36 / 44
ミルク伍長とマーちゃん中尉
しおりを挟む
エキシビションマッチが目玉になってしまったとはいえ、本来の目的である新入隊員を見極めるための試験は当然行われている。一か月近くも行われているので多少は飽きられていたという面もあったのだろうが、栗鳥院松之助がゲスト解説で好きかって言い放題なところも謎に受けていることもあり一般観光客の減少に歯止めがかかった状態になっていた。
「そもそも、十九番隊の副隊長であるマーちゃん中尉が我々一番隊と三番隊の連合軍に勝負を挑むこと自体が間違いなのだよ。始める前から分かっている事ではあるけれど、今回の勝負でマーちゃん中尉が一勝でもすることが出来たら、三番隊副隊長補佐である栗鳥院松之助と一番隊隊員である栗鳥院竹千代が貴様らのために何かしてやろう」
「随分と自信満々なようだけど、そんな気軽に約束しちゃっていいのかな。あとで吠え面かいても知らないよ」
栗鳥院松之助と妖精マリモ子の掛け合いも人気を保つ要因と思われるのだが、それ以上に視聴者の目を釘付けにしていたのはイザー二等兵と栗鳥院竹千代によるサウナ耐久戦なのだ。もちろん、二人とも水着を着ているのでそれなりの配慮はされているのだが、サウナに入って水風呂に入って外気浴をしてまたサウナに入るというのを繰り返しているだけの映像がサブチャンネルで放送されてから問い合わせが急増していたのだ。
新入隊員募集試験は阿寒湖温泉にやってこないとみることが出来ないのだが、エキシビジョンは世界中どこにいてもネット環境が整っていれば無料で見ることが出来るのだ。もちろん、サブチャンネルも無料で見ることが出来るのは当然の話である。
「なんか、こっちがメインなのにサブチャンネルの方が視聴者数が多いのが気になるんだけど」
「それは仕方ないだろ。向こうは昨日から二人がサウナに入ってる映像を流すって告知してるからな。竹千代姉さんは普段はゆったりした服装で動きを悟られないようにしてるからわかりにくいけれど、見て分かる通りスタイルが物凄くいいからな。出てるところはそれなりに出てるし、キュッとしているところは凄く引き締まっているからな。弟の俺が言うのもなんだが、あれほど均整の取れた体はなかなかいないと思うぞ」
「何言ってんだか。イザーちゃんだって負けてないんですけど。ほら、胸もお尻もイザーちゃんの方が張りがあって汗も弾いちゃってるじゃない。若さは一つの武器になるかもしれないけど、あまりにも年齢差があり過ぎるからそれだけでも同じ土俵で勝負することが出来ないかもね。それに、今はいないけどうまなちゃんが戻ってきたら美女二人とオバサン一人の勝負になっちゃうかな。そうなったら、勝負すること自体がナンセンスってことになっちゃうんじゃないかしら。それに、二人だけじゃなく私も参加したっていいんだからね」
「さすがにお前はまずいだろ。その身長でその旨の大きさは絶対に画面に映しちゃダメな奴だからな。お前みたいに顔と身長から判断できないような胸を持ってるやつは薄着になっちゃダメなんだよ。水着姿だって絶対に許可されないからな。視聴者の中には見たいってやつもたくさんいるだろうけど、お前のその見た目は完全に倫理違反なんだよ。お前のせいじゃないとは思うけど、お前はそれ以上肌を露出したらダメな人間なんだからな」
カメラが映しているのはマリモ子の顔のアップであることが多い。顔だけ見ればどこにでもいるような子供なのだが、鎖骨から下を映すと顔と身長に対する胸の大きさが違和感でしかないのだ。妖精なので体をいじっているという事もなく天然の状態でこれなのだが、どのメディアも扱いに困っているようだ。妖精なので完全に合法的な感じにはなると思うのだけれど、あまりにも幼すぎるその顔と小さな身長と全く馴染まない胸とお尻は全ての者の倫理観を問う形になっていた。
マーちゃん中尉が最初に戦う相手は疾風迅雷・電光石火などと呼ばれるミルク伍長である。
彼は一番隊から四番隊に所属する隊員の中で一番早く動くことが出来る男なのだ。速さだけを追求した結果、攻撃に全く重みがない勢いだけの人間と言われてしまっていた。しかし、絶対的なそのスピードについていくことが出来ないものは攻撃をくらい続けることになってしまうのだった。いくら軽い攻撃でダメージがほとんどないと言っても、同じ場所に何度も何度も打ち込まれる攻撃は徐々に体にダメージを蓄積させていき、ある時を境にその痛みが一気に押し寄せてくるのだ。
「ほら見ろ、マーちゃん中尉はミルク伍長の攻撃を完全に見失っているぞ。俺にも全くミルク伍長の動きは見えないが、そんな事なんてどうでもいい。今はミルク伍長がマーちゃん中尉を倒すことだけわかればそれでいいんだ。過程なんてどうでもいいんで、とにかくマーちゃん中尉を沈めてしまえ」
「そんなこと言ったってダメだよ。ほら、マーちゃん中尉だって反撃しようとしてるんだからね。今にマーちゃん中尉の反撃がミルク伍長に当たっちゃうんだから。ほらほら、マーちゃん中尉の攻撃も少しずつ早くなってるじゃない」
ゲスト解説のマリモ子と栗鳥院松之助が興奮してしゃべり続けていることもあって実況の水城アナウンサーと解説の宇藤さんはなかなか割り込むことが出来ないのだった。次回からゲスト解説の二人は副音声で好きなだけ喋ることが出来るように配慮されることとなったのだが、それはサブチャンネルのサブチャンネルで放送されることになったので再生数は意外と伸びなかったのである。
試合開始から五分になろうとしているところでマーちゃん中尉が膝から崩れ落ちて意識を失ってしまっていた。
エキシビジョンマッチ初戦は栗鳥院軍団の勝利で幕を閉じたのであった。
「そもそも、十九番隊の副隊長であるマーちゃん中尉が我々一番隊と三番隊の連合軍に勝負を挑むこと自体が間違いなのだよ。始める前から分かっている事ではあるけれど、今回の勝負でマーちゃん中尉が一勝でもすることが出来たら、三番隊副隊長補佐である栗鳥院松之助と一番隊隊員である栗鳥院竹千代が貴様らのために何かしてやろう」
「随分と自信満々なようだけど、そんな気軽に約束しちゃっていいのかな。あとで吠え面かいても知らないよ」
栗鳥院松之助と妖精マリモ子の掛け合いも人気を保つ要因と思われるのだが、それ以上に視聴者の目を釘付けにしていたのはイザー二等兵と栗鳥院竹千代によるサウナ耐久戦なのだ。もちろん、二人とも水着を着ているのでそれなりの配慮はされているのだが、サウナに入って水風呂に入って外気浴をしてまたサウナに入るというのを繰り返しているだけの映像がサブチャンネルで放送されてから問い合わせが急増していたのだ。
新入隊員募集試験は阿寒湖温泉にやってこないとみることが出来ないのだが、エキシビジョンは世界中どこにいてもネット環境が整っていれば無料で見ることが出来るのだ。もちろん、サブチャンネルも無料で見ることが出来るのは当然の話である。
「なんか、こっちがメインなのにサブチャンネルの方が視聴者数が多いのが気になるんだけど」
「それは仕方ないだろ。向こうは昨日から二人がサウナに入ってる映像を流すって告知してるからな。竹千代姉さんは普段はゆったりした服装で動きを悟られないようにしてるからわかりにくいけれど、見て分かる通りスタイルが物凄くいいからな。出てるところはそれなりに出てるし、キュッとしているところは凄く引き締まっているからな。弟の俺が言うのもなんだが、あれほど均整の取れた体はなかなかいないと思うぞ」
「何言ってんだか。イザーちゃんだって負けてないんですけど。ほら、胸もお尻もイザーちゃんの方が張りがあって汗も弾いちゃってるじゃない。若さは一つの武器になるかもしれないけど、あまりにも年齢差があり過ぎるからそれだけでも同じ土俵で勝負することが出来ないかもね。それに、今はいないけどうまなちゃんが戻ってきたら美女二人とオバサン一人の勝負になっちゃうかな。そうなったら、勝負すること自体がナンセンスってことになっちゃうんじゃないかしら。それに、二人だけじゃなく私も参加したっていいんだからね」
「さすがにお前はまずいだろ。その身長でその旨の大きさは絶対に画面に映しちゃダメな奴だからな。お前みたいに顔と身長から判断できないような胸を持ってるやつは薄着になっちゃダメなんだよ。水着姿だって絶対に許可されないからな。視聴者の中には見たいってやつもたくさんいるだろうけど、お前のその見た目は完全に倫理違反なんだよ。お前のせいじゃないとは思うけど、お前はそれ以上肌を露出したらダメな人間なんだからな」
カメラが映しているのはマリモ子の顔のアップであることが多い。顔だけ見ればどこにでもいるような子供なのだが、鎖骨から下を映すと顔と身長に対する胸の大きさが違和感でしかないのだ。妖精なので体をいじっているという事もなく天然の状態でこれなのだが、どのメディアも扱いに困っているようだ。妖精なので完全に合法的な感じにはなると思うのだけれど、あまりにも幼すぎるその顔と小さな身長と全く馴染まない胸とお尻は全ての者の倫理観を問う形になっていた。
マーちゃん中尉が最初に戦う相手は疾風迅雷・電光石火などと呼ばれるミルク伍長である。
彼は一番隊から四番隊に所属する隊員の中で一番早く動くことが出来る男なのだ。速さだけを追求した結果、攻撃に全く重みがない勢いだけの人間と言われてしまっていた。しかし、絶対的なそのスピードについていくことが出来ないものは攻撃をくらい続けることになってしまうのだった。いくら軽い攻撃でダメージがほとんどないと言っても、同じ場所に何度も何度も打ち込まれる攻撃は徐々に体にダメージを蓄積させていき、ある時を境にその痛みが一気に押し寄せてくるのだ。
「ほら見ろ、マーちゃん中尉はミルク伍長の攻撃を完全に見失っているぞ。俺にも全くミルク伍長の動きは見えないが、そんな事なんてどうでもいい。今はミルク伍長がマーちゃん中尉を倒すことだけわかればそれでいいんだ。過程なんてどうでもいいんで、とにかくマーちゃん中尉を沈めてしまえ」
「そんなこと言ったってダメだよ。ほら、マーちゃん中尉だって反撃しようとしてるんだからね。今にマーちゃん中尉の反撃がミルク伍長に当たっちゃうんだから。ほらほら、マーちゃん中尉の攻撃も少しずつ早くなってるじゃない」
ゲスト解説のマリモ子と栗鳥院松之助が興奮してしゃべり続けていることもあって実況の水城アナウンサーと解説の宇藤さんはなかなか割り込むことが出来ないのだった。次回からゲスト解説の二人は副音声で好きなだけ喋ることが出来るように配慮されることとなったのだが、それはサブチャンネルのサブチャンネルで放送されることになったので再生数は意外と伸びなかったのである。
試合開始から五分になろうとしているところでマーちゃん中尉が膝から崩れ落ちて意識を失ってしまっていた。
エキシビジョンマッチ初戦は栗鳥院軍団の勝利で幕を閉じたのであった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
天之琉華譚 唐紅のザンカ
ナクアル
キャラ文芸
由緒正しい四神家の出身でありながら、落ちこぼれである天笠弥咲。
道楽でやっている古物商店の店先で倒れていた浪人から一宿一飯のお礼だと“曰く付きの古書”を押し付けられる。
しかしそれを機に周辺で不審死が相次ぎ、天笠弥咲は知らぬ存ぜぬを決め込んでいたが、不思議な出来事により自身の大切な妹が拷問を受けていると聞き殺人犯を捜索し始める。
その矢先、偶然出くわした殺人現場で極彩色の着物を身に着け、唐紅色の髪をした天女が吐き捨てる。「お前のその瞳は凄く汚い色だな?」そんな失礼極まりない第一声が天笠弥咲と奴隷少女ザンカの出会いだった。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生
釧路太郎
ファンタジー
片岡真琴はとある世界では魔王アスモデウスをあと一歩のところまで追いつめることが出来た勇者であった。
今まさにとどめを刺そうというタイミングで魔王アスモデウスの策略に嵌り、勇者真琴は命を落とし別の世界へと転生させられてしまったのだ。
勇者真琴と共に戦った美少女たちは彼の後を追うように命を絶って同じ世界へ転生していったのだが、最後に残ったヴァンパイアの少女は転生するのではなく勇者真琴のいる世界へと転移することを選んだのだった。
かつての勇者真琴の転生体である片岡真琴はイジメが原因で引きこもりになった。
彼は家族の理解もあって少しずつ行動範囲を広げていき、社会復帰の一環としてゴミ出しや家の近くの掃除なんかをするようになっていた。
引きこもりからニートにレベルアップした片岡真琴は妹の就職を機に社会に出る決心をした。
親が紹介してくれた仕事はなるべく人と関わらない仕事だったので彼は少しずつ世間に馴染めるような気がしていた。
だが、そんなタイミングで彼は運命を大きく変える少女と出会ってしまった。
たった一人の少女との出会いによって俺の青春は再スタートすることになったのだ。
異世界からやってきたと言う謎のサイボーグヴァンパイアと何でも出来る超天才女子高生と高校教師になった彼の妹。
そして、彼の運命を大きく変えた金髪の美少女。
彼女たちと過ごすことで彼に隠されたとんでもない秘密が徐々に明らかになっていく。
失われた青春を取り戻すかのような日々の中に起こる小さな変化は彼の人生を過ごす環境を大きく変えていくのであった。
変わってしまった世界を元に戻すように努力するのか、より変化させようと努力するのか、彼の判断は少女たちとの関係も変化させていくのであった。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小説版つみねこ きさらぎ駅編~不知火陽太の過去~
奈雲
キャラ文芸
【当たり前がなくなる日。】
不知火陽太少年は両親と弟に囲まれ幸せに過ごしてきた。しかしその当たり前の日常がある日突然音を立てて崩れ落ちていく。
強盗殺人犯によって両親を殺され、家に放火され弟を焼き殺された陽太は心に深い傷を負ってしまった。
日々他人からの心内言葉で心を閉ざしていた彼のもとに現れたのは【大悪魔 サタン】。
これはひょんなことから大悪魔サタンを呼び出してしまった陽太少年が体験する楽しくてちょっぴり怖くて不思議な物語。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる