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一人ぼっちの戦い編
一人ぼっちの戦い 最終話
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「私が最強ってどういう意味ですか?」
「どういう意味って、言葉の通りだよ。君はこの世界で最強の魔導士になったって事さ。君より強い魔導士はこの世界にはいないってことだよ」
「待ってください。私より強い魔導士なんていくらでもいると思うんですけど。正樹さんに認めてもらえるのは嬉しいけど、私はそんなに強いわけないです。誰よりも弱いと思います。それは自分でもわかっているんです。でも、正樹さんに言われたらそうじゃないかなって気になってきます。大好きです」
「ちょっと、急にまー君に告白するのやめてよね。告白するのは自由だけど、いきなりすぎると思うんだけど。最強になったことをもっと気にしなさいよ」
「最強って言われたって嘘だって知っているし、私が強くなる可能性が無い事だって知っているんだもん。それでも最強って言ってもらえるのは嬉しいんだけど、最強じゃないってのは自分が一番よくわかってるから複雑な心境です。でも、正樹さんがそう言ってくれるなら嬉しいです。私よりずっとずっと強いんだから、嘘じゃないんだなって思いますもん」
「本当にまー君の手に入れた能力って凄いよね。私は前から知っているけど、みんな一目見ただけでまー君の魅力に惹かれちゃうんだもん。今までも他の女に言い寄られたりしてたんでしょ?」
「まあね。何度も言い寄られてはきたけれど、僕にはみさきがいるからって断ってたんだよね。今も言い寄られているみたいだけど、僕はみさきにしか興味が無いんだよ」
「そんな、私はみさきちゃんより立派なものを持ってるんですよ。少しだけで良いんで触ってくれたら、私の魅力に気づいてもらえると思うんですけど、試しに一度どうですか?」
「ごめんね。そう言う問題じゃなくて、僕はみさきの人間性も全部含めて好きなんだよ。他の子を好きになることなんてないんだ。一緒にいる時はもちろん、離れ離れになっている時もその気持ちに変化は無かったからさ。君たちの気持ちには答えることは出来ないんだよ」
「君達って何?」
「あれ、ヒカリちゃんのお母さんとかその周りの人とかさ」
「何言っているのよ。その人達なら私が全員殺しちゃったじゃない。もういない人達の事を言っているんだとしたら、まー君は優しすぎるよ」
「そうだったね。みさきは強いから心配はしていなかったけれど、魔法を使ってくる相手は戦いにくくなかったかな?」
「全然そんな事なかったよ。魔法が使えるって言っても、人間に対してちゃんと殺すことが出来なかったみたいだから余裕だったよ。どうして自分が殺されるってわかっているのに抵抗しなかったんだろうね?」
「みさきは抵抗できないように拘束しなかったのかな?」
「あ、そうだった。抵抗しない優しさじゃなくて、抵抗できない無力さだったのかもね」
「あの、お母さんたちを殺したのって本当にみさきちゃんなの?」
「そうだけど。それがどうかした?」
「どうかしたって、お母さんを殺したのってどうして?」
「どうしてって。ヒカリが最強の魔導士になりたいって言ったからじゃない。あなたが最強になるために必要な事だからだよ」
「私はお母さんが死んだからって急激に成長するようなことは無かったけど、最強になるために必要って意味が分からないよ」
「何言っているのよ。あなたが最強になるためにあなたが強くなる必要なんて無いじゃない。ヒカリは変な事を言うのね」
「変な事って、なにも変な事は言っていないと思うんだけど、最強になるためにはいっぱい成長しないとたどり着けない場所なんじゃないかな。私はそう思うよ」
「だから、ヒカリが成長しなくても最強になれたんだからいいじゃない。苦労しなくても最強の魔導士になれたんだから喜んでいいんだよ。まー君の計画通り最強になれたんだからそれでいいじゃない。どっちにしろ、ヒカリがこの世界で最強になったことには変わりないんだから喜んでよね」
「素直に喜べないんだけど、みさきちゃんはいったいどんな魔法を使って私を最強にしたって言うのよ」
「私は魔法なんて使えないんだよ。それに、魔法じゃなくて私の力で全て終わらせることが出来たからね。ヒカリが最強になったんだから細かいところは気にしないで良いんだよ」
「そうは言ってもさ、正樹さんが私の事を認めてくれているってことで良いのかな?」
「認めるも何も、君はこの世界で唯一生き残っている魔導士ってだけだからね。他に誰も魔導士がいないんだからどんなに弱くたって最強には変わりないんだよ。他に誰もいなければ最強で間違いないでしょ?」
他に誰もいないってどういうこと?
お母さんたちが死んじゃったってのは知っているけど、他にも魔導士はいっぱいいたと思うんだけどその人達ももしかしたら……。
「ヒカリがどう思おうか勝手だけどさ、まー君は私だけのまー君だから変な気を起こさないでね。それにさ、みんなはまー君に会えなかったんだからヒカリはそこを感謝してよね」
「正樹さんに会えなかったって、本当にみんな死んじゃったってことなの?」
「そうだよ。町の外に出てた人達は私が殺してあげたし、ここに残っていた人達はまー君が何とかしてくれたんだもんね」
「うん、全部をヒカリに任せるわけにはいかないからね。僕も多少は頑張らせてもらったんだよ」
「頑張ったって、正樹さんもここの人達を殺したってことですか?」
「僕が直接手を下したわけじゃないんだけど、ちょっと知り合いに頼んだら何とかなったって感じかな」
「そうなんですね。でも、それがどうして私が最強になったのに繋がるんですか?」
「君は本当に察しが悪いな。他に誰も魔導士がいなければ君が最強になるって事じゃないか。一番強いってよりは、この世界でただ一人の魔導士って意味で、最強でもあり最弱でもあるってことだよ。納得できたかな?」
「何となくですけど、言いたいことはわかりました。つまり、私はこの世界で唯一の魔導士ってことで、正樹さんはこの世界の魔導士ではないってことなんですよね?」
「まあ、そう言うことになるね。それがわかったならあとは好きにしていいんだよ」
「私の好きにしていいんですか。じゃあ、私と結婚してください」
「ちょっと、いきなり何言ってんのよ。まー君は私だけのまー君だって言ったばっかりじゃない」
「ええ、だって、私はこの世界で唯一の魔導士ですし、正樹さんも魔導士ですよ。そんな二人が出会ってやることと言えば、子孫を残すことじゃないですか。私しか魔導士のいない世界なんだったら、私がたくさん正樹さんの子供を残さないといけないじゃないですか。それは仕方ない事だと思うんで、みさきちゃんもそこは目をつぶってくださいね」
「そんなこと出来るわけないじゃない。大体、この世界もあとどれくらい残っているのかわからないんだし、ヒカリが子供を作る時間なんて残ってないんだよ」
「そうだね。この世界で僕たちが得た教訓は、不測の事態があれば魔法が使えなくなってしまうってことくらいかな。魔法が使えなくなるのは初めての経験だったけど、意外と何とかなるんだなってわかったのは良かったかもね」
「ちょっと待ってもらっていいですか。この世界が残っている時間があとわずかってどういうことですか?」
「みさきは言ってなかったのかもしれないけど、僕とみさきが一緒になるとその世界は崩壊してしまうんだよ。今までいた世界もそうだったし、ここもそうなるだろうね。僕は今魔法が使えない状態なんで崩壊の兆しはまだ見えないけれど、これからみさきが僕の拘束具を全部外してくれるんだけど、そうなってしまえばこの世界が崩壊から逃れるすべはないと思うよ。ただ、最強の魔導士である君がどうにかすることは出来るかもしれないけどね」
「わかりました。世界が崩壊しないように頑張るんで、大丈夫だったら私と結婚してください」
「だから、まー君は私だけのまー君だって言ってるでしょ。ヒカリは変な気を起こさないで流れに身を任せてなさいよ」
「そんな事ないもん。私はお母さんたちの血を引いているんだし、いざとなればなんとかなるって信じてるんだもん。だから、正樹さんも私の事を応援してくださいね」
「わかったよ。無理だと思うけど頑張ってね」
世界の崩壊なんて私は信じていないけれど、頑張れば正樹さんと一緒になれるって思っていたら、どんなことでも出来そうな気がしてきた。どんな困難だって真実の愛があれば乗り切れるもんだよね。
でも、世界の崩壊って、地震が続いて火山が噴火して地割れが出来て隕石まで落ちてくるなんて聞いてないよ。太陽も見えなくなって気温も下がっているし、雨もなんだか黒く濁っている。
こんなの私一人じゃどうすることだって出来ないじゃない。正樹さんに助けを求めようにも、どこにいるのかわからないし、このまま私もみんなと同じように死んでしまうのかな?
「どうですか。最強の魔導士になれた感想は?」
「最強になれたって言っても実感は無いんですけど」
「そうでしょうね。あなたは何も変わっていないんですからね。変わったのは周りの状況だけですから」
「私が最強になりたいって願ったからこうなったんですか?」
「どうでしょうね。あの二人がこの世界に来た時点で崩壊は決まっていた事なんですが、あなたがそのタイミングを遅らせたという事はあるかもしれませんね」
「私が早めたんじゃなくて遅くしたってことですか?」
「ええ、あの二人はこんなに長くここに留まるつもりはなかったみたいですよ。本来ならもっと早くにこの世界は終わる予定でした。ですが、あなたがあの二人に暇つぶし程度でも他の事に目を向けさせたのは良い事だと思いますよ」
「ほかの事って、暇つぶしに魔導士を殺してたってことですか?」
「そう言う事ですよ。それを理解しているのにあなたには絶望を感じている様子は見られないのですが、お仲間が殺されるという事に対してそれほど強い思いは無いという事でしょうか?」
「そうですね。みんなが死んだ実感が無いってのもありますけど、私より強い魔導士がいなくなったってのは少し嬉しいかもしれないです。おかしいですよね」
「困りましたね。私はあなたが感じる絶望をいただきたかったのですが、それを叶えられないんでしたらどうするのがいいのでしょうね。そうだ、こんなものを見ていただくというのはどうでしょうね」
久しぶりに見た悪魔の言葉は私の心には響いていなかったんだけど、悪魔を通して見えてきた世界は私に今までにない絶望を与えてきた。
私ではなくみさきちゃんが正樹さんと一つになっている姿。
私はそれを見て、全てを投げ出してしまいそうになった。
おそらく、それが私の見た最後の光景だったと思う。
いつか、生まれ変わったら、みさきちゃんになりたいと思ってしまった。
「どういう意味って、言葉の通りだよ。君はこの世界で最強の魔導士になったって事さ。君より強い魔導士はこの世界にはいないってことだよ」
「待ってください。私より強い魔導士なんていくらでもいると思うんですけど。正樹さんに認めてもらえるのは嬉しいけど、私はそんなに強いわけないです。誰よりも弱いと思います。それは自分でもわかっているんです。でも、正樹さんに言われたらそうじゃないかなって気になってきます。大好きです」
「ちょっと、急にまー君に告白するのやめてよね。告白するのは自由だけど、いきなりすぎると思うんだけど。最強になったことをもっと気にしなさいよ」
「最強って言われたって嘘だって知っているし、私が強くなる可能性が無い事だって知っているんだもん。それでも最強って言ってもらえるのは嬉しいんだけど、最強じゃないってのは自分が一番よくわかってるから複雑な心境です。でも、正樹さんがそう言ってくれるなら嬉しいです。私よりずっとずっと強いんだから、嘘じゃないんだなって思いますもん」
「本当にまー君の手に入れた能力って凄いよね。私は前から知っているけど、みんな一目見ただけでまー君の魅力に惹かれちゃうんだもん。今までも他の女に言い寄られたりしてたんでしょ?」
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「そんな、私はみさきちゃんより立派なものを持ってるんですよ。少しだけで良いんで触ってくれたら、私の魅力に気づいてもらえると思うんですけど、試しに一度どうですか?」
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「君達って何?」
「あれ、ヒカリちゃんのお母さんとかその周りの人とかさ」
「何言っているのよ。その人達なら私が全員殺しちゃったじゃない。もういない人達の事を言っているんだとしたら、まー君は優しすぎるよ」
「そうだったね。みさきは強いから心配はしていなかったけれど、魔法を使ってくる相手は戦いにくくなかったかな?」
「全然そんな事なかったよ。魔法が使えるって言っても、人間に対してちゃんと殺すことが出来なかったみたいだから余裕だったよ。どうして自分が殺されるってわかっているのに抵抗しなかったんだろうね?」
「みさきは抵抗できないように拘束しなかったのかな?」
「あ、そうだった。抵抗しない優しさじゃなくて、抵抗できない無力さだったのかもね」
「あの、お母さんたちを殺したのって本当にみさきちゃんなの?」
「そうだけど。それがどうかした?」
「どうかしたって、お母さんを殺したのってどうして?」
「どうしてって。ヒカリが最強の魔導士になりたいって言ったからじゃない。あなたが最強になるために必要な事だからだよ」
「私はお母さんが死んだからって急激に成長するようなことは無かったけど、最強になるために必要って意味が分からないよ」
「何言っているのよ。あなたが最強になるためにあなたが強くなる必要なんて無いじゃない。ヒカリは変な事を言うのね」
「変な事って、なにも変な事は言っていないと思うんだけど、最強になるためにはいっぱい成長しないとたどり着けない場所なんじゃないかな。私はそう思うよ」
「だから、ヒカリが成長しなくても最強になれたんだからいいじゃない。苦労しなくても最強の魔導士になれたんだから喜んでいいんだよ。まー君の計画通り最強になれたんだからそれでいいじゃない。どっちにしろ、ヒカリがこの世界で最強になったことには変わりないんだから喜んでよね」
「素直に喜べないんだけど、みさきちゃんはいったいどんな魔法を使って私を最強にしたって言うのよ」
「私は魔法なんて使えないんだよ。それに、魔法じゃなくて私の力で全て終わらせることが出来たからね。ヒカリが最強になったんだから細かいところは気にしないで良いんだよ」
「そうは言ってもさ、正樹さんが私の事を認めてくれているってことで良いのかな?」
「認めるも何も、君はこの世界で唯一生き残っている魔導士ってだけだからね。他に誰も魔導士がいないんだからどんなに弱くたって最強には変わりないんだよ。他に誰もいなければ最強で間違いないでしょ?」
他に誰もいないってどういうこと?
お母さんたちが死んじゃったってのは知っているけど、他にも魔導士はいっぱいいたと思うんだけどその人達ももしかしたら……。
「ヒカリがどう思おうか勝手だけどさ、まー君は私だけのまー君だから変な気を起こさないでね。それにさ、みんなはまー君に会えなかったんだからヒカリはそこを感謝してよね」
「正樹さんに会えなかったって、本当にみんな死んじゃったってことなの?」
「そうだよ。町の外に出てた人達は私が殺してあげたし、ここに残っていた人達はまー君が何とかしてくれたんだもんね」
「うん、全部をヒカリに任せるわけにはいかないからね。僕も多少は頑張らせてもらったんだよ」
「頑張ったって、正樹さんもここの人達を殺したってことですか?」
「僕が直接手を下したわけじゃないんだけど、ちょっと知り合いに頼んだら何とかなったって感じかな」
「そうなんですね。でも、それがどうして私が最強になったのに繋がるんですか?」
「君は本当に察しが悪いな。他に誰も魔導士がいなければ君が最強になるって事じゃないか。一番強いってよりは、この世界でただ一人の魔導士って意味で、最強でもあり最弱でもあるってことだよ。納得できたかな?」
「何となくですけど、言いたいことはわかりました。つまり、私はこの世界で唯一の魔導士ってことで、正樹さんはこの世界の魔導士ではないってことなんですよね?」
「まあ、そう言うことになるね。それがわかったならあとは好きにしていいんだよ」
「私の好きにしていいんですか。じゃあ、私と結婚してください」
「ちょっと、いきなり何言ってんのよ。まー君は私だけのまー君だって言ったばっかりじゃない」
「ええ、だって、私はこの世界で唯一の魔導士ですし、正樹さんも魔導士ですよ。そんな二人が出会ってやることと言えば、子孫を残すことじゃないですか。私しか魔導士のいない世界なんだったら、私がたくさん正樹さんの子供を残さないといけないじゃないですか。それは仕方ない事だと思うんで、みさきちゃんもそこは目をつぶってくださいね」
「そんなこと出来るわけないじゃない。大体、この世界もあとどれくらい残っているのかわからないんだし、ヒカリが子供を作る時間なんて残ってないんだよ」
「そうだね。この世界で僕たちが得た教訓は、不測の事態があれば魔法が使えなくなってしまうってことくらいかな。魔法が使えなくなるのは初めての経験だったけど、意外と何とかなるんだなってわかったのは良かったかもね」
「ちょっと待ってもらっていいですか。この世界が残っている時間があとわずかってどういうことですか?」
「みさきは言ってなかったのかもしれないけど、僕とみさきが一緒になるとその世界は崩壊してしまうんだよ。今までいた世界もそうだったし、ここもそうなるだろうね。僕は今魔法が使えない状態なんで崩壊の兆しはまだ見えないけれど、これからみさきが僕の拘束具を全部外してくれるんだけど、そうなってしまえばこの世界が崩壊から逃れるすべはないと思うよ。ただ、最強の魔導士である君がどうにかすることは出来るかもしれないけどね」
「わかりました。世界が崩壊しないように頑張るんで、大丈夫だったら私と結婚してください」
「だから、まー君は私だけのまー君だって言ってるでしょ。ヒカリは変な気を起こさないで流れに身を任せてなさいよ」
「そんな事ないもん。私はお母さんたちの血を引いているんだし、いざとなればなんとかなるって信じてるんだもん。だから、正樹さんも私の事を応援してくださいね」
「わかったよ。無理だと思うけど頑張ってね」
世界の崩壊なんて私は信じていないけれど、頑張れば正樹さんと一緒になれるって思っていたら、どんなことでも出来そうな気がしてきた。どんな困難だって真実の愛があれば乗り切れるもんだよね。
でも、世界の崩壊って、地震が続いて火山が噴火して地割れが出来て隕石まで落ちてくるなんて聞いてないよ。太陽も見えなくなって気温も下がっているし、雨もなんだか黒く濁っている。
こんなの私一人じゃどうすることだって出来ないじゃない。正樹さんに助けを求めようにも、どこにいるのかわからないし、このまま私もみんなと同じように死んでしまうのかな?
「どうですか。最強の魔導士になれた感想は?」
「最強になれたって言っても実感は無いんですけど」
「そうでしょうね。あなたは何も変わっていないんですからね。変わったのは周りの状況だけですから」
「私が最強になりたいって願ったからこうなったんですか?」
「どうでしょうね。あの二人がこの世界に来た時点で崩壊は決まっていた事なんですが、あなたがそのタイミングを遅らせたという事はあるかもしれませんね」
「私が早めたんじゃなくて遅くしたってことですか?」
「ええ、あの二人はこんなに長くここに留まるつもりはなかったみたいですよ。本来ならもっと早くにこの世界は終わる予定でした。ですが、あなたがあの二人に暇つぶし程度でも他の事に目を向けさせたのは良い事だと思いますよ」
「ほかの事って、暇つぶしに魔導士を殺してたってことですか?」
「そう言う事ですよ。それを理解しているのにあなたには絶望を感じている様子は見られないのですが、お仲間が殺されるという事に対してそれほど強い思いは無いという事でしょうか?」
「そうですね。みんなが死んだ実感が無いってのもありますけど、私より強い魔導士がいなくなったってのは少し嬉しいかもしれないです。おかしいですよね」
「困りましたね。私はあなたが感じる絶望をいただきたかったのですが、それを叶えられないんでしたらどうするのがいいのでしょうね。そうだ、こんなものを見ていただくというのはどうでしょうね」
久しぶりに見た悪魔の言葉は私の心には響いていなかったんだけど、悪魔を通して見えてきた世界は私に今までにない絶望を与えてきた。
私ではなくみさきちゃんが正樹さんと一つになっている姿。
私はそれを見て、全てを投げ出してしまいそうになった。
おそらく、それが私の見た最後の光景だったと思う。
いつか、生まれ変わったら、みさきちゃんになりたいと思ってしまった。
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