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女盗賊マユちゃんとボーナスステージ 前編
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女盗賊は警戒はしていないようなのだが気を抜くことはしていないようだった。一応食事会なのでそれなりの格好をしてきて欲しかったのだが、それを伝えていなかったためか女盗賊は昼間に見た姿よりもより盗賊らしい服装をしていたのだ。
いかにも動きやすそうな格好なので今から食事を楽しむようには見えないのだが、見かたによってはそう言うお店の人にも見えてしまうのではないかと思ってしまった。だが、この世界はテーブルマナーを守ろうという事よりも自分の身は自分で守ることが大事だと思われているので気にする事でもないのだ。
しかし、改めて見てみると女盗賊は踊り子のような露出の激しい服を身に纏っているのだな。踊り子のようにヒラヒラした服装ではないのだが、露出度という点を考えるとそこまで大差はないように思える。動きやすさを重視した結果こうなっているのだと思うが、他の男たちはへそも肩も出ていて胸の形も丸わかりなくらいピッタリとした布を巻いているだけの格好で何とも思わないのだろうか。そんなところも気になってしまっていた。
「そんなにジロジロ見て私の事を好きになったの?」
「そう言うわけではなくてだな。食事の場ではあまり見ないような露出の高い服装だから気になってしまって」
「それって、私の事を好きだから気になってるって事じゃないの。そうじゃないんだとしたら、あなたはただのエッチな人ってことになるのかもね。まあ、あんな映像を世界中に向けて発信してるんだからそう思われても仕方ないとは思うけどさ、あんまり露骨にじろじろ見るのは良くないと思うよ。私は見られても平気だけどね」
「見られても平気って事は、露出癖があるって事か?」
「違うって。この格好に慣れてるって事よ。まあ、自分の身を守るためにしてるんだから当然と言えば当然なんだけどさ、私はこの格好で恥ずかしいって思う事はもう無いのよね」
「最初は恥ずかしかったって事か?」
「そりゃ、そうよね。だって、こんなに肌を露出してた事なんて今まで一度も無かったからね。盗賊じゃなくて勇者を選べばよかったって思う事もあったけど、勇者を選んでたら今の十倍以上は死んでたんじゃないかって思うとさ、そんなの怖くて無理ってことになるわよね。私は痛いのとか嫌いだし」
「痛いのが嫌いなのにしっかりした防具を身に付けようとは思わないのか?」
「これは普通の布に見えるんだけど、極限まで魔法耐性を高めているのよ。さすがに魔王さんの魔法には効果が薄いと思うけどさ、その辺の魔導士くらいだったら魔法を無効化することも出来るのよね。それに、私の動きを助けてくれる効果もあったりするのよ。どんなに強い攻撃でも当たらなければ意味が無いって事だしね」
「へえ、そいつは盗賊にとってはありがたい装備かもな。ただの布にしか見えないのにそんな特殊な効果もあるんだったら良さそうだよな。その布で普通に服を作ったりはしないのか?」
「それが出来ればとっくにしてるわよ。この布は今の形が一番安定して効果を発揮できるんだけど、ちょっとでも加工をしちゃうと極端に効果も薄くなっちゃうのよね。見た目を取るか特殊効果を取るかって事なんだけど、私は痛いのが嫌だからこの格好にしちゃうのよ。それに、この布って直接素肌に触れながら空気に触れてないと真の効果を発揮できないんで重ね着も出来ないのよ。恥ずかしい話よね」
「それって、下着もつけてないって事なのか?」
「うーん、その辺は答えを控えさせてもらうわ。食事の場にふさわしい話題ではないでしょうからね」
しばらくの間沈黙が続いてしまったのだが、気をきかせた配下の魔物が女盗賊に食後のデザートを選ばせるためにやってきた。食事は全てお任せという事にしてあったのでデザートも勝手に持ってくるものだと思っていたのだが、今の気まずい空気を換えようとしてくれた料理担当の魔物には後で何か褒美を与えることにしよう。
「デザートか。こっちの世界に来て甘いものを食べた記憶ってあんまりないんですよね。果物もあんまり甘くなかったし、そもそも果物を作ってる世界もあんまりなかったですからね。美味しく食べられるものよりも確実に食べられるものを作るってのは、食事は楽しみではなく生きる糧ってのが伝わってきちゃいますよね。でも、この世界って平和で争い事もほとんど無いから食事は充実してますよね。私だけじゃなくて、他の世界から魔王さん目当てでやってきた人達もみんなそこは驚いてますよ。どの世界も食事は素材の味しかしなかったって嘆いてましたからね」
「言ってみればどの世界も戦争がずっと続いていたようなものだからな。食事をとるという意味合いも俺達が生きていた世界とは違うものなんだろう。この世界だって安定した農業をおこなうのに結構時間はかかったし、酪農や養殖なんかもいろんな勇者や魔王に知識を与えてもらった結果だからな。元々そんな事をやっていた奴が転生してきてくれて良かったって思うよ。そいつらがいなければもっと時間がかかったと思うしな」
「前職って言うか、転生前の知識がいろいろ役に立ってるって事なんだ。でも、知識だけじゃどうしようもないことだってあるんじゃないですか?」
「そうなんだよな。どんなに知識があったとしても設備が整っていないから人力に頼るしかないんだよな。でもさ、この世界って人の力を越えた魔法もあるし魔物の力だって使えるんだぜ。それを上手く活用すれば元の世界よりも効率的に生産することだって出来るんだからな。野菜だって穀物だって家畜だって時間をかけなくても魔法で育成期間を短くすることも出来るんだよ」
「それって、人体に影響あったりしないんですか?」
「栄養的には問題無いレベルだし、魔法で栽培していることで体内に微量ながら魔法を取り入れることになるんだけど、そのお陰で魔法が使えなかった奴らも少しは魔法を使えるようになったり、今までは獲得できなかった魔法耐性なんかを得ることもあるみたいだぜ。必ず手に入るってわけじゃないけど、日々の食事からそれを得る可能性が手に入るってのは良いことなんじゃないかな」
「でも、それって、魔法耐性を獲得出来なかった人と出来た人で格差が出ちゃうんじゃないかな。ちょっと不公平に感じちゃうかも」
「それは仕方ない事さ。多少は運に左右されるのも仕方ない事だろ。俺だって魔王になってなければこんな世界を創ることも無かったと思うよ。仮に、俺が勇者だったとしたら、魔王を倒した後の世界はそのまま放置してそうだしな。この世界に多くの勇者がやって来てるって事が魔王を倒した勇者は次の魔王を探して旅立つってのを裏付けていると思うんだよね。最初は魔王でやりがいも無いなって思ってたんだけど、今では魔王で良かったかなって思う事も少しはあるんだぜ」
「それって、魔王さんが世界を創るのが好きだってのもあるんじゃないですかね」
「俺は昔からシミュレーションゲームとか好きだったけどさ、ここまでうまく行くと何をどうしていいかわからなくなっちゃうかも。やっぱり難易度って簡単なだけじゃ楽しくないんだよな」
「もしかして、魔王さんって生まれ変わる時に選ぶ難易度を一番低いやつにしたんですか?」
「そうだよ。一番簡単なやつって言ったらさ、俺が思ってるよりも簡単なのが選ばれちゃってさ、そこまで難易度が低いのもどうなんだろうって思ってるんだよね」
「へえ、私も二回くらいは高難易度でやってみたんですけど、これはゲームじゃないって気付いた時は難易度を下げた方が気持ち的にも楽だなって思ったんですよ。そこそこにやり応えがあればいいかなって思う程度の難易度が一番ですけど、魔王さんってヘタレだったりするんですか?」
「まあ、難易度選択の時は相当へたれてたと思うよ。高難易度を選んだら、初期状態のまま戦争中の勇者たちの間に放り込まれて何も出来なかったりしたからね。それが無ければ俺ももう少し苦戦しそうなのを選んだと思うんだけどさ、難易度を選ばせてくれたやつが極端すぎてそう言うわけにもいかなかったんだよな。究極極楽モードってゲームに参加しているよりも自分が思った通りになんでもうまく行くってだけで楽しくなかったりするんだよな。いや、思い通りに行くのは楽しいんだけど、それだけじゃ飽きちゃうってのはあるよな」
「ちょっと待ってください。究極極楽モードって何ですか。私の時はそんなのなかったですよ。もしかして、魔王さんって絶対に倒せないイベント魔王みたいな存在ですか。ちょっとそれはひいちゃいますよ。もしかして、今まで相手をしてきた女の子も魔王さんのテクニックじゃなくてその難易度のお陰で攻略してたって事じゃないですよね」
「そう言う面もあるかもしれないけどさ、俺のテクニックだって多少は関係していると思うよ。相手の事を考えながらやったりもしてるからさ」
「魔王さんのテクニックはサポート力によって助けられてたって事なんですね。だからか。私がここから盗んでみたオモチャを使ってもそこまで気持ち良いって思えなかったんですよね。それって、魔王さんの事をサポートする力が無かったからって事ですよね。その力が無ければ普通のオモチャと何も変わらないって事なんですね」
「盗んだオモチャはお前のためのものじゃないからな。アレは誰かのために作ったモノじゃなくてこんなのがありますよってサンプルでしかないんだよ。だから、お前が本当に欲しいものがあるんだったらいくらでも作ってあげるよ。どんなのが欲しいのか言ってくれたら作るからさ」
女盗賊は俺の事を怪しんでいるようだが、今まで見てきた映像の事を思い出すと否定しきれないのだろう。それでも、女盗賊は俺に気を許そうとは思わなかったようで、デザートを食べ終えると少しだけ椅子を引いていつでも立ち上がれる態勢をとっていたのだ。
俺は相変わらず椅子に深く腰を落としているのだが、視線だけは女盗賊から外すことは無かったのだ。今の体勢でも女盗賊よりも早く行動する自信はあるし、万が一にも俺の命を奪うような行動があればソレを受け入れることは出来る。
「じゃあ、魔王さんには私のために何か作ってもらおうかな。それって、リクエストとか必要なんですか?」
「リクエストがあればそれに応えるけど、俺がお前に触れればどれが一番ふさわしいかってのがわかるよ」
「そうなんですか。私に触れたら私のためにおもちゃを作ってくれるって事なんですね。でも、それって無理だと思うな」
「無理って、どういう事?」
「だって、私は魔王さんから全力で逃げますもん。魔王さんが私のために作ってくれるオモチャってのは気になるけど、捕まるのはちょっと怖いですからね。イヤな記憶が蘇りそうなんで、全力で逃げさせてもらいますよ」
「じゃあ、この部屋から無事に出られたらお前の勝ちでいいよ。俺はいつまでもお前にかまうことも出来ないしな」
「ちょっとそれは酷いな。でも、この部屋から出れば私の勝ちってことで良いですよ。魔王さんと勝負をして勝ったって言えるって事ですもんね。魔王さんに勝負で勝ったってことになれば私の名前もこの世界に刻まれるって事ですもんね」
「まあ、勝っても負けても名前は残ると思うよ。そう言えば、名前を聞いてなかったな。なんて名前なんだ?」
「もう、食事に招待した時点で聞いてくださいよ。私の名前はマユちゃんです。マユちゃんまでが名前なんで、敬称はつけなくても大丈夫ですよ。私はこの部屋から抜け出してお宝もいくつかもらっちゃいますからね」
女盗賊マユちゃんは椅子に座っていたはずがいつの間にか天井近くまで飛び上がっていた。その行動に何の意味があるのかは理解出来なかったが、とにかく動きが素早いという事は理解出来た。
ただ、俺が目に負えないほど速いわけではなかったので、この勝負は何とかなってしまうだろう。
それにしても、名前にちゃんが入っているのは何の冗談なんだろうと思ってしまうのは俺だけではないはずだ。
いかにも動きやすそうな格好なので今から食事を楽しむようには見えないのだが、見かたによってはそう言うお店の人にも見えてしまうのではないかと思ってしまった。だが、この世界はテーブルマナーを守ろうという事よりも自分の身は自分で守ることが大事だと思われているので気にする事でもないのだ。
しかし、改めて見てみると女盗賊は踊り子のような露出の激しい服を身に纏っているのだな。踊り子のようにヒラヒラした服装ではないのだが、露出度という点を考えるとそこまで大差はないように思える。動きやすさを重視した結果こうなっているのだと思うが、他の男たちはへそも肩も出ていて胸の形も丸わかりなくらいピッタリとした布を巻いているだけの格好で何とも思わないのだろうか。そんなところも気になってしまっていた。
「そんなにジロジロ見て私の事を好きになったの?」
「そう言うわけではなくてだな。食事の場ではあまり見ないような露出の高い服装だから気になってしまって」
「それって、私の事を好きだから気になってるって事じゃないの。そうじゃないんだとしたら、あなたはただのエッチな人ってことになるのかもね。まあ、あんな映像を世界中に向けて発信してるんだからそう思われても仕方ないとは思うけどさ、あんまり露骨にじろじろ見るのは良くないと思うよ。私は見られても平気だけどね」
「見られても平気って事は、露出癖があるって事か?」
「違うって。この格好に慣れてるって事よ。まあ、自分の身を守るためにしてるんだから当然と言えば当然なんだけどさ、私はこの格好で恥ずかしいって思う事はもう無いのよね」
「最初は恥ずかしかったって事か?」
「そりゃ、そうよね。だって、こんなに肌を露出してた事なんて今まで一度も無かったからね。盗賊じゃなくて勇者を選べばよかったって思う事もあったけど、勇者を選んでたら今の十倍以上は死んでたんじゃないかって思うとさ、そんなの怖くて無理ってことになるわよね。私は痛いのとか嫌いだし」
「痛いのが嫌いなのにしっかりした防具を身に付けようとは思わないのか?」
「これは普通の布に見えるんだけど、極限まで魔法耐性を高めているのよ。さすがに魔王さんの魔法には効果が薄いと思うけどさ、その辺の魔導士くらいだったら魔法を無効化することも出来るのよね。それに、私の動きを助けてくれる効果もあったりするのよ。どんなに強い攻撃でも当たらなければ意味が無いって事だしね」
「へえ、そいつは盗賊にとってはありがたい装備かもな。ただの布にしか見えないのにそんな特殊な効果もあるんだったら良さそうだよな。その布で普通に服を作ったりはしないのか?」
「それが出来ればとっくにしてるわよ。この布は今の形が一番安定して効果を発揮できるんだけど、ちょっとでも加工をしちゃうと極端に効果も薄くなっちゃうのよね。見た目を取るか特殊効果を取るかって事なんだけど、私は痛いのが嫌だからこの格好にしちゃうのよ。それに、この布って直接素肌に触れながら空気に触れてないと真の効果を発揮できないんで重ね着も出来ないのよ。恥ずかしい話よね」
「それって、下着もつけてないって事なのか?」
「うーん、その辺は答えを控えさせてもらうわ。食事の場にふさわしい話題ではないでしょうからね」
しばらくの間沈黙が続いてしまったのだが、気をきかせた配下の魔物が女盗賊に食後のデザートを選ばせるためにやってきた。食事は全てお任せという事にしてあったのでデザートも勝手に持ってくるものだと思っていたのだが、今の気まずい空気を換えようとしてくれた料理担当の魔物には後で何か褒美を与えることにしよう。
「デザートか。こっちの世界に来て甘いものを食べた記憶ってあんまりないんですよね。果物もあんまり甘くなかったし、そもそも果物を作ってる世界もあんまりなかったですからね。美味しく食べられるものよりも確実に食べられるものを作るってのは、食事は楽しみではなく生きる糧ってのが伝わってきちゃいますよね。でも、この世界って平和で争い事もほとんど無いから食事は充実してますよね。私だけじゃなくて、他の世界から魔王さん目当てでやってきた人達もみんなそこは驚いてますよ。どの世界も食事は素材の味しかしなかったって嘆いてましたからね」
「言ってみればどの世界も戦争がずっと続いていたようなものだからな。食事をとるという意味合いも俺達が生きていた世界とは違うものなんだろう。この世界だって安定した農業をおこなうのに結構時間はかかったし、酪農や養殖なんかもいろんな勇者や魔王に知識を与えてもらった結果だからな。元々そんな事をやっていた奴が転生してきてくれて良かったって思うよ。そいつらがいなければもっと時間がかかったと思うしな」
「前職って言うか、転生前の知識がいろいろ役に立ってるって事なんだ。でも、知識だけじゃどうしようもないことだってあるんじゃないですか?」
「そうなんだよな。どんなに知識があったとしても設備が整っていないから人力に頼るしかないんだよな。でもさ、この世界って人の力を越えた魔法もあるし魔物の力だって使えるんだぜ。それを上手く活用すれば元の世界よりも効率的に生産することだって出来るんだからな。野菜だって穀物だって家畜だって時間をかけなくても魔法で育成期間を短くすることも出来るんだよ」
「それって、人体に影響あったりしないんですか?」
「栄養的には問題無いレベルだし、魔法で栽培していることで体内に微量ながら魔法を取り入れることになるんだけど、そのお陰で魔法が使えなかった奴らも少しは魔法を使えるようになったり、今までは獲得できなかった魔法耐性なんかを得ることもあるみたいだぜ。必ず手に入るってわけじゃないけど、日々の食事からそれを得る可能性が手に入るってのは良いことなんじゃないかな」
「でも、それって、魔法耐性を獲得出来なかった人と出来た人で格差が出ちゃうんじゃないかな。ちょっと不公平に感じちゃうかも」
「それは仕方ない事さ。多少は運に左右されるのも仕方ない事だろ。俺だって魔王になってなければこんな世界を創ることも無かったと思うよ。仮に、俺が勇者だったとしたら、魔王を倒した後の世界はそのまま放置してそうだしな。この世界に多くの勇者がやって来てるって事が魔王を倒した勇者は次の魔王を探して旅立つってのを裏付けていると思うんだよね。最初は魔王でやりがいも無いなって思ってたんだけど、今では魔王で良かったかなって思う事も少しはあるんだぜ」
「それって、魔王さんが世界を創るのが好きだってのもあるんじゃないですかね」
「俺は昔からシミュレーションゲームとか好きだったけどさ、ここまでうまく行くと何をどうしていいかわからなくなっちゃうかも。やっぱり難易度って簡単なだけじゃ楽しくないんだよな」
「もしかして、魔王さんって生まれ変わる時に選ぶ難易度を一番低いやつにしたんですか?」
「そうだよ。一番簡単なやつって言ったらさ、俺が思ってるよりも簡単なのが選ばれちゃってさ、そこまで難易度が低いのもどうなんだろうって思ってるんだよね」
「へえ、私も二回くらいは高難易度でやってみたんですけど、これはゲームじゃないって気付いた時は難易度を下げた方が気持ち的にも楽だなって思ったんですよ。そこそこにやり応えがあればいいかなって思う程度の難易度が一番ですけど、魔王さんってヘタレだったりするんですか?」
「まあ、難易度選択の時は相当へたれてたと思うよ。高難易度を選んだら、初期状態のまま戦争中の勇者たちの間に放り込まれて何も出来なかったりしたからね。それが無ければ俺ももう少し苦戦しそうなのを選んだと思うんだけどさ、難易度を選ばせてくれたやつが極端すぎてそう言うわけにもいかなかったんだよな。究極極楽モードってゲームに参加しているよりも自分が思った通りになんでもうまく行くってだけで楽しくなかったりするんだよな。いや、思い通りに行くのは楽しいんだけど、それだけじゃ飽きちゃうってのはあるよな」
「ちょっと待ってください。究極極楽モードって何ですか。私の時はそんなのなかったですよ。もしかして、魔王さんって絶対に倒せないイベント魔王みたいな存在ですか。ちょっとそれはひいちゃいますよ。もしかして、今まで相手をしてきた女の子も魔王さんのテクニックじゃなくてその難易度のお陰で攻略してたって事じゃないですよね」
「そう言う面もあるかもしれないけどさ、俺のテクニックだって多少は関係していると思うよ。相手の事を考えながらやったりもしてるからさ」
「魔王さんのテクニックはサポート力によって助けられてたって事なんですね。だからか。私がここから盗んでみたオモチャを使ってもそこまで気持ち良いって思えなかったんですよね。それって、魔王さんの事をサポートする力が無かったからって事ですよね。その力が無ければ普通のオモチャと何も変わらないって事なんですね」
「盗んだオモチャはお前のためのものじゃないからな。アレは誰かのために作ったモノじゃなくてこんなのがありますよってサンプルでしかないんだよ。だから、お前が本当に欲しいものがあるんだったらいくらでも作ってあげるよ。どんなのが欲しいのか言ってくれたら作るからさ」
女盗賊は俺の事を怪しんでいるようだが、今まで見てきた映像の事を思い出すと否定しきれないのだろう。それでも、女盗賊は俺に気を許そうとは思わなかったようで、デザートを食べ終えると少しだけ椅子を引いていつでも立ち上がれる態勢をとっていたのだ。
俺は相変わらず椅子に深く腰を落としているのだが、視線だけは女盗賊から外すことは無かったのだ。今の体勢でも女盗賊よりも早く行動する自信はあるし、万が一にも俺の命を奪うような行動があればソレを受け入れることは出来る。
「じゃあ、魔王さんには私のために何か作ってもらおうかな。それって、リクエストとか必要なんですか?」
「リクエストがあればそれに応えるけど、俺がお前に触れればどれが一番ふさわしいかってのがわかるよ」
「そうなんですか。私に触れたら私のためにおもちゃを作ってくれるって事なんですね。でも、それって無理だと思うな」
「無理って、どういう事?」
「だって、私は魔王さんから全力で逃げますもん。魔王さんが私のために作ってくれるオモチャってのは気になるけど、捕まるのはちょっと怖いですからね。イヤな記憶が蘇りそうなんで、全力で逃げさせてもらいますよ」
「じゃあ、この部屋から無事に出られたらお前の勝ちでいいよ。俺はいつまでもお前にかまうことも出来ないしな」
「ちょっとそれは酷いな。でも、この部屋から出れば私の勝ちってことで良いですよ。魔王さんと勝負をして勝ったって言えるって事ですもんね。魔王さんに勝負で勝ったってことになれば私の名前もこの世界に刻まれるって事ですもんね」
「まあ、勝っても負けても名前は残ると思うよ。そう言えば、名前を聞いてなかったな。なんて名前なんだ?」
「もう、食事に招待した時点で聞いてくださいよ。私の名前はマユちゃんです。マユちゃんまでが名前なんで、敬称はつけなくても大丈夫ですよ。私はこの部屋から抜け出してお宝もいくつかもらっちゃいますからね」
女盗賊マユちゃんは椅子に座っていたはずがいつの間にか天井近くまで飛び上がっていた。その行動に何の意味があるのかは理解出来なかったが、とにかく動きが素早いという事は理解出来た。
ただ、俺が目に負えないほど速いわけではなかったので、この勝負は何とかなってしまうだろう。
それにしても、名前にちゃんが入っているのは何の冗談なんだろうと思ってしまうのは俺だけではないはずだ。
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