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新たな挑戦者
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マーちゃん中尉は弱いという話を信じていた者たちにとってイザー二等兵との戦いを目撃してしまったのは不幸の始まりなのかもしれない。ただ、幸運なことに入隊試験の合否は試合の結果は考慮されないという事で幾分気は楽になっているのかもしれない。それでも、入隊希望者にとってマーちゃん中尉かイザー二等兵と戦うという事はかなりの試練であるという事は間違いないのだ。
圧倒的な力の差を見せつけられて負けてしまったやっさんの合格が試合後すぐに発表されたのも入隊希望者たちにとっては良い知らせだったと思う。合格の基準は明確に提示されてはいないものの、その後も一方的にやられているだけの入隊希望者も自分の持てる力を出し切った者は例外なく合格しているのだ。
やっさんの入隊試験が終わってから十人以上が入隊試験に挑んでいたのだが、全員が試験に選んだ相手はイザー二等兵だった。その理由としては、『うまな式魔法術』を理解していれば効果がないとはいえマーちゃん中尉の恐ろしい魔法の数々を体験しなくて済むという事と、綺麗な女性であるイザー二等兵と戦ってみたいという理由なのである。
誰からも指名されないマーちゃん中尉と栗宮院うまな中将ではあるが、本人的には指名されないことでホッとしているという。栗宮院うまな中将に勝負を挑むためには一番隊から四番隊に所属している必要があるという条件があるので挑む資格のある者はいないだけなのだが、マーちゃん中尉に限って言えば単純に恐れられているというだけの話なのである。
「私ばっかり戦ってていいのかな。たまにはマーちゃんも戦いたいって思うんじゃないかな。もしよかったらなんだけど、私が相手をしてあげようか。この前みたいに一方的にやられないように必殺技を見つけてきたんだ」
イザー二等兵は不敵な笑みを浮かべているのだが、その隣にいる栗宮院うまな中将も似たような笑みを浮かべているところを見ると、二人で何かとんでもないことを企んでいるのだという事がわかる。マーちゃん中尉はそんな二人を相手にせずに明日の入隊希望者のファイルを確認していた。
「明日の一人目は女性だってさ。初めての女性挑戦者だからって気負わなくてもいいからね。いつも通り気楽に戦えばいいんじゃないかな」
「もしかして私に言ってるのかな。戦うのが私って決まってないと思うんだけど。女性って事はさ、マーちゃんに勝負を挑む可能性だってあると思うんだ。だから、マーちゃんが初めての試験官になる可能性だってあるんじゃないかな」
「それはないね。俺は女性に手を上げたりしないし」
「そんなこと言って、私は一方的にやられちゃったんですけど。私の事は女性だと思ってないって事ですか?」
「違うって。そんなつもりで言ったわけじゃないって。それに、俺はイザーちゃんに対して手を上げたりなんてしてないよ。ただ魔法を適当に使ってただけなんだからね」
「それはただの詭弁だよ。私があの瞬間にどれだけ恐怖を感じたかわかっていないサイコ野郎の詭弁だよ」
二人が揉めている様子を子犬同士がじゃれあっているとしか思っていない栗宮院うまな中将ではあったが、入隊希望者のファイルを見てみると気になる項目が目に飛び込んできた。
戦いたい相手とその理由という項目があるのだが、栗宮院うまな中将は思わず二度見してしまったのだ。
「ねえ、イザーちゃん。この人の戦いたい相手と理由ってのは危険かもしれないよ。この人の望み通りにイザーちゃんが戦う必要なんてないと思うんだけど」
「え、そんなに凄い人なの?」
栗宮院うまな中将からファイルを受け取ったイザー二等兵はそのままファイルの内容を確認しているのだが、その視線は完全に一か所で止まってしまったのだ。他の項目なんて何も覚えていない。それくらい衝撃的なことが書かれていたのだった。
翌日。普段であれば誰よりも早くに会場入りして準備を始めているイザー二等兵ではあったが、今回に限っては試験開始ぎりぎりに会場入りするといった感じになっていた。
入隊希望者はじっとイザー二等兵の事を見つめたまま視線を外さないのだが、イザー二等兵は入隊希望者に対して視線を合わせようとしていなかった。いつも目を合わせたりはしていないのだけれど、今日に限っては完全に視線をそらして目を合わせないようにしているという事が見て取れたのだ。
いつもであれば余裕をもって準備をしているイザー二等兵が黙って立っているだけというのも珍しいのだが、入隊希望者の女性も何もせずにイザー二等兵の事をじっと見ているだけなのである。まるで、今からイザー二等兵の肖像画を描くのではないかと思うくらいに真剣に観察をしているのであった。
試験開始の合図の後にも二人はじっと見つめあったまま動くことがないのだが、入隊希望者はイザー二等兵を隅から隅まで観察しているのに対して、イザー二等兵は単純に入隊希望者の事を恐れているようにも感じていた。
「よし、わかった。そっちから来ないんなら私から攻めちゃいますよ。そうでもしないと私の合格がなかったことになっちゃいますからね。しっかりと、私の愛を受け止めてくださいね」
イザー二等兵は何故か入隊希望者の放ったゆっくりと自分に向かってくる魔法を警戒している。ちょっとでも触れてしまうと身の危険を感じてしまう。そんな威力が秘められている魔法のように感じてしまったのだった。
圧倒的な力の差を見せつけられて負けてしまったやっさんの合格が試合後すぐに発表されたのも入隊希望者たちにとっては良い知らせだったと思う。合格の基準は明確に提示されてはいないものの、その後も一方的にやられているだけの入隊希望者も自分の持てる力を出し切った者は例外なく合格しているのだ。
やっさんの入隊試験が終わってから十人以上が入隊試験に挑んでいたのだが、全員が試験に選んだ相手はイザー二等兵だった。その理由としては、『うまな式魔法術』を理解していれば効果がないとはいえマーちゃん中尉の恐ろしい魔法の数々を体験しなくて済むという事と、綺麗な女性であるイザー二等兵と戦ってみたいという理由なのである。
誰からも指名されないマーちゃん中尉と栗宮院うまな中将ではあるが、本人的には指名されないことでホッとしているという。栗宮院うまな中将に勝負を挑むためには一番隊から四番隊に所属している必要があるという条件があるので挑む資格のある者はいないだけなのだが、マーちゃん中尉に限って言えば単純に恐れられているというだけの話なのである。
「私ばっかり戦ってていいのかな。たまにはマーちゃんも戦いたいって思うんじゃないかな。もしよかったらなんだけど、私が相手をしてあげようか。この前みたいに一方的にやられないように必殺技を見つけてきたんだ」
イザー二等兵は不敵な笑みを浮かべているのだが、その隣にいる栗宮院うまな中将も似たような笑みを浮かべているところを見ると、二人で何かとんでもないことを企んでいるのだという事がわかる。マーちゃん中尉はそんな二人を相手にせずに明日の入隊希望者のファイルを確認していた。
「明日の一人目は女性だってさ。初めての女性挑戦者だからって気負わなくてもいいからね。いつも通り気楽に戦えばいいんじゃないかな」
「もしかして私に言ってるのかな。戦うのが私って決まってないと思うんだけど。女性って事はさ、マーちゃんに勝負を挑む可能性だってあると思うんだ。だから、マーちゃんが初めての試験官になる可能性だってあるんじゃないかな」
「それはないね。俺は女性に手を上げたりしないし」
「そんなこと言って、私は一方的にやられちゃったんですけど。私の事は女性だと思ってないって事ですか?」
「違うって。そんなつもりで言ったわけじゃないって。それに、俺はイザーちゃんに対して手を上げたりなんてしてないよ。ただ魔法を適当に使ってただけなんだからね」
「それはただの詭弁だよ。私があの瞬間にどれだけ恐怖を感じたかわかっていないサイコ野郎の詭弁だよ」
二人が揉めている様子を子犬同士がじゃれあっているとしか思っていない栗宮院うまな中将ではあったが、入隊希望者のファイルを見てみると気になる項目が目に飛び込んできた。
戦いたい相手とその理由という項目があるのだが、栗宮院うまな中将は思わず二度見してしまったのだ。
「ねえ、イザーちゃん。この人の戦いたい相手と理由ってのは危険かもしれないよ。この人の望み通りにイザーちゃんが戦う必要なんてないと思うんだけど」
「え、そんなに凄い人なの?」
栗宮院うまな中将からファイルを受け取ったイザー二等兵はそのままファイルの内容を確認しているのだが、その視線は完全に一か所で止まってしまったのだ。他の項目なんて何も覚えていない。それくらい衝撃的なことが書かれていたのだった。
翌日。普段であれば誰よりも早くに会場入りして準備を始めているイザー二等兵ではあったが、今回に限っては試験開始ぎりぎりに会場入りするといった感じになっていた。
入隊希望者はじっとイザー二等兵の事を見つめたまま視線を外さないのだが、イザー二等兵は入隊希望者に対して視線を合わせようとしていなかった。いつも目を合わせたりはしていないのだけれど、今日に限っては完全に視線をそらして目を合わせないようにしているという事が見て取れたのだ。
いつもであれば余裕をもって準備をしているイザー二等兵が黙って立っているだけというのも珍しいのだが、入隊希望者の女性も何もせずにイザー二等兵の事をじっと見ているだけなのである。まるで、今からイザー二等兵の肖像画を描くのではないかと思うくらいに真剣に観察をしているのであった。
試験開始の合図の後にも二人はじっと見つめあったまま動くことがないのだが、入隊希望者はイザー二等兵を隅から隅まで観察しているのに対して、イザー二等兵は単純に入隊希望者の事を恐れているようにも感じていた。
「よし、わかった。そっちから来ないんなら私から攻めちゃいますよ。そうでもしないと私の合格がなかったことになっちゃいますからね。しっかりと、私の愛を受け止めてくださいね」
イザー二等兵は何故か入隊希望者の放ったゆっくりと自分に向かってくる魔法を警戒している。ちょっとでも触れてしまうと身の危険を感じてしまう。そんな威力が秘められている魔法のように感じてしまったのだった。
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