二つの願い

釧路太郎

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徹宵

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 先ほどまでは楽しそうに歌を歌っていた息子であったけれど、家が近付くにつれて元気がなくなってきていた。私も家が近付くにつれて体が重くなっているように感じていたのだけれど、私まで元気がなくなると息子が不安に思ってしまいそうなので無理にでも明るく振舞っていた。
 いつもなら旦那がいる時は玄関の鍵が施錠されていないのに今日はしっかりと施錠されていた。私は持っていた鍵で鍵を開けたのだけれど、二階から物音が聞こえてきているので旦那は家の中にいるようだ。
 一旦、息子の服を着替えさせてから二階に上がってみようかと思っていると、旦那が下りてきた。旦那は少し深刻そうな顔をしているのだけれど、息子の姿を見た時にはいつもの明るい旦那に戻っていた。
 旦那は何も言わずに息子と遊んでくれているのだけれど、息子と遊んでいる最中も携帯をいじっている姿が少し気になった。いつも通りに息子と遊んでいるように感じているのだけれど、どこか違和感があるような気がしてしまう。何がおかしいのかわからないけれど、いつもとはどこかが違う。でも、その違いが何なのかはわからなかった。

 私もお弁当箱を洗い終わって一緒に遊ぼうと思って旦那のもとへ行こうと思ったのだけれど、先ほどまでリビングにいた二人の姿が見えない。どこに居るのだろうかと思って家の中を探してみると、二人は客間の中で特撮ヒーローのフィギュアで遊んでいた。

「ねえ、そんなとこで何してるの?」

 私はどうして客間で遊んでいるのかが理解できなくて聞いてみた。ここ数日の間に体験した不思議な現象はこの部屋を中心に起こっていたからだ。旦那にも話したとは思うのだけれど、そんな事は気にしていない感じなのが少し気に障った。

「ああ、この部屋は大丈夫だから。今は詳しく言えないけど、ここの方が安全だと思うよ」
「あなたがそう言うならいいんだけど、陽ちゃんには何もないんだよね?」
「陽一にも君にも何も起きないと思う。もちろん、僕にもね」

 優柔不断な面もあるのだけれど、断言してくれる時は何かの根拠があるはずだ。昔からいい加減な事で決めつけたりしないのは信用できるところだし、安心して頼れる強さも持っているのだから。
 私はこの部屋が少し怖かったので出て行こうとすると、旦那は少し焦った感じで私の手を掴んだ。その手は力強く、少しだけ痛かった。

「今日は出来るだけこの部屋から出ないで欲しいんだ。何か必要なものがあるなら僕が持ってくるからさ。トイレは二人で行く事は無理だけど、可能ならお風呂も三人で入ることにしよう」

 普段ならこんなに強引に物事を決めるような人ではないので、これは何かがあったのだと思ってその事に従う事にした。息子はこの部屋に滅多に入らないので居心地が悪いのか、終始ソワソワしていたのだけれど、旦那が一緒に遊んでくれているのが嬉しいらしくて、しばらく経つと楽しそうに遊んでいた。
 何か飲み物をとってこようかと思っていると、旦那が代わりに持ってきてくれると言ってくれた。冷蔵庫の中にある息子用のジュースと私の紅茶をリクエストすると、旦那はそのまま部屋を出て行った。そのまま待っていると、私の携帯にメッセージが届いた。

君が陽一を迎えに行っている間に家の中を調べてみたんだけど、客間よりも二階の方が違和感を感じたんだ。
客間は守り神も多いし、神社とかお寺で貰った御札もあるから安全だと思う。
本当に幽霊とかがいるのかはわからないけれど、へたに動き回らないで安全な場所で過ごすことにしよう。
いつもは何となく気休めで買っていた物が役に立てそうで良かったと思うよ。

 正直に言うと、この部屋にある守り神や御札は気味が悪いだけで嫌だったのだけれど、旦那にそう言われると不思議と安心してみていられる。何があるのかはわからないけれど、今日は旦那もいる事だしゆっくりと眠ることが出来そうだ。

 晩御飯はどうしたらいいのかと思っていると、旦那が近所のスーパーでお惣菜を買ってきてくれることになったのだけれど、息子も一緒に行きたいと言い出してしまった。
 旦那は息子に優しく言い聞かせていたのだけれど、どうしても一緒に行きたい息子は駄々をこねていて旦那を困らせていたのだ。私は息子を説得してみたのだけれど、ワガママを言って聞いてくれない。一緒に連れて行ったらどうかと思っていたところ、旦那は息子を抱きかかえると私に渡してきた。

「いいかい、僕が戻るまで絶対にこの部屋から出てはいけないよ。トイレに行きたくなりそうなら今のうちに行っておきなさい。それ以外なら我慢しておくこと。それが出来ないなら、今日は晩御飯は無しだよ。わかったかな?」

 いつもと様子が違う旦那の姿に驚いたのか、息子は素直に従った。私も少し怖く感じてしまっていたけれど、冷蔵庫の食材を使えば何か作れるんじゃないかと思って聞いてみた。

「それでもいいんだけど、僕が今から作ると日付が変わっちゃうかもしれないけど良いのかな?」

 旦那は笑いながらそう言っていたのだけれど、料理は凝り性なのでいつも時間がかかってしまっていたのだ。息子が産まれる前は時々料理をしてくれたのだけれど、半日使って色々と作ってくれたのを思い出してしまった。どれも美味しかったのだけれど、良い食材と手間暇をかければ美味しくなるんだよと言って謙遜していたのも思い出してしまった。

 時計のないこの部屋の中では私のスマホで時間がわかるので良いのだけれど、旦那が返って来たのは意外と早くて三十分も経っていなかったと思う。ご飯だけではなく息子用のお菓子も買ってきてくれたみたいで、先ほどまで落ち込んでいた息子も笑顔になっていた。あまりお菓子や玩具で子供の機嫌を取るのは良くないと思うのだけれど、今日は仕方ないかと思ってしまう。
 客間の端に寄せてあったテーブルを移動させて食卓を作ると、旦那は買ってきた総菜を並べだした。旦那と私では好みが多少異なるのでいつもなら買わないようなものが並んでいるのも楽しく感じた。そんな中でも私の好きなサラダやお惣菜があったのは旦那の優しさを感じるし、強くないお酒を買ってきてくれているのも私の為だと思うと嬉しかった。

 食事も終わってそのままお風呂に入る事にしたのだけれど、普段は私と二人で入っている息子が家族三人で入る事が嬉しかったみたいで、お風呂用の玩具をたくさん持ち込んでいたのが印象的だった。
 旦那と息子が先に入っていって、私は少し遅れて浴室に入っていったのだけれど、浴室に入る前に廊下から床が軋むような音が聞こえたような気がした。廊下を確認した方がいいのだろうとは思っていたけれど、旦那はもう浴室に入っているので呼ぶことも出来ないし、何か見てしまったら怖くて今夜は眠れなくなりそうだと思ってしまった。
 急いで浴室に入ると、息子は旦那に頭を洗われていた。旦那はこちらを向かずに優しい声で「大丈夫だからね」と言ってくれたのだけれど、あの存在に気付いていたのだろうか?
 得体のしれないものが近くにいるというのは恐怖でしかなく、体も冷えているように感じていたので、私はかけ湯をして浴槽に入る事にした。入浴剤は入れていないはずなのに良い匂いがしていた。何か袋が浮いているのに気付いてみてみると、その中にはハーブが入っているようだった。

「それは色々なハーブが入っているみたいだよ。魔除け効果があるのかはわからないけれど、リラックス効果があるみたいだしゆっくり温まるといいよ」

 ちょっとした気遣いだと思うのだけれど、確かにリラックスできる良い匂いがしていた。頭と体を洗い終わった息子が浴槽に入ってくると、旦那もそのまま頭を洗っていた。息子が産まれる前は時々ではあるけれど、頭を洗ってもらったりもしていたなと思ってみていたら、息子が私と玩具で遊びたそうにしていた。水鉄砲や潜水艦の玩具で遊んでいると、旦那も頭と体を洗い終わったみたいで、次は私が洗おうかと思って浴槽から出た。出たのだけれど、旦那は浴槽に入ろうとはしなかった。どうしたのかなと思っていると、椅子に座るように促された。

「昔は君の頭も洗ったことがあったよね。今日は皆で入っているし、たまには洗ってあげるよ」

 さっきまで外の様子が怖くて気になっていたけれど、旦那の言葉と行動でその恐怖がどこかへ飛んでしまったと思う。旦那に頭を洗ってもらうのは自分で洗うよりも気持ちよく、スッキリするだけではなくリラックス効果もあるようだ。浴槽のハーブの効果も相まって何倍もリラックスすることが出来た。
 息子は早く出たがっていたけれど、浴槽に浸かっていない旦那はどうにかして息子と遊んで時間を引き延ばそうとしていたのだけれど、それにも限界はあるようで、息子はそのまま浴室から出ようとしていた。

「このままだったら風邪をひいちゃうかもしれないし、私も髪を乾かすのに時間がかかりそうだから先に部屋に戻っていてもいいかな?」
「ああ、申し訳ないけどお願いするよ。僕はもう少し暖まっておかないと風邪をひいちゃいそうだしね」

 旦那は三人分の頭と体を洗っていたのだから体は冷え切っていたのだろう。浴室は暖かいとは言え裸でそれだけの時間を過ごしてしまったら寒いに決まっている。それでも、イヤな顔を一つ見せずにしてくれたことは嬉しかった。
 脱衣所で息子の体を拭いて、私も軽く髪を乾かすと、ドライヤーを持ってそのまま客間へ戻る事にした。廊下に出るのは少し怖かったけれど、先ほどのように物音は聞こえてこなかった。息子の手を引いて客間に戻ろうと思っていたのだけれど、どうしてもアイスが食べたいというので、冷凍庫からアイスを一つ取り出してから客間に戻る事にした。

 息子がアイスに夢中になっている間に髪を乾かそうと思っていたのだけれど、アイスをすぐに食べ終わった息子は部屋から出て行ってしまった。私も後を追っていったのだけれど、息子は脱衣所に旦那を迎えに行ったようだった。
 旦那はまだ浴室にいるようで、息子が浴室の扉を開けると「すぐに出るから待ってなさい」と息子に言っていた。私は旦那に謝ると、気にすることは無いよと言ってくれた。
 息子の手を引いて客間に戻っていたのだけれど、先ほどまで元気だった息子が大人しくなっていた。お風呂でもはしゃいでいたし、疲れてしまったのかなと思っていると、息子はうつらうつらと眠そうにしていた。
 押し入れに入れておいた布団を敷くと、息子は我慢できないようでそのまま眠ってしまった。少しだけ寝かせてから歯磨きをさせようかと思って旦那を待っていたのだけれど、いつもよりお風呂が長い気がする。心配になって見に行こうかと思っていたけれど、心配をしている間に旦那が戻ってきてくれた。

「ちょっと待たせ過ぎて寝ちゃったみたいだね」
「久しぶりにあなたとお風呂に入って嬉しかったみたいだよ」
「僕も嬉しかったけど、近いうちに家族風呂付の温泉でも行ってみようか」
「そうね、落ち着いたら探してみましょ」

 すやすやと寝ている息子を二人で見ていると、リビングの方から何かが倒れるような大きな音がした。私と旦那はお互いに顔を見合わせると、ゆっくり扉を開いて確認してみる事にした。一階は電気を全てつけているのだけれど、何かがいるような様子はなかった。私は怖くて部屋から出られなかったのだけれど、旦那が何があったのか確認してくると言って部屋を出て行った。

 そんなに長い時間ではなかったと思うけれど、私にはとても長く感じていて、旦那が早く戻ってきてくれることを願っていた。旦那はなかなか戻ってこなくて不安になっていたけれど、息子を見ると幸せそうな寝顔をしていたので少しだけ心が安らいだ。旦那が戻ってきたのはそんな時だった。

「一通り見てきたんだけど、何かが倒れていたり壊れているモノはなかったみたいだよ。誰かが入ってきた形跡もなかったし、何が原因なのかわからないけど、大きい物音がするようなものも落ちていなかった。それと、足音がこっちに向かっていたと思うんだけど、大丈夫だったかな?」
「足音? この部屋にはあなたが戻ってくるまで何もなかったけど、本当に足音がこっちに向かっていたの?」
「確証は持てないけど、寝室を調べていた時に廊下を誰かが歩いている気配がして、君かと思って見てみたんだけど、誰もいなかったんだよね。それで廊下に出てみたら、ペタペタと裸足で歩く音がこの部屋の方に向かっていたと思うんだけど」
「私は部屋を出てないし、冷え性だから靴下をはいているのよ」

 私には近づく足音は聞こえなかったけれど、いつからかこの家に何者かが住み着いてしまったのだろうか?
 旅行に行く前はこんな事も無かったのに、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。私も旦那もそれなりに心霊体験はしていると思っていたけれど、自分が暮らしている家でそれが起こると恐怖感は何倍にもなってしまうんだと思った。
 旦那が買ってきてくれていた守り神や御札の効果があるのかもしれないけれど、この部屋に居る時は比較的安全な感じがしているのだけれど、息子がすやすやと眠っているのも安心感を与えてくれた。

 私は何かが家の中にいるのが怖くなってしまって旦那の手を握っていたのだけれど、それは旦那も同じ気持ちだったようで握り返してくれた。今すぐ抱き着きたい気持ちもあるのだけれど、息子が起きてしまうかもしれないのであまり大きく動かないようにしておく事にした。
 しばらく待って見て何も起こらなかったので布団を敷くことにしたのだけれど、扉の一番近くに旦那が寝てくれることになった。息子は相変わらず気持ちよさそうに寝ているのだけれど、私は布団の中に入ってもなかなか寝付くことが出来なかった。
 スマホの時計を見てみてもまだ日付は変わっていなかったのだけれど、横を見ると息子は変わらず寝ているし、旦那も疲れが出たのかぐっすりと眠っていた。

 そろそろ眠れそうだと思っていると、扉がゆっくりと開いているように感じて気になってしまった。体を起こしてから扉を見ても開いていることは無く、旦那も変わらずに眠っていた。
 寝顔を見ていると、息子と同じ角度で寝ているのが面白くてより安心感を与えてくれた。私もこのまま眠ろうと思っていると、ペタッペタッという足音が扉の向こうから聞こえてきた。足音は扉の前を行ったり来たりしているようで、何度か通り過ぎては戻ってを繰り返していたのだけれど、いつの間にか足音は聞こえなくなっていた。

 怖かったけれど音が聞こえなくなったことが少し嬉しかった。心臓はまだドキドキと鼓動していたけれど、足音が聞こえなくなれば少しは落ち着いてくると思った。旦那も息子もそれには気付いていないようで幸せそうに眠っていた。

 足音を聞いてしまった私はその後もなかなか眠りにつくことが出来ず、一時間くらい眠れそうで眠れない感覚を覚えていた。
 その時、指先で扉をトントンと叩くような音が聞こえてきた。足音はしなくなっていたのだけれど、ソレは移動したのではなくずっとそこに居たのだと思うと恐怖以外の感情はすべて消えてしまった。旦那を起こして息子を守ろうと思っても、あまりの恐怖に体が動けなくなってしまっていた。金縛りに近い状態だと思うのだけれど、視界の隅に見えている扉から目を離すことが出来なかった。
 トントンと叩く感覚が少しずつ狭くなっているのだけれど、その強さは変わらず一定だったのも不気味だった。トントン、ズズズー、トントン、ズッズズズー、トントンと不気味な音は夜が明けるまで止むことが無かった。私は一睡も出来ずにいて、旦那が話しかけるまで扉から目を離すことが出来なかった。

「あなたは気付かなかったかもしれないけれど、何かが扉の前に立ってずっと扉を叩いていたみたいなの。音がしなくなっても足音が消えてないからまだいるかもしれないわ。さっきも足音が消えてからしばらくして叩きだしたのよ。ねえ、陽ちゃんは大丈夫かしら?」
「そうだったんだね。疲れていたとはいえ眠ってしまってごめんよ。次からは起こしてくれていいんだからね。陽一は、気持ちよさそうに寝ているよ」

 旦那はそう言ってから私を抱きしめてくれた。何度も大丈夫だよと言ってくれていたのだけれど、不思議とその言葉に説得力を感じてしまった。
 確認してくると言って旦那が少しだけ扉を開けて外を見てみたのだけれど、室内は変わらずに何事も無いようだった。旦那はそのまま客間を出て一通り確認してくると言っていた。
 夜とは違ってすぐに戻ってきた旦那は何も言わずに私を抱きしめた。どんな時でも冷静で落ち着いている旦那が小刻みに震えているのだけれど、私もその震えが伝染してしまったのか同じように震えていた。
 少し経つと旦那は落ち着いたようで、私の目を真っすぐに見つめていた。

「一通り部屋を見てきたけれど何も変化はなかったんだよ」
「それなのにどうしたの?」
「ここに戻って来た時に見たんだけど、扉の外に貼ってあった御札がボロボロになっているんだよ。君が貼ってくれた御札が無かったら、君が聞いていた音の主が部屋に入ってきたかもしれないね。僕も気付かなかった入り口を守る事を君がしてくれて嬉しかったと同時に、申し訳ないって思っちゃったよ」
「ちょっと待って。私は御札なんて貼ってないわよ」

 私達は再び顔を見合わせると、同時に息子を見ていた。私でも旦那でもないと息子が貼ったことになるのだけれど、息子がそんな事をするわけも無いし、御札を保管している場所は息子には届かないほど高い場所にあるのだ。

 私は誰が貼ってくれたのかは不思議に思っていたけれど、守ってくれたことは嬉しかった。
 旦那はこれ以上は無理だと言って草薙式研究所にアポを取ろうとしていた。こちらの状況を説明していると、特別に話を聞いてくれることになったようで、来週のアポを今日の夜に変えてくれることになったみたいだ。

 息子はまだ寝ているけれど、一刻も早く起こして家を出て外に出たいと思った。
 息子が目を覚ますとそのまま着替えさせて荷物をまとめて部屋を出る事にした。息子は幼稚園に行きたいと言い出していたけれど、今日はお休みして出かけることになったと言ったら喜んでいた。部屋を出てから旦那が扉に張られていた御札を慎重に外してクリアファイルに挟んでいた。

「剥がされかけた御札を持ってきてほしいって言われたんだよね」

 私は旦那が強いなと思った。一瞬しか見なかったけれど、何かが触ったものに触れることは私には怖くて出来ないと思ったからだ。

 普段ならば買い物くらいでしか車は使わないので息子は嬉しそうだけれど、私達夫婦は必要最低限の事以外は話すことが無かった。
 息子がお腹が空いていると言ってので、早朝から開いているファミレスに入ったのだけれど、私も旦那もそれほどお腹が空いていなかったので、軽くだけお腹に入れることにしたのだけれど、元気がない私達を見て、息子は自分が好きなハンバーグをくれようとしたのが嬉しくて涙が出そうになってしまった。

 こんなに優しい息子を守るためにも、どうしたらいいのか相談して解決できればいいなと心から願ったのだった。
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