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第二部
第一話 天才科学者と魔王アスモ 前編
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今までと違って見慣れない場所に立っていた俺はあまりの景色の良さに言葉を失ってしまった。海も山も滝も湖も何でもあるような自然に囲まれているこの大きな塔はもう少し手を伸ばせば太陽に届いてしまうのではないかと思えるくらい空に溶け込んでいたのだ。
「アスモちゃんが倒してきた女の子たちは今頃何をしてるんだろうね。もしかしたら、アスモちゃんの事を忘れられなくて夜な夜なかわりになる男を探し求めてるのかもしれないね」
「そんなわけないだろ。アスモの代わりに他の男なんて探す前に紐畔亭羊仗にでも頼んでアスモの代わりになるオモチャを作ってもらってるだろう。他の男で代用できるような男ではないと思うからな」
「あれれ、うまなちゃんってなんかアスモちゃんの事詳しいんだね。もしかして、二人ってもうそういうことしてるって事なのかな?」
「バカなことを言うな。そんなことしてないのはイザーが一番よく知ってるだろ。私と四六時中一緒にいるお前が私とこいつがそんな関係じゃないってのは百も承知だろ」
「そうなんだけどさ、もしかしたら私の目を盗んで二人で何かいけないことでもしちゃってるのかなって思っちゃうじゃない。ほら、アスモちゃんが他の子とエッチなことをしているのを見てる時のうまなちゃんって、苦虫を噛み潰したような顔してること多いんだよ。自分では気付いてないかもしれないけど、うまなちゃんってアスモちゃんとエッチなことしたいって思ってるんじゃないの?」
「そ、そんなわけないでしょ。なんで私が自分より弱い男に抱かれなきゃいけないのよ。私は自分より強い人に抱かれたいのよ。こんなよわっちぃざこ魔王なんかに興味なんてないんだからね」
俺は世界の全てを知っているというわけではないが、うまなちゃんより強いと思う男なんて見たことはない。そもそも、俺よりも強い男に出会ったこともないのだ。そんなやつがいたのであれば俺はすでにこの世界から消えているとは思うのだが。
「うまなちゃんより強い男なんてこの世界にはいないかもね。先生に頼んでうまなちゃんよりも強い男がいる世界を創ってもらった方がいいって事かな」
「そんなの嫌よ。私よりも強い男なんて認めないわ。何人たりともこの栗宮院うまなを超えることなんて許されないのよ」
「でも、うまなちゃんより私の方が強いと思うんだけど、それはいいのかな?」
「イザーは男の子じゃないからいいのよ」
俺でも勝てないうまなちゃんよりも圧倒的に強いイザーちゃん。認めたくはない事実ではあるが、オレはこの二人を敵に回してはいけないという事を知っている。こんな風に彼女たちが面白半分で創り出している世界で大人しくしているのはそういった意味合いもあるのだ。
「ねえ、そろそろアスモちゃんも天才科学者である紐畔亭羊仗と遊んでみたいって思ってるんじゃない?」
「いや、特にそんなことは思ってないけど」
「本当かな。そんなに私たちに気を使わなくたっていいんだよ。うまなちゃんだって紐畔亭羊仗の弟子だけじゃなくてそろそろ紐畔亭羊仗とアスモちゃんが絡んでるところを見たいって言ってたよね?」
「絡み合ってるところを見たいなんて言ってないわよ。魔王と幼女の絡みなんてテレビで視聴出来ないでしょ。そんなの見てるって他の人に知られたら、私の方が変態扱いされちゃうじゃない」
「その絡み合うじゃなくて、普通に会話とか交流の方だったんだけどね。やっぱりうまなちゃんって頭の中でそんな事ばっかり考えてるんだね。他の人には言わないでおくけど、やっぱりうまなちゃんも年頃の女の子なんだね。好奇心旺盛だね。そんなに気になるんだったら、今からアスモちゃんにお相手してもらったらいいんじゃないかな」
「だから、そういうのじゃないって。イザーの言っていることを勘違いしただけなんだって。あんまりしつこくすると、私も怒っちゃうよ」
あくまで上段として扱っているイザーちゃんとは対照的にうまなちゃんは少し、ほんの少しだけ怒っているのかもしれない。髪の毛先が少しふわふわと浮きかけているし、心なしかうまなちゃんを取り巻く大気がぼやけて見えている。一方のイザーちゃんはそんな事を気にするそぶりも見せずにヘラヘラとしているのだが、絶対にうまなちゃんから視線を外そうとはしなかった。
強者がにらみ合うというだけでも緊張が走るものなのだ。俺もそれなりに強者ではあると思うのだが、この二人の間に割って入るような真似は死んでも出来ない。命がいくつあっても足りないとさえ思ってしまうのだ。
「もう、そんなに怒っちゃダメだよ。うまなちゃんはすぐにムキになるからからかっちゃった。謝るから機嫌直してね。ほら、私も一緒に次の世界をどうしたらいいか考えてあげるからさ。それで、先生のところに一緒に行こうよ」
「うん、わかってたけど、あんまり私を困らせるようなことは言わないでほしいな。私も怒ることはあるんだからね」
二人の喧嘩がこの世界に対してどの程度の影響を与えるのだろう。二人が本気で戦えば世界なんて簡単に滅んでしまうのではないかと思うほどなのだが、この事態にいったい度だけの生物が気付いていたのか気になるところである。
今の二人の事を感じ取った人がもしもいたのなら、世界の終わりを告げる合図だと誤解してしまうかもしれないな。案外、世界の終わりを告げる預言者が見ているものはこの二人の喧嘩を予知していただけなのかもしれない。誰もあらがうことが出来ない存在である二人の喧嘩がどれくらい多くの世界に影響を及ぼすのだろう。
ただ、そんな二人が仲直りをしたみたいで良かったと心から思っていた。
「じゃあ、今回は紐畔亭羊仗と楽しんでくるんだよ」
「見た目は幼女ですけど天才科学者なんで丸め込まれないように気を付けてね」
「アスモちゃんが倒してきた女の子たちは今頃何をしてるんだろうね。もしかしたら、アスモちゃんの事を忘れられなくて夜な夜なかわりになる男を探し求めてるのかもしれないね」
「そんなわけないだろ。アスモの代わりに他の男なんて探す前に紐畔亭羊仗にでも頼んでアスモの代わりになるオモチャを作ってもらってるだろう。他の男で代用できるような男ではないと思うからな」
「あれれ、うまなちゃんってなんかアスモちゃんの事詳しいんだね。もしかして、二人ってもうそういうことしてるって事なのかな?」
「バカなことを言うな。そんなことしてないのはイザーが一番よく知ってるだろ。私と四六時中一緒にいるお前が私とこいつがそんな関係じゃないってのは百も承知だろ」
「そうなんだけどさ、もしかしたら私の目を盗んで二人で何かいけないことでもしちゃってるのかなって思っちゃうじゃない。ほら、アスモちゃんが他の子とエッチなことをしているのを見てる時のうまなちゃんって、苦虫を噛み潰したような顔してること多いんだよ。自分では気付いてないかもしれないけど、うまなちゃんってアスモちゃんとエッチなことしたいって思ってるんじゃないの?」
「そ、そんなわけないでしょ。なんで私が自分より弱い男に抱かれなきゃいけないのよ。私は自分より強い人に抱かれたいのよ。こんなよわっちぃざこ魔王なんかに興味なんてないんだからね」
俺は世界の全てを知っているというわけではないが、うまなちゃんより強いと思う男なんて見たことはない。そもそも、俺よりも強い男に出会ったこともないのだ。そんなやつがいたのであれば俺はすでにこの世界から消えているとは思うのだが。
「うまなちゃんより強い男なんてこの世界にはいないかもね。先生に頼んでうまなちゃんよりも強い男がいる世界を創ってもらった方がいいって事かな」
「そんなの嫌よ。私よりも強い男なんて認めないわ。何人たりともこの栗宮院うまなを超えることなんて許されないのよ」
「でも、うまなちゃんより私の方が強いと思うんだけど、それはいいのかな?」
「イザーは男の子じゃないからいいのよ」
俺でも勝てないうまなちゃんよりも圧倒的に強いイザーちゃん。認めたくはない事実ではあるが、オレはこの二人を敵に回してはいけないという事を知っている。こんな風に彼女たちが面白半分で創り出している世界で大人しくしているのはそういった意味合いもあるのだ。
「ねえ、そろそろアスモちゃんも天才科学者である紐畔亭羊仗と遊んでみたいって思ってるんじゃない?」
「いや、特にそんなことは思ってないけど」
「本当かな。そんなに私たちに気を使わなくたっていいんだよ。うまなちゃんだって紐畔亭羊仗の弟子だけじゃなくてそろそろ紐畔亭羊仗とアスモちゃんが絡んでるところを見たいって言ってたよね?」
「絡み合ってるところを見たいなんて言ってないわよ。魔王と幼女の絡みなんてテレビで視聴出来ないでしょ。そんなの見てるって他の人に知られたら、私の方が変態扱いされちゃうじゃない」
「その絡み合うじゃなくて、普通に会話とか交流の方だったんだけどね。やっぱりうまなちゃんって頭の中でそんな事ばっかり考えてるんだね。他の人には言わないでおくけど、やっぱりうまなちゃんも年頃の女の子なんだね。好奇心旺盛だね。そんなに気になるんだったら、今からアスモちゃんにお相手してもらったらいいんじゃないかな」
「だから、そういうのじゃないって。イザーの言っていることを勘違いしただけなんだって。あんまりしつこくすると、私も怒っちゃうよ」
あくまで上段として扱っているイザーちゃんとは対照的にうまなちゃんは少し、ほんの少しだけ怒っているのかもしれない。髪の毛先が少しふわふわと浮きかけているし、心なしかうまなちゃんを取り巻く大気がぼやけて見えている。一方のイザーちゃんはそんな事を気にするそぶりも見せずにヘラヘラとしているのだが、絶対にうまなちゃんから視線を外そうとはしなかった。
強者がにらみ合うというだけでも緊張が走るものなのだ。俺もそれなりに強者ではあると思うのだが、この二人の間に割って入るような真似は死んでも出来ない。命がいくつあっても足りないとさえ思ってしまうのだ。
「もう、そんなに怒っちゃダメだよ。うまなちゃんはすぐにムキになるからからかっちゃった。謝るから機嫌直してね。ほら、私も一緒に次の世界をどうしたらいいか考えてあげるからさ。それで、先生のところに一緒に行こうよ」
「うん、わかってたけど、あんまり私を困らせるようなことは言わないでほしいな。私も怒ることはあるんだからね」
二人の喧嘩がこの世界に対してどの程度の影響を与えるのだろう。二人が本気で戦えば世界なんて簡単に滅んでしまうのではないかと思うほどなのだが、この事態にいったい度だけの生物が気付いていたのか気になるところである。
今の二人の事を感じ取った人がもしもいたのなら、世界の終わりを告げる合図だと誤解してしまうかもしれないな。案外、世界の終わりを告げる預言者が見ているものはこの二人の喧嘩を予知していただけなのかもしれない。誰もあらがうことが出来ない存在である二人の喧嘩がどれくらい多くの世界に影響を及ぼすのだろう。
ただ、そんな二人が仲直りをしたみたいで良かったと心から思っていた。
「じゃあ、今回は紐畔亭羊仗と楽しんでくるんだよ」
「見た目は幼女ですけど天才科学者なんで丸め込まれないように気を付けてね」
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