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第25話 エッチなお姉さん
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サキュバスに異世界人に悪魔。その後に出てくるのは天使なんだろうなと思いながら過ごしていた工藤珠希の前に現れたのは、何の変哲もないごく普通のどこにでもいるようなただのサキュバスであった。
サキュバスがその辺にいてたまるかと言う思いもあるのだろうが、零楼館高校にいる女性がほとんどサキュバスだという事を考えれば街中にサキュバスがいても何らおかしくはないだろう。
冷静に考えるとおかしいことではあるのだけれど、高校入学二日目にしてあまりにも多くの出来事があり過ぎたためか工藤珠希はサキュバスがいるという事をごく自然に受け入れてしまっていたのだ。
「あなたが工藤珠希さんですね。なるほど、栗宮院うまなが必死になるわけだ。今はお一人のようですが、誰かお付きの人はいないのですか?」
「そんな人はいないですけど。あなたとどこかでお会いしましたっけ?」
妖艶な魅力を放つ女性は嘗め回すように工藤珠希の事を見つめている。その視線に耐えられなくなった工藤珠希はわずかに視線を外したのだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。私は栗宮院うまなと違ってごく普通のどこにでもいるサキュバスですからね。あなたのような少女に会いに来ることなんて本来ならありえないことなのですが、栗宮院うまなが関わっているのでご挨拶をしておかなくてはと思いまして。では、また近いうちにお会いしましょう」
生まれて初めて見たごく普通のどこにでもいるサキュバスはちょっとエッチなお姉さんにしか見えなかった。
自然と目を引くような姿のお姉さんではあったが、工藤珠希の視界から消えるまでの間にすれ違った人たちはまったく気にしていなかったのは意外だった。あんなにエッチな格好をしている女性がいれば男子は振り向いてしまいそうなのだが、すれ違った高校生も大人もサキュバスの事を見ようとしなかった。
「何か気になることでもあったのかな。俺で良かったら珠希さんの質問に答えてあげるけど、どうかな?」
突然現れた野城君に驚いてしまったものの、工藤珠希はそんな様子は微塵も感じさせずに落ち着いた感じで挨拶をしていた。
お互いに挨拶を交わすと、工藤珠希はさっそく気になっていたことを聞いていた。
「さっきのエッチなお姉さんって、普通の人には見えないの?」
「そのエッチなお姉さんってのが誰なのかわからないけど、珠希さんには見えて俺には見えない人がいたって事なんだろうね。珠希さんを見かけた時に独り言を言っていたから近付かないでおこうかなって思ったんだけど、何となく不安そうな顔をしていたように見えたから話しかけてしまったんだよね。その、エッチなお姉さんってもう近くにいないの?」
野城君の言葉を受けて工藤珠希はその辺に隠れていないか探してみたのだけれど、先ほどのお姉さんは当然どこにも隠れている様子は見られなかった。そのかわり、空中で胡坐をかいて浮かんでいる猿のお面を付けた得体の知れない人物が目に入ってきた。
工藤珠希はそれに気が付かなかったフリをして野城君と話をすることにした。
「さっきのお姉さんはどこにもいないみたいだよ。男性の趣味はわからないけれど、あのお姉さんはどんな男の人でも見とれちゃうと思うんだけどな。どこにいったんだろうね」
「そんなに言い切るほど凄い人だったんなら見たかったな。どうして俺たちには見えないんだろう?」
「その答えになるかはわからないけど、あのお姉さんは自分の事をどこにでもいるようなごく普通のサキュバスだって言ってたよ」
いつも笑顔を浮かべている野城君が一瞬で真顔になっていた。
何か変なことを言ってしまったかと思って自分の言葉を思い出していた工藤珠希ではあったが、その言葉におかしなものは何一つなかったと思う。
それでも、野城君の表情は元に戻らずやや緊張した面持ちで辺りをキョロキョロと警戒し始めていた。
何をそんなに警戒しているのだろうと思った工藤珠希。野城君は壁から離れた道路の中央に移動していた。
工藤珠希はそんな野城君を見て、警戒しているのなら壁を背にした方がいいのではないかと思ったのだが、そんな事をいちいち言ったりするのは違うような気がして野城君の行動をジッと見ていたのだ。
「その綺麗でセクシーなお姉さんは自分の事をサキュバスって言ってたんだよね?」
「うん、ごく普通のどこにでもいるようなサキュバスって言ってたよ。ごっく普通のどこにでもいるサキュバスなんて見たことないけど、そんなにありふれたものなの?」
「ありふれたという表現があっているのかはわからないけど、俺が見たり聞いたり調べた結果、その辺にサキュバスやその他の悪魔はごく普通に存在しているという事だった。ただし、そんな彼らに接触するためにはそうとうの運と生き残るだけの力が必要になっちゃうみたいだよ。野良サキュバスなんて太郎でも無事に戻ってこられるか不安になってたりするんだよな」
「野良ってのはどういう意味なのかな?」
「便宜上区別しているだけで本当はどういう定義があるのか誰も調べられないんだ。中にはどれにも当てはまらないけれど、どの兵隊よりも貢献しているような気もするんだよね」
「学校にいるサキュバスは野良じゃないって事でいいんだよね?」
「そういう事にはなるかな。でも、学校にいるサキュバス達も危険なことには変わりないんだけどね。色々と制約があった方が力を発揮出来るとか出来ないとかそういった話もあるみたいだよ。そんな事をしなくても危険なことには変わりないけどね。俺は大丈夫だけどさ」
サキュバスがその辺にいてたまるかと言う思いもあるのだろうが、零楼館高校にいる女性がほとんどサキュバスだという事を考えれば街中にサキュバスがいても何らおかしくはないだろう。
冷静に考えるとおかしいことではあるのだけれど、高校入学二日目にしてあまりにも多くの出来事があり過ぎたためか工藤珠希はサキュバスがいるという事をごく自然に受け入れてしまっていたのだ。
「あなたが工藤珠希さんですね。なるほど、栗宮院うまなが必死になるわけだ。今はお一人のようですが、誰かお付きの人はいないのですか?」
「そんな人はいないですけど。あなたとどこかでお会いしましたっけ?」
妖艶な魅力を放つ女性は嘗め回すように工藤珠希の事を見つめている。その視線に耐えられなくなった工藤珠希はわずかに視線を外したのだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。私は栗宮院うまなと違ってごく普通のどこにでもいるサキュバスですからね。あなたのような少女に会いに来ることなんて本来ならありえないことなのですが、栗宮院うまなが関わっているのでご挨拶をしておかなくてはと思いまして。では、また近いうちにお会いしましょう」
生まれて初めて見たごく普通のどこにでもいるサキュバスはちょっとエッチなお姉さんにしか見えなかった。
自然と目を引くような姿のお姉さんではあったが、工藤珠希の視界から消えるまでの間にすれ違った人たちはまったく気にしていなかったのは意外だった。あんなにエッチな格好をしている女性がいれば男子は振り向いてしまいそうなのだが、すれ違った高校生も大人もサキュバスの事を見ようとしなかった。
「何か気になることでもあったのかな。俺で良かったら珠希さんの質問に答えてあげるけど、どうかな?」
突然現れた野城君に驚いてしまったものの、工藤珠希はそんな様子は微塵も感じさせずに落ち着いた感じで挨拶をしていた。
お互いに挨拶を交わすと、工藤珠希はさっそく気になっていたことを聞いていた。
「さっきのエッチなお姉さんって、普通の人には見えないの?」
「そのエッチなお姉さんってのが誰なのかわからないけど、珠希さんには見えて俺には見えない人がいたって事なんだろうね。珠希さんを見かけた時に独り言を言っていたから近付かないでおこうかなって思ったんだけど、何となく不安そうな顔をしていたように見えたから話しかけてしまったんだよね。その、エッチなお姉さんってもう近くにいないの?」
野城君の言葉を受けて工藤珠希はその辺に隠れていないか探してみたのだけれど、先ほどのお姉さんは当然どこにも隠れている様子は見られなかった。そのかわり、空中で胡坐をかいて浮かんでいる猿のお面を付けた得体の知れない人物が目に入ってきた。
工藤珠希はそれに気が付かなかったフリをして野城君と話をすることにした。
「さっきのお姉さんはどこにもいないみたいだよ。男性の趣味はわからないけれど、あのお姉さんはどんな男の人でも見とれちゃうと思うんだけどな。どこにいったんだろうね」
「そんなに言い切るほど凄い人だったんなら見たかったな。どうして俺たちには見えないんだろう?」
「その答えになるかはわからないけど、あのお姉さんは自分の事をどこにでもいるようなごく普通のサキュバスだって言ってたよ」
いつも笑顔を浮かべている野城君が一瞬で真顔になっていた。
何か変なことを言ってしまったかと思って自分の言葉を思い出していた工藤珠希ではあったが、その言葉におかしなものは何一つなかったと思う。
それでも、野城君の表情は元に戻らずやや緊張した面持ちで辺りをキョロキョロと警戒し始めていた。
何をそんなに警戒しているのだろうと思った工藤珠希。野城君は壁から離れた道路の中央に移動していた。
工藤珠希はそんな野城君を見て、警戒しているのなら壁を背にした方がいいのではないかと思ったのだが、そんな事をいちいち言ったりするのは違うような気がして野城君の行動をジッと見ていたのだ。
「その綺麗でセクシーなお姉さんは自分の事をサキュバスって言ってたんだよね?」
「うん、ごく普通のどこにでもいるようなサキュバスって言ってたよ。ごっく普通のどこにでもいるサキュバスなんて見たことないけど、そんなにありふれたものなの?」
「ありふれたという表現があっているのかはわからないけど、俺が見たり聞いたり調べた結果、その辺にサキュバスやその他の悪魔はごく普通に存在しているという事だった。ただし、そんな彼らに接触するためにはそうとうの運と生き残るだけの力が必要になっちゃうみたいだよ。野良サキュバスなんて太郎でも無事に戻ってこられるか不安になってたりするんだよな」
「野良ってのはどういう意味なのかな?」
「便宜上区別しているだけで本当はどういう定義があるのか誰も調べられないんだ。中にはどれにも当てはまらないけれど、どの兵隊よりも貢献しているような気もするんだよね」
「学校にいるサキュバスは野良じゃないって事でいいんだよね?」
「そういう事にはなるかな。でも、学校にいるサキュバス達も危険なことには変わりないんだけどね。色々と制約があった方が力を発揮出来るとか出来ないとかそういった話もあるみたいだよ。そんな事をしなくても危険なことには変わりないけどね。俺は大丈夫だけどさ」
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