が生えはじめる。
「私は貴方達を罰してもいいんだけど……」
セリアは静かに聞く……
兵達のセリアを突き刺した槍が溶け燃えはじめる……
「その命を焼き尽くし、炎の神の元に送ってもういいんだけど?
どうする?」
セリアの瞳から凄まじい業火の様な殺気が初めて放たれ、兵達は怖気付いたのかセリアから距離を取った。
「お前!国王のお召しを何だと思ってるんだ!」
「黙れ‼︎」
セリアが叫んだ。
「国王だからって偉そうなんだよ!
国王が何をした‼︎
この街だけじゃない!
西の国は疫病に苦しんでる民に何をしたの!
救いもしないで、災いに立ち向かわないで何をしたの‼︎」
セリアもセリエも西の国に入り、多くの街を見てきたが、国として機能してはいなかった。
それでいてセリア達を護衛に雇うと言う話を聞いて、セリアは自分の事しか考えてないと思い腹が立ったのだ。
そして街の人々もセリアの叫びに共感して騒ぎ始め、クルムもセリアの言葉から心の奥底から溢れる光を感じていた。
「お前ら……シャーゼンは守り国王は守らぬと言うのか!
この街の者達がどうなってもいいと言うのか‼︎」
兵は言ってはならない事を言った。
「なら……私が西の国を滅ぼしてあげようか?」
「なっ……」
セリアが静かに言い、水の翼まで広げ、そして光の翼まで広げ六枚の翼を広げ、それが出来ると力を見せた。
その姿は美しく、神聖な光が溢れ出していた。
「人を救わない国なら……」
セリアは瞳をつぶり、覚悟を決め瞳を開き力強く叫んだ!
「そんな国!無い方がいい‼︎」
セリアの瞳は美しく罪をも恐れていなかったが……
「あなたがする必要はありません」
優しい声が響いた。
「今なら魔女がこの国に災いを振り撒いたのも解ります……」
黒いローブに銀の仮面……左目に二つの瞳……魔鏡の魔女だ。
「まっ魔女……」
兵達が極限まで恐れた。
「国王に伝えなさい……
これ以上、大罪を犯せば、この魔鏡の魔女がこの国を滅ぼして差し上げます。
滅ぼされたく無ければ美しき国にしなさい……」
「魔鏡の、魔女……
で……伝説の……」
「お、おい……魔鏡の魔女は奇術の魔女とつるんでるはず……」
「そっそんな……伝説の魔女二人に狙われたら……」
「ウァァ‼︎」
兵達は逃げ出した、倒れていた者も痛みを忘れたのかよろよろと走り出した。
魔鏡の魔女は再び優しく言う。
「忘れずに伝えなさい、美しき国にしなさいと」
兵達が逃げ去りクルムは不思議な事に気付いた。
クルムは魔鏡の魔女として、今はその姿でいる、だが街の人々は魔鏡の魔女を恐れていなかった。
初めてだろう、表立って魔女が人を守ろうとしたのは……
信じられない光景だが、街の人々も魔女を見て初めて恐れて居なかった。
「セリア行こう」
セリエが言う。
「え?魔女さんいいの?」
「大丈夫だよ」
「うん……帰ろう!」
セリアは翼をしまい、シャルルの森に向かって二人は歩き始めた。
折角魔鏡の魔女が、いい魔女であるとシャーゼンの街の人々が気付き始めたので、セリアとセリエが入るより最後も魔鏡の魔女クルムに任せようと気を利かせたのだ……
「魔女さん、あいつらが言った事が許せねぇ……白金にも頼んで懲らしめてやれねぇか?」
「そうだ‼︎この街を救ってくれたのはシャルル様とあの二人だったじゃねぇか!
国王は何もしてくれねぇ‼︎」
街の入り口で騒ぎになっていた。
魔鏡の魔女はスッと手を街の人々に向けると静まり返った。
「静かにして下さい……
私はこの国を静かに見ます。
ですから決して騒がないで下さい……
お願いします。」
魔鏡の魔女はそう頭を下げて街の人々に願い、話を続けた。
「白金の二人は、優しくて貴方達に何かあれば、本当にこの国を滅ぼすかもしれません……
あの子達はそれだけの力があると思いますが……
それは大罪であり、あの子達が魔女になってしまうかも知れません……
皆さんは皆さんの恩人が、魔女になり……
あの優しさが苦しみに変わる姿を見たいですか?
私は……見たくはありません……」
魔鏡の魔女の言葉は優しく、身をもって味わった苦しみを伝えようとしていた。
街の人々は静かになり、その言葉を良く聞き考え始めた。
「魔鏡の魔女どの、貴方は貴方の罪を悔いておるのですな……」
この街を治める神父がそう言いながら歩み寄って来た。
「えぇ……神父様、私は罪を悔い罪を滅ぼそうとしてます。」
「そうでしたか……
皆よ!優しき魔女殿の言う通り、静かに過ごそうでは無いか……
きっと何かあった時、魔女殿が我らを救って下さる
それを今は信じようでは無いか」
神父がそう言い、街の人々が納得した様だ。
「あぁ、そうしよう、世の中にはいい魔女も居るんだな!
シャーゼンの街を頼む、魔鏡の魔女さんよ!」
「あの二人に魔女は似合わないしな、あの子達の為に、大人しくしよう」
街の人々に笑顔が戻っていた、クルムはもう少しここに居たい気がしたが、静かに丁寧にお辞儀をしてから、スッと姿を消した……
そして魔鏡の魔女はクルムとして、シャーゼンの街に残り、まだ解らない他の魔女を調べる事にした。
(何千年ぶりかな……
長居してもいいかな?って思える街って……)
「優しき魔女……」
クルムは久しぶりに心からの笑顔を見せていた……
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる