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聖騎士の息子 第七話
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魔導士たちの力を振り絞った魔法は今まで見たことも無いようなエネルギー量だった。しかし、いくら魔力を高めたところで今の僕には何の意味も無いのだった。あの魔力量で攻撃されたとしたら、地形が変化することの物理的な要因で死んでしまうことはあるかもしれないが、魔法自体では僕に何の影響も与えることは出来ないのだ。
これほど大きな魔力量ならもしかするのではないだろうかと期待されているのかもしれないが、その期待に応えてもらうことは出来ずに全ては無駄に終わってしまった。
強力な魔法を受けたからと言って僕は強くなるわけでもないのだけれど、限界まで魔力を絞り出した彼女たちは少しくらいは強くなっているのかもしれないな。
四時間近く続いた魔法攻撃が残したものと言えば、僕と観衆が感じているだろう軽い疲労感と魔導士たちが感じているだろうどうしようもない疲労感だろう。そんな状況でもセレさんは僕に名前で呼んでもらえることが嬉しかったようで、他の魔導士たちからは羨望のまなざしで見られていたのだった。
「それにしても、これだけの魔法を国のためじゃなく個人的な理由で使うのってどうなんですかね?」
「それなら問題ないですよ。女王陛下のお許しも得ていますので。そもそも、この作戦の立案者の一人に女王陛下がいらっしゃいますからね。あんまり大きい声では言えませんけど、女王陛下も正樹様をお慕いいたしているみたいですよ。国王陛下には秘密ですけどね」
僕はその事にちゃんとした返事は返せなかったけれど、倒れている人たちも観客席で見ている観衆たちもみんな嬉しそうな顔をしていて何もしていないのに僕は良い事をしたのではないかと思えていたのだった。
これだけ大規模な魔法を使ってやったことが僕の心を少し覗き見たことだというのはいかがなものかと思えたのだが、セレさんが覗いた事を魔導士間で共有することによって僕には大切に思っている彼女がいるという事実が急速に国中に広がっていった。女性の噂話は光と同じくらい早いのではないかと思うくらいだったのだが、実際に魔法を通してある程度の情報は共通されているという事なので光と同じくらい早いというのも過言ではないのかもしれなかった。
僕はノエラと一緒に家に帰ることになったのだけれど、先ほどの行動の代償としてこの国には今現在残されている魔力量では明日の朝まで結界を維持できるかわからないらしい。そんなわけで、ノエラは食事をとり終えると本来は必要のない夜間警備に参加することになってしまったとのことだ。
この国に対して悪意あるものが入国出来ないようになっている結界が突破されることはたびたびあったらしいのだけれど、各都市を守っている結界自体が機能を果たすことが出来なくなってしまうのは今まで一度も無かったらしい。それが一か所だけではなく国全域に広がってしまうというのはどうしようもないのではないかと思えてしまった。
「その結界を発生させるメカニズムってどういうやつなの?」
「私は魔法を使えないので詳しくは知らないのだが、その昔どこからかやってきた魔法使いが魔族から人間を守るために用意した結界を作動させる装置があるらしいのだ。その装置の使い方は妻から聞いたところによると、カギとなる石に魔力を注ぐことによって魔法回路で繋がれている各地に散らばる石に魔力を分け与えてその石同士がさらにつながることによって強固な結界を生み出しているそうだ。昔は国土もそれほど大きくなく、魔導士が三人もいれば一週間は結界を維持できたそうなのだ。だが、今は国土も広がり繋がっている石の数もとてつもない数になっているとのことだ。つまり、以前とは比べ物にならないくらいの魔力を必要とする結界になっているとのことだ。ある程度は魔力を蓄えておいてくれるそうのだが、三日前から先ほどの魔法に全てを注いでしまっていたので、間もなく結界もその形と強度を維持できなくなってしまう可能性が非常に高くなっているのだよ」
「それってさ、どんな魔力でも大丈夫なの?」
「どんなというと?」
「この国の魔導士じゃなくて僕の魔力とかでもさ」
「それは大丈夫だと思うのだが、そんなことが出来るのか?」
「魔力を注ぐって言うのがよくわからないけど、やり方さえ教えてもらえれば何とかなると思うよ。何もしないよりは何か出来ることをやった方がいいと思うんだけどね」
「それはかたじけない。だが、この国の不祥事に付き合っていただくのも悪い気がしているのだが」
「それは気にしなくてもいいよ。半分くらいの原因は僕かもしれないしね。もしかしたら、僕だけの責任かもしれないけどさ」
僕は自嘲気味にそう言って笑ったのだけれど、ノエラはピクリとも笑ってはくれなかった。笑うどころか、僕を見て何か納得している様子だった。
「そうだな。試せるものは何でも試した方がいいな。申し訳ないが、食事の前に魔晶石のある地下墳墓へ行くことにしてもかまわないか?」
「僕は構わないけど、コウコとシギはほっといていいのかな?」
「二人なら大丈夫なはずさ。妻は家に帰ることが出来ない程披露しているみたいなので期待できないが、私の両親が二人の子供の面倒を見てくれていることになっているからな。私の母が正樹殿と妻の戦いを直接見たいと言ってこちらに来ているのだよ。母も正樹殿のファンになったと観客席で言っていたのは正直に言って、複雑な心境だよ」
そう言いながらも含み笑いを見せるノエラを見て、僕は何とも複雑な気分で地下への階段をただひたすら下っていた。結構深い位置にあるのかと思っていたのだけれど、入り口から踊り場を二回通っただけで着いたのでそんなに深い位置にあるわけではないようだった。
これほど大きな魔力量ならもしかするのではないだろうかと期待されているのかもしれないが、その期待に応えてもらうことは出来ずに全ては無駄に終わってしまった。
強力な魔法を受けたからと言って僕は強くなるわけでもないのだけれど、限界まで魔力を絞り出した彼女たちは少しくらいは強くなっているのかもしれないな。
四時間近く続いた魔法攻撃が残したものと言えば、僕と観衆が感じているだろう軽い疲労感と魔導士たちが感じているだろうどうしようもない疲労感だろう。そんな状況でもセレさんは僕に名前で呼んでもらえることが嬉しかったようで、他の魔導士たちからは羨望のまなざしで見られていたのだった。
「それにしても、これだけの魔法を国のためじゃなく個人的な理由で使うのってどうなんですかね?」
「それなら問題ないですよ。女王陛下のお許しも得ていますので。そもそも、この作戦の立案者の一人に女王陛下がいらっしゃいますからね。あんまり大きい声では言えませんけど、女王陛下も正樹様をお慕いいたしているみたいですよ。国王陛下には秘密ですけどね」
僕はその事にちゃんとした返事は返せなかったけれど、倒れている人たちも観客席で見ている観衆たちもみんな嬉しそうな顔をしていて何もしていないのに僕は良い事をしたのではないかと思えていたのだった。
これだけ大規模な魔法を使ってやったことが僕の心を少し覗き見たことだというのはいかがなものかと思えたのだが、セレさんが覗いた事を魔導士間で共有することによって僕には大切に思っている彼女がいるという事実が急速に国中に広がっていった。女性の噂話は光と同じくらい早いのではないかと思うくらいだったのだが、実際に魔法を通してある程度の情報は共通されているという事なので光と同じくらい早いというのも過言ではないのかもしれなかった。
僕はノエラと一緒に家に帰ることになったのだけれど、先ほどの行動の代償としてこの国には今現在残されている魔力量では明日の朝まで結界を維持できるかわからないらしい。そんなわけで、ノエラは食事をとり終えると本来は必要のない夜間警備に参加することになってしまったとのことだ。
この国に対して悪意あるものが入国出来ないようになっている結界が突破されることはたびたびあったらしいのだけれど、各都市を守っている結界自体が機能を果たすことが出来なくなってしまうのは今まで一度も無かったらしい。それが一か所だけではなく国全域に広がってしまうというのはどうしようもないのではないかと思えてしまった。
「その結界を発生させるメカニズムってどういうやつなの?」
「私は魔法を使えないので詳しくは知らないのだが、その昔どこからかやってきた魔法使いが魔族から人間を守るために用意した結界を作動させる装置があるらしいのだ。その装置の使い方は妻から聞いたところによると、カギとなる石に魔力を注ぐことによって魔法回路で繋がれている各地に散らばる石に魔力を分け与えてその石同士がさらにつながることによって強固な結界を生み出しているそうだ。昔は国土もそれほど大きくなく、魔導士が三人もいれば一週間は結界を維持できたそうなのだ。だが、今は国土も広がり繋がっている石の数もとてつもない数になっているとのことだ。つまり、以前とは比べ物にならないくらいの魔力を必要とする結界になっているとのことだ。ある程度は魔力を蓄えておいてくれるそうのだが、三日前から先ほどの魔法に全てを注いでしまっていたので、間もなく結界もその形と強度を維持できなくなってしまう可能性が非常に高くなっているのだよ」
「それってさ、どんな魔力でも大丈夫なの?」
「どんなというと?」
「この国の魔導士じゃなくて僕の魔力とかでもさ」
「それは大丈夫だと思うのだが、そんなことが出来るのか?」
「魔力を注ぐって言うのがよくわからないけど、やり方さえ教えてもらえれば何とかなると思うよ。何もしないよりは何か出来ることをやった方がいいと思うんだけどね」
「それはかたじけない。だが、この国の不祥事に付き合っていただくのも悪い気がしているのだが」
「それは気にしなくてもいいよ。半分くらいの原因は僕かもしれないしね。もしかしたら、僕だけの責任かもしれないけどさ」
僕は自嘲気味にそう言って笑ったのだけれど、ノエラはピクリとも笑ってはくれなかった。笑うどころか、僕を見て何か納得している様子だった。
「そうだな。試せるものは何でも試した方がいいな。申し訳ないが、食事の前に魔晶石のある地下墳墓へ行くことにしてもかまわないか?」
「僕は構わないけど、コウコとシギはほっといていいのかな?」
「二人なら大丈夫なはずさ。妻は家に帰ることが出来ない程披露しているみたいなので期待できないが、私の両親が二人の子供の面倒を見てくれていることになっているからな。私の母が正樹殿と妻の戦いを直接見たいと言ってこちらに来ているのだよ。母も正樹殿のファンになったと観客席で言っていたのは正直に言って、複雑な心境だよ」
そう言いながらも含み笑いを見せるノエラを見て、僕は何とも複雑な気分で地下への階段をただひたすら下っていた。結構深い位置にあるのかと思っていたのだけれど、入り口から踊り場を二回通っただけで着いたのでそんなに深い位置にあるわけではないようだった。
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