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異世界転生 佐藤みさきの場合 後編

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「なんてことをするんっスか。ルシファー様の復活は時間がかかるって言うのに、これじゃ計画が台無しっスよ。みさきさんは正樹君の事になると見境なさすぎるっスよ」
「どういうことなの?」
「簡単に言うとっスね、最近ルシファー様が死んだことで今まで空席だった神の座についた新しい神がいたんっスよ。ルシファー様が生きている間は神になった自分が殺されるんじゃないかって考えが神候補の中にあって、神の座はルシファー様が空席にしたっきりだったんすけど、ルシファー様が死んだことでいよいよ新しい神が誕生したんっスよね。でも、その新しい神ってなんでも自分で作らないと気が済まないタイプで、この世界も新しく一から作り直すって言いだしたんっスよ。さすがにそれは良くないと思って生き返る途中のルシファー様に相談したんすけど、それならみさきさん達に協力してもらおうってことになって迎えに来たんすよ。でも、自分も神の監視がついているんで下手のことは出来なかったっス。ご家族の事は申し訳ないと思うんっスけど、それはどうすることも出来なかっただけなんすよ。で、みさきさんがルシファー様をもう一度殺しちゃったのは失敗だったけど、自分についてた監視役の天使も一緒に殺してくれたんで、そこだけは助かったっス。これからはみさきさんの仲間として一緒に行動するっスよ。じゃあ、正樹君のとこに行くっスよ」
「ごめん、たびたび申し訳ないんだけど、意味が分からないんだよね」
「そうっすね。簡単に言うと、この世界を壊して創り直そうとしている神を止めて欲しいって事っすね」
「私がどうやってそんな事をするのよ?」
「その点は心配ないっス。みさきさんは生き返った時に能力を手に入れているっス。正樹君は能力を手に入れることに失敗したんっスけど、元々確率は低かったからそれは仕方ないっス。でも、今頃は正樹君も新しい能力を手に入れているはずっスよ」
「まー君がどこにいるか知っているの?」
「もちろん、自分についてくるといいっスよ」

 私はミカエルの後に続いて行ったのだけれど、いつの間にか風景が変わり見たことも無い木が生えている小道に出ていた。
 何となく湿っぽい空気が肌にまとわりつく不快な空気だった。

「もう少しで正樹君のとこにつくっス。だから、そんなに殺意を込めた目で見ないで欲しいっス」
「そんな目で見たつもりはないんだけど、それはごめんね」
「いやいや、自分の気のせいかもしれなかっただけっス。それに、みさきさんは尋常じゃないくらい強くなっているからそのせいかもしれないっスね」
「それってどういうこと?」
「みさきさんの能力である『殺した相手の力をそのまま奪い取る』が物凄い回数発動したからっスね。あっちの世界にいた魔物数千体とルシファー様の力をそのまま吸収した形になっているからっスね」
「ええ、それっていつまで効果が続くの?」
「これは特殊な能力だから死んでも継続するっスよ。だから、何度死んで生まれ変わっても平気っスよ」
「ちょっと、それって嬉しくないんだけど」
「ま、強くなるのは良い事っすよ。それに、あの砦の中に正樹君がいるっス。入口は反対側だったから急いで回るっスよ」

 目の前の建物にまー君がいると思うと不思議と私の足取りは軽くなった。今すぐまー君に会いたいという気持ちが溢れだし、私は回り込むなんて面倒な事はしたくないと思ってしまった。
 不思議な事に、なんとなくまー君の居場所がわかっていたので、私はそこに向かって一直線に壁を壊しながら進んでいった。正確に言うなら、壁をどかそうと思って手をあてただけで壁が勝手に壊れていっただけなんだけど。
 そのまま壁を四つくらい壊していると、すぐ近くにまー君がいるのを感じ取っていた。私が感じているまー君の気配の近くに女の気配も感じていたのだけれど。
 そんな事は気にしないで壁を壊すと、女に襲われそうなまー君が私の目の前にいた。

「まー君を誘惑するのやめてもらっていいかな。やめないんだったらお前も殺しちゃうけどいいのかな」
「ごめんごめん。冗談だから冗談。みさきちゃんがいるのに正樹君の事を誘惑したりしないからさ、それは本当だから殺そうとしないでね。お願いだからさ」
「冗談ならいいんだけど、あんまり行き過ぎた冗談は面白くないからね」
「良かった。みさきは死んじゃったのかと思ってたけど、生きててよかったよ」
「それにしても、私が思っていたよりもみさきちゃんが来るの早かったんだけど、ルシファーの説明ってそんなに早く終わったのかな?」
「ルシファーの説明って何言っているのかわからなかったから途中で出てきちゃったよ」
「そんなことしてルシファーは怒らなかったの?」
「何か怒ってたけど、まー君に会えるって聞いたから無視して出てきたよ。それでも追いかけてきたんだよね。ちょっとうざいなって思って、殺しちゃったんだけどさ」

 まー君は私の姿を見て涙を流していた。
 その口からは何度も「良かった」という言葉がこぼれていた。
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