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〜第四章 変わりゆく時代〜

第四章最終話✡︎新しい時代✡︎

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 新しい時代が始まろうとしている……


 アグドは軍国主義を捨て、長年の宿敵であったセレスと共に歩む道を選び、交易国に生まれ変わろうとしている。


 パルセスはファルドクス国王がフェルミンに王座を譲り、未来に向けて国の体制を変えようとし始める。


 クリタス王国はアグドと同盟を結び、友好的に独立を果たし、ユニオンレグヌスゴブリンの旗印を掲げ、エレナが女王に即位する事を待つ……


 セレスはエレナが女王となる事が決まり、ヒューマンの国サラン、オークの国アグド、ドワーフの国パルセス、そしてゴブリンの国クリタス王国ともより深い関係を結んでいく……


 騒乱の時代は遠のいて行くように見えるが、まだバディ族とダークエルフ族と関係を結ぶには至らない……
 そして辺境と言われる北に位置する、獣人族、ユニオンレグヌスの再興には程遠いが、形が整いつつある……


「お母さん、まだ?皆んな待ってるよ」


 パルセスの会談から二ヶ月程して、この日新しい時代が始まろうとしている。

「このネックレスのフックが上手くつかないの、カナつけてくれる?」
「はい、お母様……竜魔石のネックレスもありますからね……
こんな感じですか?」

 エレナは召使いを使わないで、久しぶりに帰って来たカナに手伝ってもらった。
 カナもエレナの屋敷にいた時に趣味で磨いてた、召使いの技術が役に立っている。

 今日はエレナの即位式である。

 パルセスもアグドもクリタス王国も、サラン王国も待ち望んでいた日だ……

 各国から国賓として多くの者が招かれていた、サランからも王族が多数来ている。
 パルセスからは、フェルミン女王と護衛としてフィリア、ファルドクスも来ている。

 アグドからはベルガル国王とオーバーロード・ダンガード、そしてシェラドとカナ、アヤも来てくれた。

 クリタス王国からは、トルミア女王をはじめ、エレナ達と親睦を深めようとしてくれた隊長達がトルミア女王の護衛として来ている。

 そして多くの民衆が王宮の前に集まっている……

「エレナ女王はまだか、かなり待っているが……」
ベルガルがぼやく……

「あぁ……男は女に待たされるものだ……」
シェラドもカナと暮らし、たまに長く待たされるらしい……

「全くだ……」
ガーラは常に待たされている……


「女性を待てない人は嫌われますよ」
フェルミン女王がトルミア女王と一緒に笑顔で三人のぼやきをなだめる……

「わしはこの日を二千年待ったかの……」
シンシルがそうぼやき誰もが何も言えなくなる。



「お母様、ほら皆んな待ってますよ」
「うんうん痺れ切らしてるね、ユリナ合図をお願い。」
「はーい!全く、ウィンダム達どこに行ったのかしら、こんな日に何かしたら本当に許さないんだから」


 ユリナはウィンダムを探していたが元気に返事して、魔力を込めて王宮の二階の窓から天に向けて矢を放つ、そして急いでエレナのところに行く。

 即位は玉座の間では無く王宮の庭でする事にした。
 それはオプスがシンシルに、そうしなさいと天界から伝えて来たからだ。

 そしてエレナの前の扉をユリナとカナが開くと凄まじい拍手に迎えられる。



蒼天の空に月が見える

空色の中にうっすらと白く

美しい月が顔をだしている……

 その青空の下、エレナは天界の神々に見守られているのを誰もが感じていた。


 エレナは美しい白い純白のドレス、そのスカートは少し長く妖精を思わせるドレスを着ている。
 エレナは引きずる様なスカートは好まない、結婚式もドレスにしてはスカートの短めな精霊のドレスをチョイスしている、そして白と空色の髪が素晴らしく似合っている……


 エレナが誰よりも美しい一歩を踏み出し……盛大な拍手で迎えられる。


 全ての者が祝福を送り、新しいセレスを迎えようとしている。
 そこに爽やかな程よく強い風が吹き、エレナの髪を美しくなびかせる。

 ウィンダムが風を送った。
 エレナの美しさがその風により引き立たせられた時。


がさがさ……


 身を隠していた植え込みから、五匹の守護竜が一斉に飛び出して、幼竜ではなく素早く光り輝き子竜になる。
 エレナの前に光竜ルクスが立ち、そしてエレナを中心に五芒星の位置につき、五匹の揃って咆哮をあげた……
 エレナは守護竜達にあわせ、まるで示し合わせたかの様に振る舞う……


 それは新しい時代の産声の様であった。


(あなた達……)
エレナは心で囁いた。
(エレナそのまま、俺達がシンシルまで送る)
リヴァイアサンがエレナに囁く。


 エレナは微笑み、また静かに歩み出した……守護竜の作り出す五芒星は、優しく幻想的な輝きを生み出し、エレナをこの世の者では無いかの様に神秘的に演出した。

 会場の誰もが息を呑み、その美しさにシンシルでさえ目を奪われそうになった。



(エレナよ、其方は我が一族の歴代の王を超えるだろう……
美しくそして導け、どの様な苦難も其方なら我が一族を導けるであろう……)
シンシルは心からそう感じていた……


 そしてエレナが守護竜達に導かれ、シンシルの前に来た時、守護竜は位置を変えリヴァイアサンは主人であるエレナの肩に乗り、線で結べばピラミッドの様な位置に付いた。

 子竜リヴァイアサンを乗せたエレナは、正に神に仕える巫女……
 その姿は正に天の使いと言える、それ程の美しさと神聖さを放ち、エレナはシンシルの横にある玉座の前に正面を向いて立つ。


 シンシルは王冠を、エレナの頭に静かに乗せ、五芒星を切った瞬間盛大な、凄まじい歓声があがり誰もが叫ぶ様に声をあげ喜んだ。


 こうしてエレナは、数え切れない程の人々に、そして守護竜達の五芒星の力により神々にも祝福され……


 新しきセレスの女王に即位した。
 それはセレスの英雄の世代交代の始まりでもあった……

 この後、エレナは女王としてセレスを更に繁栄に導いていく、パルセス、アグド、サランはセレスの恩恵を更に受け、各国の信頼関係はより深くなり。
 ユニオンレグヌスの基盤として、セレスを中心に更に時代は動き出していくのである。



「エレナ様……」
 黒いローブを纏い、民衆の中からカイナが呟いていた……だがその左腕は無い様でそれを隠す様にカイナは寂しくその場を去って行く。



「やっとじゃのぉ……

地上よ栄えるが良い……

妾を喜ばせてくれい」
 冥界の支配者、死の女神ムエルテがその光景を見て冷たく微笑んでいた。




ユニオンレグヌス~第四章 変わりゆく時代~完
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