百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎

文字の大きさ
上 下
3 / 45

第3話 入学式とは?

しおりを挟む
「この学校のクラス分けはSクラスとRクラスに分かれているのはわかってると思うけど、あなたたち二人はそのどちらでもないSRクラスになるからね。工藤さん、二人とも工藤さんだからこれからは名前で呼ばせてもらうけど良いわよね?」

 小学校時代から苗字ではなく名前で呼ばれることの多かった二人は教師に名前で呼ばれることに抵抗は無かったのだが、生徒の事を名前で呼ぶことになる教師側に立って考えると少し抵抗があるのかもしれない。

「珠希さんも太郎さんも優秀だから問題無いと思うんだけど、勉強でわからないことがあったら何でも私に聞いてくれていいからね。私がわからないことでもわかる先生に聞いてあげるから遠慮なんてしないでね。あなたたち二人が大学に進むつもりだったらそれもサポートするつもりだからね」
「大学なんて考えてなかったです。でも、ここって幼稚園から大学まで一貫校ですもんね。そう考えると、進路って半分くらい決まってるみたいなもんなんですかね」
「そうね。悪いことをせずに真面目に授業を受けてある程度の成績を維持できれば問題ないわ。太郎さんの場合は部活で頑張ってくれればいいって話なんだけど、太郎さんは勉強も出来るから心配いらないかもね」

 零楼館高校に今まで外部入学が少なかったことには理由がある。
 一番大きな理由としては、入試の合格ラインが異常に高すぎるという事だ。全教科満点をとるか部活動の全国大会で優勝かそれに準ずる成績を残すというのが最低限の合格ラインなのである。
 工藤太郎はそのどちらも満たしているという事もあり、面接でも何も問題が無かったことで高校生男子としては史上初の外部入学生となったのだ。小学校や中学校から入学することが出来たものは何人もいたのだが、高校からとなると試験の出題範囲も広くなってしまうので誰一人として合格することが出来る生徒はいなかったのだ。

「今日は入学式という日程にはなっているんだけど、君たち二人以外はみんな中学からの内部進学なんで何も変わらないんだよね。小学校と中学校ではそれなりに外部入学の生徒もいたのでちゃんとした入学式を行っているんだけど、高校ともなると外部入学なんてほとんど無いから去年は普通にオリエンテーションで終わっちゃってたんだって。私は去年の秋からここに赴任してきたんで詳しいことはわからないんだけど、これから君たち二人のための入学式を行うって事だよ。そんなに緊張しなくても大丈夫。理事長と生徒会長のお話を聞くだけでいいからね。何かみんなに言いたいことがあれば何でも言ってくれていいんだけど、出来れば事前に言うことを教えてくれると嬉しいな」

 これから行われる二人のためだけの入学式。
 外部入学という事で誰よりも注目されると思っていた二人ではあったが、自分たち二人のための入学式を行うという事を聞いて工藤珠希は余計に身構えてしまったのだ。何か悪いことをしているという事も無いのでビクビクする必要もないのだが、その表情は緊張でこわばっているように見えていた。

「ほら、そんなに緊張することないよ。コレから試験を受けるってわけでもないんだから緊張しなくても大丈夫だよ。いつもの可愛らしい珠希ちゃんでいれば大丈夫だって」
「そうですよ。太郎さんの言う通りです。珠希さんは普段通り可愛らしい感じで座っていてくれればいいんですよ」
「緊張するんだったら俺の手を握ってても良いからね」

 工藤太郎は和ませようとしてそう言ったのだが、なぜか片岡先生はそんな工藤太郎を睨みつけていた。そこまで怒られるようなことではないと思っていたので工藤太郎は珍しく動揺してしまい慌てて二人に頭を下げていた。
 工藤珠希はそんな工藤太郎を見て頭を上げるように言っていたのだが、片岡先生は工藤太郎の背中を軽く叩いてから工藤珠希に聞こえないように何かを囁いていた。

 ニコニコとしていた工藤太郎は一瞬だけ真顔になっていたものの、工藤珠希と目が合うといつものように笑顔に戻っていた。

「変なこと言ってごめんね。これからは気を付けるよ」
「別にボクは気にしてないけど。あんたって和ませてくれてたじゃない。急にどうしちゃったの?」
「いや、何となく申し訳ないなって思っただけだから」
「そんなの太郎らしくないよ。ほら、普通にしててくれていいから。あんたが落ち込んでると私も緊張しちゃうじゃない。ね、だから普通にしててよ」
「うん、ごめんね」

「仲が良いのは良いことだけど、君たちはもう高校生なんだから節度を持ってね。二人とも特別な生徒だってことを自覚しなくちゃダメよ。珠希さんも太郎さんもみんなから注目されてるって事は忘れないでね」
「注目されてるってのは、外部入学だからって事ですよね?」
「そうだね。詳しいことはこれからの入学式で説明してくれると思うよ。この学校の生徒も教師も職員もみんな君たち二人の事に興味津々だからね。と、その前に君たち二人にこの学校の施設について案内しておかないとね。入学式が終わったらそんな余裕も無くなっちゃうと思うし、入学式の準備にももう少し時間がかかるみたいだから丁度いいかなって思うんだ。パンフレットはもう見てるよね?」

 二人は同時に頷くと片岡先生は安心したように微笑んだ。

「それなら良かった。パンフレットを見れば大体の施設の場所とか位置関係もわかると思うんだけど、それのおさらいをしておこうか。地図で見るのと実際に見るのでは違うだろうし、窓から見える風景も覚えておいた方がいいかもしれないからね。君たち二人の教室は地図に載ってないと思うんで最後に教えるよ」

 実際に歩いていると地図で見るよりも校舎がずっと大きいことを実感できた二人であった。
 自分たちの教室が地図に載っていなかったのが気になっていた工藤珠希ではあったが、その理由がわかったのは実際にその目で確認した時であった。

「君たちのSRクラスは屋上にあるこの教室を使ってもらうことになるからね。最上階にあるんで通うのはちょっと大変かもしれないけど、SクラスとRクラスと分ける必要があるから仕方ないんだよ。でも、君たちのクラス専用のトイレも更衣室も用意されてるから心配しなくていいからね。学食はみんなと一緒だけど、そこは我慢してもらえると嬉しいな」

 どこの教室に入るにも学生証を使うことになるのだが、SRクラスの教室に入るにはこのクラスの生徒である必要があるそうだ。
 教師もこのクラスを担当している者だけが自由に出入りすることが出来るそうなのだが、そこまでする必要があるのかと工藤珠希は疑問に思っていたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...