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魔界の住人と僕ら 後編
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「ええ、この世界で魔法を使うために必要な事がいくつかあるんだけど、それをまとめてすっ飛ばして魔法を使えるようになる可能性があるのよ」
「それって、どういう事なのかな?」
「魔法って本来は私達人間には扱えない代物なのよ。でもね、長い時間をかけて魔法を研究し、それぞれに合った方法で訓練を行った先にやっと魔法が使えるようになるのよ。なんでかはわからないけれど、その習得にかかる時間は男性よりも女性の方が圧倒的に短いのよね。どうして男性より女性の方が魔法に向いているのかわからなけど、若い男性の魔法使いって見た事ないのよね。肉体を作り変えて若くあろうとしている人達もいるんだけど、それは毎回失敗しているみたいで面白いわね」
「じゃあ、僕よりもみさきのために呼び出すって感じなのかな?」
「そうね。でも、あんたの場合ってこの世界の住人じゃないし、もしかしたらあなたも魔法が使えるようになるかもしれないわね」
「そうなったらみさきの負担も減るかもしれないね。じゃあ、みさきが起きたらさっそく試してみようか」
みさきはよく寝る子なのだが、ここ数日の闘いでいつの間にか疲労が蓄積していたのか、いつもよりも二時間ほど長く寝ていたようだった。僕はまだ寝ぼけているみさきの手をひいて地下に行くと、さっき聞いていた儀式を始めることにした。昨日の夜もいっぱい頑張ってくれていたし、僕もいつも以上に気合が入ってしまっていたから寝不足なのかもしれないな。今夜は何もしないでゆっくり寝かせてあげようかなって思うんだけど、きっとみさきはそんな事は許してくれないんだろうな。こっちの世界に来てから前の世界よりもスキンシップも増えているし、肉体的にも大人になっているから向こうで出来なかったことが好きなだけ出来る今が楽しいんだろうな。僕もみさきとずっと一緒に入れて楽しいんだけどね。
これから何が起こるのかみさきは全く理解していないようだったけれど、僕の手を握ったまま嬉しそうにニコニコとしているのだった。きっと、昨日の晩の事を思い出しているんだろうな。こうして手を握り合う事がみさきは好きなのだが、僕もみさきと手を繋ぐことは大好きなのだ。
「これからルシファーの仲間を呼び出すんだけど、みさきはちゃんと見ててね」
「ルシファーって私が殺した人でしょ?」
「そうかもしれないけど、もしかしたら別のルシファーの可能性もあるみたいだよ」
「そうなんだ。でも、私はルシファーを殺したことで強くなれたんだし、別にいっか」
数多くある拷問器具の一つに女の死体を置くと、シスターから聞いていた方法でルシファーを呼び出すことにしたのだ。なんでそんなことまで知っているのかと思っていたのだけれど、一から説明してもらうのも面倒くさいし必要もないだろう。どうしてなんて面倒なことは確認したい奴がすればいいだけだし、僕もみさきもこういう無駄な時間が少しでも減ればいいと思っているのだ。
この部屋にクーラーは設置されていないのだけれど、徐々に室温が下がっているのを文字通り肌で感じていた。いつの間にか吐く息も白くなっていた。冬になるにはまだ早いと思うし、そういう時期だったとしても急激に寒くなることは無いだろう。いや、僕が知らないだけでこの世界の季節は一日のうちに何度も変わってしまうのかもしれない。そんなことは無いと思うけど。
「こんな腐った世界に私を呼び出したのは君達かな?」
そう尋ねてきた男はとても偉そうな態度でふんぞり返って椅子に座っていた。僕の事はあまり見ずにみさきの事ばかり見ているのもちょっと腹立たしかった。
どこから持ってきたのかわからない椅子ではあったけれど、この部屋との相性は最悪というっていいほどミスマッチなのであった。あの椅子に座るくらいだったら体育館の固い床の上で正座してた方がマシじゃないかなとさえ思えてくる。
「よし、せっかく呼んでもらえたのだし、君たちの代わりにこの世界を滅ぼしてきてあげよう。大丈夫、三日もあればある程度の文明は破壊できるだろうしね。それに、この世界は神の加護が恐ろしく弱いね。私達がいた魔界の方が神の影響が強そうなのは謎だけどね。じゃあ、私はいったん失礼させていただくよ」
そうって僕の横を通り抜けていった男が階段を上ろうとしたときに、僕は思わず叫んでしまっていた。
「みさき、あいつを止めてくれ」
僕の言葉を聞いたみさきは脳で処理するよりも先に行動に移っていた。男は階段に足をかける前に振り返ると、みさきの右こぶしをそのまま左手で受け止めていた。みさきの右攻撃を回転しながら威力を殺して受けるという技術を見せてきた男は、みさきの攻撃を弱めることに成功したらしく、左上半身が首から上を残して消滅していた。
みさきの攻撃はガードするだけではなく受け流すことも危険なようだ。もし攻撃されたとしたら、その攻撃を避けつつも決して当たりませんようにと願うことしか出来ないのかもしれない。
上半身の左側のほとんどを失った男は死んでいないらしく、攻撃されたことを心底嬉しそうにしていた。こいつも変態なのかなと思っていると、みさきに破壊された体が徐々に再生していたのだった。
この再生能力をみさきが手に入れることが出来ればもっと楽になりそうだなと思っていた。でも、みさきはそう言った能力を引き継ぐことが出来たりはしないようだった。
「それって、どういう事なのかな?」
「魔法って本来は私達人間には扱えない代物なのよ。でもね、長い時間をかけて魔法を研究し、それぞれに合った方法で訓練を行った先にやっと魔法が使えるようになるのよ。なんでかはわからないけれど、その習得にかかる時間は男性よりも女性の方が圧倒的に短いのよね。どうして男性より女性の方が魔法に向いているのかわからなけど、若い男性の魔法使いって見た事ないのよね。肉体を作り変えて若くあろうとしている人達もいるんだけど、それは毎回失敗しているみたいで面白いわね」
「じゃあ、僕よりもみさきのために呼び出すって感じなのかな?」
「そうね。でも、あんたの場合ってこの世界の住人じゃないし、もしかしたらあなたも魔法が使えるようになるかもしれないわね」
「そうなったらみさきの負担も減るかもしれないね。じゃあ、みさきが起きたらさっそく試してみようか」
みさきはよく寝る子なのだが、ここ数日の闘いでいつの間にか疲労が蓄積していたのか、いつもよりも二時間ほど長く寝ていたようだった。僕はまだ寝ぼけているみさきの手をひいて地下に行くと、さっき聞いていた儀式を始めることにした。昨日の夜もいっぱい頑張ってくれていたし、僕もいつも以上に気合が入ってしまっていたから寝不足なのかもしれないな。今夜は何もしないでゆっくり寝かせてあげようかなって思うんだけど、きっとみさきはそんな事は許してくれないんだろうな。こっちの世界に来てから前の世界よりもスキンシップも増えているし、肉体的にも大人になっているから向こうで出来なかったことが好きなだけ出来る今が楽しいんだろうな。僕もみさきとずっと一緒に入れて楽しいんだけどね。
これから何が起こるのかみさきは全く理解していないようだったけれど、僕の手を握ったまま嬉しそうにニコニコとしているのだった。きっと、昨日の晩の事を思い出しているんだろうな。こうして手を握り合う事がみさきは好きなのだが、僕もみさきと手を繋ぐことは大好きなのだ。
「これからルシファーの仲間を呼び出すんだけど、みさきはちゃんと見ててね」
「ルシファーって私が殺した人でしょ?」
「そうかもしれないけど、もしかしたら別のルシファーの可能性もあるみたいだよ」
「そうなんだ。でも、私はルシファーを殺したことで強くなれたんだし、別にいっか」
数多くある拷問器具の一つに女の死体を置くと、シスターから聞いていた方法でルシファーを呼び出すことにしたのだ。なんでそんなことまで知っているのかと思っていたのだけれど、一から説明してもらうのも面倒くさいし必要もないだろう。どうしてなんて面倒なことは確認したい奴がすればいいだけだし、僕もみさきもこういう無駄な時間が少しでも減ればいいと思っているのだ。
この部屋にクーラーは設置されていないのだけれど、徐々に室温が下がっているのを文字通り肌で感じていた。いつの間にか吐く息も白くなっていた。冬になるにはまだ早いと思うし、そういう時期だったとしても急激に寒くなることは無いだろう。いや、僕が知らないだけでこの世界の季節は一日のうちに何度も変わってしまうのかもしれない。そんなことは無いと思うけど。
「こんな腐った世界に私を呼び出したのは君達かな?」
そう尋ねてきた男はとても偉そうな態度でふんぞり返って椅子に座っていた。僕の事はあまり見ずにみさきの事ばかり見ているのもちょっと腹立たしかった。
どこから持ってきたのかわからない椅子ではあったけれど、この部屋との相性は最悪というっていいほどミスマッチなのであった。あの椅子に座るくらいだったら体育館の固い床の上で正座してた方がマシじゃないかなとさえ思えてくる。
「よし、せっかく呼んでもらえたのだし、君たちの代わりにこの世界を滅ぼしてきてあげよう。大丈夫、三日もあればある程度の文明は破壊できるだろうしね。それに、この世界は神の加護が恐ろしく弱いね。私達がいた魔界の方が神の影響が強そうなのは謎だけどね。じゃあ、私はいったん失礼させていただくよ」
そうって僕の横を通り抜けていった男が階段を上ろうとしたときに、僕は思わず叫んでしまっていた。
「みさき、あいつを止めてくれ」
僕の言葉を聞いたみさきは脳で処理するよりも先に行動に移っていた。男は階段に足をかける前に振り返ると、みさきの右こぶしをそのまま左手で受け止めていた。みさきの右攻撃を回転しながら威力を殺して受けるという技術を見せてきた男は、みさきの攻撃を弱めることに成功したらしく、左上半身が首から上を残して消滅していた。
みさきの攻撃はガードするだけではなく受け流すことも危険なようだ。もし攻撃されたとしたら、その攻撃を避けつつも決して当たりませんようにと願うことしか出来ないのかもしれない。
上半身の左側のほとんどを失った男は死んでいないらしく、攻撃されたことを心底嬉しそうにしていた。こいつも変態なのかなと思っていると、みさきに破壊された体が徐々に再生していたのだった。
この再生能力をみさきが手に入れることが出来ればもっと楽になりそうだなと思っていた。でも、みさきはそう言った能力を引き継ぐことが出来たりはしないようだった。
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