百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎

文字の大きさ
上 下
25 / 45

第25話 エッチなお姉さん

しおりを挟む
 サキュバスに異世界人に悪魔。その後に出てくるのは天使なんだろうなと思いながら過ごしていた工藤珠希の前に現れたのは、何の変哲もないごく普通のどこにでもいるようなただのサキュバスであった。
 サキュバスがその辺にいてたまるかと言う思いもあるのだろうが、零楼館高校にいる女性がほとんどサキュバスだという事を考えれば街中にサキュバスがいても何らおかしくはないだろう。
 冷静に考えるとおかしいことではあるのだけれど、高校入学二日目にしてあまりにも多くの出来事があり過ぎたためか工藤珠希はサキュバスがいるという事をごく自然に受け入れてしまっていたのだ。

「あなたが工藤珠希さんですね。なるほど、栗宮院うまなが必死になるわけだ。今はお一人のようですが、誰かお付きの人はいないのですか?」
「そんな人はいないですけど。あなたとどこかでお会いしましたっけ?」

 妖艶な魅力を放つ女性は嘗め回すように工藤珠希の事を見つめている。その視線に耐えられなくなった工藤珠希はわずかに視線を外したのだ。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。私は栗宮院うまなと違ってごく普通のどこにでもいるサキュバスですからね。あなたのような少女に会いに来ることなんて本来ならありえないことなのですが、栗宮院うまなが関わっているのでご挨拶をしておかなくてはと思いまして。では、また近いうちにお会いしましょう」

 生まれて初めて見たごく普通のどこにでもいるサキュバスはちょっとエッチなお姉さんにしか見えなかった。
 自然と目を引くような姿のお姉さんではあったが、工藤珠希の視界から消えるまでの間にすれ違った人たちはまったく気にしていなかったのは意外だった。あんなにエッチな格好をしている女性がいれば男子は振り向いてしまいそうなのだが、すれ違った高校生も大人もサキュバスの事を見ようとしなかった。

「何か気になることでもあったのかな。俺で良かったら珠希さんの質問に答えてあげるけど、どうかな?」

 突然現れた野城君に驚いてしまったものの、工藤珠希はそんな様子は微塵も感じさせずに落ち着いた感じで挨拶をしていた。
 お互いに挨拶を交わすと、工藤珠希はさっそく気になっていたことを聞いていた。

「さっきのエッチなお姉さんって、普通の人には見えないの?」
「そのエッチなお姉さんってのが誰なのかわからないけど、珠希さんには見えて俺には見えない人がいたって事なんだろうね。珠希さんを見かけた時に独り言を言っていたから近付かないでおこうかなって思ったんだけど、何となく不安そうな顔をしていたように見えたから話しかけてしまったんだよね。その、エッチなお姉さんってもう近くにいないの?」

 野城君の言葉を受けて工藤珠希はその辺に隠れていないか探してみたのだけれど、先ほどのお姉さんは当然どこにも隠れている様子は見られなかった。そのかわり、空中で胡坐をかいて浮かんでいる猿のお面を付けた得体の知れない人物が目に入ってきた。
 工藤珠希はそれに気が付かなかったフリをして野城君と話をすることにした。

「さっきのお姉さんはどこにもいないみたいだよ。男性の趣味はわからないけれど、あのお姉さんはどんな男の人でも見とれちゃうと思うんだけどな。どこにいったんだろうね」
「そんなに言い切るほど凄い人だったんなら見たかったな。どうして俺たちには見えないんだろう?」
「その答えになるかはわからないけど、あのお姉さんは自分の事をどこにでもいるようなごく普通のサキュバスだって言ってたよ」

 いつも笑顔を浮かべている野城君が一瞬で真顔になっていた。
 何か変なことを言ってしまったかと思って自分の言葉を思い出していた工藤珠希ではあったが、その言葉におかしなものは何一つなかったと思う。
 それでも、野城君の表情は元に戻らずやや緊張した面持ちで辺りをキョロキョロと警戒し始めていた。

 何をそんなに警戒しているのだろうと思った工藤珠希。野城君は壁から離れた道路の中央に移動していた。
 工藤珠希はそんな野城君を見て、警戒しているのなら壁を背にした方がいいのではないかと思ったのだが、そんな事をいちいち言ったりするのは違うような気がして野城君の行動をジッと見ていたのだ。

「その綺麗でセクシーなお姉さんは自分の事をサキュバスって言ってたんだよね?」
「うん、ごく普通のどこにでもいるようなサキュバスって言ってたよ。ごっく普通のどこにでもいるサキュバスなんて見たことないけど、そんなにありふれたものなの?」

「ありふれたという表現があっているのかはわからないけど、俺が見たり聞いたり調べた結果、その辺にサキュバスやその他の悪魔はごく普通に存在しているという事だった。ただし、そんな彼らに接触するためにはそうとうの運と生き残るだけの力が必要になっちゃうみたいだよ。野良サキュバスなんて太郎でも無事に戻ってこられるか不安になってたりするんだよな」
「野良ってのはどういう意味なのかな?」
「便宜上区別しているだけで本当はどういう定義があるのか誰も調べられないんだ。中にはどれにも当てはまらないけれど、どの兵隊よりも貢献しているような気もするんだよね」
「学校にいるサキュバスは野良じゃないって事でいいんだよね?」

「そういう事にはなるかな。でも、学校にいるサキュバス達も危険なことには変わりないんだけどね。色々と制約があった方が力を発揮出来るとか出来ないとかそういった話もあるみたいだよ。そんな事をしなくても危険なことには変わりないけどね。俺は大丈夫だけどさ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

処理中です...