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第二部
第四話 栗鳥院家のサキュバス ボーナスステージ前編
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あまりにも騒ぎ立てる女を止める方法がわからなかった俺は人目を避けるためにも半ば強引に個室の中へと女を連れ込んでいた。あそこまで話されてしまっては聞かないわけにはいかないのでこの女の知っていることを聞き出したいところではあるのだが、俺と目が合うと必要以上に怯えてしまうせいで会話もままならないのだ。
別に俺は武器なんて持っていないという事をアピールしているのにもかかわらず、この女は俺から距離をとってひたすら怯えて叫び声をあげているのだ。そんなに叫んでものどは大丈夫なのかと心配するくらいに思えたけれど、普通の人間と発生方法が違うのか一時間以上たっていても声がかれるようなことはなかったのだ。
サキュバス殺しと呼ばれるほどサキュバスを殺してなんていないのにどうしてそんな二つ名がついているのだろう。他にも色々と二つ名はあると思うのだけど、サキュバス殺しなんて初めて聞いたと思う。だからと言って他の二つ名が俺の事を正確に表しているとも思えないんだし、サキュバス殺しというのもその場のノリで付けた感が否めない。
「サキュバス殺しの大魔王って言われてもさ、俺がサキュバスを殺したのなんて一回だけしかないと思うんだけど。サキュバス殺しって言われるほど殺している自覚はないんだけどな」
「一回殺してるって時点でおかしいんですよ。どんなに強くてどんなに残虐な奴だって男性だったら私たちに抗うことなんて出来ないんですから。中には凄い精神力で私たちの誘惑に屈せずに堪えようとする人もいますけど、そんな人だって時間をちょっとかければ簡単に篭絡することが出来ちゃうんですよ。それに、私は栗鳥院家の人間でもあるのでこうして日中の活動的な時間にやってきてますけど、基本的に私たちサキュバスは相手の夢の中に出るから反撃されること自体がありえないんですよ。どんな男だって夢の中で味わう快楽を拒むことなんて出来ないですし、拒んだとしたって夢の中にいる私たちサキュバスを殺すことなんて不可能なんですよ。今まで多くの世界で私たちサキュバスは生まれてきましたけど、過去数億年の記録の中でも私たちの仲間が夢の世界で殺されてしまったのなんて一度しかないんです。その一度をやってしまったのが、大魔王アスモデウス、あなたなんですよ」
この女はやたらと芝居がかった口調だったこともあって、最後に決め台詞みたいなことをドヤ顔で言うと同時に俺に対して指をさしていた。確かに、夢の世界で誰かを殺すなんてあまり経験がないかもしれない。
俺がサキュバスを殺したのは事実なので間違ってはいないと思うけど、その一回だけでサキュバス殺しの大魔王と呼ばれるのはやはり納得できない。どんなに向こうが正しくて間違っていなかったとしても、たった一回の結果で俺の呼び名が決まるのはやめていただきたい。他に何かいいのがあるという事でもないのだが、さすがにサキュバス殺しの大魔王はよろしくないのではないでしょうか。
それと、大事なことをサラッと言っていたように思えるのだが、この女は自分の事を栗鳥院家の人間と言っていたような気がする。聞き間違いであってくれとの願いもむなしく、この女はすべてを諦めたかのように悟った表情でちゃんとした自己紹介をしてくれた。
「栗鳥院青葉三十一歳独身のサキュバスです。サキュバスに配偶者がいるのかってよく聞かれますが、私の周りには自分がサキュバスであるという事を隠して結婚している子もいます。夜の夫婦生活はそれなりに行っているようなのですが、旦那さんを喜ばせようとすればするほど精気を吸い取ってしまって死を近づけさせてしまうのが難点らしいです。そんなこともあるので私は独身ですが、良い縁があれば結婚してみたいと思っていたりもします。特技は両手を使った手コキで、両手を細かく振動させながら竿と亀頭を刺激しちゃいます。なぜかオチンチンを握ったときにだけその動きが出来るようになるのです。自分のを触るときに細かい振動を起こすことが出来るかと試したことはありますが、なぜかオチンチンを握っているとき以外は出来たことがないです。あと、口のバキューム力と舌を波状に動かしながら亀頭を包み込むフェラも得意です。得意ですけど、大魔王アスモデウスさんを満足させられるような代物でもないと思うので確かめなくて大丈夫だと思います」
俺も自己紹介をした方が良いのかなと思っていたんだが、特にこれと言って伝えるようなこともないので黙って待ってみることにした。こうして黙っている時間が出来ると余計なことを考えてしまうのだが、今も俺の頭の中で考えているのはあの美味しかった蕎麦の事なのである。久しぶりに食べた出汁がしっかりきいた料理をそんなに簡単に忘れることなんて出来ないのだ。
「あの、私をこんなところに連れ込んだって言うのは、そういう事をするぞって言う意思表示と受け取っていいんですよね。いや、私もそういうのは他の人よりも慣れてはいますけど、アスモデウスさんが相手だという事でちょっと緊張しちゃってるというか、珍しく心臓がドキドキしちゃってます。なので、出来れば私に優しくしていただけると嬉しいな。出来ることならば、生きて帰りたいと思ってるんですけど、ダメですかね?」
ダメとかそういう事ではないと思うのだ。俺は別にサキュバスを見つけたら絶対に殺す装置ではないんだし、お互いに楽しむことが出来ればそれでいいんじゃないかとは思う。ただ、勝手につけられたイメージに引っ張られてしまってそういうのが理解されないというところなのではないだろうか。
世間が勝手に貼る有名人に対するレッテルというのはこんな感じで広まっているんだろうなという事を学ぶとこが出来たと思う。
学びたいことではないが、そうなってしまっているのだから少し諦めてしまいそうになっていたのだった。
別に俺は武器なんて持っていないという事をアピールしているのにもかかわらず、この女は俺から距離をとってひたすら怯えて叫び声をあげているのだ。そんなに叫んでものどは大丈夫なのかと心配するくらいに思えたけれど、普通の人間と発生方法が違うのか一時間以上たっていても声がかれるようなことはなかったのだ。
サキュバス殺しと呼ばれるほどサキュバスを殺してなんていないのにどうしてそんな二つ名がついているのだろう。他にも色々と二つ名はあると思うのだけど、サキュバス殺しなんて初めて聞いたと思う。だからと言って他の二つ名が俺の事を正確に表しているとも思えないんだし、サキュバス殺しというのもその場のノリで付けた感が否めない。
「サキュバス殺しの大魔王って言われてもさ、俺がサキュバスを殺したのなんて一回だけしかないと思うんだけど。サキュバス殺しって言われるほど殺している自覚はないんだけどな」
「一回殺してるって時点でおかしいんですよ。どんなに強くてどんなに残虐な奴だって男性だったら私たちに抗うことなんて出来ないんですから。中には凄い精神力で私たちの誘惑に屈せずに堪えようとする人もいますけど、そんな人だって時間をちょっとかければ簡単に篭絡することが出来ちゃうんですよ。それに、私は栗鳥院家の人間でもあるのでこうして日中の活動的な時間にやってきてますけど、基本的に私たちサキュバスは相手の夢の中に出るから反撃されること自体がありえないんですよ。どんな男だって夢の中で味わう快楽を拒むことなんて出来ないですし、拒んだとしたって夢の中にいる私たちサキュバスを殺すことなんて不可能なんですよ。今まで多くの世界で私たちサキュバスは生まれてきましたけど、過去数億年の記録の中でも私たちの仲間が夢の世界で殺されてしまったのなんて一度しかないんです。その一度をやってしまったのが、大魔王アスモデウス、あなたなんですよ」
この女はやたらと芝居がかった口調だったこともあって、最後に決め台詞みたいなことをドヤ顔で言うと同時に俺に対して指をさしていた。確かに、夢の世界で誰かを殺すなんてあまり経験がないかもしれない。
俺がサキュバスを殺したのは事実なので間違ってはいないと思うけど、その一回だけでサキュバス殺しの大魔王と呼ばれるのはやはり納得できない。どんなに向こうが正しくて間違っていなかったとしても、たった一回の結果で俺の呼び名が決まるのはやめていただきたい。他に何かいいのがあるという事でもないのだが、さすがにサキュバス殺しの大魔王はよろしくないのではないでしょうか。
それと、大事なことをサラッと言っていたように思えるのだが、この女は自分の事を栗鳥院家の人間と言っていたような気がする。聞き間違いであってくれとの願いもむなしく、この女はすべてを諦めたかのように悟った表情でちゃんとした自己紹介をしてくれた。
「栗鳥院青葉三十一歳独身のサキュバスです。サキュバスに配偶者がいるのかってよく聞かれますが、私の周りには自分がサキュバスであるという事を隠して結婚している子もいます。夜の夫婦生活はそれなりに行っているようなのですが、旦那さんを喜ばせようとすればするほど精気を吸い取ってしまって死を近づけさせてしまうのが難点らしいです。そんなこともあるので私は独身ですが、良い縁があれば結婚してみたいと思っていたりもします。特技は両手を使った手コキで、両手を細かく振動させながら竿と亀頭を刺激しちゃいます。なぜかオチンチンを握ったときにだけその動きが出来るようになるのです。自分のを触るときに細かい振動を起こすことが出来るかと試したことはありますが、なぜかオチンチンを握っているとき以外は出来たことがないです。あと、口のバキューム力と舌を波状に動かしながら亀頭を包み込むフェラも得意です。得意ですけど、大魔王アスモデウスさんを満足させられるような代物でもないと思うので確かめなくて大丈夫だと思います」
俺も自己紹介をした方が良いのかなと思っていたんだが、特にこれと言って伝えるようなこともないので黙って待ってみることにした。こうして黙っている時間が出来ると余計なことを考えてしまうのだが、今も俺の頭の中で考えているのはあの美味しかった蕎麦の事なのである。久しぶりに食べた出汁がしっかりきいた料理をそんなに簡単に忘れることなんて出来ないのだ。
「あの、私をこんなところに連れ込んだって言うのは、そういう事をするぞって言う意思表示と受け取っていいんですよね。いや、私もそういうのは他の人よりも慣れてはいますけど、アスモデウスさんが相手だという事でちょっと緊張しちゃってるというか、珍しく心臓がドキドキしちゃってます。なので、出来れば私に優しくしていただけると嬉しいな。出来ることならば、生きて帰りたいと思ってるんですけど、ダメですかね?」
ダメとかそういう事ではないと思うのだ。俺は別にサキュバスを見つけたら絶対に殺す装置ではないんだし、お互いに楽しむことが出来ればそれでいいんじゃないかとは思う。ただ、勝手につけられたイメージに引っ張られてしまってそういうのが理解されないというところなのではないだろうか。
世間が勝手に貼る有名人に対するレッテルというのはこんな感じで広まっているんだろうなという事を学ぶとこが出来たと思う。
学びたいことではないが、そうなってしまっているのだから少し諦めてしまいそうになっていたのだった。
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