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第二部

第二話 栗鳥院家の占い師 中編

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 町のはずれにある小さな小屋に栗鳥院家の占い師が住んでいるという話なのだが、どこまで行っても小さな小屋なんて見つからないまま途方に暮れていた。
 会えないのなら諦めて他の人に会いに行きたいところではあるのだけど、今回は占い師に会わないと先に進めないということなのだ。俺としては捕まっているうまなちゃんがどうなろうと知ったことではないというのが本音なのだが、ちゃんと助けに行くように行動をしないとイザーちゃんとうまなちゃんに後でどんな目にあわされるかわかったものではない。二人の暇つぶしに付き合わされる身にもなってほしいものだ。
「あの、さっきから何かを探しているみたいですけど、何かお探しですか?」
 誰かがいる気配がしていたので助けを求めたいと思っていたのに近くに誰もいなかったので困っていたのだが、そんな俺を見かねて救いの手を差し伸べてくれた人がいる。俺はその厚意に甘えることにして声のする方へ体ごと振り向いたのだが、声はすれども誰もそこにいなかった。
「あれ、今誰か俺に話しかけてくれたよな?」
 確かに誰かが俺に話しかけてくれたと思うのだが、そこには誰もいなかった。誰の姿も見えないにもかかわらず、誰かが俺に話しかけてくれているという状況なのだ。
「すいません。私って影が薄いって言われるんで姿は見えないかもしれないですね。でも、私の声は聞こえてますよね?」
「声は聞こえてますよ。でも、影が薄いってレベルじゃないですよね。隠れるのが得意ってことですか?」
「別にそういうことでもないんですが。私の事なんて別にどうでもいいじゃないですか。それよりも、先ほどからこの辺をうろうろしているみたいですけど、何かお探し何ですか?」
 声はすれども姿は見えない相手を信用してもいいものなのだろうか。声の感じからして悪い人ではないような気もするのだけど、そもそも姿が見えないのだから人かどうかもわからない。そんな相手に救いを求めていいのだろうか。
「探してる人がいるんですけど、この辺にいるって聞いてきたのに何もないんですよね。確か、この辺に小さい小屋があってそこに住んでる占い師に用事があってきたんですよ。この辺に住んでる占い師に心当たりありませんか?」
 信用するしないは別として、俺をどうにかしようと思っているのなら姿が見えない今の状態で襲ってきているだろう。そう考えた俺は一人で探すよりも騙された方がましだと思って素直に頼ることにした。騙されたんだとしても俺が命を落とすようなこともないだろうという楽観的ともいえる考えもあったりするのだ。
「ああ、栗鳥院蘭島さんですね。あの方の家はすぐ近くにありますよ。私が直接ご案内できれば一番いいんですが、今はそれが出来ないんですよ。すでにご存じかもしれませんが、今の私は人前に姿を現すことが出来なくなってるんです。誰か私にかけられている呪いを解いてくれたりする人がいればいいんですけど、解呪出来る人ってご存じだったりしますか?」
 どんな呪いをかけられているのかわかれば俺でも解くことくらいはできると思う。呪いをかけた相手に心当たりとかがあれば聞きに行くこともできると思うのだが、いったいどんな呪いにかかっているというのだろうか。
「もしかしたらだけど、俺が君にかかっている呪いを解くことが出来るかもしれないよ。どんな呪いなのかわかったりするかな?」
「私に呪いをかけたのはこの先に住んでいる障り鬼と呼ばれている怪物なんです。今まで多くの人が障り鬼を討伐しようとしていたのですが、誰一人として戻ってくることはありませんでした」
「じゃあ、その障り鬼を倒せば君にかかっている呪いを解くことが出来るって話かな?」
「多分そうだと思います。呪いをかけられているのは私だけではないと思うのでこの辺りに封じ込められている人たちも一緒に助けられるんじゃないかなって思うんですよ。でも、障り鬼は相手の存在を認識した段階で呪いをかけると言われているんです。それを防ぐ方法は栗鳥院蘭島さんが知っているということなんですが、誰も蘭島さんに会いに行くことが出来ない状況になってしまってるのです。それって、どうすることも出来ないって事なんですよ」
「つまり、こちらが先に相手を認識して気づかれる前に殺してしまえばいいってだけの話だよね?」
「そういうことになると思うんですが、無理だと思います。何日か前にスナイパーの人が遠距離から狙撃しようと試みたのですが、引き金に指をかけた瞬間に目と目が合って呪われたと聞いています。自分に向けれている殺気を感じ取ると相手を認識しちゃうって噂になってますよ。遠距離からスコープ越しに覗いているのに目が合うなんてどうすればいいんでしょうね。これって、相手に認識されずに攻撃すること自体が不可能なんだと思いませんか」
 相手に殺気を見せた時点で気付かれるということなのだろうか。殺気を向けずに相手を殺すことなんて出来ないだろう。スナイパーライフルで狙うような距離でも殺気を感じ取るような相手を騙すなんて不可能なんだろうな。そんな相手に近付くと俺みたいな人種は一瞬で気付かれちゃうと思うんだよね。そんな面白そうなやつを相手にして殺気を抑えられるわけがないじゃないか。最近は戦いらしい戦いを出来ずに一方的にやられることが多かったし、そんなヤバそうな奴を相手に出来るなんてちょっと楽しいかもしれない。
「倒すために必要な情報を手に入れることが出来ない状況でとんでもない奴を倒さないといけないって、なんだか燃える展開だよな。最近はちょっとフラストレーションがたまることも多かったし、ちょっと気分転換にそいつを倒してくるよ。俺まで呪われちゃうって心配しているみたいだけど、そんなことにはならないと思うから安心して待っててくれよ。俺より強い奴が三人もいるなんて思いたくないからな」
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