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親愛なる隣人の章
クラスの女子と変わり者
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十二人しかいない教室なのに机が他のクラスと同じだけ用意されているのだが、空いている席ならばどこでも座っていいと言われてしまった。何も知らないこの状況で明らかにカップルと言った二組の近くに座るのは気が引けるし、初めて会った女子の近くに座るというのもどうかと思う。一人だけ離れて座っている男子は俺が教室に入って来てからも何かをブツブツと言っていて近寄りづらい。
「空いている席はいっぱいあるから好きなところに座っていいよ。その席が違うなって思ったら休み時間に自由に移動しても良いからね。だから、早く席を決めて座っちゃおうか。将浩君の席が決まらなかったらただでさえ短いみんなの休み時間が短くなっちゃうよ」
教卓の前の席に座っている綾乃さんの隣に座るべきかとも思っていたのだけれど、俺は誰も座っていない窓側の前から三列目の席に座ることにした。周りには誰もいないだけで教室中の視線を独占しているという自覚はあった。
「じゃあ、席も無事決まったという事で先生からの連絡は以上です。みんな神山君に色々と教えてあげてね」
相内先生が教室を出て行くと綾乃さんの後ろの席に座っていたフランソワーズさんが僕の席の前に立っていた。それだけではない、僕が移動できないように左右もジェニファーさんとエイリアスさんに塞がれていたのだ。
「綾乃お嬢様は隣に将浩さんが座ってくれると思って待ってたんですよ。なんでその思いを汲み取って大人しく綾乃お嬢様の隣に座らないのですか?」
「なんでって言われてもね。俺はそんなの知らないから」
「まあ、知らなかったという事でそれは良しとしましょう。でも、今はもう知ってしまったんですから綾乃お嬢様の隣に座ってくださいね。このクラスは授業中じゃあなければいつでも席を移動して良いって決まりがあるってもんですからね」
俺は三人のメイドさんの圧に屈してしまい綾乃さんの隣に座ることになったのだが、右と左のどちらに座るかが決められずにいた。どっちでも大差はないように思えるのだが、少しでも外が近い方が良いのか入口に近い方を選ぶべきなのか大いに悩んでしまっていた。
悩んだ末に俺は窓側に近い方の席に座ったのだが、こっちが何か不都合な事でもあれば次の休み時間に移動すればいいだけの話だと授業中に気が付いたのだ。そして、それと同時にこの席も案外悪いものではないという事にも気付かされたのだった。
「神山君ってさ、神谷さんと仲が良いみたいだけど、婚約者か何かなのかな?」
「え、婚約者ではないけど」
「そうなんだ。私達はてっきりそうなんじゃないかなって思ってたんだよね。神谷さんの車から出てきたのを見た時はそうだと思ったんだけどな。ちょっと残念かも」
俺に話しかけてきたのは三人組の女子の一人なのだが、名前は沙緒莉さんだったと思う。他の二人も何やら俺に質問をしようとしているようなのだが、この沙緒莉さんが二人を遮って俺に一方的に質問をぶつけてきた。答えられることは素直に答えていたのだけれど、俺が全く予想もしてなかった質問に対して俺は答えに詰まってしまったのだ。
「私たち三人の仲だったら誰と付き合いたいって思うかな?」
「誰とって言われてもね。今日初めて会ったばかりの人にそんな質問をされても答えようが無いと思うんだけど」
「まあまあそう言わずにさ、直感で良いし、何だったら見た目で決めても良いよ。ほらほら、二人も気にしてるんだから答えちゃいなよ」
「ちょっと沙緒莉、そんな事聞くのやめなよ。神山君も困ってるじゃない」
「そうだよ。私達は別にそんな事気にしてないし」
沙緒莉さんの友達に陽香さんと真弓さんは何とか沙緒莉さんを止めようとしているのだが、沙緒莉さんは二人の声なんか届いていないようなそぶりを見せて俺に何度も同じ質問を繰り返してた。素直に答えようにもこれと言って誰にしようという決め手がなかった俺は無言を貫き通していたのだが、困っている俺を助けようと救いの手を差し伸べてくれた男子がいた。
「そんなに悩むことも無いと思うのだが、困っている貴様のために吾輩が一肌脱いでやろう」
俺も沙緒莉さん達も突然話しかけてきた子の男の存在に戸惑っていたのだが、俺以上に女子たちは突然の事に驚きを隠せないでいたようだ。
「そうだな。貴様はこの三人の誰も選ばないのが一番だろう。今ここで軽い気持ちで選択する事は後々貴様にとって様々な制約が生まれてしまう予感がする。だが、安心してくれ。吾輩はそんな貴様を救ってやる手段があるのだ。一つだけ確認しておきたいのだが、貴様は男子よりも女子の方が好きでいいんだよな?」
「もちろん。俺は女子の方が好きだ。でも、その好きが本当に愛情からくるものなのかは自分でもわかっていない。それだとしても、俺は女子が好きだ。と、思う」
自信をもって言えばよかったのだろうが、俺はなんとなくこの三人にすべてをさらけ出すのが怖かったんだと思う。見えないプレッシャーが俺に突き刺さるような感覚があったのだが、俺はそのプレッシャーをどうにかするような技術は持ち合わせていなかった。
「飛鳥君のいう事なんて聞いちゃダメだよ。この人は自分が前世で世界を支配してたって思いこんでるだけなんだからね」
「そうだよ。それも、捕まえた女子に対してエッチな拷問をしている想像をしてるんだからね。関わっちゃダメだよ」
「私達もそう言う風に思われているのかと思うとぞっとするんですけど」
俺に向けられていた興味という名の刃はいったん向きを変え、今は飛鳥君に狙いを定めたようだ。他の男子二人はそれぞれの隣に座っている女子と楽しそうに会話をしていたのだが、この飛鳥君は見た限りでは特定の女子と深い付き合いをしているようには見えなかった。それ以前に、この女子たちからも綾乃さん達からも直接関わらないようにしている風にしか見えなくなってしまったのだ。
「これだけは断言しておく。貴様は近い将来何か不幸な出来事に遭遇するだろう」
「不幸な出来事っていったい何なんだ?」
「吾輩にもそれは漠然としか思い浮かばん。ただ、その時はもう間もなくやってくると思う。その時は素直に不幸を受け入れるのではなく何か前向きになれるような事を考えるといいだろう。これは貴様にしか出来ない事であって、吾輩たちもその時ばかりはただの傍観者となっているであろう」
ちょうどいいタイミングで予鈴が鳴り出したのだ。俺も三人組の女子も慌てて時計を見てみたのだが、三人の落ち着きようからはこれからやってくる先生はそこまで厳しい先生ではないようだ。
「飛鳥君の言ってることは本当に気にしなくていいからね。私達も入学式の日に似たようなこと言われてたからね」
「そうだったね。私も不幸になるから気を付けろって言われたんだけどさ」
「綾乃さんも仲間に入れて四択にしてみたらこんなに戸惑わなかったかもね」
正直に言って、この三人の中に綾乃さんを入れて四択問題にされたところで俺にはその質問に答えることなんて出来ないのだ。親の問題が子供に関係あるのかと聞かれると即答は出来ないのだが、俺の父親と綾乃さんの父親の関係性もあって素直に綾乃さんが一番だと認めることなんて出来なかった。
「その四択でも俺は答えが出せないかも。綾乃さんの事はみんなよりも知って入ると思うけどね。でも、それだって大した差ではないと思うんだよ。だから、綾乃さんを入れたところで俺には選びようが無いって事だね」
「ふーん、それなら一学期が終わるくらいにまた同じ事聞くね。その時は誰か選んでね」
自分の席へ戻っていった三人組は背中越しにでもわかるくらいに俺の事を見ていた。何故か振り返った時に飛鳥君と目が合ったのだが、俺は気のせいだという事にしてすぐに目を逸らした。
そんな俺の様子を見ていた綾乃さんは声を押し殺して笑っていた。
「空いている席はいっぱいあるから好きなところに座っていいよ。その席が違うなって思ったら休み時間に自由に移動しても良いからね。だから、早く席を決めて座っちゃおうか。将浩君の席が決まらなかったらただでさえ短いみんなの休み時間が短くなっちゃうよ」
教卓の前の席に座っている綾乃さんの隣に座るべきかとも思っていたのだけれど、俺は誰も座っていない窓側の前から三列目の席に座ることにした。周りには誰もいないだけで教室中の視線を独占しているという自覚はあった。
「じゃあ、席も無事決まったという事で先生からの連絡は以上です。みんな神山君に色々と教えてあげてね」
相内先生が教室を出て行くと綾乃さんの後ろの席に座っていたフランソワーズさんが僕の席の前に立っていた。それだけではない、僕が移動できないように左右もジェニファーさんとエイリアスさんに塞がれていたのだ。
「綾乃お嬢様は隣に将浩さんが座ってくれると思って待ってたんですよ。なんでその思いを汲み取って大人しく綾乃お嬢様の隣に座らないのですか?」
「なんでって言われてもね。俺はそんなの知らないから」
「まあ、知らなかったという事でそれは良しとしましょう。でも、今はもう知ってしまったんですから綾乃お嬢様の隣に座ってくださいね。このクラスは授業中じゃあなければいつでも席を移動して良いって決まりがあるってもんですからね」
俺は三人のメイドさんの圧に屈してしまい綾乃さんの隣に座ることになったのだが、右と左のどちらに座るかが決められずにいた。どっちでも大差はないように思えるのだが、少しでも外が近い方が良いのか入口に近い方を選ぶべきなのか大いに悩んでしまっていた。
悩んだ末に俺は窓側に近い方の席に座ったのだが、こっちが何か不都合な事でもあれば次の休み時間に移動すればいいだけの話だと授業中に気が付いたのだ。そして、それと同時にこの席も案外悪いものではないという事にも気付かされたのだった。
「神山君ってさ、神谷さんと仲が良いみたいだけど、婚約者か何かなのかな?」
「え、婚約者ではないけど」
「そうなんだ。私達はてっきりそうなんじゃないかなって思ってたんだよね。神谷さんの車から出てきたのを見た時はそうだと思ったんだけどな。ちょっと残念かも」
俺に話しかけてきたのは三人組の女子の一人なのだが、名前は沙緒莉さんだったと思う。他の二人も何やら俺に質問をしようとしているようなのだが、この沙緒莉さんが二人を遮って俺に一方的に質問をぶつけてきた。答えられることは素直に答えていたのだけれど、俺が全く予想もしてなかった質問に対して俺は答えに詰まってしまったのだ。
「私たち三人の仲だったら誰と付き合いたいって思うかな?」
「誰とって言われてもね。今日初めて会ったばかりの人にそんな質問をされても答えようが無いと思うんだけど」
「まあまあそう言わずにさ、直感で良いし、何だったら見た目で決めても良いよ。ほらほら、二人も気にしてるんだから答えちゃいなよ」
「ちょっと沙緒莉、そんな事聞くのやめなよ。神山君も困ってるじゃない」
「そうだよ。私達は別にそんな事気にしてないし」
沙緒莉さんの友達に陽香さんと真弓さんは何とか沙緒莉さんを止めようとしているのだが、沙緒莉さんは二人の声なんか届いていないようなそぶりを見せて俺に何度も同じ質問を繰り返してた。素直に答えようにもこれと言って誰にしようという決め手がなかった俺は無言を貫き通していたのだが、困っている俺を助けようと救いの手を差し伸べてくれた男子がいた。
「そんなに悩むことも無いと思うのだが、困っている貴様のために吾輩が一肌脱いでやろう」
俺も沙緒莉さん達も突然話しかけてきた子の男の存在に戸惑っていたのだが、俺以上に女子たちは突然の事に驚きを隠せないでいたようだ。
「そうだな。貴様はこの三人の誰も選ばないのが一番だろう。今ここで軽い気持ちで選択する事は後々貴様にとって様々な制約が生まれてしまう予感がする。だが、安心してくれ。吾輩はそんな貴様を救ってやる手段があるのだ。一つだけ確認しておきたいのだが、貴様は男子よりも女子の方が好きでいいんだよな?」
「もちろん。俺は女子の方が好きだ。でも、その好きが本当に愛情からくるものなのかは自分でもわかっていない。それだとしても、俺は女子が好きだ。と、思う」
自信をもって言えばよかったのだろうが、俺はなんとなくこの三人にすべてをさらけ出すのが怖かったんだと思う。見えないプレッシャーが俺に突き刺さるような感覚があったのだが、俺はそのプレッシャーをどうにかするような技術は持ち合わせていなかった。
「飛鳥君のいう事なんて聞いちゃダメだよ。この人は自分が前世で世界を支配してたって思いこんでるだけなんだからね」
「そうだよ。それも、捕まえた女子に対してエッチな拷問をしている想像をしてるんだからね。関わっちゃダメだよ」
「私達もそう言う風に思われているのかと思うとぞっとするんですけど」
俺に向けられていた興味という名の刃はいったん向きを変え、今は飛鳥君に狙いを定めたようだ。他の男子二人はそれぞれの隣に座っている女子と楽しそうに会話をしていたのだが、この飛鳥君は見た限りでは特定の女子と深い付き合いをしているようには見えなかった。それ以前に、この女子たちからも綾乃さん達からも直接関わらないようにしている風にしか見えなくなってしまったのだ。
「これだけは断言しておく。貴様は近い将来何か不幸な出来事に遭遇するだろう」
「不幸な出来事っていったい何なんだ?」
「吾輩にもそれは漠然としか思い浮かばん。ただ、その時はもう間もなくやってくると思う。その時は素直に不幸を受け入れるのではなく何か前向きになれるような事を考えるといいだろう。これは貴様にしか出来ない事であって、吾輩たちもその時ばかりはただの傍観者となっているであろう」
ちょうどいいタイミングで予鈴が鳴り出したのだ。俺も三人組の女子も慌てて時計を見てみたのだが、三人の落ち着きようからはこれからやってくる先生はそこまで厳しい先生ではないようだ。
「飛鳥君の言ってることは本当に気にしなくていいからね。私達も入学式の日に似たようなこと言われてたからね」
「そうだったね。私も不幸になるから気を付けろって言われたんだけどさ」
「綾乃さんも仲間に入れて四択にしてみたらこんなに戸惑わなかったかもね」
正直に言って、この三人の中に綾乃さんを入れて四択問題にされたところで俺にはその質問に答えることなんて出来ないのだ。親の問題が子供に関係あるのかと聞かれると即答は出来ないのだが、俺の父親と綾乃さんの父親の関係性もあって素直に綾乃さんが一番だと認めることなんて出来なかった。
「その四択でも俺は答えが出せないかも。綾乃さんの事はみんなよりも知って入ると思うけどね。でも、それだって大した差ではないと思うんだよ。だから、綾乃さんを入れたところで俺には選びようが無いって事だね」
「ふーん、それなら一学期が終わるくらいにまた同じ事聞くね。その時は誰か選んでね」
自分の席へ戻っていった三人組は背中越しにでもわかるくらいに俺の事を見ていた。何故か振り返った時に飛鳥君と目が合ったのだが、俺は気のせいだという事にしてすぐに目を逸らした。
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