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〜第七章 ファーブラ・神々の参戦〜
139話✡︎✡︎憎悪の神オディウム✡︎✡︎
しおりを挟むユリナは駆け抜けて行く、獣ばかりの森を敵を切り裂きながら……
その頃パルセスでは、防衛し切れずにパルセス軍は押されていた。
「女王様の部隊はあと二日後になり……」
「二日か……間に合わぬな……」
フェルミンの父ファルドクスが暗い面持ちで呟く。
そしてその翌日、パルセスの首都ペルセンは落ちた。
その知らせはフェルミンに届きファルドクスの死も知らされた。
フェルミンは感傷に浸る事は無かった、フィリアの死と、ファルドクスの死、フェルミンにとっても大きなことだが、永遠とも言える長い時を生きるエルフ族が一生に一度しか本当の愛を生み出せず、その愛が永遠に続く……トールを失ったユリナの方が余程辛いと思っていた。
フェルミンは直ぐに首都奪還の為に軍を進めるが、シャッフェンの群れは南下を続けていた為に、直ぐにフェルミンの軍と交戦状態に入る。
パルセス軍は劣勢に立たされていた時に、シャッフェンの群れの中で明るい白い光が輝き放たれた……
そして一人の白い鎧を纏った騎士が現れ、シャッフェンと戦い始める。
アルベルトだ……それにフェルミンが気付いた時、角笛が鳴り響き凄まじい声が響き渡る……サラン王国軍である。
鍛え抜かれた人間達の軍が一斉にシャッフェンに襲い掛かる!
「王子に遅れを取るな!
我らは神の軍!
ケダモノに恐るな‼︎」
人間の指揮官が叫んでいる。
「神の軍?」
フェルミンは疑問に思ったが直ぐに解った。
光竜ルクスも現れシャッフェンを白い炎で焼き払っていく!その戦いぶりにパルセス軍は勢いを取り戻し反撃に出て行く。
パルセスの地でも激しい戦いが繰り広げられていた。
その様子がユリナには見えていた、見えていたと言うより脳裏をかすめて行く。
「お父さん……」
小さく呟くがアルベルトに聞こえるはずはない……
「そうだったんだ……」
ユリナは一瞬だけ鮮明に見た、父アルベルトが光神ルーメンである姿を、ユリナはその姿を胸に焼き付け誇りに思った。
そして自分がしなければならない事をやっと理解した。
それはシンプルなものだった。
世界を未来に繋げる……
それだけだった、だがシンプルであるが簡単ではない事が解っていた、そう考えた時森を抜けた。
「‼︎」
ユリナは驚きを隠せなかった。
そこは辺境地域ではなかった、目の前には見た事も無いとてつも無く巨大な都市がある、セレスのエルド、アグドのバータリス、パルセスのペルセン……どの国よりも巨大で華やかな都市がそこにあった。
静かに雪が降っている……。
ユリナは警戒しながら、その都市に入る……都市の中は賑わい多くの人々が、活気あふれる中楽しそうにしている。
「ここは……」
ユリナが呟く。
「?ここはセディナ、マルティア国の首都さお前さんは旅の者か?」
門の衛兵が教えてくれた。
「えっえぇ……」
(マルティア国?聞いたことない……)
そう思いながら都市の中心部に行くと、巨大な木があり、セディナの木と書いた看板があった。
その木の下にフェルトが居た誰かを待ってる様だった……。
そこに白い髪に空色の瞳をした美しいエルフが走り寄って行く。
「パリィ遅いぞ、何回遅刻するんだ?」
「キリングごめんね、メーテリアから逃げて来たんだけど手間取っちゃって」
パリィと言うエルフはテヘッと言う顔をして軽くフェルトにキスをした。
ユリナは二人が愛し合ってる事に気づき、強い悲しみを覚える……。
そして二人は街の中に消えて行った。
「パリィさまー!」
そう叫びながらメーテリアだろうか美しいエルフの女性が走って行くが、ユリナはその魂の姿を見た時ハッとした。
それはユリナの知っている者が生まれ変わった姿であった。
ユリナが空を見た時、そこにムエルテが居て悲しい瞳でセディナを見下ろしていた。
ユリナはそれが何を意味するのか解らなかったが、ムエルテがユリナに気付いた様にユリナを見た時、ユリナは強い何かの流れに引き込まれた。
「はて……今、テンプスがいた気がしたが……」
ムエルテがそう言い少し考えていた。
そしてユリナが気付いた時、走っていた森に居た。
「今のは……未来……
未来があるんだ……
でも……」
ユリナに凄まじい重圧がのしかかった。
それはユリナが考えた方法の先にあるのか解らなかった。
そしてフェルトの愛の形を見た……だがそれと同時に憎らしくなった。
ユリナは実らない愛を抱えている、そしてそれが永遠に続くのだ。
その悲しみが怒りに、憎しみに変わっていくのを感じていた……
心の中で何かが見開いた。
ユリナの首筋から凄まじい勢いで赤黒い黒い霧が噴き出した、そこはウィンダムがユリナの心に出入りしていた辺りであった。
ユリナは一瞬気を失いそうになったが、気力を振り絞ってそれに耐えた……
「うぁぁぁー」
膝をついてユリナが悲鳴を上げる……凄まじい痛みがユリナの身体中を走り抜けて行く。
ユリナの中で憎しみが憎悪に変わり噴き出して行く。
全てを憎み全てを妬んだ……ありとあらゆる負の感情がユリナを支配しようとした時、ユリナは暗黒を握りしめた。
暗黒の蛇がユリナに噛み付く……
凄まじい激痛が腕に伝わる。
「暗黒……私が変わってしまうなら……
私を石に変えなさい……」
僅かな理性がユリナをそうさせた。
オプスが愛した地上……それをトールは二度も命を犠牲にして繋いで来た地上、その先に未来があるとユリナは解っていた。
女神に変わりつつあるユリナ自身が其れを滅ぼす事をユリナは心から恐れた……
その恐怖をメトゥスが感じ取った。
「ムエルテ!こっちです!」
メトゥスが叫びムエルテとメトゥスは凄まじい速さでユリナの元に向かった。
ユリナの腕が石に変わり始めた。
その時……
「俺を受け入れろ……」
聞き覚えのある声がユリナの頭に響いただが、凄まじい憎しみの溢れた声であった。
「いやだ!お前は誰だ‼︎
暗黒……力を……」
ユリナが遠のく意識の中で叫び弱々しく呟いた。
暗黒がユリナを石に変えて行く速度が早まった時、声の主は凄まじい黒い霧と共に、ユリナの心から飛び出して来た。
ユリナと共に石にされる事を恐れたのだ。
それと同時に暗黒はユリナを石に変える事をやめ腕を戻して行く。
ユリナが痛みに耐えきり、顔を上げた……
荒々しく飛び出したそれのせいで、首筋の毛穴からユリナの血が大量に流れている。
ユリナはその声の主を目にした時、目を見開いて驚いた。
「チッ俺の物にならなかったか……
それは闇の女神の力か?」
トールだ……だが赤黒い肌をし、トールの心の温もりは一切感じない。
「貴方は……?」
ユリナが聞く。
「一つだけ、礼を言う。
俺は憎悪の神オディウム……
ユリナお前の憎しみは素晴らしかった、全てを破壊し全てを血に染める程にな……
お陰で俺は蘇る事が出来た。
その憎しみでいつか、全てを破壊して見せる……お前が守る未来もな‼︎」
オディウムは既に勝ち誇った様な笑みを見せながら言う。
「そ……そんな事は……させない……」
ユリナが必死に立ち上がり、暗黒を持ち上げ様とするが力が入らない……
「無理するな、今楽にしてやる……
お前は俺を産んだんだ。
誰でもそうだが子を産んだ後はまともに動けやしない。
その辺の動物じゃ無いんだからな……
お前は俺の敵になる。
だから……殺す、解りやすいだろ?」
トールの姿をしたオディウムが暗黒によく似た剣を出して、歩み寄りユリナを斬ろうとした。
「まぁ……お前が愛した男の姿をした俺に殺される……
それだけは救いなんじゃないか?」
オディウムがそう言い剣を構えた時……
オディウムの背後から何かが斬りかかった!
「オディウム!真の姿を見せよ‼︎」
オプスだ闇の女神オプスが、トールの姿で破壊を行おうとする、オディウムを許せなくなり、暗黒世界から飛び出して来たのだ!
「いよう!オプス‼︎
相変わらず美しいな!
また俺の女にならないか⁈
可愛がってやるぜ!」
オディウムがふざけながら、オプスに斬りかかるが、その斬撃はトールそのものの斬撃で凄まじく速い!
「この姿の俺を斬れるのか!」
オディウムがそう叫びオプスに斬撃を繰り出す。
そしてオプスが目を見開き無に返そうとした……その瞳は涙が溢れて、無の文様がにじみ描けずに、隙を見せてしまった時にシャイナが現れオプスを庇った。
シャイナは背中から斬られ、致命傷を追ってしまう……
「シャイナ……」
オプスが呼ぶ。
「オプス様!あれは……
トールではありません……お気を確かに……」
シャイナはそう言い残して命を落としてしまった。
「ハンッ弱い奴が、そう言えば何だっけかな?
剣じゃ愛は実らない……
こんな事をトールって奴は言った様だな」
ユリナはそっと立ち上がり、その言葉を思い出した、それはトールがユリナに剣を教えてた時に言った言葉だった。
トールは寂しげにそう言ったが……
「でも守ることは出来るよ」
そうユリナが笑顔で答えた言葉だった、ユリナの脳裏にその思い出が溢れ出して叫んだ!
「お前がそれを言うな‼︎‼︎」
その叫びと共にユリナがオディウムに斬りかかるが、斬ることが出来ない。
他の者と違いオディウムは、ユリナから産まれたその為に未来を見れないのだ、本当に剣技での戦いである。
「ユリナ、お前はトールに勝ったことが無いだろ?お前の剣は全て解ってるぜ」
オディウムが嘲笑い楽しむ様に言う。
そしてユリナは腹を蹴り飛ばされ数メートルは飛ばされてしまう。
そして追撃を入れる様に走り寄りオディウムが剣を振りかざすと、横からムエルテが斬りかかった!
ムエルテの鎌はオディウムに僅かに届いた……。
「妾が相手ならどうじゃ?
オディウムよ……」
「ムエルテか……
お前相手にするのは面倒だな」
オディウムが退いた。
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