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危険な兄と妹編
禮禮屋の現在
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いつもの日常が戻ってきてもまた何かしら問題が起きるのではないかと疑心暗鬼になってしまう今日この頃、何も変わったことが起きないまま月日は流れていった。
アレから何度か一人で禮禮屋を探しに行ってみたのだが、俺が禮禮屋にたどり着くことは出来なかったのだ。美桜ちゃんに誘われて一緒に行ったこともあったのだけれど、なぜか二人とも禮禮屋の近くにたどり着けることすらなかったのだ。そもそも、最寄り駅だと思っている場所が二人とも違うという時点でおかしいと思うべきなのだが、俺達にはどうしてそうなっているのかという事すら思いつけないでいたのだ。
藤次郎さんは一か月間の謹慎処分という事になったのだが、自宅ではなく神谷家にお世話になる形となっていた。それは理事長である淳二さんの提案でもあるし、何かあったとしてもジェニファーさんを中心としたメイドさんたちがどうにでも出来るという事もあったのだ。一番の理由は、自宅謹慎にしてしまうと藤次郎さんと美桜ちゃんが顔を合わせてしまうという事なのだが、お互いに変なわだかまりはないみたいなので周りが気を遣い過ぎているという事もあるようだ。
「将浩さんは藤次郎さんが近くで暮らしているというのに恐怖とか感じたりしないんですか?」
「そうだね。俺はあまりそう言ったものは感じないかも。綾乃は大丈夫なの?」
「私も大丈夫ですよ。直接何かされたわけでもないですし、今回はあまり私が関わることも出来なかったですからね」
「確かに、綾乃がジェニファーさんと一緒に禮禮屋に行くように言ってくれなかったら藤次郎さんじゃなくて美桜ちゃんがああなってたかもしれないって事だもんね」
「それはどうでしょうね。でも、昌晃さんが刺されていたという可能性もあったんですよね。ジェニファーの話では、昌晃さんは女性の攻撃を見きることが出来ないみたいですし、やってきたのが藤次郎さんではなく美桜さんだったらもっと悲惨な結果になってたかもしれないですよ。他の世界でもそれが理由で昌晃さんが愛華さんに殺されたこともあったって言ってましたからね」
「飛鳥君の事もあるから他の世界の事は信じてるけどさ、昌晃君を愛華さんが殺したことがあるってのは信じたくないかもな」
「その逆もあったみたいですけどね」
「そっちはもっと信じたくないかも」
昌晃君と愛華さんはお互いに一番仲が良いように見えるのだけれど、ある時は物凄く二人の間に壁を感じていたのだ。そう思った理由の一つが違う世界の話とは言え、お互いに殺し合ったことがあったからだと思うと、何となく納得出来るような気がしていた。
このクラスの男子で俺だけが他の世界に行ったことが無いので悲しい気持ちになっていたのだが、普通に考えると他の世界に行ったことがある方が異常なのだ。大体、どうやったらそういう体験が出来るのだろう思ったのだが、俺達が神谷家にお世話になっているこの状況もかなり特殊であるとは言えるのだろうな。
「他の人達が異世界に行ってるのは羨ましいなって思う事もあるんだけどさ、それよりも俺が今神谷家にお世話になっている事の方が凄いんじゃないかなって思えてるんだよね」
「何ですかそれは。でも、その考え方って面白いですね。どっちが良いのかはその人によるかもしれないですけど、将浩さんの場合は私の家にこれて良かったって事なんですね。なかなか面白い発想だと思います」
「他の世界がどんなところか気にはなるけどさ、無事に生き残れるとは思えないからね。フランソワーズさんやジェニファーさんがいれば何とかなるかもしれないけど、そう言うわけにはいかないだろうからな」
「その二人なら戦いに巻き込まれても何とかなるでしょうけれど、生き残ることを考えるのでしたらエイリアスが一番適任だと思いますよ。彼女は安全な場所を見付けてくれますし、食料なんかも確保してくれますからね。サバイバルという意味では一番異世界に連れて行くのにふさわしい人材だと思いますよ」
「エイリアスさんってあんまり目立たない人だと思ってたけど、そういう一面もあるんだ。ちょっと意外かも。選べる機会があればそうしてみようかな」
「誰を選んだとしても将浩さんが酷い目に遭うことは無いと思いますけどね。万が一そう言うことになったとしても、うちのメイドを選んでいただければ大丈夫ですよ」
「仮にだけどさ、そういう時に綾乃を選んだとしたらどうなるのかな?」
「私ですか。私は何の役にも立てないと思いますよ。残念ですけど、私は他の人の助けがないと何も出来ないんです。だから、そういう時には私は選ばない方がいいと思いますよ。璃々さんを選ぶのもいいかもしれないですね。璃々さんは頭も良いしどんなところでも適応できそうな気がしますよね」
綾乃はどうしても自分を選んでもらいたくないようなのだ。実際に俺が異世界に行ったとして、誰をパートナーに選ぶかというと難しい選択になってしまうだろう。誰を選んでも失敗しないような気もするのだが、誰を選んだとしても後悔をしてしまいそうな気もするのだ。
「異世界と言えば、禮禮屋が他の世界と繋がってるって話なんだけど、俺も禮禮屋に行けば他の世界に行けたりするのかな?」
「禮禮屋が他の世界と繋がっているというのは本当みたいですけど、私達はそこを使って異世界に行くのは無理っぽいらしいですよ。お父様も色々試したみたいなんですけど、禮禮屋の主人以外は異世界に通じる門を通っても意味がないみたいそうです」
「禮禮屋には異世界に通じる門があるんだ。それを通ってあの店の主人が他の世界から仕入れてるって事なんだろうけど、なんで淳二さんがその門の事を知っているの?」
「なんでと言われましても、お父様が買った店ですから試してみたようですよ。今度お父様にお願いして行ってみましょうか?」
禮禮屋にある門を通っても俺は他の世界に行けないと思うのだが、何となく違う世界に行ってしまうのではないかという気がしていたのだ。うまく言えないのだが、俺はその門を通って別の世界に行けると信じているのだ。
「ちょっと気になるけどさ、俺は戻ってこれなくなってしまうような気がするんだよね。そうなったら大変だから遠慮しておこうかな」
「何ですかそれ、将浩さんって変なところに自信持ってますよね。でも、心配はいらないと思いますよ。だから、安心して見に行ってみましょうよ。道案内ならエイリアスに頼めば大丈夫ですからね」
俺は何となく嫌な予感がしていたのだが、楽しそうに計画を立てている綾乃の期待を裏切るわけにはいかないと思っている。綾乃の言う通り何も起きないと思うのだが、万が一という事もあるのだ。
それに、道案内をしてくれるのがジェニファーさんではなくエイリアスさんだという事も少し気になるところであった。
アレから何度か一人で禮禮屋を探しに行ってみたのだが、俺が禮禮屋にたどり着くことは出来なかったのだ。美桜ちゃんに誘われて一緒に行ったこともあったのだけれど、なぜか二人とも禮禮屋の近くにたどり着けることすらなかったのだ。そもそも、最寄り駅だと思っている場所が二人とも違うという時点でおかしいと思うべきなのだが、俺達にはどうしてそうなっているのかという事すら思いつけないでいたのだ。
藤次郎さんは一か月間の謹慎処分という事になったのだが、自宅ではなく神谷家にお世話になる形となっていた。それは理事長である淳二さんの提案でもあるし、何かあったとしてもジェニファーさんを中心としたメイドさんたちがどうにでも出来るという事もあったのだ。一番の理由は、自宅謹慎にしてしまうと藤次郎さんと美桜ちゃんが顔を合わせてしまうという事なのだが、お互いに変なわだかまりはないみたいなので周りが気を遣い過ぎているという事もあるようだ。
「将浩さんは藤次郎さんが近くで暮らしているというのに恐怖とか感じたりしないんですか?」
「そうだね。俺はあまりそう言ったものは感じないかも。綾乃は大丈夫なの?」
「私も大丈夫ですよ。直接何かされたわけでもないですし、今回はあまり私が関わることも出来なかったですからね」
「確かに、綾乃がジェニファーさんと一緒に禮禮屋に行くように言ってくれなかったら藤次郎さんじゃなくて美桜ちゃんがああなってたかもしれないって事だもんね」
「それはどうでしょうね。でも、昌晃さんが刺されていたという可能性もあったんですよね。ジェニファーの話では、昌晃さんは女性の攻撃を見きることが出来ないみたいですし、やってきたのが藤次郎さんではなく美桜さんだったらもっと悲惨な結果になってたかもしれないですよ。他の世界でもそれが理由で昌晃さんが愛華さんに殺されたこともあったって言ってましたからね」
「飛鳥君の事もあるから他の世界の事は信じてるけどさ、昌晃君を愛華さんが殺したことがあるってのは信じたくないかもな」
「その逆もあったみたいですけどね」
「そっちはもっと信じたくないかも」
昌晃君と愛華さんはお互いに一番仲が良いように見えるのだけれど、ある時は物凄く二人の間に壁を感じていたのだ。そう思った理由の一つが違う世界の話とは言え、お互いに殺し合ったことがあったからだと思うと、何となく納得出来るような気がしていた。
このクラスの男子で俺だけが他の世界に行ったことが無いので悲しい気持ちになっていたのだが、普通に考えると他の世界に行ったことがある方が異常なのだ。大体、どうやったらそういう体験が出来るのだろう思ったのだが、俺達が神谷家にお世話になっているこの状況もかなり特殊であるとは言えるのだろうな。
「他の人達が異世界に行ってるのは羨ましいなって思う事もあるんだけどさ、それよりも俺が今神谷家にお世話になっている事の方が凄いんじゃないかなって思えてるんだよね」
「何ですかそれは。でも、その考え方って面白いですね。どっちが良いのかはその人によるかもしれないですけど、将浩さんの場合は私の家にこれて良かったって事なんですね。なかなか面白い発想だと思います」
「他の世界がどんなところか気にはなるけどさ、無事に生き残れるとは思えないからね。フランソワーズさんやジェニファーさんがいれば何とかなるかもしれないけど、そう言うわけにはいかないだろうからな」
「その二人なら戦いに巻き込まれても何とかなるでしょうけれど、生き残ることを考えるのでしたらエイリアスが一番適任だと思いますよ。彼女は安全な場所を見付けてくれますし、食料なんかも確保してくれますからね。サバイバルという意味では一番異世界に連れて行くのにふさわしい人材だと思いますよ」
「エイリアスさんってあんまり目立たない人だと思ってたけど、そういう一面もあるんだ。ちょっと意外かも。選べる機会があればそうしてみようかな」
「誰を選んだとしても将浩さんが酷い目に遭うことは無いと思いますけどね。万が一そう言うことになったとしても、うちのメイドを選んでいただければ大丈夫ですよ」
「仮にだけどさ、そういう時に綾乃を選んだとしたらどうなるのかな?」
「私ですか。私は何の役にも立てないと思いますよ。残念ですけど、私は他の人の助けがないと何も出来ないんです。だから、そういう時には私は選ばない方がいいと思いますよ。璃々さんを選ぶのもいいかもしれないですね。璃々さんは頭も良いしどんなところでも適応できそうな気がしますよね」
綾乃はどうしても自分を選んでもらいたくないようなのだ。実際に俺が異世界に行ったとして、誰をパートナーに選ぶかというと難しい選択になってしまうだろう。誰を選んでも失敗しないような気もするのだが、誰を選んだとしても後悔をしてしまいそうな気もするのだ。
「異世界と言えば、禮禮屋が他の世界と繋がってるって話なんだけど、俺も禮禮屋に行けば他の世界に行けたりするのかな?」
「禮禮屋が他の世界と繋がっているというのは本当みたいですけど、私達はそこを使って異世界に行くのは無理っぽいらしいですよ。お父様も色々試したみたいなんですけど、禮禮屋の主人以外は異世界に通じる門を通っても意味がないみたいそうです」
「禮禮屋には異世界に通じる門があるんだ。それを通ってあの店の主人が他の世界から仕入れてるって事なんだろうけど、なんで淳二さんがその門の事を知っているの?」
「なんでと言われましても、お父様が買った店ですから試してみたようですよ。今度お父様にお願いして行ってみましょうか?」
禮禮屋にある門を通っても俺は他の世界に行けないと思うのだが、何となく違う世界に行ってしまうのではないかという気がしていたのだ。うまく言えないのだが、俺はその門を通って別の世界に行けると信じているのだ。
「ちょっと気になるけどさ、俺は戻ってこれなくなってしまうような気がするんだよね。そうなったら大変だから遠慮しておこうかな」
「何ですかそれ、将浩さんって変なところに自信持ってますよね。でも、心配はいらないと思いますよ。だから、安心して見に行ってみましょうよ。道案内ならエイリアスに頼めば大丈夫ですからね」
俺は何となく嫌な予感がしていたのだが、楽しそうに計画を立てている綾乃の期待を裏切るわけにはいかないと思っている。綾乃の言う通り何も起きないと思うのだが、万が一という事もあるのだ。
それに、道案内をしてくれるのがジェニファーさんではなくエイリアスさんだという事も少し気になるところであった。
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