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継承

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「ルシフェル君が俺を殺した後に世界がどう変わっていくのか興味があるけれど、俺はそれを確認することが出来ないんだね」
「正直に言うと、僕があなたを殺したところで何かが変わるとは思っていませんが、ここまで来たからにはやらせていただきたいと思います」
「そうだね。ルシフェル君は俺の期待以上に活躍してくれていたね。本当に期待以上の成果を上げていてくれるよ。天使も悪魔もあの世界には必要な存在だったんだけど、ルシフェル君はその事を今も理解出来ていない、理解しようとしないんだよ。物事を俯瞰で見ることが出来ているとしてもルシフェル君には過去の歴史から学ぶことが出来なかった。あの世界には過去の歴史を学ぶことが出来る物が無かったのだから仕方ないとは思うけれど、ルシフェル君は今と未来しか見ていないんだよ。過去の失敗から学ぶべきことも多くあると思うんだけど、それは今から学んでいくといいさ。俺を殺したってルシフェル君が望む未来になる事は無いし、ルシフェル君にとって明るい未来が待っているかはわからないけれど、一つだけ言えることがあるんだよ。俺を殺したとしてもルシフェル君が探しているサクラ君は戻らない。これは確実に言える事なんだ。さあ、あの世界を新たに創りかえるためにも俺の力を奪い取るといいさ」
「すいません。本当にすいません。僕には何が正しいかわからなくなってきましたが、あなたの命は貰います。すいません」

 僕はなるべく苦しまないようにと思い、彼の首を取り出した大鎌で刎ねた。彼は何か言おうとしているようだったけれど、彼の口からは何の言葉も出ていなかった。

 彼の代わりに光の柱に包まれている女が僕に話しかけてきた。

「ああ、本当にやっちゃったんだね。これでルシフェルさんは中村さんの能力を引き継いだと思うんですけど、どうでしょう?」
「彼は中村さんって言うんですね。彼の能力ってどんな感じなんだろう?」
「中村さんの能力は、『世界を創りかえる』能力ですね。創りかえるだけで殖やしたりは出来ないんですけど、今現在残っている文明のある世界は数万単位であるから大丈夫だと思いますよ。その中のいくつかを創りかえる練習に使っちゃいましょうよ」
「練習って、そんな簡単に今の生活を奪ったりは出来ないよ」
「何を言っているんですか、今すぐ創りかえるべきだと思いますよ。彼らの失敗は信仰心を十分に得られなかった事だと思うんですよ。信仰心があれば天使の力も強くなりますし、悪魔ごときを恐れる事も無かったのです。世界各地に私達の像を作って祀ってもらいましょう」
「私達ってどういう意味なのかな?」
「それを答えるにはこの光の柱が邪魔なんですよね。ルシフェルさんの力でこの光の柱を取り除いていただきたいのですが、お願いできますでしょうか?」

 僕はこの女の言う通りに光の柱に手を添えて力を込めてみた。光の柱を取り除くイメージを強く持った。そのイメージにさらに取り除くイメージを重ねていくと、少しずつではあるけれど光の柱の輝きが薄らいできたように見えた。
 それを続けていると、今まで見ていた時よりも大人びて見える女が立っていた。

「ありがとうございます。私も本来の力を取り戻せそうだと思いますが、それにはもう少しお時間を頂きたいのです。ルシフェルさんは早速あの世界を創り変えちゃいますか?」
「いや、それはもう少ししてからかな」
「じゃあ、私の話を少し聞いてもらってもいいですかね?」

 僕は特にする事もの無かったので女の話を聞く事にした。光はなくなったとはいえ柱からはまだ出ることが出来ないみたいで、僕の方に両手を伸ばしていた。

「中村さん達をコチラに呼んだのは人類の可能性を確かめるためでした。最初のうちは中村さんの話していた通り失敗しかしなかったのですが、その失敗から色々と学んで出来上がったのがあの世界なんですね。ほとんど完成して理想の世界が出来上がっていたとは思っていたんですけど、私達が本当に相手にしないといけない相手に対抗するためにはまだまだ力が不足していると思うんですよね。そこで私はより強力な天使を創り出す事にしたのです。普通の天使とは違って成長する天使を誕生させる計画が産まれました。それがルシフェルさんあなたです。あなたは私の期待以上に成長して多くの経験を積んでくれました。今ではあなたと戦って勝てる天使も悪魔もいないでしょう。ですが、私達の本当の敵はあの世界にはいないのです。どこに居るのかもわからないのです。会えたとしても今のルシフェルさんがあいつに勝てるとは思えないのですが、会えなければ勝てる確率もゼロのままなんです。せっかく強くなってもらってその手を血に染めてもらったのに手掛かりすらつかめずに申し訳ないです」
「あの、その敵ってどこに居るかもわからないんですか?」
「ええ、その名前以外何もわかっていないんです」
「じゃあ、どこかの世界をその敵がいる世界に創りかえてみましょうか?」
「そんな方法があったんですね」

 上手くいくかはわからないけれど、どこに居るかもわからない相手を探し回るよりも可能性は高いように思えた。上手くいかなくてもやり直してみたらいいだけだろう。

「いや、今まで私達は何をやっていたんでしょうね。居場所がわかれば世界中に散らばっている天使たちを集結させて一気に叩きましょう。とどめはルシフェルさんにお願いしたいのですが、その際はお願いいたします」
「とどめは僕じゃないとダメなんですか?」
「ええ、上手く倒せたとしても復活されてはかないませんし、ルシフェルさんがその体に取り込んでくれるのが一番ですね」
「そうやって戦い続けて僕が強くなっても大丈夫なんですかね?」
「ルシフェルさんなら大丈夫ですよ。中村さんも言ってたと思いますが、ルシフェルさんなら問題ないはずですからね」
「自分でもわかりませんけど、出来るだけその期待に応えたいと思います」
「じゃあ、私もここから出られそうになってきましたし、さっそく世界を創りかえてもらいましょうか。新しい世界には“アマツミカボシ”以外いない世界にしてくださいね」
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