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危険な兄と妹編
兄妹愛
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「バカ兄貴。なんで昌晃先輩を殺そうとしてるんだよ」
「美桜、なんでここに居るんだ。お前は隔離されてるはずだろ」
「隔離って、禮禮屋の人が助けてくれたんだよ。それで、兄貴が昌晃先輩を殺そうとしてるって教えてくれたんだ。私はそんなの嘘だって思ってたんだけど、本当に殺そうとしているんだね。信じられないよ」
「何を言ってるんだ。禮禮屋の竜胆さんが助けたって言うのか。そんなはずは無いだろ。竜胆さんはお前が良くないものに憑りつかれているって教えてくれたんだぞ。そんな人がお前の状況を知って助けるわけないだろ」
「そんなの知らないよ。名前は知らないけど、あのおじさんは私にこの短刀をくれたんだからね。兄貴もその刀を貰ったみたいだけどさ、それで昌晃先輩を殺そうとするなて許せないからな」
「ちょっと待て、お前は今おじさんって言ったのか?」
「そうだよ。私がお兄さんと一緒に禮禮屋に行った時に短刀をくれたおじさんが助けてくれたんだよ。兄貴が私を縛って動けないようにしてたのも助けてくれたし、パパもママも一緒に逃がしてくれたからね。私が兄貴をその呪縛から解放してやるよ」
「何言ってるんだ。呪われているのはお前なんだぞ美桜。それに、父さんと母さんはお前を守るために仕事も休んでくれてるっていうのに、一体どういう事なんだ?」
「自分の行いを正当化するなよ。兄貴がやってることは何もかも間違ってるんだよ。自分だけが正しいって思いこんでるだけなんだよ」
突然現れた美桜ちゃんはところどころ血が滲んだ制服を着ていた。その血が美桜ちゃんのものなのか他の誰かのモノなのかわからなかったが、見える範囲に傷が無かったので美桜ちゃんの血ではないのだろうと想像が出来た。
美桜ちゃんは魔剣亞燕を両手でしっかりと持って胸の前でかまえ、今にも藤次郎さんを刺そうとしているようだった。その藤次郎さんは美桜ちゃんの動きは警戒しつつも昌晃君の方を向いていたのだ。ターゲットにされている昌晃君は藤次郎さんの隙を伺っていると思うのだが、藤次郎さんに昌晃君が付け入るような隙はいまだに見つけられないようであった。
「美桜ちゃんって藤次郎さんの事を悪く言ってるみたいですけど、美桜ちゃんの言ってることって正しいんですかね?」
「どうでしょうね。私は禮禮屋の主人である竜胆さんからしか話を聞いていないのでわかりませんが、美桜さんを助けたという禮禮屋のおじさんというのが何者なのか気になりますね。もしかしたら、竜胆さんが話していた美桜さんに魔剣亞燕を渡した人なのかもしれませんね」
「たぶんそうだと思いますよ。俺はそのおじさんも竜胆さんも両方見てるんですけど、竜胆さんの話を聞くまでも無くあのおじさんは怪しかったと思います。俺の事を全く相手にしてくれなかったという事もあるんですけど、何となく人間じゃない人を騙す妖怪の類なんじゃないかなって思ったんです」
「ちなみになんですけど、竜胆さんからもそんな印象は受けましたか?」
「いえ、竜胆さんからはそう言った感じは受けませんでした。ちょっと近寄りがたいなとは思いましたけど、遠くから見ても綺麗な人だなと思ってましたよ。見てるだけでどうにかしようとは思いませんでしたけど」
「それが良いですよ。竜胆さんはたぶん、私達メイドが三人がかりで襲っても勝てるかわからないですからね。三人で闇討ちをしても返り討ちに遭ってしまうと思いますよ。でも、将浩さんだったら案外勝てるかもしれないですね。こういうのって、基礎が出来ていないフィジカルの強い人の方が通用したりするんですよ。ある程度経験があれば動きも読みやすいですけど、そういうのが無い人は動きが全く読めないですからね。ですが、練習をしていない分攻撃パターンも少なくなってしまうと思うので、結局のところ短期間で結果を出せなければ負けてしまうと思うんですよね。どうです、一回試しに竜胆さんを襲ってみませんか?」
「無理ですよ。それに、俺は女性には手をあげないって決めてるんで」
「女性に手をあげないってわりには叩いたりしてたような気がするんですけど、アレって私の気のせいですかね?」
俺はその質問を無視してしまったのだが、無視したことによってそれが事実だと思い込む人が出ることに後から気付いたのだ。その場ですぐに誤魔化しておけば問題も起きなかったのだろう。しかし、俺がジェニファーさんの質問を無視したことによってじぇにらーさんの言っている冗談が真実味を帯びてしまっていた。もしかしたら、俺の記憶にないだけで手をあげていたことがあったのかもしれない。璃々の事はふざけて叩くこともあるのだが、ジェニファーさんはそれのことを言っていたのだろうか。そうだとしたら、相当意地が悪いと思ってしまった。
「バカ兄貴が昌晃先輩を殺そうとするんだったら、私は愛華先輩を殺しちゃうよ。それでも良いって事だよね?」
「いいわけないだろ。愛華さんは何も関係ないんだ。だから、そんな事をしようとしたらいくら妹でも俺は許さないからな」
「それはこっちのセリフだよ。私の昌晃先輩を殺そうとするなんてさ、いくら兄貴でも見過ごすことは出来ないよね。それに、兄貴が昌晃先輩を殺したって兄貴が愛華先輩の近くに入れるって事ではないんだからね。兄貴がいれる場所なんて家くらいしかないんだよ」
「そうかもしれないが、それでも俺は邪魔な昌晃を斬る。それが一番正しい道なんだよ」
人を殺すことに関して正しいことなんてないと思うのだが、藤次郎さんは本気でそう思っているようだ。それとは対照的に美桜ちゃんは愛華さんを殺そうとはしているようなのだが、その言葉と行動からはそれが本気なのかわからない。むしろ、藤次郎さんを止めるためのブラフにも聞こえていたのだ。
「そもそも、兄貴は誰かと一緒に何かをするのは無理なんだよ。同級生の人達とも仲良く出来ないって言ってたし、兄貴に恋愛は早すぎる」
「そんな事ないぞ。今の俺は友達も増えているぞ。お前みたいなバカにはわからないかもしれないが、俺はこの妖刀卑怨に出会ってから人生ががらりと変わった気がしてるんだ。今まではただの一人ものだったのだが、今では自分が孤高の一匹狼だと思えてるくらいだからな」
「その例えは厳しいよ。実際にそうだとしてもさ、それを自分で言うなんて終わってるよ。逆に兄貴らしいと言えば兄貴らしいけどさ、そういうのは妄想の中だけにしときなって」
「妄想なんかじゃないんだな。確実にこの妖刀のお陰なんだ。美桜、俺の邪魔なんかせずに黙って後ろで見てろよ」
藤次郎さんは妖刀卑怨の剣先を美桜ちゃんに向けたのだ。その隙をついて昌晃君は藤次郎さんの足にタックルを決めたのだが、藤次郎さんは微動だにしなかった。何か力を入れている感じも無かったのだが、藤次郎さんは昌晃君の両足タックルを受けても平然と立っていたのだ。
「先に殺して欲しいなら殺してやるけどさ、今は大人しくしとこうな」
藤次郎さんは昌晃君を後ろ脚で蹴り飛ばすと、再び剣先を美桜ちゃんに向けて軽くに三度小さく素振りをしていた。対する美桜ちゃんは相変わらず短刀を胸の前に出していつでも飛び掛かれる準備をしているようなのだが、お互いに距離を詰めて襲い掛かると言った感じではなかった。
「どうしてどっちも動かないんだろう?」
「それはですね、どちらが先に動いても無傷では済まないとわかっているからだと思いますよ。藤次郎さんの方が間合いが広いので有利に見えますが、美桜さんは最短距離で真っすぐに突くことが出来るので先手は撮れると思うのです。ここで重要なのが、どちらも最初の一撃がちゃんと致命傷になりえるのかという事になるのです。美桜さんは一度のチャンスにかけるのだと思いますが、藤次郎さん的には二度三度チャンスは巡ってくると思っているはずです。そもそも、藤次郎さんは一撃で決めてやろうなんて思ってなさそうですけどね」
藤次郎さんと美桜ちゃんのにらみ合いはしばらく続いていた。昌晃君は何度か美桜ちゃんを助けようとしていたみたいなのだが、昌晃君が動こうとするたびに美桜ちゃんは動かずにじっとしていろと注意していたのだ。その注意も最初に比べればだんだんと命令からお願いへと変わっているように思た。
「美桜、なんでここに居るんだ。お前は隔離されてるはずだろ」
「隔離って、禮禮屋の人が助けてくれたんだよ。それで、兄貴が昌晃先輩を殺そうとしてるって教えてくれたんだ。私はそんなの嘘だって思ってたんだけど、本当に殺そうとしているんだね。信じられないよ」
「何を言ってるんだ。禮禮屋の竜胆さんが助けたって言うのか。そんなはずは無いだろ。竜胆さんはお前が良くないものに憑りつかれているって教えてくれたんだぞ。そんな人がお前の状況を知って助けるわけないだろ」
「そんなの知らないよ。名前は知らないけど、あのおじさんは私にこの短刀をくれたんだからね。兄貴もその刀を貰ったみたいだけどさ、それで昌晃先輩を殺そうとするなて許せないからな」
「ちょっと待て、お前は今おじさんって言ったのか?」
「そうだよ。私がお兄さんと一緒に禮禮屋に行った時に短刀をくれたおじさんが助けてくれたんだよ。兄貴が私を縛って動けないようにしてたのも助けてくれたし、パパもママも一緒に逃がしてくれたからね。私が兄貴をその呪縛から解放してやるよ」
「何言ってるんだ。呪われているのはお前なんだぞ美桜。それに、父さんと母さんはお前を守るために仕事も休んでくれてるっていうのに、一体どういう事なんだ?」
「自分の行いを正当化するなよ。兄貴がやってることは何もかも間違ってるんだよ。自分だけが正しいって思いこんでるだけなんだよ」
突然現れた美桜ちゃんはところどころ血が滲んだ制服を着ていた。その血が美桜ちゃんのものなのか他の誰かのモノなのかわからなかったが、見える範囲に傷が無かったので美桜ちゃんの血ではないのだろうと想像が出来た。
美桜ちゃんは魔剣亞燕を両手でしっかりと持って胸の前でかまえ、今にも藤次郎さんを刺そうとしているようだった。その藤次郎さんは美桜ちゃんの動きは警戒しつつも昌晃君の方を向いていたのだ。ターゲットにされている昌晃君は藤次郎さんの隙を伺っていると思うのだが、藤次郎さんに昌晃君が付け入るような隙はいまだに見つけられないようであった。
「美桜ちゃんって藤次郎さんの事を悪く言ってるみたいですけど、美桜ちゃんの言ってることって正しいんですかね?」
「どうでしょうね。私は禮禮屋の主人である竜胆さんからしか話を聞いていないのでわかりませんが、美桜さんを助けたという禮禮屋のおじさんというのが何者なのか気になりますね。もしかしたら、竜胆さんが話していた美桜さんに魔剣亞燕を渡した人なのかもしれませんね」
「たぶんそうだと思いますよ。俺はそのおじさんも竜胆さんも両方見てるんですけど、竜胆さんの話を聞くまでも無くあのおじさんは怪しかったと思います。俺の事を全く相手にしてくれなかったという事もあるんですけど、何となく人間じゃない人を騙す妖怪の類なんじゃないかなって思ったんです」
「ちなみになんですけど、竜胆さんからもそんな印象は受けましたか?」
「いえ、竜胆さんからはそう言った感じは受けませんでした。ちょっと近寄りがたいなとは思いましたけど、遠くから見ても綺麗な人だなと思ってましたよ。見てるだけでどうにかしようとは思いませんでしたけど」
「それが良いですよ。竜胆さんはたぶん、私達メイドが三人がかりで襲っても勝てるかわからないですからね。三人で闇討ちをしても返り討ちに遭ってしまうと思いますよ。でも、将浩さんだったら案外勝てるかもしれないですね。こういうのって、基礎が出来ていないフィジカルの強い人の方が通用したりするんですよ。ある程度経験があれば動きも読みやすいですけど、そういうのが無い人は動きが全く読めないですからね。ですが、練習をしていない分攻撃パターンも少なくなってしまうと思うので、結局のところ短期間で結果を出せなければ負けてしまうと思うんですよね。どうです、一回試しに竜胆さんを襲ってみませんか?」
「無理ですよ。それに、俺は女性には手をあげないって決めてるんで」
「女性に手をあげないってわりには叩いたりしてたような気がするんですけど、アレって私の気のせいですかね?」
俺はその質問を無視してしまったのだが、無視したことによってそれが事実だと思い込む人が出ることに後から気付いたのだ。その場ですぐに誤魔化しておけば問題も起きなかったのだろう。しかし、俺がジェニファーさんの質問を無視したことによってじぇにらーさんの言っている冗談が真実味を帯びてしまっていた。もしかしたら、俺の記憶にないだけで手をあげていたことがあったのかもしれない。璃々の事はふざけて叩くこともあるのだが、ジェニファーさんはそれのことを言っていたのだろうか。そうだとしたら、相当意地が悪いと思ってしまった。
「バカ兄貴が昌晃先輩を殺そうとするんだったら、私は愛華先輩を殺しちゃうよ。それでも良いって事だよね?」
「いいわけないだろ。愛華さんは何も関係ないんだ。だから、そんな事をしようとしたらいくら妹でも俺は許さないからな」
「それはこっちのセリフだよ。私の昌晃先輩を殺そうとするなんてさ、いくら兄貴でも見過ごすことは出来ないよね。それに、兄貴が昌晃先輩を殺したって兄貴が愛華先輩の近くに入れるって事ではないんだからね。兄貴がいれる場所なんて家くらいしかないんだよ」
「そうかもしれないが、それでも俺は邪魔な昌晃を斬る。それが一番正しい道なんだよ」
人を殺すことに関して正しいことなんてないと思うのだが、藤次郎さんは本気でそう思っているようだ。それとは対照的に美桜ちゃんは愛華さんを殺そうとはしているようなのだが、その言葉と行動からはそれが本気なのかわからない。むしろ、藤次郎さんを止めるためのブラフにも聞こえていたのだ。
「そもそも、兄貴は誰かと一緒に何かをするのは無理なんだよ。同級生の人達とも仲良く出来ないって言ってたし、兄貴に恋愛は早すぎる」
「そんな事ないぞ。今の俺は友達も増えているぞ。お前みたいなバカにはわからないかもしれないが、俺はこの妖刀卑怨に出会ってから人生ががらりと変わった気がしてるんだ。今まではただの一人ものだったのだが、今では自分が孤高の一匹狼だと思えてるくらいだからな」
「その例えは厳しいよ。実際にそうだとしてもさ、それを自分で言うなんて終わってるよ。逆に兄貴らしいと言えば兄貴らしいけどさ、そういうのは妄想の中だけにしときなって」
「妄想なんかじゃないんだな。確実にこの妖刀のお陰なんだ。美桜、俺の邪魔なんかせずに黙って後ろで見てろよ」
藤次郎さんは妖刀卑怨の剣先を美桜ちゃんに向けたのだ。その隙をついて昌晃君は藤次郎さんの足にタックルを決めたのだが、藤次郎さんは微動だにしなかった。何か力を入れている感じも無かったのだが、藤次郎さんは昌晃君の両足タックルを受けても平然と立っていたのだ。
「先に殺して欲しいなら殺してやるけどさ、今は大人しくしとこうな」
藤次郎さんは昌晃君を後ろ脚で蹴り飛ばすと、再び剣先を美桜ちゃんに向けて軽くに三度小さく素振りをしていた。対する美桜ちゃんは相変わらず短刀を胸の前に出していつでも飛び掛かれる準備をしているようなのだが、お互いに距離を詰めて襲い掛かると言った感じではなかった。
「どうしてどっちも動かないんだろう?」
「それはですね、どちらが先に動いても無傷では済まないとわかっているからだと思いますよ。藤次郎さんの方が間合いが広いので有利に見えますが、美桜さんは最短距離で真っすぐに突くことが出来るので先手は撮れると思うのです。ここで重要なのが、どちらも最初の一撃がちゃんと致命傷になりえるのかという事になるのです。美桜さんは一度のチャンスにかけるのだと思いますが、藤次郎さん的には二度三度チャンスは巡ってくると思っているはずです。そもそも、藤次郎さんは一撃で決めてやろうなんて思ってなさそうですけどね」
藤次郎さんと美桜ちゃんのにらみ合いはしばらく続いていた。昌晃君は何度か美桜ちゃんを助けようとしていたみたいなのだが、昌晃君が動こうとするたびに美桜ちゃんは動かずにじっとしていろと注意していたのだ。その注意も最初に比べればだんだんと命令からお願いへと変わっているように思た。
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