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女子バスケ部エースの後輩とベンチ外の俺

最終話

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 デートと言ってもお金がない俺達が出来ることなんてたかが知れている。俺の両親にデートをするからお金をくれと言っても余計な詮索をされそうなので切り出すことも出来なかった。
 コツコツと貯めた小銭があるのだけれど、それでも何かをすればすぐに無くなってしまいそうで心もとない。そんな感じで俺は待ち合わせ場所に少しだけ早く着いたのだが、そこにはもうすでに若葉ちゃんが待っていたのだ。学校で見る制服姿とも部活中に見るジャージ姿とも時々見るユニフォーム姿とも違う清楚な感じの若葉ちゃんがいたのだ。
「あ、先輩。意外と早いですね。待ち合わせ時間までまだ時間ありますよ?」
「若葉ちゃんの方が先にいるとは思わなかったよ。それにしても、いつもとは違って可愛らしい感じだね」
「それって、いつもは可愛くないって事ですか?」
「そういうつもりじゃないんだけどさ、いつもと印象違うなって思ったから」
「褒めてくれるのは嬉しいですけど、いつも褒めてくれてもいいんですからね」
「いつも可愛い感じでいてくれるなら褒めるよ」
「褒めるつもりないですよね。そんなんじゃ怒りますよ」
「怒ってない方が可愛いと覆うけどな」
「うーん、じゃあ、ニコニコしておきますね」
「その方がいいと思うよ」
 俺達はショッピングモールの中を見て回ったのだが、一番最初に選んだ場所がスポーツ用品店だったのはお互いにバスケが好きなんだと実感させられるものであった。
 今の手持ちではとても買えないような高価なものを二人で見ながら試着なんかもさせてもらっていたのだけれど、せっかくここに来たのだから何か買いたいという事でお互いにミサンガを買ってプレゼントしあうことになった。
 若葉ちゃんはすでにミサンガを付けているので俺が渡したのは目立たないと思うのだが、俺は今までこういうモノを付けたことが無かったので何となく違和感があったのだ。だが、俺の手にしっかりと結んでくれる若葉ちゃんとの距離が近過ぎて目のやり場に困ってしまっていた。
 俺の手にミサンガを付けてくれている時の若葉ちゃんは若干前屈みになっていて、そこまで大きく開いてはいなかった首元の隙間から可愛らし胸元がチラチラと見えていた。若葉ちゃんは中にスポーツブラだけしかつけていないようで、俺の視界にはそこにある小さな膨らみが飛び込んできたのだ。他の女子と比べても少し発育が遅れているのかなと思っていたこともあったのだが、こうしてみると男子とは違って確かに膨らんでいるのだという事を理化させるだけの膨らみはあったのである。
「これで良しと。ちょっときつめに縛ったんで簡単にはほどけないと思いますよ。もしも解けたときは私に言ってくださいね。その時はまた結んであげますからね」
「うん、その時はお願いするよ」
 何だろう、今まで何とも思っていなかった若葉ちゃんを意識しているような気がする。胸元が見えたと言ってもスポーツブラでしっかりと隠されていたし、直接触れたわけでもないというのに、今までのどんな瞬間よりも緊張しているような気がしてきた。
「次はどこに行きたいですか?」
「じゃあ、軽く何か食べる?」
「それもいいですけど、食べる前にプリクラ取りましょうよ。ちょっとでも太る前に撮りたいですから」
 若葉ちゃんは俺の腕と腕を組みながらゲームコーナーへと向かっていった。その途中でバスケ部の一年を見かけたような気もするのだが、そいつらは俺と視線を合わせることも無く角を曲がってどこかへ行ってしまっていた。
「久々に撮るから緊張するな。萩原先輩はどんな感じのがいいですか?」
「どんな感じって言われてもね。俺はこういうのやった事ないから若葉ちゃんの好きな感じで良いよ」
「へえ、そうなんですね。じゃあ、私の好きなやつにしますよ。ちゃんと指示に従ってくださいよ」
 俺は慣れないプリクラに戸惑いながらも出される指示に一生懸命従っていた。たぶん、微妙にテンポが遅れてしまっているのだが、若葉ちゃんもそんな俺に合わせてくれているのかお互いに変な瞬間で写真を撮られていたりもした。
 最後の指示はなぜか抱き合ってカメラ目線になるというものだったのだが、その動きがどこかで見た芸人みたいだなと思っておかしく思えた。思わず笑いそうになってしまったのだが、抱き着いてきている若葉ちゃんの体が意外と柔らかいという事と、勝負前に拭いてもらったタオルの匂いよりもいい匂いがしている事で俺は幸せな気持ちになっていた。
「あ、抱き着いたりしてごめんなさい。でも、プリクラの指示だから仕方ないですよね。萩原先輩が嫌な気持ちになったらごめんなさい」
「嫌な気持ちになんてなるはずないさ。こっちこそ若葉ちゃんを不快にさせてたらごめんね」
「不快な思いなんてしないですよ。今日みたいな日が来るのをずっと待ってましたもん。撮影も終わったことだし、後は何か書いちゃいますか。今日の思い出に、何か書きたいことあります?」
「そういうのはやったことが無いからさ、若葉ちゃんにお任せしても良いかな?」
「じゃあ、初デート記念って書いておきますね。みんなに見せるやつに書いてもいいですか?」
「いいけど、みんなに見せないやつとかあるの?」
「えっと、最後のやつはさすがに見せられないと思うんですよね。だって、抱き着いちゃってますから」
「そうだった、最後のはちょっと見せられないかもね」
「そうですよ。私は良いんですけど、こんなの見せたら美月と瞳も萩原先輩に抱き着いちゃいそうですし。あの二人って私よりも発育が良いから、抱き着かれたりしたらダメですからね」
 若葉ちゃんが落書きをしているのを横で見ていたのだけれど、俺も若葉ちゃんも緊張しているのか表情がぎこちなく思えていた。三枚目くらいから慣れてきたのか普通の表情にはなっていただけれど、最後の一枚だけは抱き着いていたという事もあって最初のやつよりもお互いに緊張しているのが丸わかりになっていたのだ。
「よし、こんなもんでいいですかね。萩原先輩は何も書かなくていいんですか?」
「うん、俺が何か書くと変になっちゃいそうだしね」
「それも面白いと思うんですけどね。じゃあ、何か食べに行きましょうか。私はハンバーガーが食べたいんですけど、萩原先輩は何がいいですか?」
「何があるのかわからないからフードコートに行ってから決めようかな。それでもいい?」
「いいですよ。でも、一つ条件があります」
「条件?」
「はい、食べ終わったらまたプリクラ撮りましょうね」
「それくらいだったら構わないけど」
「やったー。次は、もっと私にくっついてくれていいですからね。それとも、私からくっついちゃいますか?」
「その時になったら決めるよ」
「わかりました。じゃあ、行きましょうか」
 若葉ちゃんは俺の真横に立つと、俺の手に自分の腕を絡めて抱き寄せてきた。
 俺の腕に伝わるのは若葉ちゃんの柔らかい感触だったのだが、二の腕あたりに他とは違う膨らみを感じていた。
「これからいっぱい萩原先輩と出来たら嬉しいです。私の事をもっと見てくださいね」
 若葉ちゃんが力を込めて抱き着いてきたのだが、痛いというよりは俺の腕が柔らかいもので包み込まれているという感触しかなかったのだ。今までは仲の良い後輩としか思っていなかったところもあるのだが、こうして見ると他の女子よりも可愛いような気がしてきたのであった。
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