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第二章〜記憶の石板〜

26話✡︎ネクロマンサー✡︎

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 王立図書館の輝きは夜空に高く伸び始め、エレナは光を見つめると、アルベルトが血の王を地上へ追い出した事と、ユリナもカナも二人とも無事な事を感じ取る。

「あなた……本当にありがとう……
こっちは任せて‼︎」
 エレナは胸に両手を当て瞳をつぶりながら呟き叫ぶ。

 そしてその光の中から悍ましい叫びが響き始め、エルフの兵達は身構えると、光の中から血の王が飛ばされて来た。


 凄まじい勢いで地面に叩きつけられ、片腕を失い赤い鎧が焼け焦げている。
その片腕は再生し始めている、血の王は王立図書館の中庭に飛ばされていた。

「全軍待機!何があろうとも持ち場を死守せよ!」

 エレナは勇ましく全軍に指示を出す。勇ましい指示ではあるが、相手が相手である為に兵では太刀打ち出来ない、被害を少なくする為の苦肉の指示である。


 エレナは王命と隊を指揮する為に、離れた見渡せる場所にいた、それが仇となるが……
そう指示を出しすぐに走り出す。


血の王は立ち上がり悍ましい声で叫ぶ。
「アルベルト!アルベルト‼︎許さんぞ許さんぞ!血を血をよこせ!」

 弓兵隊が一斉に連続速射し血の王を蜂の巣にしようとするが、辺りに赤い霧が立ち込めその霧に血の王は紛れ簡単にかわし、弓兵隊に襲いかかる。


 やはり冥府の王の一人だけの事はある、弓兵隊では歯が立たない、凄まじい勢いで兵達が虐殺されていく……

(急がないと……兵士達が!)

 エレナは兵士達を心配しながら、祝福の力を解放する。
 神聖な水色の光が血の王目掛けて駆け抜けていく‼︎


「引くな!エレナ様が来るまで持ちこたえろ‼︎」
 僅かな時間で既に何名の命が奪われたか解らない、だがエルフの兵達は勇敢に挑んでいくが凄まじい勢いで兵達は斬り殺されていく……

ブラッドロードが何かを囁いている。
「…………」
だが何故かブラッドロードが唱えた呪文が効果を表さなかった。


 死者を操ろうとしたが操れなかったのだ……


「好きにはさせないよ……」
髑髏の仮面を被った少女が骨の槍で、ブラッドロードに襲い掛かった。
 その槍は躱されるが、その槍から実体の無い死霊がブラッドロードに襲い掛かる‼︎


「ネクロマンサーだと!
何故ネクロマンサーがエルフの味方をする‼︎
死の女神を崇拝する者が‼︎」
ブラッドロードが叫ぶ!

「ネクロマンサーなんて気まぐれなんだよ、そんな事も知らないの?」
そのネクロマンサーはそう言い、ブラッドロードに更に襲い掛かる。

 その槍捌きは素晴らしく、ブラッドロードを防戦一方に追い込んでいる。
 そしてブラッドロードに殺されたエルフの兵達が立ち上がり、ブラッドロードに襲い掛かった!

「へ~みんないいね!
天界に行ける様に今度導いてあげようか?」

 ネクロマンサーの少女は死者を操るが、死者達が通常の死者よりも力強く、ブラッドロードに立ち向かって行く、皆、死してもなお何かを守ろうとしているのだ。


「この力……ネクロマンサー⁈
イミニーが何故、ブラッドロードと戦ってるの⁈」
 エレナはネクロマンサーの出現に困惑するが、とにかく先を急いだ……


「この位かな……もう少しで水の巫女様がくるから、あとは頑張ってねぇ」
 ネクロマンサーの少女はエレナが近づいて来てるのに気付いて、漆黒の闇に姿を消していく、それと同時に死者達は倒れ眠りにつく、ネクロマンサーの力を失ったのだ……




「そんな……」
 エルフの兵達が戦ってくれたネクロマンサーが去ってしまった事に動揺するが……


「お前達はもう引け、私が時間を稼ぐ……」颯爽とガーラが現れる。

(あの者はいったい……
変わった者がいるのだな……)
ガーラはネクロマンサーの少女に興味を持った。

 弓兵も近衛兵も更に動揺するが、ガーラは魔力を高めて、無言で力を見せつける。ガーラは数多くの勇敢な者達の屍を目にして言う。

「アルベルト、もう少し考えて転移魔法を使えないのか?だが……残念だが……
これでも十分奇跡と言えるか……」

 ガーラはそう言うと血の王に向け挨拶がわりに大地を蹴飛ばすと、鋭い岩が血の王に襲いかかる、血の王はシールドで、防ぎ片腕を再生させ呪文を唱える。

 あの空間では血の王自身も魔法を封じられていたのだ……再生した手から血が吹き出して固まり剣の形になり、ガーラに襲いかかるがガーラは動じず何かを囁くと、無数の岩の槍が血の王に襲いかかる。

 血の剣で岩を砕き防ごうとするが、防ぎきれず、後ろに下がる。
 ガーラは遊んでいる、不敵な笑みを見せながらガーラは遊んでいる。

「やはりアルベルトに散々やられたのだから、その程度か……」

 血の王の怒りは頂点に達し、血の剣に汚れた血と魔力を込めて剣を大地に突き刺した。
かなり強力な魔力を込めたらしく、突き刺した場所から地震が起こり大地が、割れ始め王立図書館の庭の端から端まで亀裂が入る。

 その頃エレナは王立図書館につき、ガーラが対峙してるのを見て、立ち止まる。
ガーラがどれ程の力を持って居るのか。
どんな戦いをするのか、知りたかった……そしてネクロマンサーの気配も探っていた。

 ガーラはエレナが来たことに気づいたが、入って来ないのを見て好きにする事にした。
そんな時に血の王が、作り出した亀裂から亡者達の声が聞こえて来た。

「これでこの地も終わりだ、我が軍勢がこの地を埋め尽くす!
あの裏切り者も探し出し、必ず死の女神に捧げて見せよう‼︎」
 そう血の王が言うと低い声で大きく笑い出した。
 そしてガーラは無言で立ったまま何もしようとしない。

「どうした、声も出ないか?貴様らが冥界の力を侮った罰だ!」
勝ち誇った様に血の王が言うと、ガーラが……

「あぁ……貴様の無知無能さに呆れて言葉が出ん……
そして貴様の配下の軍団が哀れに思えて仕方がない……」
 頭を抱えながらガーラはそう言うと祝福の力を解放した。
 大地を強く踏みしめると、その大地の亀裂の横から灼熱の溶岩が流れ出し、亡者の軍団に襲いかかる!
 亡者の声は一瞬で悲鳴に変わり、もう一度大地を強く踏みしめると、今度はその亀裂が塞がって行く。

 溶岩に焼かれた後に硬い岩盤に挟まれつぶされて行く冥界の軍団はまさに、哀れとしか言いようが無かった。
 そして亀裂は無かったかの様に綺麗に塞がった。


 ドルイドに対して血の王は大地を使ったのだ……しかも相手は大地御使と言っても過言では無いガーラの前で当然の結果である。
 エレナはガーラが本当に強いガイアの使徒だと言うことを実感した。


「貴様は……なんだ神か?」
血の王が後ずさりしながら言う。

「神ではない……貴様が私を知らずに挑んで来た愚者なだけだ。
そして私だけだと思っているなら、それは愚かの極み覚えておくが良い」
 ガーラは呆れたままそう答えた直後、雨が降り出す。


 ガーラの実力を見定めたエレナが水色の光を纏い凄まじい速さで距離を詰め斬りかかる。
 血の王はシールドで防ぐが、クリスタルの小太刀から超高圧の水の刃がシールドを斬り裂き勢い余って鎧まで届く。


 一瞬エレナの動きが止まったのを逃さず、血の王はエレナを突き刺した!。
 ガーラは驚くがエレナは笑った……エレナは水になりパシャッと音を立てて崩れる。
 血の王が気付いた時には、数人のエレナに囲まれていた。

 エレナ達は血の王に一斉に斬りかかるが、血の王は赤い霧を起こし霧に紛れようとするが、一手遅かった水が血の王を捉えた。

「なっ、これは……」
 血の王は焦る、地面から大量の水が吹き出し足を捉えた。
 次の瞬間エレナ達が次々と水の刃で斬りかかり、その全ては惑わす為だった、その中に強烈な一太刀の斬撃が血の王の正面から振り降ろされた時に、血の王は気付いたが身を守る事も出来ずに両断された。

「冥界に帰りなさい……」

最後にエレナがそう言うと、リヴァイアサンが現れ血の王を浄化し消滅させていく。

「後百年、後百年……シンシル許さんぞ、アルベルトォォォ」
 浄化されつつも激しい怒りと恨みを叫び血の王は消えて行く。


 エレナは直ぐに振り返り、被害状況を調べる様に近衛兵に指示を出し、周辺に冥界の者がまだ居ないかも探索する様に弓兵に指示を出す。

「ガーラさん、前衛に居て下さりありがとうございます。」
エレナはガーラに礼を言う。
 ガーラが居なければあと、二、三十名は命を落としていたかもしれない、王命があった為に前衛にエレナが居れなかったことを、周辺に散らばる兵士達の亡き骸が悔やませる。


 戦場では王命は絶対では無く、変わりゆく戦況に最良の手段を講じる事が指揮官には求められるが、戦いが始まるまでは王命はほぼ絶対と言える。
 特にこの首都エルドでは。

 エレナは今回の件で、王権に復帰することを少し考えはじめ顔を曇らせていた。
 そんなエレナにガーラは言う。

「エレナ様この者達は血の王を前に、自分達が何をするべきか解っていた。
無論エレナ様が前衛に居れない訳も……
この者達が奴に立ち向かわなければこの場がどうなったか解りません。

彼らは立派に使命を果たしてくれた、それはお解りですよね?」

 ここにはエレナ配下の兵達が居る、ガーラは気を遣いエレナに丁寧に話す。

「解っています解っていますが、いつ見ても……嫌な光景です。」
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