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THE GROUND ZERO Chapter4
第11章 終焉の一撃【3】
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「コヨミ! マジスターさん! 空っ! 空に何か飛んでる!」
声のした方に振り返ると、さっきまで僕とマジスターの会話に一切入ること無く黙っていたルーナだったが、イキナリ大声を出して、空に向かって指をさしていた。
ルーナの指先に沿って上空を見上げると、そこには大きな鉄の塊が、まるで鳶のように羽を広げて大空を飛んでいた。
「な……なんだあれ!?」
飛行船とは異なり、ガス袋も無いのにそれは空を飛んでいる。
耳を澄ましてみると、ブーンという鈍い音が微かに聞こえてきた。
「もしかしたら……あれが空軍の新しい飛行兵器かもしれん……」
「あのデッカイ鳥みたいなのが……」
空を飛行する物体は、飛行船とは比べ物にならないくらいのスピードで真っ直ぐと飛んでいる。その先にあるのは、エトワール・ロック。
どうやらあの飛行物体で爆撃を行うのだろうけれど、でも先程僕が言ったように、レジスタンスの本拠地であるユスティーツフォートはエトワール・ロックにできた谷間の中にある。あの飛行物体の性能がいくら良いからといって、上空から谷間に爆弾を落とすのはそう容易なことではない。
それにもし投下に成功したからといって、普通の爆弾であの大要塞を破壊できるだろうか……あまりに不確定要素が多すぎるような気が、僕にはした。
しばらくその飛行物体を僕達は見ていたのだが、飛行物体がエトワール・ロック上空へと到達すると、今まで無音だった無線機から再び人の声が聞こえてきた。
『こちらマグナブラ1、司令部応答せよ』
『こちら司令部』
『地上目標上空へ到達。視界良好。これより目標への爆弾投下を開始する』
『了解。シュミレーション通り、爆弾投下後は目標から即時退避するように』
『ラジャー』
そこで無線は再び途切れてしまうが、その直後、先程までエトワール・ロック上空を飛んでいた飛行物体は加速し、無線の指示通り退避を行っていた。
確かに爆弾を投下した後、上空に留まる意味が無いことは分かるが、しかしそれにしてはかなり距離を取っているように見え、飛行物体はいつの間にか、空に写る点にしか見えないほどに小さくなるまで離れていた。
そしてその直後、僕はその飛行物体が何故あそこまで大袈裟に距離を取ったのか、その意味を理解した。
「っ!?」
それは本当に、突然と起こった。
音より先に入ったのは、光。真っ白な光がエトワール・ロックを包み、そして直線状の光が真っ直ぐと、晴天を切り裂くようにして伸びる。そしてその光は拡散していき、周囲全てを飲み込んでいった。
そしてその次に音。まるで耳をつんざくような爆音が荒野を響き渡り、その音のせいなのか、地面が地震のように若干揺れているのを感じた。
その後白煙がエトワール・ロック周辺に巻き上がり、まるでそう……世界の終わりを見ているかのような、そんな気さえしてくるような光景に、僕は唖然と、ただただそれを見ていることしかできなかった。
しばらくすると白い光は消えていき、白煙も収まり始め、エトワール・ロックの全貌がうっすらと見え始めた頃。僕はそこで、更に驚愕してしまう光景を目にしてしまったのだ。
「か……欠けてる……エトワール・ロックが……半分になってる……」
そう、あの爆弾が落ちる前には、僕の視線の先には確かにエトワール・ロックという巨大な岩山のような一枚岩があった。
しかし爆弾が落ちた後、そこにあったのは綺麗に二分の一に切り取られ、まるで残飯のように残された半分の岩だけだったのだ。
あの巨大な岩の半分が、丸々あの爆弾一発で吹き飛んでしまったというのか……。
「なんだあれ……あれが本当に……爆弾なのか?」
何か対象の物を破壊するというよりかは、そこに存在する全てのものを消し去るほどの破壊力……言ってしまえばそれは、自然災害にも相当しそうなほどの人災。
あんな物を本当に人間が作り出してしまったのか……僕には甚だ理解できなかった。
「マジスター……あれは……あれは本当に人間が作ったものなのか?」
視線をマジスターに移すと、マジスターは僅かに白い煙が上り、無残に残った半分のエトワール・ロックを見ながら、青ざめた表情をしていた。
「まさか……あの爆弾をマグナブラは人に向けて落としたというのか!? ……こんなものは……正気の沙汰ではない……!」
どうやらマジスターは、その爆弾の正体がどんな物であるのか、知っているようだった。
「マジスター、あれは……あの爆弾は何なんだ!?」
「…………」
僕はマジスターに問い質すように詰め寄ると、マジスターは視線を落としながら、その重い口を開いた。
「……おそらくだが、あれは元素爆弾という爆弾だ」
「元素……爆弾?」
「ああ……普通の爆弾とは異なり、元素爆弾には火薬の他に魔石機構というものが備わっておる。中の火薬が爆発するとともに、魔石機構の中に濃縮されている魔石が特殊な反応を起こし、そこで起こった強大な魔力で爆心地一帯を全て抹消するという、マグナブラの新兵器だ……」
「つまり、魔石エネルギーが兵器として使われたってことなのか……?」
「まあそうだな。コヨミ、わしがお前にマテリアルガントレットを渡した時のことを憶えているか?」
「ああ」
「その時魔石をそのまま使ってはならんとわしは教えたよな?」
「そういえばそんなこと言ってたな……確か使ったら、使った腕が吹っ飛んだり、最悪体が消滅するって……」
「そうだ。そしてあの爆弾には、そんな魔石が数百個も濃縮されて搭載されている……」
「だからその破壊力は凄まじい……そういうことだな」
「そうだ……おそらくあそこにあったユスティーツフォートはもう、元素爆弾の魔力に飲まれ、消滅している。そしてそこにいるレジスタンスの戦士達もな……」
「まさに大量破壊兵器……いや、大量抹消兵器というわけか……」
まさかこんな兵器が、僕の居た場所で、僕の知らない内に着々と作られていたなんて……。
自分の古巣であり、そして今後敵となる相手の強大さと恐ろしさを、僕は改めて思い知ってしまった。
声のした方に振り返ると、さっきまで僕とマジスターの会話に一切入ること無く黙っていたルーナだったが、イキナリ大声を出して、空に向かって指をさしていた。
ルーナの指先に沿って上空を見上げると、そこには大きな鉄の塊が、まるで鳶のように羽を広げて大空を飛んでいた。
「な……なんだあれ!?」
飛行船とは異なり、ガス袋も無いのにそれは空を飛んでいる。
耳を澄ましてみると、ブーンという鈍い音が微かに聞こえてきた。
「もしかしたら……あれが空軍の新しい飛行兵器かもしれん……」
「あのデッカイ鳥みたいなのが……」
空を飛行する物体は、飛行船とは比べ物にならないくらいのスピードで真っ直ぐと飛んでいる。その先にあるのは、エトワール・ロック。
どうやらあの飛行物体で爆撃を行うのだろうけれど、でも先程僕が言ったように、レジスタンスの本拠地であるユスティーツフォートはエトワール・ロックにできた谷間の中にある。あの飛行物体の性能がいくら良いからといって、上空から谷間に爆弾を落とすのはそう容易なことではない。
それにもし投下に成功したからといって、普通の爆弾であの大要塞を破壊できるだろうか……あまりに不確定要素が多すぎるような気が、僕にはした。
しばらくその飛行物体を僕達は見ていたのだが、飛行物体がエトワール・ロック上空へと到達すると、今まで無音だった無線機から再び人の声が聞こえてきた。
『こちらマグナブラ1、司令部応答せよ』
『こちら司令部』
『地上目標上空へ到達。視界良好。これより目標への爆弾投下を開始する』
『了解。シュミレーション通り、爆弾投下後は目標から即時退避するように』
『ラジャー』
そこで無線は再び途切れてしまうが、その直後、先程までエトワール・ロック上空を飛んでいた飛行物体は加速し、無線の指示通り退避を行っていた。
確かに爆弾を投下した後、上空に留まる意味が無いことは分かるが、しかしそれにしてはかなり距離を取っているように見え、飛行物体はいつの間にか、空に写る点にしか見えないほどに小さくなるまで離れていた。
そしてその直後、僕はその飛行物体が何故あそこまで大袈裟に距離を取ったのか、その意味を理解した。
「っ!?」
それは本当に、突然と起こった。
音より先に入ったのは、光。真っ白な光がエトワール・ロックを包み、そして直線状の光が真っ直ぐと、晴天を切り裂くようにして伸びる。そしてその光は拡散していき、周囲全てを飲み込んでいった。
そしてその次に音。まるで耳をつんざくような爆音が荒野を響き渡り、その音のせいなのか、地面が地震のように若干揺れているのを感じた。
その後白煙がエトワール・ロック周辺に巻き上がり、まるでそう……世界の終わりを見ているかのような、そんな気さえしてくるような光景に、僕は唖然と、ただただそれを見ていることしかできなかった。
しばらくすると白い光は消えていき、白煙も収まり始め、エトワール・ロックの全貌がうっすらと見え始めた頃。僕はそこで、更に驚愕してしまう光景を目にしてしまったのだ。
「か……欠けてる……エトワール・ロックが……半分になってる……」
そう、あの爆弾が落ちる前には、僕の視線の先には確かにエトワール・ロックという巨大な岩山のような一枚岩があった。
しかし爆弾が落ちた後、そこにあったのは綺麗に二分の一に切り取られ、まるで残飯のように残された半分の岩だけだったのだ。
あの巨大な岩の半分が、丸々あの爆弾一発で吹き飛んでしまったというのか……。
「なんだあれ……あれが本当に……爆弾なのか?」
何か対象の物を破壊するというよりかは、そこに存在する全てのものを消し去るほどの破壊力……言ってしまえばそれは、自然災害にも相当しそうなほどの人災。
あんな物を本当に人間が作り出してしまったのか……僕には甚だ理解できなかった。
「マジスター……あれは……あれは本当に人間が作ったものなのか?」
視線をマジスターに移すと、マジスターは僅かに白い煙が上り、無残に残った半分のエトワール・ロックを見ながら、青ざめた表情をしていた。
「まさか……あの爆弾をマグナブラは人に向けて落としたというのか!? ……こんなものは……正気の沙汰ではない……!」
どうやらマジスターは、その爆弾の正体がどんな物であるのか、知っているようだった。
「マジスター、あれは……あの爆弾は何なんだ!?」
「…………」
僕はマジスターに問い質すように詰め寄ると、マジスターは視線を落としながら、その重い口を開いた。
「……おそらくだが、あれは元素爆弾という爆弾だ」
「元素……爆弾?」
「ああ……普通の爆弾とは異なり、元素爆弾には火薬の他に魔石機構というものが備わっておる。中の火薬が爆発するとともに、魔石機構の中に濃縮されている魔石が特殊な反応を起こし、そこで起こった強大な魔力で爆心地一帯を全て抹消するという、マグナブラの新兵器だ……」
「つまり、魔石エネルギーが兵器として使われたってことなのか……?」
「まあそうだな。コヨミ、わしがお前にマテリアルガントレットを渡した時のことを憶えているか?」
「ああ」
「その時魔石をそのまま使ってはならんとわしは教えたよな?」
「そういえばそんなこと言ってたな……確か使ったら、使った腕が吹っ飛んだり、最悪体が消滅するって……」
「そうだ。そしてあの爆弾には、そんな魔石が数百個も濃縮されて搭載されている……」
「だからその破壊力は凄まじい……そういうことだな」
「そうだ……おそらくあそこにあったユスティーツフォートはもう、元素爆弾の魔力に飲まれ、消滅している。そしてそこにいるレジスタンスの戦士達もな……」
「まさに大量破壊兵器……いや、大量抹消兵器というわけか……」
まさかこんな兵器が、僕の居た場所で、僕の知らない内に着々と作られていたなんて……。
自分の古巣であり、そして今後敵となる相手の強大さと恐ろしさを、僕は改めて思い知ってしまった。
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