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第18話 死者蘇生
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サキュバスがいるのであれば異世界人がいてもおかしい話ではない。
納得しかけた工藤珠希ではあったが、それが本当なのか疑問であった。Sクラスの生徒がサキュバスでSRクラスも大半の女子生徒がサキュバスだというのも信じ切ることが出来ていないのにもかかわらず、ドクターポンピーノが自分の事を異世界人だというのを信じることが出来るのだろうか。
普通はそんな話を信じることなんて出来ないと思うのだが、工藤太郎は全く疑う事もなくそれを信じて悔しがっていた。どうしてこの男は何でもかんでも信じてしまうのだろうと思う工藤珠希ではあったが、ここまで人を信じている工藤太郎だからこそ誰からも信用されているという事なのかもしれないと感心していた。
「私も色々とあってこの世界にやってきてはいるんだけど、私がこの世界に来たのは工藤珠希君、君がいるからなんだよ。私はサキュバス達とは違って君に惚れているわけではなく、純粋に君の事に興味があるんだ。普段の食生活に平均睡眠時間に平均入浴時間なんかも気になるね。工藤太郎君に聞けばある程度は教えて貰えると思うんだが、他人に聞くよりも本人に直接聞いた方がいいと思うんだよ。でも、君はそんな私の質問なんかには答えてくれないんだろうね。それはそれでいいんだが、気が向いたら採血だけでもさせてほしいんだよ」
「そんな風に言われたら教えるのも嫌ですけど、採血とかもっと嫌なんですけど。ボクよりも太郎の事を調べた方がいいと思いますよ」
「工藤太郎君も特別な人間だという事には変わりないんだが、君の場合はそういう次元とは違う話になってくるんだよ。どんな事をしてもどんな手段を用いても調べてみたいという思いはあるのだけれど、他のみんなを裏切って先走ることなんて出来やしないからね。ただし、君が個人的に私に協力してくれるとなったら話は別さ。この学校にいる限り、君の意志は最大限尊重されることになっているので、私が勝手に君の事をどうにかすることなんて出来ないんだよ。たとえ、君の髪の毛がそこに落ちていたとしても、私がその髪の毛を拾って遺伝子の研究なんかをすることも出来ないって事なんだよね。君が協力してくれるというのであれば、話は変わってくるのだけどね」
「それをボクに伝えるためにここに呼んだんですか?」
「おっと、君が私の目の前にいることで我を忘れてしまったよ。申し訳ないね。では、そろそろ本題に入るとするか。君たち二人は亡くなった人が蘇って再び人生を歩みだしたのを見た経験はあるかな?」
工藤珠希も工藤太郎も普通の生活を送ってきた普通の人間なのである。
工藤太郎の両親が亡くなっていることを考えると同年代の生徒よりも人の死に接していると言えるのだろうが、この学校ではそれ以上に死が身近なような気がしている。
今回の抗争開始と同時に何のためらいもなく命を奪っている事は普通ではありえないと思うし、それを受けた生徒たちも今回は死者が少ないという感想も普通ではないと思っている。それらをおかしいと感じているのは工藤珠希一人しかいない事を思うと、工藤珠希の方がおかしいのではないかと思ってしまいそうではあるけれど、人が死んでも何も思わないのは普通ではないはずだ。
小さい時に両親を亡くした工藤太郎がその時は何も理解出来なくて亡くなって柩の中で眠っている両親の頭をずっと撫でていた事もあったのだが、今の工藤太郎はその時以上に死と言うものを正しく認識していないようと工藤珠希の目に映っていたのだ。
「では、これから司令官だった二人を生き返らせるね。と言っても、特にすることはないんで気楽に見ていてよ。この子たちが本当に死んでいるか気になるんだったら調べてもらっても良いけど、珠希君は触りたくないだろうし太郎君は男の子だから変な誤解を生まないためにも触らない方がいいかもね。じゃあ、生き返らせるからそこで見ててね」
ドクターポンピーノが二人が眠る柩に付いているボタンを押すと柩の中に薄紫色の煙が発生していた。
まるでドライアイスにお湯をかけた時のように煙がモクモクと出ているのだが、その煙は柩から離れて床につくと消えていた。
煙が出ているところをじっと見ている二人は何が始まるのだろうと少しだけワクワクしていたのだが、よくよく考えてみると自分たちが見ているのは司令官の眠る柩なのだ。
黙々と出続けている煙の勢いが少しずつ弱まってくると同時に柩の縁に手をかけて司令官がほぼ同時に置きあがっていた。
直接確かめてはいないが、亡くなっていたと思っていた二人が動き出したことに驚いた工藤珠希は思わず隣にいた工藤太郎の手をギュッと握りしめたのだ。工藤太郎はそれに答えるように手を握り返そうと思ったのだが、工藤珠希に手の甲をギュッと握られているので力が入らずに受け入れることしかできなかった。
「うん、今回も失敗せずに上手くいったようだね。君たち二人は名誉の戦死を遂げたのだが、覚えているかな?」
上体を起こした二人は自分の状況を理解出来ていないのか戸惑っているようだったが、ドクターポンピーノを見てその言葉を聞いて全てを理解したのか大きく頷いてからゆっくりと柩から出てきた。
亡くなった人が柩から出てくるという言葉だけを聞くとホラーのようにしか思えないのだけれど、司令官だった二人は気持ちの良い目覚めだったとでもいうように大きく背伸びをしてから三人に向かって深々と頭を下げてから仲良く手を繋いで処置室から出ていった。
「生き返った直後は声帯が上手く機能していないので喋ることは難しいんだよ。君たちはこの学校で死ぬことなんて無いと思うけど、仮に死んだときがあったとしても生き返ってすぐに喋ることが出来なくても気にしなくていいからね」
工藤珠希は驚いて声も出ない。死んでから生き返った二人の司令官のように声帯が機能していないのではないかと思ってしまうくらい声が出なかったのだが、驚きすぎた結果声も出せなくなっているだけであった。
「うーん、珠希君には刺激が強すぎたみたいだね。サプライズはほどほどにしておいた方がよさそうだね」
心配そうに見つめる工藤珠希と嬉しそうに見つめるドクターポンピーノ。
そんな二人をどんな風に見ていたのか、その時の記憶があやふやな状態の工藤珠希はいつも以上に瞬きの回数が増えていたのであった。
納得しかけた工藤珠希ではあったが、それが本当なのか疑問であった。Sクラスの生徒がサキュバスでSRクラスも大半の女子生徒がサキュバスだというのも信じ切ることが出来ていないのにもかかわらず、ドクターポンピーノが自分の事を異世界人だというのを信じることが出来るのだろうか。
普通はそんな話を信じることなんて出来ないと思うのだが、工藤太郎は全く疑う事もなくそれを信じて悔しがっていた。どうしてこの男は何でもかんでも信じてしまうのだろうと思う工藤珠希ではあったが、ここまで人を信じている工藤太郎だからこそ誰からも信用されているという事なのかもしれないと感心していた。
「私も色々とあってこの世界にやってきてはいるんだけど、私がこの世界に来たのは工藤珠希君、君がいるからなんだよ。私はサキュバス達とは違って君に惚れているわけではなく、純粋に君の事に興味があるんだ。普段の食生活に平均睡眠時間に平均入浴時間なんかも気になるね。工藤太郎君に聞けばある程度は教えて貰えると思うんだが、他人に聞くよりも本人に直接聞いた方がいいと思うんだよ。でも、君はそんな私の質問なんかには答えてくれないんだろうね。それはそれでいいんだが、気が向いたら採血だけでもさせてほしいんだよ」
「そんな風に言われたら教えるのも嫌ですけど、採血とかもっと嫌なんですけど。ボクよりも太郎の事を調べた方がいいと思いますよ」
「工藤太郎君も特別な人間だという事には変わりないんだが、君の場合はそういう次元とは違う話になってくるんだよ。どんな事をしてもどんな手段を用いても調べてみたいという思いはあるのだけれど、他のみんなを裏切って先走ることなんて出来やしないからね。ただし、君が個人的に私に協力してくれるとなったら話は別さ。この学校にいる限り、君の意志は最大限尊重されることになっているので、私が勝手に君の事をどうにかすることなんて出来ないんだよ。たとえ、君の髪の毛がそこに落ちていたとしても、私がその髪の毛を拾って遺伝子の研究なんかをすることも出来ないって事なんだよね。君が協力してくれるというのであれば、話は変わってくるのだけどね」
「それをボクに伝えるためにここに呼んだんですか?」
「おっと、君が私の目の前にいることで我を忘れてしまったよ。申し訳ないね。では、そろそろ本題に入るとするか。君たち二人は亡くなった人が蘇って再び人生を歩みだしたのを見た経験はあるかな?」
工藤珠希も工藤太郎も普通の生活を送ってきた普通の人間なのである。
工藤太郎の両親が亡くなっていることを考えると同年代の生徒よりも人の死に接していると言えるのだろうが、この学校ではそれ以上に死が身近なような気がしている。
今回の抗争開始と同時に何のためらいもなく命を奪っている事は普通ではありえないと思うし、それを受けた生徒たちも今回は死者が少ないという感想も普通ではないと思っている。それらをおかしいと感じているのは工藤珠希一人しかいない事を思うと、工藤珠希の方がおかしいのではないかと思ってしまいそうではあるけれど、人が死んでも何も思わないのは普通ではないはずだ。
小さい時に両親を亡くした工藤太郎がその時は何も理解出来なくて亡くなって柩の中で眠っている両親の頭をずっと撫でていた事もあったのだが、今の工藤太郎はその時以上に死と言うものを正しく認識していないようと工藤珠希の目に映っていたのだ。
「では、これから司令官だった二人を生き返らせるね。と言っても、特にすることはないんで気楽に見ていてよ。この子たちが本当に死んでいるか気になるんだったら調べてもらっても良いけど、珠希君は触りたくないだろうし太郎君は男の子だから変な誤解を生まないためにも触らない方がいいかもね。じゃあ、生き返らせるからそこで見ててね」
ドクターポンピーノが二人が眠る柩に付いているボタンを押すと柩の中に薄紫色の煙が発生していた。
まるでドライアイスにお湯をかけた時のように煙がモクモクと出ているのだが、その煙は柩から離れて床につくと消えていた。
煙が出ているところをじっと見ている二人は何が始まるのだろうと少しだけワクワクしていたのだが、よくよく考えてみると自分たちが見ているのは司令官の眠る柩なのだ。
黙々と出続けている煙の勢いが少しずつ弱まってくると同時に柩の縁に手をかけて司令官がほぼ同時に置きあがっていた。
直接確かめてはいないが、亡くなっていたと思っていた二人が動き出したことに驚いた工藤珠希は思わず隣にいた工藤太郎の手をギュッと握りしめたのだ。工藤太郎はそれに答えるように手を握り返そうと思ったのだが、工藤珠希に手の甲をギュッと握られているので力が入らずに受け入れることしかできなかった。
「うん、今回も失敗せずに上手くいったようだね。君たち二人は名誉の戦死を遂げたのだが、覚えているかな?」
上体を起こした二人は自分の状況を理解出来ていないのか戸惑っているようだったが、ドクターポンピーノを見てその言葉を聞いて全てを理解したのか大きく頷いてからゆっくりと柩から出てきた。
亡くなった人が柩から出てくるという言葉だけを聞くとホラーのようにしか思えないのだけれど、司令官だった二人は気持ちの良い目覚めだったとでもいうように大きく背伸びをしてから三人に向かって深々と頭を下げてから仲良く手を繋いで処置室から出ていった。
「生き返った直後は声帯が上手く機能していないので喋ることは難しいんだよ。君たちはこの学校で死ぬことなんて無いと思うけど、仮に死んだときがあったとしても生き返ってすぐに喋ることが出来なくても気にしなくていいからね」
工藤珠希は驚いて声も出ない。死んでから生き返った二人の司令官のように声帯が機能していないのではないかと思ってしまうくらい声が出なかったのだが、驚きすぎた結果声も出せなくなっているだけであった。
「うーん、珠希君には刺激が強すぎたみたいだね。サプライズはほどほどにしておいた方がよさそうだね」
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