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第29話 セクシーなお姉さんとお饅頭
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変な人に絡まれるのも嫌だったのですぐにでも帰りたい工藤珠希の思いとは別に、イザーはパン屋の前から動く気配はなかった。ここで待っていたとしても先ほどのセクシーなお姉さんたちが出てきて揉めるだけだとしか思えないのだが、工藤珠希がどんなに説得してもイザーは一歩も動こうとはしなかった。
どうにかしてセクシーなお姉さんたちが出てくるまでにイザーを動かそうと努力したのだが、工藤珠希の予想をはるかに超える速さでセクシーなお姉さんたちが店から出てきたのだ。
店の真ん前に立って待っているイザーに気付かないわけがなく、セクシーなお姉さんはイザーと目が合うとそのまますぐ近くにある公園を指さしていた。イザーは指さした方向にある公園を確認すると不敵な笑みを浮かべてから頷いていた。
揉め事に巻き込まれたくないと思っている工藤珠希は気付かれないように学校へと戻ろうとしたのだが、体を反転させるよりも早くイザーに腕を掴まれて逃げられなくなってしまった。
「パンを買ったことがみんなにバレると面倒なことになると思うし、あの公園で食べてから戻ろうか。多少遅れたとしても、先生も見逃してくれると思うし」
「いや、それはやめておいた方がいいと思うよ。やっぱり学校に戻って食べた方がいいと思うな」
「学校に戻って食べようとしても、たぶん珠希ちゃんのお饅頭はみんなに取られちゃうと思うよ。だから、先に食べてから戻った方がいいと思うな。もう一つ買えばいいかって思ってるかもしれないけど、あのお姉さんたちが全部買っちゃったみたいだから売り切れになってるっぽいね。残念残念」
イザーが掴んでいる手に力は入っていないと思うのだけれど、少しでも抵抗しようとすると今までに感じたことのないほどの痛みが全身を襲っていた。逆らうことが出来ない状況に追い込まれてしまったと思い知らされた工藤珠希は抵抗するのをやめて公園へと向かうことにした。
小さい公園なのでベンチは少なかったのだが、偶然にも他に利用者がいなかったので全員無事に座ることが出来たのだ。
買ってきたパンを食べているイザーはとても幸せそうに見えていた。こんなに幸せそうに食べているなら揉め事なんて起きないかもしれないと思い始めた工藤珠希はチラリとセクシーなお姉さんたちの方を見たのだが、セクシーなお姉さんたちは般若とでもいうしかない表情で自分たちの事を睨みつけていたのだ。
絶対に揉め事に発展すると思った工藤珠希はこの現実を忘れるためにも買ったお饅頭と貰ったパンを食べてみようと思った。
「そのお饅頭ってすごく美味しそうだね。あんまり和菓子とか食べないから買おうって思ったことなかったけど、今度来た時に買ってみようかな」
「こんなに大きいのは一人で食べられないから半分食べてみる?」
「ありがとう。じゃあ、私が買ったパンも半分あげるね」
セクシーなお姉さんたちの方を見ないように気を付けていた工藤珠希。
イザーもセクシーなお姉さんたちの事なんてまったく気にしていないようにしていたのだが、お互いに分け合ったパンとお饅頭を食べ終わるとゴミをまとめて袋に入れて鞄にしまっていた。
「ちょっとだけ鞄を預かっててもらってもいいかな。食後の運動してくるね」
工藤珠希がそれに答える前にイザーはセクシーなお姉さんたちの方へと向かっていった。イザーを止めようと思った工藤珠希ではあったが、振り返ったイザーが見せたウインクの意味が分からず固まってしまっていた。
「今から仲間を呼びに行ってもいいんだぞ。お前一人で私たちを相手に出来ると思ってるのか?」
「何言ってんの。あんたらの方こそもっとたくさん集めた方がいいんじゃないの。たったそれだけの人数で私の相手がつとまるとでも思ってるわけ?」
揉め事だけは避けてほしいと思っていた工藤珠希ではあった。ある程度分かっていたこととはいえ、さっそく揉めだしてしまった事がショックだった。
「栗宮院うまながどれほど強いか知らないけどな、こっちだってそれなりに力はあるつもりなんだよ。たった一人で私らをどうにか出来ると思うなよ」
「だからさ、私はうまなちゃんじゃないって言ってるでしょ。何回言えば理解出来るのか知らんけど、そんな程度の頭脳しかないような奴に私が負けるわけないだろ」
「何言ってんだテメエ。どっからどう見ても栗宮院うまなだろうが。一人で向かってきて勇気があるのかと思ったら、そんな嘘をついてごまかそうとするとか意味わかんねえな」
「嘘なんてついてないって。私はうまなちゃんじゃなくてイザーだって言ってるだろ。少しは人の話を聞けって」
「しらばっくれてんじゃねえ。私らは何度も何度も栗宮院うまなの写真を見て顔を忘れないようにしてんだよ。お前みたいな裏切り者の事を見逃さないようにしてるんだよ」
「裏切り者って、うまなちゃんは別にあんたらの仲間じゃないだろ。裏切るとか意味わからんのだが」
なぜかイザーの事を栗宮院うまなだと思い込んでいるセクシーなお姉さん軍団。その間違いを訂正しようと近付こうと思った工藤珠希は不思議な圧力を感じてベンチから立ち上がることが出来なかった。
とっくに昼休みが終わっている時間になっているのに、イザーの事を栗宮院うまなだと思い込んでいるセクシーなお姉さん軍団とイザーのやり取りは平行線のままだった。
どうにかしてセクシーなお姉さんたちが出てくるまでにイザーを動かそうと努力したのだが、工藤珠希の予想をはるかに超える速さでセクシーなお姉さんたちが店から出てきたのだ。
店の真ん前に立って待っているイザーに気付かないわけがなく、セクシーなお姉さんはイザーと目が合うとそのまますぐ近くにある公園を指さしていた。イザーは指さした方向にある公園を確認すると不敵な笑みを浮かべてから頷いていた。
揉め事に巻き込まれたくないと思っている工藤珠希は気付かれないように学校へと戻ろうとしたのだが、体を反転させるよりも早くイザーに腕を掴まれて逃げられなくなってしまった。
「パンを買ったことがみんなにバレると面倒なことになると思うし、あの公園で食べてから戻ろうか。多少遅れたとしても、先生も見逃してくれると思うし」
「いや、それはやめておいた方がいいと思うよ。やっぱり学校に戻って食べた方がいいと思うな」
「学校に戻って食べようとしても、たぶん珠希ちゃんのお饅頭はみんなに取られちゃうと思うよ。だから、先に食べてから戻った方がいいと思うな。もう一つ買えばいいかって思ってるかもしれないけど、あのお姉さんたちが全部買っちゃったみたいだから売り切れになってるっぽいね。残念残念」
イザーが掴んでいる手に力は入っていないと思うのだけれど、少しでも抵抗しようとすると今までに感じたことのないほどの痛みが全身を襲っていた。逆らうことが出来ない状況に追い込まれてしまったと思い知らされた工藤珠希は抵抗するのをやめて公園へと向かうことにした。
小さい公園なのでベンチは少なかったのだが、偶然にも他に利用者がいなかったので全員無事に座ることが出来たのだ。
買ってきたパンを食べているイザーはとても幸せそうに見えていた。こんなに幸せそうに食べているなら揉め事なんて起きないかもしれないと思い始めた工藤珠希はチラリとセクシーなお姉さんたちの方を見たのだが、セクシーなお姉さんたちは般若とでもいうしかない表情で自分たちの事を睨みつけていたのだ。
絶対に揉め事に発展すると思った工藤珠希はこの現実を忘れるためにも買ったお饅頭と貰ったパンを食べてみようと思った。
「そのお饅頭ってすごく美味しそうだね。あんまり和菓子とか食べないから買おうって思ったことなかったけど、今度来た時に買ってみようかな」
「こんなに大きいのは一人で食べられないから半分食べてみる?」
「ありがとう。じゃあ、私が買ったパンも半分あげるね」
セクシーなお姉さんたちの方を見ないように気を付けていた工藤珠希。
イザーもセクシーなお姉さんたちの事なんてまったく気にしていないようにしていたのだが、お互いに分け合ったパンとお饅頭を食べ終わるとゴミをまとめて袋に入れて鞄にしまっていた。
「ちょっとだけ鞄を預かっててもらってもいいかな。食後の運動してくるね」
工藤珠希がそれに答える前にイザーはセクシーなお姉さんたちの方へと向かっていった。イザーを止めようと思った工藤珠希ではあったが、振り返ったイザーが見せたウインクの意味が分からず固まってしまっていた。
「今から仲間を呼びに行ってもいいんだぞ。お前一人で私たちを相手に出来ると思ってるのか?」
「何言ってんの。あんたらの方こそもっとたくさん集めた方がいいんじゃないの。たったそれだけの人数で私の相手がつとまるとでも思ってるわけ?」
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「栗宮院うまながどれほど強いか知らないけどな、こっちだってそれなりに力はあるつもりなんだよ。たった一人で私らをどうにか出来ると思うなよ」
「だからさ、私はうまなちゃんじゃないって言ってるでしょ。何回言えば理解出来るのか知らんけど、そんな程度の頭脳しかないような奴に私が負けるわけないだろ」
「何言ってんだテメエ。どっからどう見ても栗宮院うまなだろうが。一人で向かってきて勇気があるのかと思ったら、そんな嘘をついてごまかそうとするとか意味わかんねえな」
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なぜかイザーの事を栗宮院うまなだと思い込んでいるセクシーなお姉さん軍団。その間違いを訂正しようと近付こうと思った工藤珠希は不思議な圧力を感じてベンチから立ち上がることが出来なかった。
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