5 / 5
4話
しおりを挟む
リンゼム国にも春が来る。
「モーント」
「なんでしょうか」
今はお茶の時間だ。日が暮れる夕方に紅茶を飲むのが好きなのだ。横にはいつも通り、橙色の風にサラサラな髪をなびかせながらモーントが立っていた。たった一人の大切な執事。
「さすがにもう暖かくなってきたわね。気持ちいいわ」
「わたくしもそう思います。程よい気候ですね」
モーントは微笑む。
「メミロン様、お菓子はいかがでしょうか」
「……いらないわ」
「たまには甘いものも必要ですよ」
そう言って目の前にマカロンが降り立った。
「モーントはお節介が上手ね」
「程々でございます」
マカロンは紅茶に合うからお菓子の中では1番好きだ。ほんとにお節介。
「メミロン様は夕暮れがお好きなのですか?」
「……わかってるでしょ」
「……ふふ。わたくしは存じ上げません」
「言ってないもの」
そう言って夕焼けを見つめる。いつもは眩しすぎて見ることが出来ない太陽がこの時だけは、輝きを闇に混じえ、私に寄り添った存在になるのだ。……なって欲しいだけなのだ。
「そんなにわたくしを見つめてどうされました?」
「……いいえ、あなたはあなただって言い聞かせてたのよ」
「そうでございますか」
本当は太陽は裏に回っただけで、輝きは変わらないのに。
「メミロン様、そろそろお戻りの時間でございます
」
「……わかったわ」
わざと、ドレスをなびかせてみた。
「……御手を」
「………」
闇は闇だ。しかし太陽はいつもどこかを照らし続けている。今日も然り、明日も然り。信じて進んで行くしかないのだ。
不老不死のお姫様と執事の日常
4日目
「モーント」
「なんでしょうか」
今はお茶の時間だ。日が暮れる夕方に紅茶を飲むのが好きなのだ。横にはいつも通り、橙色の風にサラサラな髪をなびかせながらモーントが立っていた。たった一人の大切な執事。
「さすがにもう暖かくなってきたわね。気持ちいいわ」
「わたくしもそう思います。程よい気候ですね」
モーントは微笑む。
「メミロン様、お菓子はいかがでしょうか」
「……いらないわ」
「たまには甘いものも必要ですよ」
そう言って目の前にマカロンが降り立った。
「モーントはお節介が上手ね」
「程々でございます」
マカロンは紅茶に合うからお菓子の中では1番好きだ。ほんとにお節介。
「メミロン様は夕暮れがお好きなのですか?」
「……わかってるでしょ」
「……ふふ。わたくしは存じ上げません」
「言ってないもの」
そう言って夕焼けを見つめる。いつもは眩しすぎて見ることが出来ない太陽がこの時だけは、輝きを闇に混じえ、私に寄り添った存在になるのだ。……なって欲しいだけなのだ。
「そんなにわたくしを見つめてどうされました?」
「……いいえ、あなたはあなただって言い聞かせてたのよ」
「そうでございますか」
本当は太陽は裏に回っただけで、輝きは変わらないのに。
「メミロン様、そろそろお戻りの時間でございます
」
「……わかったわ」
わざと、ドレスをなびかせてみた。
「……御手を」
「………」
闇は闇だ。しかし太陽はいつもどこかを照らし続けている。今日も然り、明日も然り。信じて進んで行くしかないのだ。
不老不死のお姫様と執事の日常
4日目
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
心を失った彼女は、もう婚約者を見ない
基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。
寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。
「こりゃあすごい」
解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。
「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」
王太子には思い当たる節はない。
相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。
「こりゃあ対価は大きいよ?」
金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。
「なら、その娘の心を対価にどうだい」
魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる