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子供好きな妖精編
子供好きな妖精
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私は何故か暗闇の中で目が覚めた。手探りで出口が無いか探してみたのだけれど、それほど大きい空間ではないらしく、何度も同じところを回っているように思えていた。仕方がないのでこの壁を壊してしまおうと思って右手に力を入れたところ、私には気付けなかった扉がゆっくりと開いたのだった。
私は外の光に目が慣れていないせいか視界が定まっていないのだが、私に優しく話しかけてきた人の声にどこか不安を感じてしまった。
「やっぱりみさき先輩だったんですね。次はお兄ちゃんに最初に会いたいなって思ってたんですけど、またみさき先輩だったってのは運が悪いのかな。前のところでも悪いことはやってないと思うんだけどな。むしろ、みさき先輩が私に色々してくれたんですよね。お兄ちゃんがその事を知ったら、どんな反応しちゃうんでしょうね。みさき先輩の事を嫌いになっちゃうかもしれないですよね。って、聞いてます?」
「あ、ごめんね。何も聞いてなかったよ。唯ちゃんがここで何しているのかも興味無いし、まー君がどこにいるか知っているかな?」
「そんないい方しないでくださいよ。私だってお兄ちゃんを探しているんですからね。今度はちゃんと私の事を振り向いてもらえるように頑張りますから。兄妹の垣根を越えて結ばれる愛ってのもよさそうですよね」
「まー君は唯ちゃんを女としては全く見てないと思うよ。妹じゃなかったら話しかけてもちゃんと返してもらえてないんじゃないかな。私はそう思うけど、そんな感じしないかな?」
「ちょっと。そう言うデリケートなところをつくのやめてもらっていいですか。私だってうすうす気付いてはいますけど、お兄ちゃんはそれでも唯一残された肉親のこの私を大切に思ってくれるはずなんです。みさき先輩の事も大事かもしれないけど、妹である私の方が大事にしてくれるはずですもん」
「そんな事は本当にどうでもいいんだけど、ここで何をしてたのかな?」
「まあ、気になりますよね。私はここで妖精が出るのを待っているんです。この辺りに出るって噂になってますからね。大人は妖精の姿を見ることが出来ないようなんですけど、私はそんなのを超越してこの目で確かめてやろうと思っているんです」
「その妖精ってさ、よく本とかゲームで見る感じのやつかな?」
「私はまだ妖精の姿を見ていないのでわからないですけど、きっとそうなんじゃないですかね。それにしても、妖精に会えたら何をしようか迷っちゃいますよね。お兄ちゃんに見せるように何匹かストックしておこうかな。でも、箱に入れても簡単に逃げ出しそうなんだよね」
私はまだ暗闇の中にいた後遺症でも残っているのだろうか。唯ちゃんの周りを小ばかにするように踊っている小人の集団が目に入っていた。自分の周りでこれだけ自由にされていたら気になりはしそうなのだが、唯ちゃん自信はそれに気付いていないらしく、全く気にするそぶりも見せずに妖精に対する思いを語っていた。夢を語る唯ちゃんは子供のようにも見えるのだけど、見た目は完全に大人になっていた。特に、胸とお尻が立派に成長しているように見えた。
「もしかして、妖精って子供にしか見えないみたいな話ってあるのかな?」
「そうですよ。それも小さい子供にしか見えないらしいんですよ。目撃した子供の中で一番大きい子は四歳だったらしいですよ。一緒にいた五歳の子は見てないって言ってましたからね。どういうわけか、その子も五歳になったら見えなくなったらしいですよ。年齢的な分岐点は四歳から五歳ってとこだと思うんですけど、みさき先輩って四歳でしたっけ?」
「四歳ではないけど、唯ちゃんの周りを小さい人が踊りながらグルグルと回っているんだよね。それって、妖精じゃないよね?」
「私の足元に妖精がいるって本当ですか?」
「本当だけど、踏みつぶしそうになっているからむやみに動かないでね」
「ええ、そんな事を言われたら変な風に動いちゃうかも。適当に踊ってみようかな」
唯ちゃん自信が無邪気に遊んでいるようにしか見えないのだけれど、その足元では小人たちが踏まれないように一生懸命避けているのだった。
何度か踏んでいるのは確かなのだけれど、踏まれたはずの小人は何もなかったかのように再び踊り出していた。唯ちゃんにとって見えない存在である小人は触れることも出来ず、意図的にではないにしろ踏んでいたことも踏まれていたことも全く気付いていないのかもしれない。
「さっきから私の脚ばっかり見ているみたいですけど、みさき先輩ってそっち方面の趣味とかってあったりするんですか?」
「いや、全くないけど。もしもなんだけどさ、妖精が普通の人には見ることも触ることも出来ないとして、それを捕まえたところで信じてもらえる方法ってあるかな?」
「見えなくて触れないって、そこにいないって事じゃないですか。そんなのを信じる人はいないと思いますよ」
「そりゃそうだよね」
って、唯ちゃんとはそんな話をしているんだけど、この話が始まるちょっと前に唯ちゃんの足元をウロチョロしていた小人に触れないかなと思って手を伸ばしたところ、向こうは全く警戒することも無く簡単に捕まえることが出来たのだった。
捕まえた小人は何か喚いているのだけれど、私にはその言葉が何語なのか理解出来ないでいた。人が話す言葉は通訳がいなくても誰とでも話が出来るし、魔物ともある程度の意思の疎通は出来ていた。でも、この小人は何を言っているのかさっぱりわからないかったのだった。
「そう言えば、みさき先輩ってここで野宿していったらいいんじゃないですか?」
「なんで私が野宿しないといけないんだよ」
「だって、みさき先輩ってここに来たばっかりでお金も無さそうだし、仕事がなじまるまでは日陰でコソコソ生きているのがお似合いだと思いますよ」
「一応、その忠告は聞いておくよ。でもね、私もちゃんとしたところで眠りたいよ」
「と思ったんですけど、みさき先輩もか弱い乙女ですからね。私がお世話になっている村の人達に聞いてみてあげますよ。誰も協力してくれなくても怒らないでくださいね。私は何も悪くないですからね」
「唯ちゃんが私に優しくしてくれて、私はとても嬉しいよ」
「喜んでいただけたというのはわかったので、その力を込めている右手をどうにかしてくださいよ。私の軽いトラウマになりつつあるんですからね」
私は無意識のうちに右手に力を入れていたようだ。それに気付いて唯ちゃんは私にもお世話になるところが無いか聞いてくれるらしい。将来の義理の妹はなかなか良く出来ている気配りの出来る人に成長したんだね。私はその優しい一面が見れて嬉しかった。
右手にはもう少しだけ力を入れておくことにしようかな。
村に向かう唯ちゃんの後をつけて行ったのだけれど、周りをまわっていた小人たちは最初にいた小屋から二百メートルほど離れると着いてこなくなったのだが、私が手に持っている小人はそのエリアを離れても問題は無いようだった。もしかしたら、自力で移動できる範囲が決まっているタイプの小人なのかもしれないな。
唯ちゃんについて行って訪れた村はどこを見回しても活気はなく、楽しそうに走り回っている子供たち数名を除くと、この村で何か楽しそうにしている人がいなかった。
私はこの中の誰かの世話になるかとが出来たらいいなと思っていたんだけど、走り回っていた子供たちが私の傍に駆け寄ってきた。
「お姉さんはなんで妖精を捕まえてるの?」
駆け寄ってきた子供の言葉に周囲の大人たちは騒めいていたのだが、それを全く気にすることも無く子供たちは次々と質問を投げかけてきた。
「その妖精はどうするの?」
「私も妖精に触りたい」
「僕も近くで妖精みたい」
「それ欲しい」
「どこで捕まえたの?」
どうしよう。私が捕まえた小人は妖精だったようなのだが、空を飛びそうな羽もないし可愛らしい見た目でもない。どちらかと言えば悪人にしか見えない表情をしているのだが、
それでも子供たちは妖精をキラキラとした真っすぐな瞳で見ているのだった。
私は妖精を捕まえた女として大歓迎を受けることになったのだが、子供たちに手渡した妖精が逃げ出したのを知った大人たちからは明らかな落胆の声と深いため息が聞こえてきた。
それにしても、妖精の逃げ足って早いんだな。そう思えた一日だった。
私は外の光に目が慣れていないせいか視界が定まっていないのだが、私に優しく話しかけてきた人の声にどこか不安を感じてしまった。
「やっぱりみさき先輩だったんですね。次はお兄ちゃんに最初に会いたいなって思ってたんですけど、またみさき先輩だったってのは運が悪いのかな。前のところでも悪いことはやってないと思うんだけどな。むしろ、みさき先輩が私に色々してくれたんですよね。お兄ちゃんがその事を知ったら、どんな反応しちゃうんでしょうね。みさき先輩の事を嫌いになっちゃうかもしれないですよね。って、聞いてます?」
「あ、ごめんね。何も聞いてなかったよ。唯ちゃんがここで何しているのかも興味無いし、まー君がどこにいるか知っているかな?」
「そんないい方しないでくださいよ。私だってお兄ちゃんを探しているんですからね。今度はちゃんと私の事を振り向いてもらえるように頑張りますから。兄妹の垣根を越えて結ばれる愛ってのもよさそうですよね」
「まー君は唯ちゃんを女としては全く見てないと思うよ。妹じゃなかったら話しかけてもちゃんと返してもらえてないんじゃないかな。私はそう思うけど、そんな感じしないかな?」
「ちょっと。そう言うデリケートなところをつくのやめてもらっていいですか。私だってうすうす気付いてはいますけど、お兄ちゃんはそれでも唯一残された肉親のこの私を大切に思ってくれるはずなんです。みさき先輩の事も大事かもしれないけど、妹である私の方が大事にしてくれるはずですもん」
「そんな事は本当にどうでもいいんだけど、ここで何をしてたのかな?」
「まあ、気になりますよね。私はここで妖精が出るのを待っているんです。この辺りに出るって噂になってますからね。大人は妖精の姿を見ることが出来ないようなんですけど、私はそんなのを超越してこの目で確かめてやろうと思っているんです」
「その妖精ってさ、よく本とかゲームで見る感じのやつかな?」
「私はまだ妖精の姿を見ていないのでわからないですけど、きっとそうなんじゃないですかね。それにしても、妖精に会えたら何をしようか迷っちゃいますよね。お兄ちゃんに見せるように何匹かストックしておこうかな。でも、箱に入れても簡単に逃げ出しそうなんだよね」
私はまだ暗闇の中にいた後遺症でも残っているのだろうか。唯ちゃんの周りを小ばかにするように踊っている小人の集団が目に入っていた。自分の周りでこれだけ自由にされていたら気になりはしそうなのだが、唯ちゃん自信はそれに気付いていないらしく、全く気にするそぶりも見せずに妖精に対する思いを語っていた。夢を語る唯ちゃんは子供のようにも見えるのだけど、見た目は完全に大人になっていた。特に、胸とお尻が立派に成長しているように見えた。
「もしかして、妖精って子供にしか見えないみたいな話ってあるのかな?」
「そうですよ。それも小さい子供にしか見えないらしいんですよ。目撃した子供の中で一番大きい子は四歳だったらしいですよ。一緒にいた五歳の子は見てないって言ってましたからね。どういうわけか、その子も五歳になったら見えなくなったらしいですよ。年齢的な分岐点は四歳から五歳ってとこだと思うんですけど、みさき先輩って四歳でしたっけ?」
「四歳ではないけど、唯ちゃんの周りを小さい人が踊りながらグルグルと回っているんだよね。それって、妖精じゃないよね?」
「私の足元に妖精がいるって本当ですか?」
「本当だけど、踏みつぶしそうになっているからむやみに動かないでね」
「ええ、そんな事を言われたら変な風に動いちゃうかも。適当に踊ってみようかな」
唯ちゃん自信が無邪気に遊んでいるようにしか見えないのだけれど、その足元では小人たちが踏まれないように一生懸命避けているのだった。
何度か踏んでいるのは確かなのだけれど、踏まれたはずの小人は何もなかったかのように再び踊り出していた。唯ちゃんにとって見えない存在である小人は触れることも出来ず、意図的にではないにしろ踏んでいたことも踏まれていたことも全く気付いていないのかもしれない。
「さっきから私の脚ばっかり見ているみたいですけど、みさき先輩ってそっち方面の趣味とかってあったりするんですか?」
「いや、全くないけど。もしもなんだけどさ、妖精が普通の人には見ることも触ることも出来ないとして、それを捕まえたところで信じてもらえる方法ってあるかな?」
「見えなくて触れないって、そこにいないって事じゃないですか。そんなのを信じる人はいないと思いますよ」
「そりゃそうだよね」
って、唯ちゃんとはそんな話をしているんだけど、この話が始まるちょっと前に唯ちゃんの足元をウロチョロしていた小人に触れないかなと思って手を伸ばしたところ、向こうは全く警戒することも無く簡単に捕まえることが出来たのだった。
捕まえた小人は何か喚いているのだけれど、私にはその言葉が何語なのか理解出来ないでいた。人が話す言葉は通訳がいなくても誰とでも話が出来るし、魔物ともある程度の意思の疎通は出来ていた。でも、この小人は何を言っているのかさっぱりわからないかったのだった。
「そう言えば、みさき先輩ってここで野宿していったらいいんじゃないですか?」
「なんで私が野宿しないといけないんだよ」
「だって、みさき先輩ってここに来たばっかりでお金も無さそうだし、仕事がなじまるまでは日陰でコソコソ生きているのがお似合いだと思いますよ」
「一応、その忠告は聞いておくよ。でもね、私もちゃんとしたところで眠りたいよ」
「と思ったんですけど、みさき先輩もか弱い乙女ですからね。私がお世話になっている村の人達に聞いてみてあげますよ。誰も協力してくれなくても怒らないでくださいね。私は何も悪くないですからね」
「唯ちゃんが私に優しくしてくれて、私はとても嬉しいよ」
「喜んでいただけたというのはわかったので、その力を込めている右手をどうにかしてくださいよ。私の軽いトラウマになりつつあるんですからね」
私は無意識のうちに右手に力を入れていたようだ。それに気付いて唯ちゃんは私にもお世話になるところが無いか聞いてくれるらしい。将来の義理の妹はなかなか良く出来ている気配りの出来る人に成長したんだね。私はその優しい一面が見れて嬉しかった。
右手にはもう少しだけ力を入れておくことにしようかな。
村に向かう唯ちゃんの後をつけて行ったのだけれど、周りをまわっていた小人たちは最初にいた小屋から二百メートルほど離れると着いてこなくなったのだが、私が手に持っている小人はそのエリアを離れても問題は無いようだった。もしかしたら、自力で移動できる範囲が決まっているタイプの小人なのかもしれないな。
唯ちゃんについて行って訪れた村はどこを見回しても活気はなく、楽しそうに走り回っている子供たち数名を除くと、この村で何か楽しそうにしている人がいなかった。
私はこの中の誰かの世話になるかとが出来たらいいなと思っていたんだけど、走り回っていた子供たちが私の傍に駆け寄ってきた。
「お姉さんはなんで妖精を捕まえてるの?」
駆け寄ってきた子供の言葉に周囲の大人たちは騒めいていたのだが、それを全く気にすることも無く子供たちは次々と質問を投げかけてきた。
「その妖精はどうするの?」
「私も妖精に触りたい」
「僕も近くで妖精みたい」
「それ欲しい」
「どこで捕まえたの?」
どうしよう。私が捕まえた小人は妖精だったようなのだが、空を飛びそうな羽もないし可愛らしい見た目でもない。どちらかと言えば悪人にしか見えない表情をしているのだが、
それでも子供たちは妖精をキラキラとした真っすぐな瞳で見ているのだった。
私は妖精を捕まえた女として大歓迎を受けることになったのだが、子供たちに手渡した妖精が逃げ出したのを知った大人たちからは明らかな落胆の声と深いため息が聞こえてきた。
それにしても、妖精の逃げ足って早いんだな。そう思えた一日だった。
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