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君影草 本編
鈴蘭 希望
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あと一つ勝てば甲子園まで行けるところまで来ていた野球部ではあったけれど、途中に何度かミスが重なって大敗してしまった。堅い守りと手堅い攻撃が売りのチームだったみたいだけれど、全国各地から野球エリートが集まっているような高校相手には何も出来ずに終わっていた。応援席で見守っていた生徒たちも二回の守備の時点で早々に応援することに飽きていたようで、短い攻撃と長い守備の繰り返しだったためか、途中から吹奏楽部以外の生徒は立って応援することもせずに座って見ているだけになっていた。
私も応援はしていたのだけれど、野球のルールをイマイチわかっていなかったのでどうしたら攻撃が終わるのかを教えてもらっている間に試合が終わっていた。
「なあ、坂井さんってあんまり運動してる印象ないけどさ、野球に興味あるの?」
「うーん、興味が有るか無いかって聞かれると、今はあるけど家に帰ったら忘れてる程度だと思う」
「そっか、野球のルールを知らないくらいだからそんなに興味ないのかなって思ってたけど、俺が思っていたよりも興味は薄いんだね」
「ごめんね。でもね、西川君が教えてくれたから野球を見るの楽しかったよ。負けちゃったのは残念だったけどね」
「負けるだろうとは思っていたけど、こんなに大差がつくとは思わなかったよ。今日打てなかった宮沢もエラーしてた小川も泣いちゃってるよ。それだけ野球にかけてきたんだって事なんだろうね。俺なんかそんなに青春をかけたことってないんだけど、坂井さんって何かあるのかな?」
「私は、勉強くらいかな。でも、受験に失敗してもあんなに泣けないと思うし、そう考えるとそこまで努力してなかったのかもね」
「そんな事無いじゃん、クラスで一位だけでも凄いのに、全国でも上位に入ってるとか俺からしてみたら雲の上の存在でしかないよ」
「それはたまたま勉強したところだかたまって出てきただけだよ。西川君は部活やってないけど、放課後は何してるの?」
「俺はとくにこれと言って決めてることは無いんだけど、花を育てるのが好きかも。ばあちゃんと一緒に育ててるんだけど、俺のだけあんまり成長が良くないみたいなんだよね」
「西川君がお花を育ててるってのは意外だったかも。花より団子って感じなのにね」
「坂井さんだって変なミスをすると思うけど、その時は助けてやんないからね」
クラスごとに固まって応援していたのだけれど、席は自由だったので私は誰も来なそうな端の席に座っていた。意外と見やすい席だなと思っていると、西川君が隣に座ってきた。西川君はそのまま野球に集中していたようだけれど、私はその集中を邪魔していたのだ。野球のルールを教わったりしていると、試合はあっという間に終わっていたのだった。
野球部の人達は負けて泣いていたけれど、私はこれからの人生でそこまで一生懸命に打ち込めることなんて見つかるのだろうか。簡単には見つからないと思うし、見つかったとしても泣くまでの失敗も早々しないだろう。
「坂井さんって花を育てる事は興味あるかな?」
「そうだね、あると言えばあるけど、ないと言えばないかも」
「そんな坂井さんにぴったりのモノがあるんだけど、聞いてもらっていいかな?」
「私にぴったりって何かな?」
「去年卒業した先輩の話なんだけど、結構色んな人に土を配ってるらしいんだよね。その土ってのが不思議なもんで、種を蒔いても蒔かなくても動物には好かれるんだってさ」
「それってどんなからくりがあるんだろうね。私も少しだけ興味出てきたかも」
それなら案内するよと言って西川君は私の前を歩いていてくれるのだけれど、隣にいた方が話もしやすいと思う。西川君は常に私の前を歩いているんだけれど、やっぱり隣で話しかけてもらいたいな。
先輩から貰った土を家に持って帰ってちゃんとした植木鉢に植えることにしよう。そうすれば少しの間だけでも綺麗な花が咲いてくれるはずだ。先輩から土を貰うのは私だけかと思っていたのだけれど、いつの間にか西川君も貰っていた。
「ねえ、せっかくだから毎日写真を撮って送り合わない?」
「毎日できるかわからないけど、それはいいかもね。同じの花が咲くのか違う花が咲くのか、どっちにしても楽しい日々になりそうね」
家に帰って使っていない植木鉢を見つけると、そこに軽石を入れてもらってきた土を少しずつ入れていった。植木鉢が大きすぎたからなのかわからいけれど、土は半分より少し少ないくらいの量で終わってしまった。さっそく西川君に写真を送ってみたのだけれど、西川君の家に有った植木鉢も似たような大きさだったせいか、同じような写真が送られてきた。
そのまま勉強をしていい時間になったのでお風呂に入ってきたのだけれど、不思議な事に植木鉢の土から芽らしきものが出ていた。
私もこんなに早く芽が出るとは思っていなかったので、ちょっと肌寒い感じではあるけど気温は関係ないらしい。このままのペースで成長していったなら、明日の夜はどうなってるのか楽しみになった来た。
ちょうどそのタイミングで西川君から写真が届いたのだけれど、私とは違う形の新芽がたくさん生えていた。私の花は一つしか成長しなかったのだけれど、きっと綺麗な花を咲かせるでしょう。
西川君とは写真の交換だけではなく、少しだけお互いの事を教え合ったりもしていた。誰かとやり取りするこてはあまりなかったので楽しかったけれど、これに集中しすぎてもいけないと思って少しだけ勉強をする事にした。
翌朝植木鉢を見ると、今にも花が咲きそうな状態にまで成長していた。。
西川君のパーソナルカラーはピンクだったみたいだけれど、私は調べてもらうと白い色だったようだ。あまり派手な色ではなくてよかったと思っていると、馬に乗ったまま登場するのはインパクトが強すぎるように思えていた。
お互いに順調そうだったのだけれど、私はこのまま花が散ってしまったらどうしようか考えていた。もう少し土を貰って大きい何かを育てるのも楽しそうだ。
翌朝、植木鉢を覗き込むと鈴の様な綺麗な花が無数に咲き誇っていた。写真を何枚か撮っていると、西川君からメッセージが来ていた。
『花は咲いているけど、いつかは散ってしまうと思うんだよね。坂井さんに時間があったら動物園か美術館に行かないかな?』
私はそのメッセージに返事を送ると、もう一つの小振りな植木鉢を用意する事にした。明日もきっといい天気になる事だろう。
私も応援はしていたのだけれど、野球のルールをイマイチわかっていなかったのでどうしたら攻撃が終わるのかを教えてもらっている間に試合が終わっていた。
「なあ、坂井さんってあんまり運動してる印象ないけどさ、野球に興味あるの?」
「うーん、興味が有るか無いかって聞かれると、今はあるけど家に帰ったら忘れてる程度だと思う」
「そっか、野球のルールを知らないくらいだからそんなに興味ないのかなって思ってたけど、俺が思っていたよりも興味は薄いんだね」
「ごめんね。でもね、西川君が教えてくれたから野球を見るの楽しかったよ。負けちゃったのは残念だったけどね」
「負けるだろうとは思っていたけど、こんなに大差がつくとは思わなかったよ。今日打てなかった宮沢もエラーしてた小川も泣いちゃってるよ。それだけ野球にかけてきたんだって事なんだろうね。俺なんかそんなに青春をかけたことってないんだけど、坂井さんって何かあるのかな?」
「私は、勉強くらいかな。でも、受験に失敗してもあんなに泣けないと思うし、そう考えるとそこまで努力してなかったのかもね」
「そんな事無いじゃん、クラスで一位だけでも凄いのに、全国でも上位に入ってるとか俺からしてみたら雲の上の存在でしかないよ」
「それはたまたま勉強したところだかたまって出てきただけだよ。西川君は部活やってないけど、放課後は何してるの?」
「俺はとくにこれと言って決めてることは無いんだけど、花を育てるのが好きかも。ばあちゃんと一緒に育ててるんだけど、俺のだけあんまり成長が良くないみたいなんだよね」
「西川君がお花を育ててるってのは意外だったかも。花より団子って感じなのにね」
「坂井さんだって変なミスをすると思うけど、その時は助けてやんないからね」
クラスごとに固まって応援していたのだけれど、席は自由だったので私は誰も来なそうな端の席に座っていた。意外と見やすい席だなと思っていると、西川君が隣に座ってきた。西川君はそのまま野球に集中していたようだけれど、私はその集中を邪魔していたのだ。野球のルールを教わったりしていると、試合はあっという間に終わっていたのだった。
野球部の人達は負けて泣いていたけれど、私はこれからの人生でそこまで一生懸命に打ち込めることなんて見つかるのだろうか。簡単には見つからないと思うし、見つかったとしても泣くまでの失敗も早々しないだろう。
「坂井さんって花を育てる事は興味あるかな?」
「そうだね、あると言えばあるけど、ないと言えばないかも」
「そんな坂井さんにぴったりのモノがあるんだけど、聞いてもらっていいかな?」
「私にぴったりって何かな?」
「去年卒業した先輩の話なんだけど、結構色んな人に土を配ってるらしいんだよね。その土ってのが不思議なもんで、種を蒔いても蒔かなくても動物には好かれるんだってさ」
「それってどんなからくりがあるんだろうね。私も少しだけ興味出てきたかも」
それなら案内するよと言って西川君は私の前を歩いていてくれるのだけれど、隣にいた方が話もしやすいと思う。西川君は常に私の前を歩いているんだけれど、やっぱり隣で話しかけてもらいたいな。
先輩から貰った土を家に持って帰ってちゃんとした植木鉢に植えることにしよう。そうすれば少しの間だけでも綺麗な花が咲いてくれるはずだ。先輩から土を貰うのは私だけかと思っていたのだけれど、いつの間にか西川君も貰っていた。
「ねえ、せっかくだから毎日写真を撮って送り合わない?」
「毎日できるかわからないけど、それはいいかもね。同じの花が咲くのか違う花が咲くのか、どっちにしても楽しい日々になりそうね」
家に帰って使っていない植木鉢を見つけると、そこに軽石を入れてもらってきた土を少しずつ入れていった。植木鉢が大きすぎたからなのかわからいけれど、土は半分より少し少ないくらいの量で終わってしまった。さっそく西川君に写真を送ってみたのだけれど、西川君の家に有った植木鉢も似たような大きさだったせいか、同じような写真が送られてきた。
そのまま勉強をしていい時間になったのでお風呂に入ってきたのだけれど、不思議な事に植木鉢の土から芽らしきものが出ていた。
私もこんなに早く芽が出るとは思っていなかったので、ちょっと肌寒い感じではあるけど気温は関係ないらしい。このままのペースで成長していったなら、明日の夜はどうなってるのか楽しみになった来た。
ちょうどそのタイミングで西川君から写真が届いたのだけれど、私とは違う形の新芽がたくさん生えていた。私の花は一つしか成長しなかったのだけれど、きっと綺麗な花を咲かせるでしょう。
西川君とは写真の交換だけではなく、少しだけお互いの事を教え合ったりもしていた。誰かとやり取りするこてはあまりなかったので楽しかったけれど、これに集中しすぎてもいけないと思って少しだけ勉強をする事にした。
翌朝植木鉢を見ると、今にも花が咲きそうな状態にまで成長していた。。
西川君のパーソナルカラーはピンクだったみたいだけれど、私は調べてもらうと白い色だったようだ。あまり派手な色ではなくてよかったと思っていると、馬に乗ったまま登場するのはインパクトが強すぎるように思えていた。
お互いに順調そうだったのだけれど、私はこのまま花が散ってしまったらどうしようか考えていた。もう少し土を貰って大きい何かを育てるのも楽しそうだ。
翌朝、植木鉢を覗き込むと鈴の様な綺麗な花が無数に咲き誇っていた。写真を何枚か撮っていると、西川君からメッセージが来ていた。
『花は咲いているけど、いつかは散ってしまうと思うんだよね。坂井さんに時間があったら動物園か美術館に行かないかな?』
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