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第38話 膠着
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イザーと悪魔の戦いを見守っている野城君の隣にいつの間にか先ほどまであの場で戦っていた二体の悪魔も並んでいた。
無言のまま戦いを見つめている三人は時々お互いの事を意識しているように思えた。
「あの女はどうしてアスモデウスを召喚したんですか?」
「俺に聞かれてもわからないよ。イザーちゃんの考えてることは俺には理解出来ないから」
「常識的に考えても、魔王を召喚して自分と戦わせるなんて狂気じみ過ぎていて悪魔の私たちでも引くレベルです」
「自分が不完全燃焼だからって殺した相手を生贄にして悪魔を召喚するとか意味わからないよね。君たちはどうして召喚に応じたの?」
「私たちは半ば無理やりアスモデウスに付き合わされたって感じです。そこそこ強くて邪魔にならない程度の技術があれば誰でも良かったみたいなんですけど、一番の理由は私たちがアスモデウスのすぐ近くにいたって事なんですかね。それよりも、あの女の子は魔王じゃなくて悪魔を召喚するつもりだったと思うんですけど、あのアスモデウスがそれに割り込んでしまったんで面倒なことになっちゃってるんですよね」
「あの女が悪魔を召喚しようとしているのを見つけたアスモデウスは嬉しそうな顔になってたよね。何か二人の間に因縁でもあるのかしらね?」
野城君は自分用に持ってきていたコーヒーを二体の悪魔に差し出したところ、悪魔たちは驚きながらもそのコーヒーを受け取って興味深そうに見つめていた。
その様子を見て何かを察した野城君は自分も同じようにコーヒーを持ってゆっくりと口に含んで味わっていた。その姿を見た悪魔たちは野城君の真似をして恐る恐るコーヒーを飲んでいた。
「二人の間の因縁はそうとうに深いものがあるんだよ。イザーちゃんはちょっと特別な子で、ココとは違う他の世界出身なんだけど色々な世界を渡り歩いてとある女の子を助けてるんだよ。その過程でアスモデウスと戦うことが多いんだけど、こんなに早くアスモデウスが出てくるとは思わなかったな」
「それって、あの女も違う世界線に干渉することが出来るって事なのか?」
「そういう事になるね。一説によると、アスモデウスと戦っているイザーちゃんが色々な世界を構築しているって噂もあるんだよね。それまで観測されていなかった新しい世界を見つけてくるのはいつもイザーちゃんだからね」
「なんだか不思議な話ね。あなたの話だと、アスモデウスとあの女の子が良く戦ってるって話なのよね?」
「仲間になることもあるけれど、基本的にはイザーちゃんとアスモデウスは戦うことが多いね。今みたいに一対一で戦う事はほとんどなかったと思うけど、気付いた時にはイザーちゃんがボロボロになって勝利をつかみ取っているって事が多いかも」
野城君が今まで観測してきた世界でイザーが負けたことはもちろんあるのだが、その時は決まって近くに栗宮院うまなが存在していた。イザーが破れてしまったとしても、栗宮院うまなの力によってアスモデウスを退けるというのがお決まりのパターンになっている。
今回は、近くに栗宮院うまなもいないという事もあってイザーが勝つと信じている野城君ではあったが、ここまで実力差があるのだと知るとその予想が裏切られてしまうのではないかと思っていたりもした。
観測者である野城君が私情を挟んでしまうのはいけないことなのだろうが、あまりにも多くの時間を一緒に過ごしてしまっているので仕方のないことなのだ。
「あんなにボロボロになってるのにまだ抵抗するなんて凄い根性してるよあの子」
「アスモデウスもペチペチといやらしい攻撃ばっかりじゃなくてとどめを刺すような攻撃をすればいいのにね。今のままじゃ勝負は目に見えてると思うんだけど、時間がかかり過ぎちゃうよね」
「あの女が逆転を狙っている限りはアスモデウスも強く出られないんじゃないかな。あの女は今にも死にそうな感じに見えるのに、追い込まれているのはアスモデウスのような気がしてならないんだよな。どうしてそう感じるのかは知らんけど、あの女はとんでもない隠し玉を持っているような気がしてならないんだよ」
「そんな事無いと思うけどな。私たちに残された時間も少ないみたいだし、今からあそこに割り込んであの子にとどめを刺しちゃおうか?」
「そうした方がいいかもしれないな。二人であの女に隙を作ればアスモデウスも一瞬で終わらせてくれるだろう」
二体の悪魔は空になったカップを野城君に返すとそのまま一礼してから戦いに戻っていった。
二人の勝負の邪魔をしてほしくないと思った野城君ではあったが、今のままでは勝負が目に見えているという事もあって新しい変化があった方がいいと感じて二体の悪魔を止める事は無かった。
体力も少なくなっているイザーに対して回復した悪魔二体がやって来るのは驚異のはずなのだが、悪魔たちの動きを見たイザーは心なしか嬉しそうな感じに見えていたのだ。
イザーとアスモデウスの戦いに割り込もうとした二体の悪魔ではあったが、時間をかけてでも今の状況を維持して完全な勝ちを手に入れたいアスモデウスには邪魔だとしか思えなかったようだ。
アスモデウスは二体の悪魔を排除するために攻撃をしたのだが、その一瞬の隙を見逃さなかったイザーはアスモデウスの右肩を掴むと大きな声で笑いだしたのだ。
アスモデウスと二体の悪魔はイザーに向かって攻撃をしようとしたのだが、それよりも早くイザーが行動を開始していたのだ。
無言のまま戦いを見つめている三人は時々お互いの事を意識しているように思えた。
「あの女はどうしてアスモデウスを召喚したんですか?」
「俺に聞かれてもわからないよ。イザーちゃんの考えてることは俺には理解出来ないから」
「常識的に考えても、魔王を召喚して自分と戦わせるなんて狂気じみ過ぎていて悪魔の私たちでも引くレベルです」
「自分が不完全燃焼だからって殺した相手を生贄にして悪魔を召喚するとか意味わからないよね。君たちはどうして召喚に応じたの?」
「私たちは半ば無理やりアスモデウスに付き合わされたって感じです。そこそこ強くて邪魔にならない程度の技術があれば誰でも良かったみたいなんですけど、一番の理由は私たちがアスモデウスのすぐ近くにいたって事なんですかね。それよりも、あの女の子は魔王じゃなくて悪魔を召喚するつもりだったと思うんですけど、あのアスモデウスがそれに割り込んでしまったんで面倒なことになっちゃってるんですよね」
「あの女が悪魔を召喚しようとしているのを見つけたアスモデウスは嬉しそうな顔になってたよね。何か二人の間に因縁でもあるのかしらね?」
野城君は自分用に持ってきていたコーヒーを二体の悪魔に差し出したところ、悪魔たちは驚きながらもそのコーヒーを受け取って興味深そうに見つめていた。
その様子を見て何かを察した野城君は自分も同じようにコーヒーを持ってゆっくりと口に含んで味わっていた。その姿を見た悪魔たちは野城君の真似をして恐る恐るコーヒーを飲んでいた。
「二人の間の因縁はそうとうに深いものがあるんだよ。イザーちゃんはちょっと特別な子で、ココとは違う他の世界出身なんだけど色々な世界を渡り歩いてとある女の子を助けてるんだよ。その過程でアスモデウスと戦うことが多いんだけど、こんなに早くアスモデウスが出てくるとは思わなかったな」
「それって、あの女も違う世界線に干渉することが出来るって事なのか?」
「そういう事になるね。一説によると、アスモデウスと戦っているイザーちゃんが色々な世界を構築しているって噂もあるんだよね。それまで観測されていなかった新しい世界を見つけてくるのはいつもイザーちゃんだからね」
「なんだか不思議な話ね。あなたの話だと、アスモデウスとあの女の子が良く戦ってるって話なのよね?」
「仲間になることもあるけれど、基本的にはイザーちゃんとアスモデウスは戦うことが多いね。今みたいに一対一で戦う事はほとんどなかったと思うけど、気付いた時にはイザーちゃんがボロボロになって勝利をつかみ取っているって事が多いかも」
野城君が今まで観測してきた世界でイザーが負けたことはもちろんあるのだが、その時は決まって近くに栗宮院うまなが存在していた。イザーが破れてしまったとしても、栗宮院うまなの力によってアスモデウスを退けるというのがお決まりのパターンになっている。
今回は、近くに栗宮院うまなもいないという事もあってイザーが勝つと信じている野城君ではあったが、ここまで実力差があるのだと知るとその予想が裏切られてしまうのではないかと思っていたりもした。
観測者である野城君が私情を挟んでしまうのはいけないことなのだろうが、あまりにも多くの時間を一緒に過ごしてしまっているので仕方のないことなのだ。
「あんなにボロボロになってるのにまだ抵抗するなんて凄い根性してるよあの子」
「アスモデウスもペチペチといやらしい攻撃ばっかりじゃなくてとどめを刺すような攻撃をすればいいのにね。今のままじゃ勝負は目に見えてると思うんだけど、時間がかかり過ぎちゃうよね」
「あの女が逆転を狙っている限りはアスモデウスも強く出られないんじゃないかな。あの女は今にも死にそうな感じに見えるのに、追い込まれているのはアスモデウスのような気がしてならないんだよな。どうしてそう感じるのかは知らんけど、あの女はとんでもない隠し玉を持っているような気がしてならないんだよ」
「そんな事無いと思うけどな。私たちに残された時間も少ないみたいだし、今からあそこに割り込んであの子にとどめを刺しちゃおうか?」
「そうした方がいいかもしれないな。二人であの女に隙を作ればアスモデウスも一瞬で終わらせてくれるだろう」
二体の悪魔は空になったカップを野城君に返すとそのまま一礼してから戦いに戻っていった。
二人の勝負の邪魔をしてほしくないと思った野城君ではあったが、今のままでは勝負が目に見えているという事もあって新しい変化があった方がいいと感じて二体の悪魔を止める事は無かった。
体力も少なくなっているイザーに対して回復した悪魔二体がやって来るのは驚異のはずなのだが、悪魔たちの動きを見たイザーは心なしか嬉しそうな感じに見えていたのだ。
イザーとアスモデウスの戦いに割り込もうとした二体の悪魔ではあったが、時間をかけてでも今の状況を維持して完全な勝ちを手に入れたいアスモデウスには邪魔だとしか思えなかったようだ。
アスモデウスは二体の悪魔を排除するために攻撃をしたのだが、その一瞬の隙を見逃さなかったイザーはアスモデウスの右肩を掴むと大きな声で笑いだしたのだ。
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