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第二部

第五話 天才科学者と暴力女 ボーナスステージ中編

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 目の前に対峙してわかったことだが、俺と三賛斎リーフリーフの間にはどうやっても越えられない壁がある。この女もかなり強い方だとは思うのだが、残念なことに俺と比べることも出来ないくらい力に差があるようだ。それは男女の差なんて小さなものではなく、かき氷と太陽くらいに差があると思う。三賛斎リーフリーフもそれは感じているようで、だんだんと攻撃の精度や威力が落ちているのであった。
 何をやっても攻撃が空回りしていたので少しくらいなら食らってあげてもいいかなと思っていたのだけど、三賛斎リーフリーフの攻撃は直撃しても俺に何のダメージも与えることはなかった。逆に、直撃させたことによって攻撃していたはずの三賛斎リーフリーフの方がダメージを負ってしまっていたようだ。
「オレはお前なんかに屈したりなんかしないぞ。オレは他のみんなと違ってお前と一つになんてなりたくないんだからな」
 俺に抵抗があるというよりは男に対して抵抗があるようだ。他の三人は少なくとも男に対して多少は興味もあったんだろうけど、三賛斎リーフリーフに関しては男とは競い合う相手であって恋愛対象ではないようだ。恋愛対象かどうかなんて俺には何の関係もない話ではあるが、面白い事が起こりそうな気もするので様子を見ることにしよう。
「お前は男に対して敵対心を燃やしているようだけど、それって何か理由でもあるのか?」
「理由。そんなものあるに決まってるだろ。オレは純粋な気持ちで拳の道を究めようと思ってたんだ。それなのに、お前ら男はオレと戦うよりもオレの体を目当てに近付いてくるじゃないか。オレは少なくてもオレより弱い男なんて相手にしないって言ってるのにお前ら男はしつこく俺に言い寄ってくるだろ。そういうのは我慢出来ないんだ」
「それで、言い寄ってくる男どもを殺しているって事なのか?」
「殺すことの何が悪い。命のやり取りをしているだけの話だろ。オレが負けた時はオレの体を好きにしていいという条件を出してるし、相手が負けた時にオレが相手の体をどうしようが勝手だろ。命を奪うことに多少は罪悪感もあるけど、オレの体に見合うものなんか命くらいしかないような奴らだしな」
「その理屈から行くと、お前より強い俺はお前の事を好きにしてもいいって事になるんだが、それはどうなんだ?」
 その気にならなくても俺はこいつの事を無理やりどうにでも出来る。片手でこいつの体を抑えて無理やりすることだって出来るんだが、俺的にそういう無理矢理っぽい事は好きではないのだ。相手から望まれれば多少はそういう事もしていいとは思うけど、出来るのであれば平和に楽しい時間を過ごしていきたいと思っている。そんなのは全然魔王っぽくないって思われそうだが、そんなのは勝手な決めつけなので俺としては気にしたりなんてしないのだ。
「いや、オレはお前とそういう契約を結んでないからそうはならないと思う。羊仗先生にもお前と戦う時に何か賭けるのはやめておけって言われてるからな。オレにとってお前と戦うことは何も得るものがないというのも現状だし、そんなやつと何かをかけて戦うなてバカげている話だと思う」
「確かにな。紐畔亭羊仗の言うとおりだと思うぜ。どんなに頑張ったところでお前が俺と同じ強さまで到達することはないと思うし、なったとしてもその頃には俺はそれよりも数段上の強さを手に入れていると思うからな。お前が強くなるんだったら、俺は同じ期間でお前の二倍強くなってるはずだから」
「それはさすがに盛り過ぎでしょ。オレが強くなってもその二倍強くなるとかありえないって。そもそも、あんたが強いのって魔王だからって理由しかないと思うんだよな。あんたが魔王じゃ無くなればオレの方が強いって可能性も出てくると思うんだが。いったんその魔王をやめて人間になってみたらどうかな。お前のために羊仗先生が作ってくれた変身セットを使ってみてくれ」
「なんで俺がお前に合わせてそんなものを使わないといけないんだよ。そもそも、魔王から何に変身させようとしているのか言ってくれよ」
「そんなのは何でもいい。オレよりも弱くなるんだったらそれでいいからさ、一回変身してくれよ。お前はここでオレに殺されたとしても生き返ることが出来るんだろ。それなら一回くらい試してみてくれてもいいと思うんだ。な、オレの頼みを聞いてくれよ」
 別に変身することに抵抗はない。それよりも、俺が何に変身するのかということに興味はあったりする。うまなちゃんの創った世界でも変身はしていると思うのだけど、その時とは違って好きな時に自分のタイミングで変身することが出来るというのはなかなか素晴らしいもののように思える。
 いいことづくめのようにも思えるのだけど、一番の問題は俺が何に変身するのかということだ。元の人間の姿に戻れたらちょっと嬉しいと思ってしまいそうだ。でも、正直に言ってしまうと、俺が人間だったときにどんな感じだったのかなんてとっくの昔に忘れてしまっていた。昔の俺がどんな奴だったかなんてどうでもいい話だし、今ではもう人間だったころよりも魔王になってからの生活の方が長いくらいなのだ。
「変身してやるのは構わんのだが、俺に何かメリットがないと受けるつもりになれないな。お前が俺に何かしてくれるってのでもいいんだけど、それはどうなんだ?」
「オレがお前に何かしてやるってのか。お前は変身してオレは何かしてやるってのは公平じゃないと思うんだが。お前にはメリットしかないと思うぞ」
「そんな事もないと思うけど、俺は別に変身しないでこのままお前の事を好き勝手もてあそんだっていいんだけどな。それが出来るくらい実力差があるってのはお前も理解しているだろ?」
 三賛斎リーフリーフは何も言い返すことが出来ず、俺の事を恨めしそうな顔で見ているだけで口を開くことはなかった。
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