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シスターと僕たち 後編
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「あらあら、なんだか今日も騒がしいと思っていたら、あんたたちまた私の教会の前でそんなことしてたのね。そんなことされてるから私の教会に誰も来てくれないじゃないのよ。それに、こんなに可愛らしい二人を襲おうとしているなんて許せないわ。私の神に代わってあんたたちを懲らしめてやるわね」
「またてめえか。俺らの縄張りに勝手に邪教の神殿を建てやがったと思ったら商売の邪魔までしやがって。この人数を見て怯まないのは立派な心掛けだが、まずは邪魔なてめえからやってやるよ」
よくわからない展開になってしまったが、僕たちに向かってきていた男たちは全員シスターの方へと走って行って、そのままシスターを袋叩きにしてしまった。
どのような反撃手段をとるのかと思ってみていると、ものの数秒でシスターはその場に倒れこんで動かなくなってしまった。意識はあるようなのだけれど、その表情は完全に戦意を喪失しているものだった。
「ねえ、あの人が注意をひいてくれている間にみさきだけでも逃げてくれ。僕でも少しなら足止めできると思うから、みさきはそのまま安全な場所を探してくるんだ」
「そんなことしなくても大丈夫だと思うよ。あの人たちの闘い方は見てわかったし、今ならちゃんと手加減できると思うからね」
「いや、手加減とかじゃなくて全力で逃げてくれよ。みさきが無事なら僕も大丈夫だからさ」
「ううん、まー君はそこで見ててね。私を守ろうとしてくれる気持ち嬉しいよ。でも、私の方がきっと強くなっているから大丈夫だからね」
僕はそう言って男たちの方へと歩いていくみさきの姿を見ていることしか出来なかった。この世界に来て数日だけだが、その一日一日がとても楽しく充実していた事を思い出していた。その充実していた日々はみさきが隣にいたからなのだとハッキリと理解していたのだった。
そんな大事なみさきが自分から野蛮な男たちに立ち向かっているのに、僕はこのまま黙ってみているわけにはいかない。頼りないかもしれないけれど、僕も出来ることを精一杯行うことにしよう。せめて、一人くらいは道連れにしてやろう。
そう意気込んでみたのも無駄になるくらいにみさきは強かった。どうみてもみさきは軽く殴っているだけなのに、殴られた男たちは壁まで吹っ飛ばされていた。その様子を見て男たちは怯んでいるようだったのだけれど、ゴロツキにはゴロツキなりのプライドがあるらしく、誰一人逃げることなくみさきに挑んでいた。もちろん、全員返り討ちにあっていた。
「ごめん、まー君は怪我無かったかな?」
「大丈夫だけど、みさきはそんなに強かったの?」
「私はこっちに来る前に強くなったみたいだよ。なんでも、殺した相手の力をそのまま奪っちゃうみたいな能力があるんだって。それでね、ミカエル君から貰ったラッパを吹いたらルシファーさんとか魔物とかを一気に殺しちゃったみたいなんだ。だから、きっとすごく強くなってしまったんだと思うよ」
「そうだったんだ。だから、この街を見付けた時の走っていたスピードが異常に早かったんだね。その謎が解けてよかったよ」
「ねえ、強くなっちゃった彼女は嫌いかな?」
「そんな事ないよ。みさきが強くなるってことは、僕に何かあってもみさきは大丈夫な確率が高くなるってことだからね」
「そうだけどさ、まー君に何かあったら私は悲しいよ」
「大丈夫。僕はきっと何度でも生き返ることが出来ると思うからさ。根拠はないけれど、サクラさんたちの言ってたことが正しいとしたら、僕もルシファーみたいに生き返らせてもらえると思うからね」
「そうなんだ。でも、生き返れるとしても死ぬのはダメだよ」
「みさきを残して死にたくはないけど、みさきより後に死ぬのも嫌だな。そうだ、みさきは殺した相手の能力を奪うんだよね?」
「そう聞いているよ」
「じゃあさ、助けてくれたシスターは除いて、あいつらは殺しちゃった方がいいんじゃないかな?」
「どうして?」
「もしかしたら、殺した相手の知識とかも手に入るかもしれないじゃない?」
「それは無いと思うよ。ルシファーさんを殺した時も魔物を殺した時も私の記憶に変化は無かったからね」
「そっか、そんなに都合のいいものでもないんだね。でもさ、少しでも強くなるためにあいつらを殺しておいた方がいいんじゃないかな?」
「まー君がそう言うならそうしようかな」
みさきが倒れている男たちに近付いていると、僕とみさきの間に倒れていたシスターが駆け寄ってきた。
「ちょっとまって。話は大体聞かせてもらったけど、こんな人目につきそうな場所はやめといたほうがいいわ。私の教会の地下に拷問室があるからそこまで運びましょ。そこなら好きに使っていいからね」
「教会の地下に拷問室があるんですか?」
「そう、私の趣味ね。と言っても、したこともされたことも無いんだけどさ。教会を作ってまだ日も浅いし。そうそう、バタバタしてて名乗るのを忘れていたわね。私の名前はシスターよ」
「シスターって名前なんですか?」
「まだシスターになりたてだから名前が無いのよ」
「シスターになる前の名前とかでもいいんですけど、教えてくださいよ」
「それは良いじゃない。シスターって呼んでよ」
「そう言うならそれでもいいですけど。僕は正樹であっちは彼女のみさきです」
「正樹ちゃんにみさきちゃんね。そうだ、泊まるとこが無いならうちの教会に泊っていいわよ。こいつらの処分だって時間がかかるだろうし、それまでは好きに使っていいわよ。もちろん、気に入ってくれたならそのまま使ってくれてもいいんだからね」
このシスターは僕に惚れている感じではないのだけれど、やっぱり見た目通りに男なのだろうか?
それとも、神に仕えるものには僕の能力は効かないという事なのだろうか?
そんな事を考えながらも、僕たちは意識を失っているゴロツキ達を縛って地下へと運んでいった。
何人か意識を取り戻して逃げてしまったけれど、それはそのままにしておくことにした。
とりあえず、当面の寝場所は確保できたみたいなので良しとしよう。
「またてめえか。俺らの縄張りに勝手に邪教の神殿を建てやがったと思ったら商売の邪魔までしやがって。この人数を見て怯まないのは立派な心掛けだが、まずは邪魔なてめえからやってやるよ」
よくわからない展開になってしまったが、僕たちに向かってきていた男たちは全員シスターの方へと走って行って、そのままシスターを袋叩きにしてしまった。
どのような反撃手段をとるのかと思ってみていると、ものの数秒でシスターはその場に倒れこんで動かなくなってしまった。意識はあるようなのだけれど、その表情は完全に戦意を喪失しているものだった。
「ねえ、あの人が注意をひいてくれている間にみさきだけでも逃げてくれ。僕でも少しなら足止めできると思うから、みさきはそのまま安全な場所を探してくるんだ」
「そんなことしなくても大丈夫だと思うよ。あの人たちの闘い方は見てわかったし、今ならちゃんと手加減できると思うからね」
「いや、手加減とかじゃなくて全力で逃げてくれよ。みさきが無事なら僕も大丈夫だからさ」
「ううん、まー君はそこで見ててね。私を守ろうとしてくれる気持ち嬉しいよ。でも、私の方がきっと強くなっているから大丈夫だからね」
僕はそう言って男たちの方へと歩いていくみさきの姿を見ていることしか出来なかった。この世界に来て数日だけだが、その一日一日がとても楽しく充実していた事を思い出していた。その充実していた日々はみさきが隣にいたからなのだとハッキリと理解していたのだった。
そんな大事なみさきが自分から野蛮な男たちに立ち向かっているのに、僕はこのまま黙ってみているわけにはいかない。頼りないかもしれないけれど、僕も出来ることを精一杯行うことにしよう。せめて、一人くらいは道連れにしてやろう。
そう意気込んでみたのも無駄になるくらいにみさきは強かった。どうみてもみさきは軽く殴っているだけなのに、殴られた男たちは壁まで吹っ飛ばされていた。その様子を見て男たちは怯んでいるようだったのだけれど、ゴロツキにはゴロツキなりのプライドがあるらしく、誰一人逃げることなくみさきに挑んでいた。もちろん、全員返り討ちにあっていた。
「ごめん、まー君は怪我無かったかな?」
「大丈夫だけど、みさきはそんなに強かったの?」
「私はこっちに来る前に強くなったみたいだよ。なんでも、殺した相手の力をそのまま奪っちゃうみたいな能力があるんだって。それでね、ミカエル君から貰ったラッパを吹いたらルシファーさんとか魔物とかを一気に殺しちゃったみたいなんだ。だから、きっとすごく強くなってしまったんだと思うよ」
「そうだったんだ。だから、この街を見付けた時の走っていたスピードが異常に早かったんだね。その謎が解けてよかったよ」
「ねえ、強くなっちゃった彼女は嫌いかな?」
「そんな事ないよ。みさきが強くなるってことは、僕に何かあってもみさきは大丈夫な確率が高くなるってことだからね」
「そうだけどさ、まー君に何かあったら私は悲しいよ」
「大丈夫。僕はきっと何度でも生き返ることが出来ると思うからさ。根拠はないけれど、サクラさんたちの言ってたことが正しいとしたら、僕もルシファーみたいに生き返らせてもらえると思うからね」
「そうなんだ。でも、生き返れるとしても死ぬのはダメだよ」
「みさきを残して死にたくはないけど、みさきより後に死ぬのも嫌だな。そうだ、みさきは殺した相手の能力を奪うんだよね?」
「そう聞いているよ」
「じゃあさ、助けてくれたシスターは除いて、あいつらは殺しちゃった方がいいんじゃないかな?」
「どうして?」
「もしかしたら、殺した相手の知識とかも手に入るかもしれないじゃない?」
「それは無いと思うよ。ルシファーさんを殺した時も魔物を殺した時も私の記憶に変化は無かったからね」
「そっか、そんなに都合のいいものでもないんだね。でもさ、少しでも強くなるためにあいつらを殺しておいた方がいいんじゃないかな?」
「まー君がそう言うならそうしようかな」
みさきが倒れている男たちに近付いていると、僕とみさきの間に倒れていたシスターが駆け寄ってきた。
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「そう、私の趣味ね。と言っても、したこともされたことも無いんだけどさ。教会を作ってまだ日も浅いし。そうそう、バタバタしてて名乗るのを忘れていたわね。私の名前はシスターよ」
「シスターって名前なんですか?」
「まだシスターになりたてだから名前が無いのよ」
「シスターになる前の名前とかでもいいんですけど、教えてくださいよ」
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このシスターは僕に惚れている感じではないのだけれど、やっぱり見た目通りに男なのだろうか?
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