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〜第四章 変わりゆく時代〜

87話✡︎フェルミンの視点✡︎

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 その闇の街道の話を詳しく聞く。
 闇の街道は各棚を結んでいたらしく、クリタスの棚から枝分かれし、遠くは辺境地域ミノタウロスの国まで繋がっているらしい。

 その先の街道は暗黒の街道と言いエレナ達の知らない大陸へと繋がっている。

 エレナ達の大陸はシェティア大陸と言うが、大海を超え他の大陸に到達した者は誰もいない為にその存在は知られていない。

 神々はその他の大陸には生命を送らないらしい……

 ピリアとフィリアはその話を、闇の女神オプスがタナトスに囚われる前に聞き、まだ若い二人は理由と何の為に作られたのかも聞かなかったと言う。


 その街道はクリタス国から、クリタス王国に変わった十二万年前に闇の力で封印されていた、それ以降はドッペルだけが闇の力を使い街道に入り、そしてクリタス王国が滅亡したのを境に、使うドッペルも居なくなり、唯一ピリアとフィリアが趣味の服を買い行く為に使う街道となったらしい……

 そしてパルセスまでの街道は伸びて居るのだが……いつ頃からか出入り口の棚が開かないらしく、パルセスまで行くにはクリタスの棚からパルセスまで歩くのが今一番近いらしい……

 その話を通りかかったフェルミンも聞いていた。

「記憶の棚?聞いたことある様な……」
フェルミンが思い出そうとしている……
「それってどんな棚?ひょっとして古めかしい、燃えない木の棚?」
「多分……それかと思いますが……」
フィリアが燃えないの言葉に焦りながら言うと……

「あれって開くんだ……」
「知ってるのフェルミン?」
エレナが聞く。

「たぶんそれっぽい不思議な棚が王宮の地下にあるよ。
でも本を置いてもなんか次の日には、全部落ちちゃうから、お爺ちゃんが使えない棚だから壊そうとして、ノコギリで斬ろうとしても木なのに傷つかずに切れなくて……」
 フェルミンがそう話してる間にピリアとフィリアは……いやその場に居た全員が汗をかいていた。

「鉄を溶かすだけの火を用意しても燃えなくて、最後にはお爺ちゃんが溶けた鉄をかけてたんだけど……
開かなくなったのってそれが原因かな?」
 今は亡き鉄の魔術師と言われたドワーフ最高の名工フェルトンがムキになったらしい……

 それが原因かな?と言われてもそれが原因としか思えない、エレナもフェルトンにはかなりお世話になったことがある為に何も言えないでいた。
 その場の空気が不思議な空気に変わっていたのは言うまでも無い……

「クリタスの棚から行きましょうか」
ピリアが汗をかきながら話を終わらせた。



 翌日もエレナは王宮と、エルド宮に足を運んで多くの事に手を回す。

 その間ユリナは昨日の話で何かが引っかかっていて、弓兵師団の書類を屋敷の自室で目を通しながら集中出来ずにいた。

 そこに水の鳥がやって来て、窓を突っついて来た。
 カナの鳥だ、水の鳥は慌てて無くゆっくりとしている事からあちらは幸せの様だ。

 ユリナは窓を開けると、水の鳥が指に乗り羊皮紙に変わる、そこにはユリナへの礼が書いてあった。
 食料輸送は順調の様でシェラドからの礼も書いてある、何も疑う事の無い良い手紙であった。


「あ!そうか……記憶の棚を誰が作ったのか解らなくなったんだ……」
ユリナは思い出した、あの日ユリナはカナに

(何か天界であったんだよ、地上の平和を巨人族ですら守れなくなる何かが。
もし奇跡と言うものが神のみわざとするなら、この教えは神を否定していることになる……
お母さんが言ってた。

私達の運命は神々のしぐさ一つで決まるって……それに意を唱えた種族……唯一神々に怒りをぶつけようとした種族が巨人族だとしたら……
この記憶の棚は神々が作った物じゃ無い、この書物は冥界の書物じゃない!)

そう天地の間で言ったのを思い出していた。
 後から聞いた話だが天地の間は昔、記憶の間と言われていたらしく、シンシルの命令により天地図と世界地図が今の形で描かれたらしい、シンシルは記憶の棚を誰が作ったのかを知っているのかも知れない、それを隠しているのかも知れない。

そうユリナが考えた。
「ユリナ何か悩んでるの?」
エレナが帰って来た。
「ううん、何でもないよ、ちょっと疲れたかも、これお姉ちゃんから手紙来たよ」
 そうユリナは言い、カナからの手紙をエレナに渡して今考えた事を話さず、胸にしまうことにした。
 パルセスの事に集中してるエレナに余計なことは話さないように気を使う。


「パルセスに行く支度をしないとね、明日には農地開拓の技術者がアグドに向けて出発するし、私達も急がないと」
 そう言いエレナはフェルミンとピリアとフィリアを食堂に呼び、闇の街道に何人くらい通れるかを聞く。
 二個中隊、約二千名ぐらいなら混む事なく通れる様だ、かなり広い事が伺える。
 こうなると問題はパルセスに行くよりも王立図書館の扱いだ、軍事的にも国交的にも利用出来てしまう。

 もし閉鎖して王宮管理とするならば、新しい図書館を建設して国民の憩いの場を一つ作らないといけない、作る資金は問題ないが土地が確保出来るか解らない……そんな話に脱線しかかった。

「王立図書館なら閉鎖しても構わないんじゃないかな?
血の王の一件で二百人も亡くなった場所だから、今利用してる人少ないんじゃないかな?」
フェルミンが言った。

 確かに王立図書館はあの一件から利用者は減っている。
 商売に長けているドワーフの視点からすれば、そんな場所で商売しても儲かる気がしないつまり人が集まりにくいと言う事だ。

 その責任をユリナは僅かに感じたが、以前のように気落ちする事は無かった、エルミダスが言っていた。

(我らは国を守れた。
彼らの死は一切無駄になってはいない、
だからこうして変わらぬ日々を送れるのだ。)

 身近にいるエレナが言った言葉より、より強く、その言葉と彼らの姿が胸に焼き付いていたからだ、ユリナは一回りも二回りも大きくなってアグドから帰って来ていた。

 フェルミンが王立図書館のその一件を話した時エレナはユリナを見たが、ユリナの眼差しが陰る事なく、しっかりと受け止めている様子を伺え、エレナはユリナの成長を微笑む。

 そして翌日に王立図書館を閉鎖する事をシンシルと話し合う事にした。
 最終的にはエレナの管轄に置く事を目標としてエレナは話し合うつもりでいた。


 その頃……屋敷ではセレス国内と言う事で守護竜達が寛いでいた。
 

 今、屋敷に居る守護竜はリヴァイアサンとルクスとアンサラの三匹である。リヴァイアサンは久しぶりに、誰にも絡まれない優雅な日を過ごし、庭の真ん中にある噴水で遊んでいた。

 ルクスは神の涙から出て部屋でゆっくりと過ごしている。

 アンサラはぼーっとしながら、ガーラの竜魔石の中でのんびりしていて、ある事に気付く。

 ウィンダムが居なければ、この屋敷は平和なのでは!
 誰もが知っている事に今更気付いた、そして何故リヴァイアサンとウィンダムがくっつくと何時もあぁなるんだと考えた。

「アンサラ、それは考えても無駄だリヴァイアサンに聞いて見たらどうだ?
恐らく前世の関係だろうがな」
ガーラがそうアンサラに言った。

「うーん、丁度いまウィンダムも居ないから聞いてみようかな」
 そうアンサラは言い、リヴァイアサンが遊んでる噴水に行った。

 アンサラが噴水に着くといきなり、パシャ!リヴァイアサンに水をかけられる。

「アンサラ!お前も遊ぶか?」
リヴァイアサンは機嫌がいいようだ。


「僕はいいや、ちょっと聞きたいんだけどいい?」
「アンサラが珍しいな、なんだ?」
「何でリヴァイアサンはウィンダムに何時も突っかかるの?」
「なんでかな、解らんが……懐かしくてな……」
「懐かしい?」
アンサラが不思議そうな顔をして聞いた。

「あぁ、俺は十万年前にウィンダムとよく喧嘩したが楽しかった。
互いに剣も磨いてな……アイツの方が強かったな」


リヴァイアサンが、噴水から身を乗り出し懐かしそうに話している。
「それと同時に恋敵でもあったんだ……」
「恋敵?同じ人を愛してたの?」
「いや、ヤツは別の女を愛したんだ……それはもう知ってるだろ……」

「俺はアイツのために最後まで剣を振ったさ……あの女の為にもなお前はあの時居なかったもんな……」

余程苦しい戦いだったのか……少し苦そうな顔をする……

「まぁ今は後悔してない、その相手は今も近くにいるからな」
そう言いながら、屋敷の窓をリヴァイアサンが見た。
そこにルクスが居た……


「まぁ、そんなんだから……つい子供の喧嘩をしてしまうんだ。
何の因果か知らんが、俺らは永遠の友になれた気がするってところかな……」

 アンサラはやっと気付いた、二人が過去に親友で、信頼しあっていた事、幾ら喧嘩しても仲が悪い訳じゃ無い、殴り合っても次の日には、笑って話せる素晴らしい関係だった事を知る。

「そっか……解ったけど喧嘩は程々にしなよ、昔と違って今は神の竜なんだからさ、エレナにまた怒られるよ」
アンサラが優しく言うと。

「ハハッ今じゃエレナが俺達のお母さん見たいなもんだよな。
だが……それもいいな……
俺もウィンダムも、母上に怒られた事は無かったからな」


 そうリヴァイアサンは笑いながら言い、晴れ渡る青空を見上げていた……
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