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なけなしの愛で小指と誓う
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気づいたら、身体が透けていた。
すぐに病院に行った。
「月唄うれんさん、貴方は『トロイ』という奇病です」
「な、なんですかそれ……?」
お母さんが戸惑うように聞く。
「奇病は一般的には知られてません。なんていったって患者数が少ないですからね……」
「………」
「トロイは段々と身体が透けていき、最後には消えてしまいます」
「なんで……どうしてうれんが……」
「ひとつ、治す方法があります。それは誰かうれんさんを心の底から愛してあげることです」
「うれんっ………」
お母さんがすぐさま私を抱きしめる
「大丈夫だよお母さん。私、お母さんが私の事大好きなの知ってるよ」
「じゃあ!なんで治らないの!?」
「お母さん、落ち着いてください」
とりあえず、いつもどうり学校に行く。
治る方法があるんだから休む訳にはいかない。
「遼斗は……今日は委員会だっけ…」
自分の家から少し先の、遼斗の家を見上げる。
遼斗は中学2年の時から付き合っている彼氏だ。
「なんでトロイなんかになっちゃったんだろう……だって、私にはお母さんも遼斗も居るんだよ?」
遼斗はもしかしたら……。いや、悪い妄想は辞めとこう。遼斗は私をちゃんと愛していてくれてるはず。
少しして高校に着く。自分のクラス2の1の教室に入り、席に着く。
「あ!おはよううれん」
「おはようりょ……」
あれ?
「りょ……りょ…」
「どうした?大丈夫か?」
「あ……遼斗…!おはよう遼斗」
「お、おう。おはよう」
なんで名前が出てこなかったんだろう
特に問題なく過程が終わり放課後になる。
「なぁなぁうれん!この前うれんが喜びそうなカフェ見つけたんだけどこれから行かない?」
「ほんとに!?嬉しい!ありがとう遼斗!」
ピリッ
「痛っ……」
「え!?どうした!?なんか引っかかっちゃったちゃった!?」
「あ……いや、なんでもないよ!ほら、早速行こ」
少し出口に遼斗を押しながら連れていく。
さらに透けた身体に気付かないふりをしながら。
カフェについて注文を終わらせ、受け取り席に着く。
「どう!?ここのドーナツおいしい!?うれんが好きそうだと思ったんだけど……」
「すっごいおいしい!」
「そっか~良かった~!」
ナデナデ
遼斗に頭撫でられるのはあったかい気持ちになるな……
ピリッ
ジンジン
「いっ……」
痛いし力が入らない……
「大丈夫!?今日なんか心配だよ!?」
「え……うれんの身体透けていってる……?」
「っ!?」
力を振り絞りカフェを飛び出す。
「うれん!?どうしたの!?」
ごめんね………。
外に出なくなって1週間。
どんどん身体は透けていく。あの人の記憶も消えていく。
「あの人の名前は……?」
「あの人の顔は……?」
「あの人の声は……?」
「あの人との思い出は……?」
分からない。
思い出せない。
このトロイはなにかちがう気がする。愛されてるのは確かなのに、どんどん身体は透けていく。そして普通の症状には無い記憶が消えていく。
この『トロイ』はきっと、愛されるほど身体は透け、相手にまつわる記憶が消えていく……。あくまで私の予想だけど。
ふと思った。
「このまま消えてしまうなら、海を見ながら……」
昔から海が好きだった。多分、亡くなったお父さんの影響だろう。
夜中、家を抜け出して近場の海に向かった。
ザーザー
「月に照らされて綺麗……」
「………」
ザッザッ
なにか足音がする。
「うれん!」
「……?」
誰……だっけ?
あぁ、あの人か。
「話、お母さんから聞いたよ!?」
「どうして何も言ってくれなかったの!?」
「…………ごめん」
「ずっと心配してたよ」
「ありがとう」
ギュッ
「うれん……ごめんね」
「いいんだよ。ねぇ、名前は?」
「俺…俺は遼斗」
「遼斗……」
どんどん身体が透けていく。
月明かりを反射してキラキラ光っていてとても綺麗だ。
この温もり……懐かしいなぁ
「遼斗」
「なに?うれん?」
「次があったら、その時はずっと一緒にいようね。消えた記憶よりもっと幸せな記憶をつくろう?」
「もちろんだよ……グスッ」
微かな記憶の中の愛で小指を絡ませる。
なけなしの愛で小指と誓う。
「幸せに」
すぐに病院に行った。
「月唄うれんさん、貴方は『トロイ』という奇病です」
「な、なんですかそれ……?」
お母さんが戸惑うように聞く。
「奇病は一般的には知られてません。なんていったって患者数が少ないですからね……」
「………」
「トロイは段々と身体が透けていき、最後には消えてしまいます」
「なんで……どうしてうれんが……」
「ひとつ、治す方法があります。それは誰かうれんさんを心の底から愛してあげることです」
「うれんっ………」
お母さんがすぐさま私を抱きしめる
「大丈夫だよお母さん。私、お母さんが私の事大好きなの知ってるよ」
「じゃあ!なんで治らないの!?」
「お母さん、落ち着いてください」
とりあえず、いつもどうり学校に行く。
治る方法があるんだから休む訳にはいかない。
「遼斗は……今日は委員会だっけ…」
自分の家から少し先の、遼斗の家を見上げる。
遼斗は中学2年の時から付き合っている彼氏だ。
「なんでトロイなんかになっちゃったんだろう……だって、私にはお母さんも遼斗も居るんだよ?」
遼斗はもしかしたら……。いや、悪い妄想は辞めとこう。遼斗は私をちゃんと愛していてくれてるはず。
少しして高校に着く。自分のクラス2の1の教室に入り、席に着く。
「あ!おはよううれん」
「おはようりょ……」
あれ?
「りょ……りょ…」
「どうした?大丈夫か?」
「あ……遼斗…!おはよう遼斗」
「お、おう。おはよう」
なんで名前が出てこなかったんだろう
特に問題なく過程が終わり放課後になる。
「なぁなぁうれん!この前うれんが喜びそうなカフェ見つけたんだけどこれから行かない?」
「ほんとに!?嬉しい!ありがとう遼斗!」
ピリッ
「痛っ……」
「え!?どうした!?なんか引っかかっちゃったちゃった!?」
「あ……いや、なんでもないよ!ほら、早速行こ」
少し出口に遼斗を押しながら連れていく。
さらに透けた身体に気付かないふりをしながら。
カフェについて注文を終わらせ、受け取り席に着く。
「どう!?ここのドーナツおいしい!?うれんが好きそうだと思ったんだけど……」
「すっごいおいしい!」
「そっか~良かった~!」
ナデナデ
遼斗に頭撫でられるのはあったかい気持ちになるな……
ピリッ
ジンジン
「いっ……」
痛いし力が入らない……
「大丈夫!?今日なんか心配だよ!?」
「え……うれんの身体透けていってる……?」
「っ!?」
力を振り絞りカフェを飛び出す。
「うれん!?どうしたの!?」
ごめんね………。
外に出なくなって1週間。
どんどん身体は透けていく。あの人の記憶も消えていく。
「あの人の名前は……?」
「あの人の顔は……?」
「あの人の声は……?」
「あの人との思い出は……?」
分からない。
思い出せない。
このトロイはなにかちがう気がする。愛されてるのは確かなのに、どんどん身体は透けていく。そして普通の症状には無い記憶が消えていく。
この『トロイ』はきっと、愛されるほど身体は透け、相手にまつわる記憶が消えていく……。あくまで私の予想だけど。
ふと思った。
「このまま消えてしまうなら、海を見ながら……」
昔から海が好きだった。多分、亡くなったお父さんの影響だろう。
夜中、家を抜け出して近場の海に向かった。
ザーザー
「月に照らされて綺麗……」
「………」
ザッザッ
なにか足音がする。
「うれん!」
「……?」
誰……だっけ?
あぁ、あの人か。
「話、お母さんから聞いたよ!?」
「どうして何も言ってくれなかったの!?」
「…………ごめん」
「ずっと心配してたよ」
「ありがとう」
ギュッ
「うれん……ごめんね」
「いいんだよ。ねぇ、名前は?」
「俺…俺は遼斗」
「遼斗……」
どんどん身体が透けていく。
月明かりを反射してキラキラ光っていてとても綺麗だ。
この温もり……懐かしいなぁ
「遼斗」
「なに?うれん?」
「次があったら、その時はずっと一緒にいようね。消えた記憶よりもっと幸せな記憶をつくろう?」
「もちろんだよ……グスッ」
微かな記憶の中の愛で小指を絡ませる。
なけなしの愛で小指と誓う。
「幸せに」
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