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第二部
第六話 契約魔法使い ボーナスステージ後編
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斎藤亜美の結んでいた契約は解除され、今は俺と二人でやりたいことをやりたいときにやるというだけの生活を送っている。俺は亜美ちゃんがやりたいことに付き合うだけでも満足していたのだが、肝心の亜美ちゃんも毎日朝昼晩と満足はしてくれているようだ。
世間から離れて誰もいない孤島で静かに過ごしていた。こんなに平和で何もない時間を過ごすのは元の世界を離れてから初めての経験だと思うのだが、亜美ちゃんも俺と同じで戦いのない日々を送るのは初めての経験だったそうだ。
「こんなに平和な時間を過ごしてもいいのかな。これだけ平和だと、逆に不安になっちゃうよね」
「その気持ちはちょっとわかるかも。この世界も割と平和な方だとは思うけど、俺がもともといた世界よりは命のやり取りが多く行われているんだよな。今もあっちの方で煙が上がってるみたいだけど、あの辺って亜美ちゃんがいたところだよね?」
「そうだよ。でも、たまたまあそこにいたってだけで特に何かあるってわけでもないんだよね。今はこうしてアスモ君と一緒にいられる時間が大切だからさ」
この島に来て困ることは何もなく、二人だけの時間はとても充実している。食べ物も飲み物も困ることはないが、危険な生物が存在していないという事だけは少し退屈な時間にも感じられていた。だが、そんな平和な時間はやはり大切なものだと思う。
時々この孤島に向かって来る人もいるようなのだが、海も空も邪魔するものは何もないのでいつでも遊びに来てくれてもいいのにもかかわらず誰もやってくることはない。時々あの砲弾が飛んでくることもあるのだが、俺も亜美ちゃんも特に気にすることはなく二人だけの時間を過ごしていった。
平和な時間は何時までも続くこともない。そんな風に思っていても俺たちの平和を脅かすような敵は現れることもなかった。
「ねえ、アスモ君はこの島みたいに誰もいない場所と人がいっぱいいる場所ならどっちが好きなのかな?」
「ここも好きだけど街中も好きかな。亜美ちゃんはどっちが好きなのかな?」
「私は、家の近くが好きかも。みんなにアスモ君の事を見てもらいたいって気持ちもあるからね」
「じゃあ、今から向こうに戻ろうか」
海にかけられた虹の橋を渡って俺と亜美ちゃんは孤島を後にした。誰も住んでいない無人島での生活も楽しかったが、ずっと二人だけだという生活は少しだけ刺激が少なくて退屈だったのかもしれない。亜美ちゃんと過ごしているときはそう思わなかったけれど、街が近づいてくるにつれて俺の中にそのような思いが少しずつわいてきているのを感じていた。
これからどこに住むのか決める必要もあるので落ち着ける場所を探すことにする。どこを見ても煙が上がっているのが気になるし、少し注意して探してみるとその辺に天使や悪魔の死体が転がっているのも気になっていた。
「ねえ、この辺で戦争でもやってたのかな?」
「そうかもしれないね。俺たちの島にも来ればよかったのにな。そうすればちょうどいい暇つぶしになったかもしれないのにね」
「ええ、暇潰しってひどいよ。私と二人だけだと退屈だったって事なの?」
「亜美ちゃんと一緒にいるのは楽しくて暇だなんて思ってないけどさ、ちょっと平和過ぎて誰かと戦いたいなって思っただけだから」
「それなら私が相手してあげるのに。アスモ君よりは全然弱いかもしれないけど、こう見えても私ってこの世界で一番強い魔法使いなんだよ。って言っても、アスモ君の世界に行ったら上位勢にはなれないと思うけどね」
「この世界と俺のいた世界では魔法の成り立ちがちょっと違うからそう感じるだけだと思うよ。亜美ちゃんくらいの才能で俺の世界に生まれてたら凄い魔法使いになってたと思うな。そうなると、俺が魔王として君臨することもなく亜美ちゃんに討伐されてしまっていたかもしれないよ」
「そんな事ないと思うけどな。でも、そう言ってくれるのは嘘でも嬉しいよ」
俺たちの横では今も悪魔と神の代理である天使や人間たちが戦っている。いつか見た魔法の効かない鎧に身を包んだ者たちが先頭に立って悪魔と対峙しているのだが、よくよく見てみると天使たちと戦っているものもいるようだ。人間の味方かと思っていた天使と戦う人間もいるのか思いながら見ていたが、もともと俺が住んでいた世界でも神を信じる人もいれば悪魔を崇拝している人もいたのを思い出した。
「見方によっては神も敵になったりするんだな」
「そうだろうね。私はどっちも気にしてなかったかも。自由に何でもやっちゃう悪魔は好きじゃないけど、なんでも規則や規律で縛り付ける神も好きじゃないんだよね。アスモ君は魔王だからどっちかっていうと悪魔側になるのかな?」
「神よりは悪魔の方が近いと思うけど、俺も悪魔はあまり好きじゃないな。この世界にどんな悪魔がいるのか知らないけど、亜美ちゃんが気に入らなっていうんだったら神も悪魔も滅ぼしてあげるよ」
「ありがとう。私も手伝うんで一緒に頑張ろうね。神も悪魔もだけど私たちの邪魔をする人達も始末しちゃおうね」
俺たちの時間を邪魔する奴は二人の魔法で消滅させてやればいい。この世界に存在していない俺の魔法を覚えた亜美ちゃんはこの世界にもう敵はいないといっていいだろう。
静かに二人で過ごしたい俺たちの邪魔さえしなければ、誰も敵にならないんだということを覚えておいてほしい。
世間から離れて誰もいない孤島で静かに過ごしていた。こんなに平和で何もない時間を過ごすのは元の世界を離れてから初めての経験だと思うのだが、亜美ちゃんも俺と同じで戦いのない日々を送るのは初めての経験だったそうだ。
「こんなに平和な時間を過ごしてもいいのかな。これだけ平和だと、逆に不安になっちゃうよね」
「その気持ちはちょっとわかるかも。この世界も割と平和な方だとは思うけど、俺がもともといた世界よりは命のやり取りが多く行われているんだよな。今もあっちの方で煙が上がってるみたいだけど、あの辺って亜美ちゃんがいたところだよね?」
「そうだよ。でも、たまたまあそこにいたってだけで特に何かあるってわけでもないんだよね。今はこうしてアスモ君と一緒にいられる時間が大切だからさ」
この島に来て困ることは何もなく、二人だけの時間はとても充実している。食べ物も飲み物も困ることはないが、危険な生物が存在していないという事だけは少し退屈な時間にも感じられていた。だが、そんな平和な時間はやはり大切なものだと思う。
時々この孤島に向かって来る人もいるようなのだが、海も空も邪魔するものは何もないのでいつでも遊びに来てくれてもいいのにもかかわらず誰もやってくることはない。時々あの砲弾が飛んでくることもあるのだが、俺も亜美ちゃんも特に気にすることはなく二人だけの時間を過ごしていった。
平和な時間は何時までも続くこともない。そんな風に思っていても俺たちの平和を脅かすような敵は現れることもなかった。
「ねえ、アスモ君はこの島みたいに誰もいない場所と人がいっぱいいる場所ならどっちが好きなのかな?」
「ここも好きだけど街中も好きかな。亜美ちゃんはどっちが好きなのかな?」
「私は、家の近くが好きかも。みんなにアスモ君の事を見てもらいたいって気持ちもあるからね」
「じゃあ、今から向こうに戻ろうか」
海にかけられた虹の橋を渡って俺と亜美ちゃんは孤島を後にした。誰も住んでいない無人島での生活も楽しかったが、ずっと二人だけだという生活は少しだけ刺激が少なくて退屈だったのかもしれない。亜美ちゃんと過ごしているときはそう思わなかったけれど、街が近づいてくるにつれて俺の中にそのような思いが少しずつわいてきているのを感じていた。
これからどこに住むのか決める必要もあるので落ち着ける場所を探すことにする。どこを見ても煙が上がっているのが気になるし、少し注意して探してみるとその辺に天使や悪魔の死体が転がっているのも気になっていた。
「ねえ、この辺で戦争でもやってたのかな?」
「そうかもしれないね。俺たちの島にも来ればよかったのにな。そうすればちょうどいい暇つぶしになったかもしれないのにね」
「ええ、暇潰しってひどいよ。私と二人だけだと退屈だったって事なの?」
「亜美ちゃんと一緒にいるのは楽しくて暇だなんて思ってないけどさ、ちょっと平和過ぎて誰かと戦いたいなって思っただけだから」
「それなら私が相手してあげるのに。アスモ君よりは全然弱いかもしれないけど、こう見えても私ってこの世界で一番強い魔法使いなんだよ。って言っても、アスモ君の世界に行ったら上位勢にはなれないと思うけどね」
「この世界と俺のいた世界では魔法の成り立ちがちょっと違うからそう感じるだけだと思うよ。亜美ちゃんくらいの才能で俺の世界に生まれてたら凄い魔法使いになってたと思うな。そうなると、俺が魔王として君臨することもなく亜美ちゃんに討伐されてしまっていたかもしれないよ」
「そんな事ないと思うけどな。でも、そう言ってくれるのは嘘でも嬉しいよ」
俺たちの横では今も悪魔と神の代理である天使や人間たちが戦っている。いつか見た魔法の効かない鎧に身を包んだ者たちが先頭に立って悪魔と対峙しているのだが、よくよく見てみると天使たちと戦っているものもいるようだ。人間の味方かと思っていた天使と戦う人間もいるのか思いながら見ていたが、もともと俺が住んでいた世界でも神を信じる人もいれば悪魔を崇拝している人もいたのを思い出した。
「見方によっては神も敵になったりするんだな」
「そうだろうね。私はどっちも気にしてなかったかも。自由に何でもやっちゃう悪魔は好きじゃないけど、なんでも規則や規律で縛り付ける神も好きじゃないんだよね。アスモ君は魔王だからどっちかっていうと悪魔側になるのかな?」
「神よりは悪魔の方が近いと思うけど、俺も悪魔はあまり好きじゃないな。この世界にどんな悪魔がいるのか知らないけど、亜美ちゃんが気に入らなっていうんだったら神も悪魔も滅ぼしてあげるよ」
「ありがとう。私も手伝うんで一緒に頑張ろうね。神も悪魔もだけど私たちの邪魔をする人達も始末しちゃおうね」
俺たちの時間を邪魔する奴は二人の魔法で消滅させてやればいい。この世界に存在していない俺の魔法を覚えた亜美ちゃんはこの世界にもう敵はいないといっていいだろう。
静かに二人で過ごしたい俺たちの邪魔さえしなければ、誰も敵にならないんだということを覚えておいてほしい。
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