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プロローグ
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病室のベッドで窓の外を眺める君の後ろ姿が
儚くて美しくて消えてしまいそうで
後ろから抱きしめてずっと離したくなかった。
涙を流すぼくに君は困ったような笑顔を浮かべる。
いつも、いつもいつも、泣いているのはぼくの方だった。
初めてあった時の君とは別人のような、か細い声で君はぼくに言う。
「さよならじゃなくて、またね、にしよう。
私たち、また会えるもんね。」
君はぼくの一つ上の先輩だった。
4月14日生まれの牡羊座で、血液型はO型。
たこ焼きが好きで、甘いものがそんなに好きじゃない。
ぼくよりも男らしくて女子にモテちゃうような人気者だった。
君は誰に対しても親しげで、ぼくをよくからかった。
反抗するぼくが余計に面白いらしかった。
ぼくはいわゆる器用貧乏で、君はステータスを身体能力に全振りしたような人。
勉強が得意なぼくを君は「せんせい」と呼ぶ。
最初は嫌だったけど、慣れてくると平然と返事をしていた。
そんなぼくを君が名前で呼ぶようになったのは、少し暑さを感じるようになってきた梅雨のとある日。中2と中3のぼくたちが付き合い始めた日。
ぼくは先輩呼びをやめるのが少し照れくさかったけど、君は楽しそうに嬉しそうに何度もぼくの名前を呼んだ。やめろ、と言うぼくをみてニヤニヤしていた。
ぼくたちが付き合っていることは内緒で、君の親友であり、ぼくの同級生である1人の女子を除いてだれも知らなかった。
からかわれるのが嫌だったから、ぼくは何の不満もなかったが、君は何も言われないのも少しつまらないと言っていた。
君が卒業して、高校に行っても特に変化はなかった。週末にはこっそり会って、会いたくなったら平日でも会いに行った。
ぼくが進学校を目指すことを知ると、きみは心から応援してくれた。それから、会ったり連絡をとったりする頻度は減らしてぼくは勉学に励んだ。
ぼくは無事志望校に受かり、きみは涙を流して喜んだ。ほんとに頑張っていたから、当然なんだけど安心した、と言っていた。
しかしそれから数日後、ぼくたちは関係を終わらせる。
「私たち、進む方向がまったく違うし、依存しちゃう恋人よりも友達くらいの気楽な距離がいいと思うの。」
どうせほかに好きな人でもできたのだろう。ぼくは悔しくて、許せなくて、考えることをやめた。結局ぼくの“カタオモイ”のようなものだったのだ。
「わかった。」
ぼくはそれだけ言った。意地をはった。
このときの、たった一つのこの行動は、今もぼくを責め続ける。
絶対に間違ってはならない選択を、ここで間違った。
ここでもっと君の話をきいていれば、何かが変わったかもしれない。変えられたかもしれない。ぼくは君のことを好きだと言いながら、何もわかっていなかったのだ。
再び、ぼくが君と言葉を交わしたのは
2年後の夏の終わりが近づいてきた日。
君とぼくの最高で最悪な1年半の始まりの日。
儚くて美しくて消えてしまいそうで
後ろから抱きしめてずっと離したくなかった。
涙を流すぼくに君は困ったような笑顔を浮かべる。
いつも、いつもいつも、泣いているのはぼくの方だった。
初めてあった時の君とは別人のような、か細い声で君はぼくに言う。
「さよならじゃなくて、またね、にしよう。
私たち、また会えるもんね。」
君はぼくの一つ上の先輩だった。
4月14日生まれの牡羊座で、血液型はO型。
たこ焼きが好きで、甘いものがそんなに好きじゃない。
ぼくよりも男らしくて女子にモテちゃうような人気者だった。
君は誰に対しても親しげで、ぼくをよくからかった。
反抗するぼくが余計に面白いらしかった。
ぼくはいわゆる器用貧乏で、君はステータスを身体能力に全振りしたような人。
勉強が得意なぼくを君は「せんせい」と呼ぶ。
最初は嫌だったけど、慣れてくると平然と返事をしていた。
そんなぼくを君が名前で呼ぶようになったのは、少し暑さを感じるようになってきた梅雨のとある日。中2と中3のぼくたちが付き合い始めた日。
ぼくは先輩呼びをやめるのが少し照れくさかったけど、君は楽しそうに嬉しそうに何度もぼくの名前を呼んだ。やめろ、と言うぼくをみてニヤニヤしていた。
ぼくたちが付き合っていることは内緒で、君の親友であり、ぼくの同級生である1人の女子を除いてだれも知らなかった。
からかわれるのが嫌だったから、ぼくは何の不満もなかったが、君は何も言われないのも少しつまらないと言っていた。
君が卒業して、高校に行っても特に変化はなかった。週末にはこっそり会って、会いたくなったら平日でも会いに行った。
ぼくが進学校を目指すことを知ると、きみは心から応援してくれた。それから、会ったり連絡をとったりする頻度は減らしてぼくは勉学に励んだ。
ぼくは無事志望校に受かり、きみは涙を流して喜んだ。ほんとに頑張っていたから、当然なんだけど安心した、と言っていた。
しかしそれから数日後、ぼくたちは関係を終わらせる。
「私たち、進む方向がまったく違うし、依存しちゃう恋人よりも友達くらいの気楽な距離がいいと思うの。」
どうせほかに好きな人でもできたのだろう。ぼくは悔しくて、許せなくて、考えることをやめた。結局ぼくの“カタオモイ”のようなものだったのだ。
「わかった。」
ぼくはそれだけ言った。意地をはった。
このときの、たった一つのこの行動は、今もぼくを責め続ける。
絶対に間違ってはならない選択を、ここで間違った。
ここでもっと君の話をきいていれば、何かが変わったかもしれない。変えられたかもしれない。ぼくは君のことを好きだと言いながら、何もわかっていなかったのだ。
再び、ぼくが君と言葉を交わしたのは
2年後の夏の終わりが近づいてきた日。
君とぼくの最高で最悪な1年半の始まりの日。
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