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女盗賊マユちゃんとボーナスステージ 中編

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 拍子抜けするくらいあっさりと女盗賊マユちゃんを捕まえることが出来た。目にもとまらぬ速さで人の死角へと移動することが出来るみたいなのだが、そんなものは俺に通用しなかったのだ。

「ちょっと、何で私の早さについてこられるのよ。神様には勝てないんじゃなかったの?」
「神様には勝てないと思うけどさ、お前は神様ではないだろ」
「そうだけど、私の装飾品って神様から祝福を受けたモノなんだし、それをいくつも身に付けているんだから実質神様みたいなものでしょ」
「実質って、そんなの通用するわけないでしょ。そんなのが通用するんだったら俺もそうやって神の道具を揃えて対抗するわ」

 女盗賊マユちゃんが身に付けている指輪やアンクレットからは神のような力を感じるのは事実であるし、それらの補助が無くても女盗賊マユちゃんの素早い動きは人間の限界値を越えているようにも思えていた。
 ただ、その動きも俺にとってみればそこまで凄いとは思えないものであって、今まで見てきた勇者や魔王と比べると素早く見えるなといった程度のものであった。ここら辺は感覚の違いが大きいとは思うのだけれど、世界で一番早い男を自称していた奴よりも何倍も速いようには思えたのだ。

「ねえ、そんなに簡単に捕まえないでよ。私の自信が無くなっちゃうでしょ」
「そうは言ってもね。これは勝負だったんじゃないの」
「そうなんだけどさ。こんなにあっさり勝負がついたら面白くないでしょ。じゃあ、盗賊らしく私はこの城に忍び込んで財宝を頂いちゃうから、ここで十分くらい待機しててよ。それくらいサービスしてくれてもいいでしょ?」
「別に俺はかまわないけど、そんな事をしてお前のプライドは大丈夫か?」
「別にプライドなんて無いわよ。そんなものがあれば盗賊なんてやってないわよ」
「いや、盗賊としてのプライドとかもあるんじゃないのか」
「そんなプライドなんて必要無いわよ。私は一撃でも攻撃されたら終わる自信があるんだからね。魔王さんに捕まっちゃった時点で終わりみたいなもんだけど、上手いこと誤魔化せたんだから次のチャンスに期待するのよ。いい事、私がこの魔王城から財宝を盗み出すことが出来たら私の勝ちだからね」

 女盗賊マユちゃんが言っていることもやっていることも支離滅裂でおかしいとは思うのだけれど、盗賊らしいと言えば盗賊らしいのだが、そんなことで良いのだろうかという思いも多少はあったりするのだ。
 この城にある財宝と言われても思い当たるようなものはほとんどないのだが、金目のものと言えば魔物が使っている武器や防具になるのだろうか。争いごとのほとんどないこの世界では武器としての価値なんてほとんどつかないとは思うのだが、希少な金属や鉱石を使用しているので武器以外の側面でならそれなりの価値もありそうだ。防具に至っては単純に身を守るのにも役に立ちそうなので武器に比べたら需要はありそうに思える。
 しかし、それなりにたくさん持っていかないとまとまったお金にはならないと思うし、そんなものを持ち込んだところで人間がうまく使いこなせることも無いと思うので買い取るような店も無いだろう。
 そう考えると、加工していない貴金属や宝石類になるとは思うのだが、それらに関しては魔物たちがしっかりと警備もしているので大丈夫だろう。数多くの勇者や魔王を退けてきた歴戦の強者である魔物たちだし、俺は何の杞憂も無く任せることが出来ているのだ。

「魔王アスモ様。申し訳ございません。何者かによって宝物殿に収めていたエッセンシャルダイヤが盗まれてしまいました」
「エッセンシャルダイヤってそんなに価値があるものなのか?」
「我々にとってはただの宝石でしかないようなのですが、正しい使い方をすれば人間の能力を飛躍的に高めることが出来るようです」
「飛躍的にとは、どれくらいなんだ?」
「個人差もあるでしょうが、伝説に名を残すくらいの強さは手に入れると思います」
「いまいちピンとこないが、正しい使い方というのは簡単に出来るのか?」
「いえ、そう簡単には効果を発揮することは出来ないと聞いております。神に祝福されたアイテムを三つ以上身に付けていなければ何の効果も無いと言われております」
「神のアイテムって、俺と一緒に食事をとってた女盗賊は神に祝福された装備を少なくとも五個以上は身に付けていたぞ」
「それはマズいです。そんなにたくさんのアイテムを身に付けているとしたら、神の力を越えている可能性だってありますよ。直ちに幹部を集めて対策を練らなくては」

 女盗賊マユちゃんの目的がエッセンシャルダイヤだったとしたのならば、食事に誘ってしまった俺はまんまと罠にはめられてしまったという事なのだろうか。もしかしたら、先程の勝負で簡単に俺に捕まったのもエッセンシャルダイヤを盗むための罠だった可能性もあるのか。俺は自分の力を過信し過ぎていて油断していたのかもしれないな。弱いものを相手にしているとはいえ、これからはちゃんと警戒をして相手をした方が良いのかもしれないな。

「この勝負、私の勝ちみたいだね」

 声はすれどもその姿は見えず、俺の後ろで何者かが高速で移動している感じはあった。しかし、俺が振り返ってもそこには誰もおらず、駆け付けた幹部連中も声だけしか聞こえない相手に狼狽しているようであった。

「魔王様。これは危険です。神に祝福されたアイテムは五つだけではなかったみたいですよ」
「もしかして、指輪って一つ一つ別に数えた方が良かったの?」
「実物を見ていないので何とも言えませんが、それぞれ独立して神の祝福を受けていたと思われます。我々には女性の声は聞こえてもその姿は確認することが出来ません。確かにこの部屋に誰かがいるのは感じているのですが、我々の目をもってしてもその姿を捕らえることは出来ません」

 今のところ女盗賊マユちゃんに殺意はないようなのだが、俺を含めた魔物たちは背中や肩をいつの間にか叩かれていたり頭を触られたりしていた。誰も女盗賊マユちゃんの姿は見えていないようなのだが、触られている感触だけはあるので皆恐れおののいているように見える。もしも、女盗賊マユちゃんが何か強い武器を持っていたら俺達は皆殺しにされているのかもしれない。
 そんな風に思っていたのだが、何度か瞬きをしていると俺は女盗賊マユちゃんの動きを肉眼でハッキリととらえることが出来るようになっていた。正確に言うと、俺の死角に入り込んでいた女盗賊マユちゃんの動きを予想できるようになっていたようだ。
 女盗賊マユちゃんはその辺にある小さな武器を持って魔物に襲い掛かろうとしているのだが、あまりにも早すぎる動きに武器が耐えきれずに魔物に当たる前に蒸発してしまっていたのだ。素早すぎる動きゆえに手に取った武器が摩擦に耐えきれなくなっているのだが、どれだけの早さになればそんな事になるのだろうと思った。
 それならば、武器などを使わずに直接攻撃すればいいのではないかと思うのだが、さすがにスピードが乗った状態で攻撃してしまうと自分の体に与えるダメージも大きいのだろう。全て寸止めのように触れてさえいなかったようだ。

 相変わらず女盗賊マユちゃんは素早い動きで何度も魔物たちを攻撃しようとしているのだが、あまりにも早すぎるがゆえに攻撃することも出来ず、自分自身で作り出している衝撃波で攻撃しようにも新しく作り出した衝撃波をその後に作り出した衝撃波でかき消してしまっている。全てのものよりも早く動けてはいるようなのだが、動いているだけで何の影響も与えることが出来ていないのは少し気の毒に思えた。
 女盗賊マユちゃんは色々と試行錯誤をして魔物たちを倒そうとしているのだが、あれだけ素早いのならば魔物にかまわずに逃げてしまえばいいのにと思っていた。実際に女盗賊マユちゃんもこの部屋から逃げようとはしているようなのだが、素早いだけでは魔物たちが作り出した結界から抜けることは出来ないらしく、魔物たちをどうにかしようと必死に抵抗しているのである。
 俺は何げなくその様子を目で追っていたのだが、女盗賊マユちゃんは俺の視線に気付いたのかバッチリと目が合ってしまった。何度も何度も俺の視線を外そうと動きを早めたりフェイントを入れてかく乱しようとしていたようなのだが、俺はその全ての動きについていってじっと顔を見つめていたのだ。どんなに早く動いたとしても、俺は女盗賊マユちゃんの動きに惑わされるようなことは無くなったのだ。

「ちょっと、何で私の動きを見きってるんですか。怖いんですけど」
「怖いって、それはこっちのセリフなんだけど」
「でも、私は神様よりも早くなってるんですよ。それなのにおかしいじゃないですか。魔王さんって神様には勝てないんじゃなかったですか」
「それはそうなんだけどさ、お前は神じゃなくてただの人間だろ。神の早さは越えてしまったかもしれないけどさ、神ではなくて人間じゃん」
「そんなのって屁理屈ですよ。じゃあ、私より遅くて弱くても神様だったら勝てないって事なですか?」
「さあ、そうかもしれないけど試したことは無いからな。それに、何か勘違いしているかもしれないけど、俺は戦いだったら神にも負けるとは思ってないよ」
「あ、そうでした。魔王さんって、相手をイカせないと自分がイケないって体質なですよね。そうかそうか、じゃあ、神様を越えた私の早さで魔王さんをイカセてこの城を脱出してやりますね」

 何が起こっているのかわからないといった表情を浮かべている魔物たちであったが、俺が結界を解くと素直に道を空けてくれた。今であればこの道を突き切って外へ出ることも出来ると思うのだが、俺を簡単にイかせられると思っている女盗賊マユちゃんは俺の手をしっかりと握って逃げるつもりはないようだった。
 と言っても、地下深くにある宝物殿から今更特別監禁室に行くのは面倒だし、途中にあるリゾートで空いているコテージでも使う事にするか。コテージも快適に宿泊できるように設備は整っているし、万が一の事態があったとしてもすぐには外に出られないので問題はないだろう。

「へえ、魔王城の地下って海もあるんですね。噂には聞いてましたがちょっと驚きました」
「人工的に作られたやつだけどな。海に入りたかったら好きにしていいぞ」
「水着を持ってきていないんで今度にしますね。というか、転生してから水着とか見た事ない気がするんですけど」
「水着を持っていないんだったら海の近くで売ってるぞ。お前のために作ってくれるから時間は少しかかるかもしれないが、好きなデザインも選べるから遊んできたらいいんじゃないか」
「いいですね。でも、私は魔王さんを思う存分イカせてから海に行ってきますよ。その時には魔王さんは干からびてるかもしれませんがね」

 エッセンシャルダイヤの力で神をも超えた速さを手に入れた女盗賊マユちゃんの表情は誰が見ても自信に満ち溢れていた事だろう。俺は何の期待もしていなかったのだが、女盗賊マユちゃんは俺の期待に応えてくれることは無かったのだ。

「ちょっと待ってくださいよ。魔王さんに触れると力が出せないです。なんで、そんなに、気持ちいいところを、ピンポイントで、責めてくるんですか。今は、私の番なのに、私が責める番なのに。こんなのって、こんなのって、ありえないですよぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 俺はまだオモチャを出してもいないしいつも以上に優しく触っているだけなのだが、女盗賊マユちゃんは自ら溢れさせた汁のせいでベッドを三つも使用不可能にしてしまった。
 部屋の中が少しだけ磯臭くなっているのは海が近いからという理由だけではないと思うのだが、女盗賊マユちゃんは顔を紅潮させながら何度も何度も俺の手だけでイってしまっていた。
 もしかしたら、神の力が自分にとって都合の良い方へ影響を与えているのかもしれない。女盗賊マユちゃんの場合は自分の長所である素早さの他に女としての快楽をさらに感じやすくなっているのかもしれない。

 女盗賊マユちゃんの中にいれいている中指と薬指で刺激を与えつつ、露出している敏感な部分を親指でコリコリと刺激をしていたところ、女盗賊マユちゃんは絶叫と共にクジラかと思うくらいの大量の潮を噴いていた。
 四つ目のベッドが使用不能になってしまったのだが、このコテージがダメになってもまだまだコテージは空いているのだ。悲観することなんて何もない。

 それに、俺が一方的に責めているだけでは女盗賊マユちゃんも楽しくはないだろう。
 どんな感じで責められるのか、今から楽しみではある。
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