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異世界再訪するサイコパス編
第八話
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俺は英雄様を殺すことは出来なかった。出来なかったと思っているのは俺だけのようで、周りで見ていた現地民たちは俺が英雄様の命を奪わなかったという風に映っていたらしい。それもあってなのか、俺は司教様に連れられて皇帝に謁見する機会を手に入れたのだった。
「良いか、本来であればお前たち異世界人は皇帝陛下のお姿を拝見する事すら許されることではないのだ。だがな、今回は皇帝陛下御自らお前を見てみたいと仰られたのだ。くれぐれも粗相のないようにするのだぞ」
「なんで俺がお前たちに気を遣わないといけないんだよ。そもそも、俺に会いたいって言うんなら向こうから出向いてくるのが筋ってもんじゃないのかね」
「バカを申せ。お前のような異世界人がこの城の中にいること自体が奇跡なのだぞ。それを踏まえたうえで物事を考えられよ」
「という事はだ、本来だったら俺達異世界人はこの城に入れないって事なんだな。それって、俺が現地民を殺せないのと同じような理屈なのか?」
「似たようなものではあるが、厳密に言えばそれとは異なるのだ。お前たち異世界人が我々人類に対して危害を加えることが出来ないというのは神々が決めた決まり事なのだ。この城にお前たち異世界人が入れないというのは神が決めたルールなのである。ルールには多少の例外はあるのだが、今回の措置は特例中の特例であるのだぞ」
「へえ、神々と神に決まり事とルールか。そんな事には興味ないけどさ、魔女も一緒に連れてきてるけどそれは平気なの?」
「お前がずっと引きずっている物は魔女だったのか。噂で聞くよりも随分とみすぼらしく見えるのだが、本当にそれがセイラント魔法国の魔女なのか?」
「確かめたわけじゃないけど、こいつらはソフィーとアリスって言ってたぞ。自称かもしれないけどな」
「な、何だと。ソフィーとアリスといえば、大魔王ルシファーの呼び出した四大魔女のうちの二人ではないか。なぜお前はそのような大物を連れているのだ?」
「なぜって、襲われて返り討ちにしたからだけど」
「少しだけ確認させてもらうが、こいつらはいきなり攻撃してきたりしないんだよな?」
「さあ、でもさ、こいつらもお前たちを攻撃することは出来ないんだろ?」
「それはそうなのだが。本当に異世界人なのか確かめる必要があるのだが」
そう言って俺を皇帝のもとへと案内している司教はアリスの体を念入りに調べ始めた。女の子の体をまさぐるのは変態のやることだろうと思って冷ややかに見ていたのだが、アリスの瞳をじっと見つめて考え込んでいると、一人で勝手に納得して頷いていた。
それにしても、英雄様もそうだったのだが、司教のこいつも俺たち異世界からやってきた人を物扱いしていると感じるところが多々ある。おそらくなのだが、自分たちは神によってこの世界のために創られた存在だと自負し、俺達はこの世界のためによそから連れてこられた道具だと思っているんだろうな。その考えは仕方ないのかもしれないけれど、道具の使い方を間違えると簡単に命を落としちゃうって事を教えてあげたいな。でも、俺はこいつらを殺すことが出来ないんだよな。
「確かに、こいつらにはセイラント魔法国独自の契約印が記されているな。本当にこいつらが魔女なのかは判断できかねるが、セイラント魔法国の関係者であることは間違いない。それに、一般的な異世界人よりも濃い魔力反応を確認することも出来た。ただ、もう一つ確認しておくのだが、こいつらは本当に動かないのだよな?」
「俺が回復させない限り動くことは無いよ」
「そうか、それなら安心だな」
「ああ、俺もバカじゃないからこんなところで回復させたりなんてしないしな」
俺達はいつの間にか謁見の間に着いていたらしい。扉の前にいる二人の警備兵が俺と魔女を見て顔をしかめているが、司教がそれについて何か伝えてくれたおかげで俺達は扉の中へと進むことが出来た。扉の中には三段高い位置に偉そうな椅子に座っている偉そうな奴が見えるのだが、こいつがおそらく皇帝なのだろう。その皇帝を守るように俺を見ている集団がいるのだが、こいつらは英雄様と同じ紋章の入った鎧を着ているので英雄の連れか何かなのだろうな。他にもいろいろな人がいるみたいなのだが、総じてここのやつらは俺に対して見下したような目で見てくるのだ。
「その者が英雄殿の攻撃を食らっても平気だったというもので間違いないのだな」
「はい、この者が英雄様のあの技を食らっても死ななかったものであります」
「ほう」
皇帝の質問と司教の答えに反応するように周りにいるやつらはざわめき出したのだが、皇帝の質問はそれだけでは終わらなかった。
「して、その方の持っているソレはいったい何なのだ?」
「はい、まだ確証は持てませぬが、セイラント魔法国の関係者にございます。おそらく、内包されている魔力量から察するに、四大魔女のうちの二人ではないかと見ているのですが」
「セイラント魔法国とな。かの国は大魔王ルシファーが興した国であるな。魔女であるとするのならば、なぜそのように今にも死にそうになっているのだ?」
「この者の言う事が真実であればですが、この者が金髪の魔女と銀髪の魔女をこのようにしたという事でございます」
「たった一人で二人を瀕死に追い込んだというのか。恐ろしき男よ。それはともかく、その異世界人はこの国のために何が出来るというのだ」
「はい、英雄様の攻撃を受けても平気でありますし、魔女二人と戦っても何事もない様子でありますので、ヴスキア共和国を探す先兵として役立つのではないかと考えております」
「ヴスキア共和国か。あの悪魔が支配するという国だな。いまだにどこに存在するのかもわからず、悪魔の痕跡すらどこにもないあの国を探すというのだな。よし、我が新自由帝国のためにその力を存分にふるうのだぞ」
「何勝手なこと言ってんだよ。なんで俺がお前らのために何かしなくちゃいけないんだっつうの。大体さ、それが人にものを頼む態度かって。偉そうに高いところから見下しやがってよ。周りにいるお前らもだよ。どうして俺がお前らのために何かしなくちゃいけないって言うのか言ってみろよ」
「いきなり何を申しているのだ。陛下の御前であるぞ。無礼者め」
「無礼者ってさ、お前たちの方が無礼だろ。そうか、お前らは俺に殺されないからって余裕ぶってるんだな」
「そうではない。お前たち異世界人は神の意思に従って我々為に力を作るという事が決められたことなのだぞ」
「確かにさ、俺はお前たちを直接攻撃することは出来ないよ。でもさ、直接攻撃できなくても問題無いんだよね。あんまり偉そうにしていると、この魔女を回復しちゃうけどいいのかな?」
「ほう、そいつらには尋ねたいこともあるので話せる程度になら望むところである。幸い、この部屋には二十四名の英雄殿がおるのでな、お前たち三人くらい簡単に制圧することも出来ようぞ」
「じゃあ、その言葉を後悔しながら座って見てな」
俺がソフィーとアリスを回復しているのだがその間に英雄たちが次々と攻撃を繰り出してきていた。一応、こいつら二人は回復してはいるのだが、俺が回復するよりもあいつらの攻撃力の方が上回っているようだ。このままじゃ面倒なことになるなと思っていると、俺の頭の中に直接逝姫が語り掛けてきた。
「英雄と魔女の間に君が立って攻撃を受けちゃえばいいのに。あれくらいの攻撃に恐れる君じゃないだろ?」
それもそうだなと思って魔女の間に割って入ると、なんてことはない。あっという間に魔女の体力が戻って言ったのだ。もちろん、魔女の二人は現地民の皇帝や英雄ではなく俺に襲い掛かってきてしまうのだが、そんな事は想定済みなのでいとも簡単に対処してしまう俺。そして、二人の魔女はまた瀕死の状態へと戻るのだ。だが、俺はそんな魔女をまた回復して差し上げる。それでも頭の悪い魔女は俺に襲い掛かってくるのだが、俺は何の苦労もなく二人の魔女をまたボコボコにしてあげるのだ。
そんな事をほんの小一時間くらい繰り返していると、周りの英雄も攻撃を止めていたし、皇帝も偉そうな態度を少しだけ改めていた。それでも、中には俺に対してちゃんと攻撃をしてくるやつもいたのだが、そんな奴には目の前ギリギリのところに触れただけで死ぬような炎の壁を設置してあげたのだ。もちろん、俺はこいつらを殺すことが出来ないので意味なんてないのだが、目の前ギリギリに出したって事で幾分かは牽制になったと思う。
そろそろ魔女と遊ぶのにも飽きてきたので、俺は皇帝の横へ移動してみた。移動している途中で何か言って俺を止めようとしたものもいたのだが、そいつの方をちらりと見てみると、そいつは下を向いて黙ってしまった。
「なあ、俺はこの世界に何の興味も無いんだ。この国がどこと戦って負けようが関係ない。あの魔女たちの国がどうなろうと関係ない。でもな、俺はあの魔女たちの仲間を探しているんだが、何か知ってることは無いかな?」
「魔女の仲間といいますと?」
「四大魔女の一人なんだがね、不死のみさきってご存じ?」
「良いか、本来であればお前たち異世界人は皇帝陛下のお姿を拝見する事すら許されることではないのだ。だがな、今回は皇帝陛下御自らお前を見てみたいと仰られたのだ。くれぐれも粗相のないようにするのだぞ」
「なんで俺がお前たちに気を遣わないといけないんだよ。そもそも、俺に会いたいって言うんなら向こうから出向いてくるのが筋ってもんじゃないのかね」
「バカを申せ。お前のような異世界人がこの城の中にいること自体が奇跡なのだぞ。それを踏まえたうえで物事を考えられよ」
「という事はだ、本来だったら俺達異世界人はこの城に入れないって事なんだな。それって、俺が現地民を殺せないのと同じような理屈なのか?」
「似たようなものではあるが、厳密に言えばそれとは異なるのだ。お前たち異世界人が我々人類に対して危害を加えることが出来ないというのは神々が決めた決まり事なのだ。この城にお前たち異世界人が入れないというのは神が決めたルールなのである。ルールには多少の例外はあるのだが、今回の措置は特例中の特例であるのだぞ」
「へえ、神々と神に決まり事とルールか。そんな事には興味ないけどさ、魔女も一緒に連れてきてるけどそれは平気なの?」
「お前がずっと引きずっている物は魔女だったのか。噂で聞くよりも随分とみすぼらしく見えるのだが、本当にそれがセイラント魔法国の魔女なのか?」
「確かめたわけじゃないけど、こいつらはソフィーとアリスって言ってたぞ。自称かもしれないけどな」
「な、何だと。ソフィーとアリスといえば、大魔王ルシファーの呼び出した四大魔女のうちの二人ではないか。なぜお前はそのような大物を連れているのだ?」
「なぜって、襲われて返り討ちにしたからだけど」
「少しだけ確認させてもらうが、こいつらはいきなり攻撃してきたりしないんだよな?」
「さあ、でもさ、こいつらもお前たちを攻撃することは出来ないんだろ?」
「それはそうなのだが。本当に異世界人なのか確かめる必要があるのだが」
そう言って俺を皇帝のもとへと案内している司教はアリスの体を念入りに調べ始めた。女の子の体をまさぐるのは変態のやることだろうと思って冷ややかに見ていたのだが、アリスの瞳をじっと見つめて考え込んでいると、一人で勝手に納得して頷いていた。
それにしても、英雄様もそうだったのだが、司教のこいつも俺たち異世界からやってきた人を物扱いしていると感じるところが多々ある。おそらくなのだが、自分たちは神によってこの世界のために創られた存在だと自負し、俺達はこの世界のためによそから連れてこられた道具だと思っているんだろうな。その考えは仕方ないのかもしれないけれど、道具の使い方を間違えると簡単に命を落としちゃうって事を教えてあげたいな。でも、俺はこいつらを殺すことが出来ないんだよな。
「確かに、こいつらにはセイラント魔法国独自の契約印が記されているな。本当にこいつらが魔女なのかは判断できかねるが、セイラント魔法国の関係者であることは間違いない。それに、一般的な異世界人よりも濃い魔力反応を確認することも出来た。ただ、もう一つ確認しておくのだが、こいつらは本当に動かないのだよな?」
「俺が回復させない限り動くことは無いよ」
「そうか、それなら安心だな」
「ああ、俺もバカじゃないからこんなところで回復させたりなんてしないしな」
俺達はいつの間にか謁見の間に着いていたらしい。扉の前にいる二人の警備兵が俺と魔女を見て顔をしかめているが、司教がそれについて何か伝えてくれたおかげで俺達は扉の中へと進むことが出来た。扉の中には三段高い位置に偉そうな椅子に座っている偉そうな奴が見えるのだが、こいつがおそらく皇帝なのだろう。その皇帝を守るように俺を見ている集団がいるのだが、こいつらは英雄様と同じ紋章の入った鎧を着ているので英雄の連れか何かなのだろうな。他にもいろいろな人がいるみたいなのだが、総じてここのやつらは俺に対して見下したような目で見てくるのだ。
「その者が英雄殿の攻撃を食らっても平気だったというもので間違いないのだな」
「はい、この者が英雄様のあの技を食らっても死ななかったものであります」
「ほう」
皇帝の質問と司教の答えに反応するように周りにいるやつらはざわめき出したのだが、皇帝の質問はそれだけでは終わらなかった。
「して、その方の持っているソレはいったい何なのだ?」
「はい、まだ確証は持てませぬが、セイラント魔法国の関係者にございます。おそらく、内包されている魔力量から察するに、四大魔女のうちの二人ではないかと見ているのですが」
「セイラント魔法国とな。かの国は大魔王ルシファーが興した国であるな。魔女であるとするのならば、なぜそのように今にも死にそうになっているのだ?」
「この者の言う事が真実であればですが、この者が金髪の魔女と銀髪の魔女をこのようにしたという事でございます」
「たった一人で二人を瀕死に追い込んだというのか。恐ろしき男よ。それはともかく、その異世界人はこの国のために何が出来るというのだ」
「はい、英雄様の攻撃を受けても平気でありますし、魔女二人と戦っても何事もない様子でありますので、ヴスキア共和国を探す先兵として役立つのではないかと考えております」
「ヴスキア共和国か。あの悪魔が支配するという国だな。いまだにどこに存在するのかもわからず、悪魔の痕跡すらどこにもないあの国を探すというのだな。よし、我が新自由帝国のためにその力を存分にふるうのだぞ」
「何勝手なこと言ってんだよ。なんで俺がお前らのために何かしなくちゃいけないんだっつうの。大体さ、それが人にものを頼む態度かって。偉そうに高いところから見下しやがってよ。周りにいるお前らもだよ。どうして俺がお前らのために何かしなくちゃいけないって言うのか言ってみろよ」
「いきなり何を申しているのだ。陛下の御前であるぞ。無礼者め」
「無礼者ってさ、お前たちの方が無礼だろ。そうか、お前らは俺に殺されないからって余裕ぶってるんだな」
「そうではない。お前たち異世界人は神の意思に従って我々為に力を作るという事が決められたことなのだぞ」
「確かにさ、俺はお前たちを直接攻撃することは出来ないよ。でもさ、直接攻撃できなくても問題無いんだよね。あんまり偉そうにしていると、この魔女を回復しちゃうけどいいのかな?」
「ほう、そいつらには尋ねたいこともあるので話せる程度になら望むところである。幸い、この部屋には二十四名の英雄殿がおるのでな、お前たち三人くらい簡単に制圧することも出来ようぞ」
「じゃあ、その言葉を後悔しながら座って見てな」
俺がソフィーとアリスを回復しているのだがその間に英雄たちが次々と攻撃を繰り出してきていた。一応、こいつら二人は回復してはいるのだが、俺が回復するよりもあいつらの攻撃力の方が上回っているようだ。このままじゃ面倒なことになるなと思っていると、俺の頭の中に直接逝姫が語り掛けてきた。
「英雄と魔女の間に君が立って攻撃を受けちゃえばいいのに。あれくらいの攻撃に恐れる君じゃないだろ?」
それもそうだなと思って魔女の間に割って入ると、なんてことはない。あっという間に魔女の体力が戻って言ったのだ。もちろん、魔女の二人は現地民の皇帝や英雄ではなく俺に襲い掛かってきてしまうのだが、そんな事は想定済みなのでいとも簡単に対処してしまう俺。そして、二人の魔女はまた瀕死の状態へと戻るのだ。だが、俺はそんな魔女をまた回復して差し上げる。それでも頭の悪い魔女は俺に襲い掛かってくるのだが、俺は何の苦労もなく二人の魔女をまたボコボコにしてあげるのだ。
そんな事をほんの小一時間くらい繰り返していると、周りの英雄も攻撃を止めていたし、皇帝も偉そうな態度を少しだけ改めていた。それでも、中には俺に対してちゃんと攻撃をしてくるやつもいたのだが、そんな奴には目の前ギリギリのところに触れただけで死ぬような炎の壁を設置してあげたのだ。もちろん、俺はこいつらを殺すことが出来ないので意味なんてないのだが、目の前ギリギリに出したって事で幾分かは牽制になったと思う。
そろそろ魔女と遊ぶのにも飽きてきたので、俺は皇帝の横へ移動してみた。移動している途中で何か言って俺を止めようとしたものもいたのだが、そいつの方をちらりと見てみると、そいつは下を向いて黙ってしまった。
「なあ、俺はこの世界に何の興味も無いんだ。この国がどこと戦って負けようが関係ない。あの魔女たちの国がどうなろうと関係ない。でもな、俺はあの魔女たちの仲間を探しているんだが、何か知ってることは無いかな?」
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