ギ家族

釧路太郎

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刑事編

刑事 その三

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 私達がレストランに戻ったのは13時半の少し前だった。
 きっと、表情には出していないのだけれど、警部補もお腹は空いていたのだろう。お腹の空かない人間なんているのかは知らないけれど、警部補だって人間なんだからお腹くらいは空くはずだ。

 私はメニューを前にすると、なぜか優柔不断になってしまう。普段はほとんど悩むことも無いのだけれど、なぜか食べ物を前にすると決断することが出来なくなってしまう。限定メニューなどがあると本当に決められなくなってしまう。それも、初めて来た店ならなおさら悩んでしまうのだ。
 このレストランはその点もちゃんと配慮されているようで、ランチは三種類のみで、それとは別にケーキセットがあるだけだ。デザートにケーキセットを頼むのはマストとして、問題はランチをどれにするかということだ。
 一つは警部補に頼んでもらうからいいとして、問題は残ってしまう一つがどのような感じなのかわからないということだ。
 メニューに写真は載っているのだけれど、実際にこの目で見ているわけでもないのでそこがもどかしい。

「お前はいつも飯になると悩んでいるな。そんなに決められないもんなのか?」
「実は、あの公園でこの店の口コミを見ていたんですけど、ランチはどれもハズレがないって意見ばっかりで参考にならないんですよ。一つは天野さんが頼むからいいとして、私が頼まない分の現物を見ることが出来ないじゃないですか。残された一つが気になって気になって仕方ないんですよ」
「そんなに気になるなら二つ頼めばいいじゃないか。お前ならそれくらい食えるだろ」
「そりゃ、食べろと言われれば食べれますけど、そうなるとケーキセットが食べられなくなる気がするですよ。無理すればケーキも食べられるかもしれませんが、そこまで食べちゃうと太っちゃうじゃないですか」
「お前はいくら食べても太らないのかと思っていたよ」
「そんなわけないじゃないですか。私だってたくさん食べたら太りますって」
「そんなに気になるなら他の席の料理でも見てみたらいいじゃないか。目の前に無くったってそれなりに確認は出来るだろ」
「そうですね。さすが天野さん、出来る男は違いますね」

 私は自然な感じで店内を見回してみた。
 先ほど来た時よりも確実に客数は少なくなっているのだけれど、どの席も三種類のランチのどれかを食べていた。
 どれも美味しそうだと思ってみていたのだけれど、私はある一人の男性が食べている物が脳裏に焼き付いて離れなくなってしまった。

「おい、そろそろ決めたか?」
「あ、はい。決めました」
「お前はこのBランチにするのか?」
「違いますね。ちょっとメニューを確認させていただきますね。はい、大丈夫です」
「じゃあ、店員を呼ぶぞ」

 客数はそれなりの感じだったけれど、店員はそれでもやることがまだまだ多かったようで、呼んでから反応してもらうまで少しだけ時間がかかっていた。
 やってきた店員さんはこの店の従業員でも比較的若い女性だった。私と同じくらいの年齢にも見えたけれど、もしかしたら少しだけ年が離れているかもしれないと思った。

「おい、山吹は何にするんだ?」
「あ、すいません。私はこのカレーをください」
「はい、かしこまりました。では、Bランチとカレーですね」
「あ、それと、ケーキセットを食後にお願いします」
「ケーキセットですと、こちらの五種類のケーキからお選びいただけますが」
「五種類?」
「はい、イチゴのショートケーキとチョコレートケーキとチーズケーキとモンブランと季節のフルーツケーキの中からお選びいただけますが?」
「チョコレートケーキでお願いします。ドリンクはコーヒーでお願いします」
「では、食後にチョコレートケーキのセットを追加ですね。少々お待ちくださいませ」

 注文の確認を終えると、店員さんは裏へと下がっていった。
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