98 / 234
〜第四章 変わりゆく時代〜
87話✡︎フェルミンの視点✡︎
しおりを挟むその闇の街道の話を詳しく聞く。
闇の街道は各棚を結んでいたらしく、クリタスの棚から枝分かれし、遠くは辺境地域ミノタウロスの国まで繋がっているらしい。
その先の街道は暗黒の街道と言いエレナ達の知らない大陸へと繋がっている。
エレナ達の大陸はシェティア大陸と言うが、大海を超え他の大陸に到達した者は誰もいない為にその存在は知られていない。
神々はその他の大陸には生命を送らないらしい……
ピリアとフィリアはその話を、闇の女神オプスがタナトスに囚われる前に聞き、まだ若い二人は理由と何の為に作られたのかも聞かなかったと言う。
その街道はクリタス国から、クリタス王国に変わった十二万年前に闇の力で封印されていた、それ以降はドッペルだけが闇の力を使い街道に入り、そしてクリタス王国が滅亡したのを境に、使うドッペルも居なくなり、唯一ピリアとフィリアが趣味の服を買い行く為に使う街道となったらしい……
そしてパルセスまでの街道は伸びて居るのだが……いつ頃からか出入り口の棚が開かないらしく、パルセスまで行くにはクリタスの棚からパルセスまで歩くのが今一番近いらしい……
その話を通りかかったフェルミンも聞いていた。
「記憶の棚?聞いたことある様な……」
フェルミンが思い出そうとしている……
「それってどんな棚?ひょっとして古めかしい、燃えない木の棚?」
「多分……それかと思いますが……」
フィリアが燃えないの言葉に焦りながら言うと……
「あれって開くんだ……」
「知ってるのフェルミン?」
エレナが聞く。
「たぶんそれっぽい不思議な棚が王宮の地下にあるよ。
でも本を置いてもなんか次の日には、全部落ちちゃうから、お爺ちゃんが使えない棚だから壊そうとして、ノコギリで斬ろうとしても木なのに傷つかずに切れなくて……」
フェルミンがそう話してる間にピリアとフィリアは……いやその場に居た全員が汗をかいていた。
「鉄を溶かすだけの火を用意しても燃えなくて、最後にはお爺ちゃんが溶けた鉄をかけてたんだけど……
開かなくなったのってそれが原因かな?」
今は亡き鉄の魔術師と言われたドワーフ最高の名工フェルトンがムキになったらしい……
それが原因かな?と言われてもそれが原因としか思えない、エレナもフェルトンにはかなりお世話になったことがある為に何も言えないでいた。
その場の空気が不思議な空気に変わっていたのは言うまでも無い……
「クリタスの棚から行きましょうか」
ピリアが汗をかきながら話を終わらせた。
翌日もエレナは王宮と、エルド宮に足を運んで多くの事に手を回す。
その間ユリナは昨日の話で何かが引っかかっていて、弓兵師団の書類を屋敷の自室で目を通しながら集中出来ずにいた。
そこに水の鳥がやって来て、窓を突っついて来た。
カナの鳥だ、水の鳥は慌てて無くゆっくりとしている事からあちらは幸せの様だ。
ユリナは窓を開けると、水の鳥が指に乗り羊皮紙に変わる、そこにはユリナへの礼が書いてあった。
食料輸送は順調の様でシェラドからの礼も書いてある、何も疑う事の無い良い手紙であった。
「あ!そうか……記憶の棚を誰が作ったのか解らなくなったんだ……」
ユリナは思い出した、あの日ユリナはカナに
(何か天界であったんだよ、地上の平和を巨人族ですら守れなくなる何かが。
もし奇跡と言うものが神のみわざとするなら、この教えは神を否定していることになる……
お母さんが言ってた。
私達の運命は神々のしぐさ一つで決まるって……それに意を唱えた種族……唯一神々に怒りをぶつけようとした種族が巨人族だとしたら……
この記憶の棚は神々が作った物じゃ無い、この書物は冥界の書物じゃない!)
そう天地の間で言ったのを思い出していた。
後から聞いた話だが天地の間は昔、記憶の間と言われていたらしく、シンシルの命令により天地図と世界地図が今の形で描かれたらしい、シンシルは記憶の棚を誰が作ったのかを知っているのかも知れない、それを隠しているのかも知れない。
そうユリナが考えた。
「ユリナ何か悩んでるの?」
エレナが帰って来た。
「ううん、何でもないよ、ちょっと疲れたかも、これお姉ちゃんから手紙来たよ」
そうユリナは言い、カナからの手紙をエレナに渡して今考えた事を話さず、胸にしまうことにした。
パルセスの事に集中してるエレナに余計なことは話さないように気を使う。
「パルセスに行く支度をしないとね、明日には農地開拓の技術者がアグドに向けて出発するし、私達も急がないと」
そう言いエレナはフェルミンとピリアとフィリアを食堂に呼び、闇の街道に何人くらい通れるかを聞く。
二個中隊、約二千名ぐらいなら混む事なく通れる様だ、かなり広い事が伺える。
こうなると問題はパルセスに行くよりも王立図書館の扱いだ、軍事的にも国交的にも利用出来てしまう。
もし閉鎖して王宮管理とするならば、新しい図書館を建設して国民の憩いの場を一つ作らないといけない、作る資金は問題ないが土地が確保出来るか解らない……そんな話に脱線しかかった。
「王立図書館なら閉鎖しても構わないんじゃないかな?
血の王の一件で二百人も亡くなった場所だから、今利用してる人少ないんじゃないかな?」
フェルミンが言った。
確かに王立図書館はあの一件から利用者は減っている。
商売に長けているドワーフの視点からすれば、そんな場所で商売しても儲かる気がしないつまり人が集まりにくいと言う事だ。
その責任をユリナは僅かに感じたが、以前のように気落ちする事は無かった、エルミダスが言っていた。
(我らは国を守れた。
彼らの死は一切無駄になってはいない、
だからこうして変わらぬ日々を送れるのだ。)
身近にいるエレナが言った言葉より、より強く、その言葉と彼らの姿が胸に焼き付いていたからだ、ユリナは一回りも二回りも大きくなってアグドから帰って来ていた。
フェルミンが王立図書館のその一件を話した時エレナはユリナを見たが、ユリナの眼差しが陰る事なく、しっかりと受け止めている様子を伺え、エレナはユリナの成長を微笑む。
そして翌日に王立図書館を閉鎖する事をシンシルと話し合う事にした。
最終的にはエレナの管轄に置く事を目標としてエレナは話し合うつもりでいた。
その頃……屋敷ではセレス国内と言う事で守護竜達が寛いでいた。
今、屋敷に居る守護竜はリヴァイアサンとルクスとアンサラの三匹である。リヴァイアサンは久しぶりに、誰にも絡まれない優雅な日を過ごし、庭の真ん中にある噴水で遊んでいた。
ルクスは神の涙から出て部屋でゆっくりと過ごしている。
アンサラはぼーっとしながら、ガーラの竜魔石の中でのんびりしていて、ある事に気付く。
ウィンダムが居なければ、この屋敷は平和なのでは!
誰もが知っている事に今更気付いた、そして何故リヴァイアサンとウィンダムがくっつくと何時もあぁなるんだと考えた。
「アンサラ、それは考えても無駄だリヴァイアサンに聞いて見たらどうだ?
恐らく前世の関係だろうがな」
ガーラがそうアンサラに言った。
「うーん、丁度いまウィンダムも居ないから聞いてみようかな」
そうアンサラは言い、リヴァイアサンが遊んでる噴水に行った。
アンサラが噴水に着くといきなり、パシャ!リヴァイアサンに水をかけられる。
「アンサラ!お前も遊ぶか?」
リヴァイアサンは機嫌がいいようだ。
「僕はいいや、ちょっと聞きたいんだけどいい?」
「アンサラが珍しいな、なんだ?」
「何でリヴァイアサンはウィンダムに何時も突っかかるの?」
「なんでかな、解らんが……懐かしくてな……」
「懐かしい?」
アンサラが不思議そうな顔をして聞いた。
「あぁ、俺は十万年前にウィンダムとよく喧嘩したが楽しかった。
互いに剣も磨いてな……アイツの方が強かったな」
リヴァイアサンが、噴水から身を乗り出し懐かしそうに話している。
「それと同時に恋敵でもあったんだ……」
「恋敵?同じ人を愛してたの?」
「いや、ヤツは別の女を愛したんだ……それはもう知ってるだろ……」
「俺はアイツのために最後まで剣を振ったさ……あの女の為にもなお前はあの時居なかったもんな……」
余程苦しい戦いだったのか……少し苦そうな顔をする……
「まぁ今は後悔してない、その相手は今も近くにいるからな」
そう言いながら、屋敷の窓をリヴァイアサンが見た。
そこにルクスが居た……
「まぁ、そんなんだから……つい子供の喧嘩をしてしまうんだ。
何の因果か知らんが、俺らは永遠の友になれた気がするってところかな……」
アンサラはやっと気付いた、二人が過去に親友で、信頼しあっていた事、幾ら喧嘩しても仲が悪い訳じゃ無い、殴り合っても次の日には、笑って話せる素晴らしい関係だった事を知る。
「そっか……解ったけど喧嘩は程々にしなよ、昔と違って今は神の竜なんだからさ、エレナにまた怒られるよ」
アンサラが優しく言うと。
「ハハッ今じゃエレナが俺達のお母さん見たいなもんだよな。
だが……それもいいな……
俺もウィンダムも、母上に怒られた事は無かったからな」
そうリヴァイアサンは笑いながら言い、晴れ渡る青空を見上げていた……
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです
こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。
大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。
生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す!
更新頻度は不定期です。
思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!
林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。
夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。
そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ?
「モンスターポイント三倍デーって何?」
「4の付く日は薬草デー?」
「お肉の日とお魚の日があるのねー」
神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。
※他サイトにも投稿してます
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
異世界悪霊譚 ~無能な兄に殺され悪霊になってしまったけど、『吸収』で魔力とスキルを集めていたら世界が畏怖しているようです~
テツみン
ファンタジー
**救国編完結!**
『鑑定——』
エリオット・ラングレー
種族 悪霊
HP 測定不能
MP 測定不能
スキル 「鑑定」、「無限収納」、「全属性魔法」、「思念伝達」、「幻影」、「念動力」……他、多数
アビリティ 「吸収」、「咆哮」、「誘眠」、「脱兎」、「猪突」、「貪食」……他、多数
次々と襲ってくる悪霊を『吸収』し、魔力とスキルを獲得した結果、エリオットは各国が恐れるほどの強大なチカラを持つ存在となっていた!
だけど、ステータス表をよーーーーっく見てほしい! そう、種族のところを!
彼も悪霊――つまり「死んでいた」のだ!
これは、無念の死を遂げたエリオット少年が悪霊となり、復讐を果たす――つもりが、なぜか王国の大惨事に巻き込まれ、救国の英雄となる話………悪霊なんだけどね。
錬金魔法士と精霊達の気ままな工房ライフ
夢幻の翼
ファンタジー
現代日本の天才発明家として数々の道具を発明してきた僕は徹明けのある日、神を名乗る男と出会った。
夢か現実か分からない状態で男が告げた言葉は『貴方は明日死ぬのですが勿体ないので私が管理している世界で人々の役にたつ仕事をしませんか?』だった。
そんな事はとても信じられないと突っぱねるも、男の巧みな言葉の駆け引きについに陥落してしまう。
嘘みたいな、詐欺みたいな話に苦悩しながらも男からその世界で生き抜くチートスキルを授かり、この世界の後始末を頼み込んで新たな世界へ転職する事になった。
「まあ、どこの世界でも自由に発明が出来ればやって行けるさ」
そう腹を決めて飛び込んだ世界は想像以上に快適で、錬金あり、冒険あり、人との交流あり、そして精霊との楽しい工房ライフが待っていたのです。
【カクヨムにも掲載済、なろうにも同名作品がありますがそちらは改訂前の作品になります】
デジタル・リボルト~ディストピアからへの英雄譚~
あかつきp dash
ファンタジー
西暦何年ともおぼつかない未来、AIの進化により大半の仕事が代行され、人類は大いなる余暇を手にすることになった。一方で東京から子供たちによって大人たちは追い出される。
それから10年。片岡里奈は、12歳になるとプレイ資格が与えられるARゲーム「東京迷宮」に参加する。しかし、18歳の誕生日と同時にプレイ資格を剥奪されるという制約があった。東京23区がダンジョンに変貌し、子供たちは魔物と戦いながら生きていく。
失意の中にあった里奈はひょんなことから古輪久遠と出会う。それは新たな世界の開花であった。彼女は仲間たちと東方旅団というクランを立ちあげて大きく変貌した東京の街を生き抜くために模索をはじめた。
※あらすじはチャットGPTで作ったものを変更しています。
※更新日について
月~金曜日の朝6:00に更新します。土日の更新はお休みとします。
※いまのところ無期限で連日投稿とします。
※更新日について
月~金曜日の朝6:00に更新します。土日の更新はお休みとします。
※いまのところ無期限で連日投稿とします。
※小説家になろうにても連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる