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妖精と人間編
妖精と人間 第二話
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その辺にいた妖精を捕まえてみたのだけれど、以前にもまして妖精が何を言っているのかさっぱり理解出来なかった。その口ぶりから妖精王の復活が近いという事はわかるのだけれど、それ以外の言葉が全くわからなかった。わからない言葉を翻訳してみんなに教えろと言われても、私は何もわかっていないんだから教えることなんて出来ないよね。でも、妖精王が復活するっていう事だけはわかったのでソレを伝えることにはした。
ドンポも妖精王が何者なのかわかっていないみたいだったのに、妖精王が復活すればいなくなった子供たちもみんな戻ってくるって思っているみたいだよ。子供の話をすると妖精たちは薄気味悪い顔でニヤニヤしてるのが気になるけど、どうせドンポ達には妖精の顔なんか見えてないんだから黙っておこうかな。よくない事が起こったとしても私には何の関係もないしね。
妖精王の復活は早ければ三日ごとの事だが、それは私が想像していたよりもずっと早いなと感じていた。妖精王がどれくらい強い存在なのかわからないけど、それなりに強いんだったらまー君も様子を見に来るんじゃないかなって思うよね。でもさ、まー君に会えるのは嬉しいんだけど、せっかく会ってもこの世界が無くなっちゃうんじゃまた他の所でやり直さないといけなくなっちゃうんだよな。どうにかしてまー君と一緒にいられる方法は無いかな。前みたいに魔法を封印することが出来ればいいんだけど、そんなに都合よく封印なんて出来ないよね。魔力だけでも封じることが出来ればいいんだけど、そんな技を持っている人がいれば助かるな。
ドンポ達は妖精王の復活が思っていたよりも早いことに喜び、死人使いの森が制限なく自由に活動出来るようになっているとの報せにも喜んでいた。ついでにリツが見つかったというニュースでもあればよかったのだけれど、そんなに都合よく解決するものでもなかったのだった。とにかく、今日と明日はゆっくりして妖精王の復活を待つことにしようと思っていると、ドンポから死人使いの森に行って死人使いを拘束して来いという命令を受けた。いや、死人使いを捕まえて来いと言われても私はその人の顔も知らないしどうしたらいいんだって思うよ。ドンポ達に聞いても死人使いの事はわからないというし、そんな状態でどうすればいいんだって話だよ。
でもね、私は他にやることも無いから死人使いの森に行くことにするよ。今はまだ一般人の立ち入りを禁止しているままだし、死人使いの森の中にいる人はもれなく怪しい人物だという事になったので、そんな場所にいる人達はみんな捕まえてしまえという事になりましたとさ。それなら自分たちでやれよって話だけど、そんな事を言っても聞くような人たちじゃないのはわかっている。それならみんなで楽しく死人使いの森をピクニックでもしようってことになるよね。
死人使いの森についてみて感じた事なんだけど、以前は言われなくても変な場所に入ってしまったと感じるくらい不快な場所だったのに、今では言われても納得できないくらい普通の空間になっていた。むしろ、日が差している分だけ爽やかな印象すら受けていた。
途中に通った妖精の泉は大人がたくさんいるからなのか、妖精王の復活が力いからなのかは定かではないのだが、いつもなら数体はいる妖精がその姿を一切見せることは無かった。姿がみえなくても話し声が聞こえることはあったのだが、今日に限ってはそれすらも聞こえてこなかった。
私とドンポを含めて二十五名で森へやってきたのだけれど、ドンポ達二十名は妖精の泉付近でリツたち子どもを探すことになっていたそうだ。それならそれでいいのだけれど、どうせなら全員で探した方がいいのになって思っていると、お前が一人で死人使いを捕まえられるわけがないだろうから優秀な魔導士を四人付けてやると偉そうにドンポが言ってきた。優秀な魔導士は私を守るためではなく監視するためだという事はすぐに分かったのだが、それと同時に私が何か危害を加えようと思っても襲われたもの以外は反撃なり外部に連絡なりが出来る用意はしてあるようだった。逃げ出そうと思えば簡単に逃げることなんて出来るんだけど、この人達の努力を無駄にするのは可愛そうだなと思ったので、その包囲網で大丈夫ですよという事を感じてもらうために嫌そうな顔をしてみせてみた。
どれだけ進んでも死人の森だった。そう思える場所はどこにも見当たらなかった。人や獣が立ち入っていない分だけ妖精の森よりも綺麗だったし、誰もいなかったのが当然のように風の音以外何も聞こえなかった。音もなく木が揺れてその影が重なり合っているのだが、風向きを無視した木の枝の動きに私の周りの魔導士たちは気が付いていないようだった。私ばっかり気にしているから周りの木の変化に気付くことも出来ないのだ。きっとこれから面白い事が起きるんだろうと思って待っていると、何か異変を感じた魔導士の一人が空を見上げたのだ。木々が生い茂る深い森の中なので日差しは極柔らかいものなのだが、他の魔導士もつられて上を見上げた時に影の中から魔獣が飛び出してきて、上を見上げている魔導士ののど元に噛みついていた。
何が起こるかわからないような場所で無防備に空を見上げるなんて殺してくださいと言っているような者だと思いながらも、私は自分に襲い掛かってきた魔獣の頭を掴んでいた。この魔獣がどれくらい強いのかはわからないけれど、少なくとも人間の魔導士程度なら一撃でのどを噛み潰すことが出来る程度には強いようだ。
魔導士たちは私に助けを求めることも出来ず、外部に連絡をすることも出来ずに死んでいったようだ。私についてこないでドンポと一緒に子供を探していればこんなところで死なずに済んだのになと思っていると、木の影からも数えきれないくらい魔獣がやってきて私を襲いだした。
魔獣の中には魔法で自分の身体能力を強化している個体もいたのだが、私にとって警戒するべき相手はここにはいなかった。それにしても、ここの魔獣はいくら殺しても私が強くなった実感が無い。もしかしたら、死人の森と言われているくらいなのでこの魔獣たちはすでに死んでしまっているのかもしれないな。死体を動かせる能力ってのはどれくらい凄いのかわからないけれど、まー君なら得意の魔法で同じようなことが出来るかもしれないね。
先に進むか妖精の泉に戻るか迷ってはいたんだけど、先に進むと進んだ分だけ魔獣が増えていた。きっとこの先には見られたくない何かがあるんだろうなと思っていたんだけど、気が付いた時には森から外へと出てしまっていた。何もないのはおかしいなと思いながらも引き返してみると、魔獣はたくさん襲ってくるのにそれらしい場所には何もなかった。上を見ても下を見ても右を見ても左を見ても何もなかった。どこを見ても何もないのだ。そこにあるのは自然と生えている木だけだ。
いや、自然と生えているにしては不自然なくらい等間隔に木が生えている場所がある。この場所だけ綺麗に整列させられているんじゃないかなと思うくらい不自然に綺麗なのだ。何かあるんじゃないかなと思って気を思いっ切り殴ってみると、それは木ではなく石壁に木の映像を浮かび上がらせているだけだったのだ。私が殴った石壁は粉々に砕け散って巨大な穴が開いているのだけれど、その穴から見える場所にいる見た目が特徴的な人と目が合ってしまった。私は何となく気まずい感じになってしまって軽く会釈をすると、向こうも同じ気持ちだったらしく会釈を返してもらえた。
「すいません。なんか不自然な木があるなって思って叩いてみたら、壁を壊しちゃいました」
「えっと、この家って違和感を感じないように魔法で隠してたんですけど、どうして見付けられたんですか?」
「いや、壁に映し出されていた木があまりにも不自然に等間隔だったんで何かあるんじゃないかと思っただけなですけど、アレってどんな技術なんですか?」
「アレは簡単な魔法を使った技術なんですけど、どんな人の魔力にも溶け込んで見えなくする魔法がかかってたはずなんですが、どうやってそれを解いたんですか?」
「あ、魔力に対応して変化する系のやつでしたら私には効果が無いと思いますよ。私って、魔力が一切ないんですよ。それなんでそう言ったのは他の人と見え方も違ってくると思うんですよ」
「あ、もしかして、魔力を持たない代わりに凄い力を手に入れたって言う佐藤みさきさんですか?」
「そうですけど、どうして私の事を知っているんですか?」
「良かった。僕の魔獣と戦っているところは見ていたんですけど、正樹さんから来ていた人と同じくらい強い人がいるんだなって思ってたんですよ。でも、よくよく考えてみたらそんなに強い人が二人もいたらおかしいですよね」
「え、まー君を知っているの?」
「知っていますよ。つい最近まで一緒にいましたからね」
「つい最近って、いつまで?」
「一週間くらい前ですかね。でも、妖精王が復活したら戻ってくると思いますよ」
「妖精王が復活したらまー君が戻ってくるってどうして?」
「えっとですね。正樹さんは妖精王の力を手に入れて、僕は妖精王の死体を手に入れる計画なんです。今はそのためにも世界各地から子供を集めているところなんですよ」
「子供を集めるってどういうこと?」
私はまー君が世界各地から子供を集めていると聞いて何をしているのだろうと思っていたが、まー君がしている事なんだからきっといいことなんだろうなと思っていた。
この人から色々聞いてみて今後をどうするか決めるのも悪くないかもしれないね。
ドンポも妖精王が何者なのかわかっていないみたいだったのに、妖精王が復活すればいなくなった子供たちもみんな戻ってくるって思っているみたいだよ。子供の話をすると妖精たちは薄気味悪い顔でニヤニヤしてるのが気になるけど、どうせドンポ達には妖精の顔なんか見えてないんだから黙っておこうかな。よくない事が起こったとしても私には何の関係もないしね。
妖精王の復活は早ければ三日ごとの事だが、それは私が想像していたよりもずっと早いなと感じていた。妖精王がどれくらい強い存在なのかわからないけど、それなりに強いんだったらまー君も様子を見に来るんじゃないかなって思うよね。でもさ、まー君に会えるのは嬉しいんだけど、せっかく会ってもこの世界が無くなっちゃうんじゃまた他の所でやり直さないといけなくなっちゃうんだよな。どうにかしてまー君と一緒にいられる方法は無いかな。前みたいに魔法を封印することが出来ればいいんだけど、そんなに都合よく封印なんて出来ないよね。魔力だけでも封じることが出来ればいいんだけど、そんな技を持っている人がいれば助かるな。
ドンポ達は妖精王の復活が思っていたよりも早いことに喜び、死人使いの森が制限なく自由に活動出来るようになっているとの報せにも喜んでいた。ついでにリツが見つかったというニュースでもあればよかったのだけれど、そんなに都合よく解決するものでもなかったのだった。とにかく、今日と明日はゆっくりして妖精王の復活を待つことにしようと思っていると、ドンポから死人使いの森に行って死人使いを拘束して来いという命令を受けた。いや、死人使いを捕まえて来いと言われても私はその人の顔も知らないしどうしたらいいんだって思うよ。ドンポ達に聞いても死人使いの事はわからないというし、そんな状態でどうすればいいんだって話だよ。
でもね、私は他にやることも無いから死人使いの森に行くことにするよ。今はまだ一般人の立ち入りを禁止しているままだし、死人使いの森の中にいる人はもれなく怪しい人物だという事になったので、そんな場所にいる人達はみんな捕まえてしまえという事になりましたとさ。それなら自分たちでやれよって話だけど、そんな事を言っても聞くような人たちじゃないのはわかっている。それならみんなで楽しく死人使いの森をピクニックでもしようってことになるよね。
死人使いの森についてみて感じた事なんだけど、以前は言われなくても変な場所に入ってしまったと感じるくらい不快な場所だったのに、今では言われても納得できないくらい普通の空間になっていた。むしろ、日が差している分だけ爽やかな印象すら受けていた。
途中に通った妖精の泉は大人がたくさんいるからなのか、妖精王の復活が力いからなのかは定かではないのだが、いつもなら数体はいる妖精がその姿を一切見せることは無かった。姿がみえなくても話し声が聞こえることはあったのだが、今日に限ってはそれすらも聞こえてこなかった。
私とドンポを含めて二十五名で森へやってきたのだけれど、ドンポ達二十名は妖精の泉付近でリツたち子どもを探すことになっていたそうだ。それならそれでいいのだけれど、どうせなら全員で探した方がいいのになって思っていると、お前が一人で死人使いを捕まえられるわけがないだろうから優秀な魔導士を四人付けてやると偉そうにドンポが言ってきた。優秀な魔導士は私を守るためではなく監視するためだという事はすぐに分かったのだが、それと同時に私が何か危害を加えようと思っても襲われたもの以外は反撃なり外部に連絡なりが出来る用意はしてあるようだった。逃げ出そうと思えば簡単に逃げることなんて出来るんだけど、この人達の努力を無駄にするのは可愛そうだなと思ったので、その包囲網で大丈夫ですよという事を感じてもらうために嫌そうな顔をしてみせてみた。
どれだけ進んでも死人の森だった。そう思える場所はどこにも見当たらなかった。人や獣が立ち入っていない分だけ妖精の森よりも綺麗だったし、誰もいなかったのが当然のように風の音以外何も聞こえなかった。音もなく木が揺れてその影が重なり合っているのだが、風向きを無視した木の枝の動きに私の周りの魔導士たちは気が付いていないようだった。私ばっかり気にしているから周りの木の変化に気付くことも出来ないのだ。きっとこれから面白い事が起きるんだろうと思って待っていると、何か異変を感じた魔導士の一人が空を見上げたのだ。木々が生い茂る深い森の中なので日差しは極柔らかいものなのだが、他の魔導士もつられて上を見上げた時に影の中から魔獣が飛び出してきて、上を見上げている魔導士ののど元に噛みついていた。
何が起こるかわからないような場所で無防備に空を見上げるなんて殺してくださいと言っているような者だと思いながらも、私は自分に襲い掛かってきた魔獣の頭を掴んでいた。この魔獣がどれくらい強いのかはわからないけれど、少なくとも人間の魔導士程度なら一撃でのどを噛み潰すことが出来る程度には強いようだ。
魔導士たちは私に助けを求めることも出来ず、外部に連絡をすることも出来ずに死んでいったようだ。私についてこないでドンポと一緒に子供を探していればこんなところで死なずに済んだのになと思っていると、木の影からも数えきれないくらい魔獣がやってきて私を襲いだした。
魔獣の中には魔法で自分の身体能力を強化している個体もいたのだが、私にとって警戒するべき相手はここにはいなかった。それにしても、ここの魔獣はいくら殺しても私が強くなった実感が無い。もしかしたら、死人の森と言われているくらいなのでこの魔獣たちはすでに死んでしまっているのかもしれないな。死体を動かせる能力ってのはどれくらい凄いのかわからないけれど、まー君なら得意の魔法で同じようなことが出来るかもしれないね。
先に進むか妖精の泉に戻るか迷ってはいたんだけど、先に進むと進んだ分だけ魔獣が増えていた。きっとこの先には見られたくない何かがあるんだろうなと思っていたんだけど、気が付いた時には森から外へと出てしまっていた。何もないのはおかしいなと思いながらも引き返してみると、魔獣はたくさん襲ってくるのにそれらしい場所には何もなかった。上を見ても下を見ても右を見ても左を見ても何もなかった。どこを見ても何もないのだ。そこにあるのは自然と生えている木だけだ。
いや、自然と生えているにしては不自然なくらい等間隔に木が生えている場所がある。この場所だけ綺麗に整列させられているんじゃないかなと思うくらい不自然に綺麗なのだ。何かあるんじゃないかなと思って気を思いっ切り殴ってみると、それは木ではなく石壁に木の映像を浮かび上がらせているだけだったのだ。私が殴った石壁は粉々に砕け散って巨大な穴が開いているのだけれど、その穴から見える場所にいる見た目が特徴的な人と目が合ってしまった。私は何となく気まずい感じになってしまって軽く会釈をすると、向こうも同じ気持ちだったらしく会釈を返してもらえた。
「すいません。なんか不自然な木があるなって思って叩いてみたら、壁を壊しちゃいました」
「えっと、この家って違和感を感じないように魔法で隠してたんですけど、どうして見付けられたんですか?」
「いや、壁に映し出されていた木があまりにも不自然に等間隔だったんで何かあるんじゃないかと思っただけなですけど、アレってどんな技術なんですか?」
「アレは簡単な魔法を使った技術なんですけど、どんな人の魔力にも溶け込んで見えなくする魔法がかかってたはずなんですが、どうやってそれを解いたんですか?」
「あ、魔力に対応して変化する系のやつでしたら私には効果が無いと思いますよ。私って、魔力が一切ないんですよ。それなんでそう言ったのは他の人と見え方も違ってくると思うんですよ」
「あ、もしかして、魔力を持たない代わりに凄い力を手に入れたって言う佐藤みさきさんですか?」
「そうですけど、どうして私の事を知っているんですか?」
「良かった。僕の魔獣と戦っているところは見ていたんですけど、正樹さんから来ていた人と同じくらい強い人がいるんだなって思ってたんですよ。でも、よくよく考えてみたらそんなに強い人が二人もいたらおかしいですよね」
「え、まー君を知っているの?」
「知っていますよ。つい最近まで一緒にいましたからね」
「つい最近って、いつまで?」
「一週間くらい前ですかね。でも、妖精王が復活したら戻ってくると思いますよ」
「妖精王が復活したらまー君が戻ってくるってどうして?」
「えっとですね。正樹さんは妖精王の力を手に入れて、僕は妖精王の死体を手に入れる計画なんです。今はそのためにも世界各地から子供を集めているところなんですよ」
「子供を集めるってどういうこと?」
私はまー君が世界各地から子供を集めていると聞いて何をしているのだろうと思っていたが、まー君がしている事なんだからきっといいことなんだろうなと思っていた。
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