【R18】除霊の代金は体で支払ってもらうので気にしないでください

釧路太郎

文字の大きさ
上 下
63 / 64
離島編

第三十五話 成仏しかけたヒナミ

しおりを挟む
 私が神様と繋がった時間はほんの少しの間だけだったのだけど気が付いた時には何もかもが終わっていたのだった。
 神様と感覚を共有するという事が私にとって思っている以上に負担が大きかったのかと思っていたのだけれど、実際は負担がかかっていたのではなく成仏しかけていたという事だったらしい。私はまだ成仏なんてしたくないという思いがあるのだけれど、神様の力に叶うはずもなく私は本当に点に召されるところだったようです。
『何で真白先生は私を助けてくれたんですか?』
「なんでって、俺にはまだヒナミが必要だからね。それ以外には理由もないけど」
『そんな事言ってくれるなんて嬉しいじゃないですか。でも、それって本音だったりする可能性ありますか?』
「本当なんだけどな。でも、神様に触ってる時に何となくヒナミの事を感じることが出来たと思うんで、それは良かったなって思うよ」
『ちょっと待ってください。それって、私に触ることが出来たって事ですか?』
「直接触ったわけじゃないんで何となくそうなんじゃないかなって思っただけなんだけどね。でも、神様とも忍ちゃんとも違う感じだったからそうなんじゃないかなって思っただけだしね。でもさ、その感覚もほんの少しの時間だけだったから気のせいかもしれないんだよ」
『気のせいでもいいんですけど、私も真白先生触れられた感覚ってのを味わってみたかったです。で、さっきから気になってたんですけど、私達は今どこにいるんですか?』
「どこって、今は鵜崎家の本邸だよ。ヒナミを呼び戻すために紗雪の力を借りることになったからね。紗雪だけじゃなくて叔母さん達にも協力してもらったんだけどさ、うまく言って良かったよ」
『そうだったんですね。でも、助けてもらって嬉しいですよ。お礼を言わないとですね』
 私にとって鵜崎家の人達は真白先生と紗雪ちゃん以外はあまりいい印象を持っていなかったのだけれど、私をこの世界に戻してくれたという事実に感謝をしてもどう返していいのかわからなかった。
『それで、紗雪さん達はどこにいるんですか。直接お礼を言いたいんですけど』
「紗雪なら学校に行ってるよ。たぶんもう少しで帰ってくると思うけどね。叔母さん達なら今頃飛行機とヘリを乗り継いで鳥島に向かってるんじゃないかな。余計な事をした神様を封印してくるって言って出て行ったからね。あの人達にかかれば神様も悪霊もそんなに違いが無いのかもしれないってさ。まあ、実際に封印したりなんかはしないんじゃないかなって思うよ。俺が毎日送っていたレポートの内容がほぼ亀島で取れた海産物の報告になってたからね。それと酒を楽しみに行ったってのが本音だと思うよ」
『そんなに気軽に行けるような場所じゃないと思うんですけど。でも、真白先生は色々と不完全燃焼に終わって大丈夫なんですか?』
 真白先生は私の言葉を聞いて何かを思い出そうとしているのか腕を組んで目を閉じていた。眉間に力が入っているのが見てわかるのだけれど、そんなに悩むような事でもあったのかと私は不思議に思っていた。
「まあ、不完全燃焼と言えばそうなんだけどさ、俺の力じゃどうする事も出来なかっただろうしね。あとは叔母さん達に任せるのが正解なんだと思うよ。鳥島の秘密もわかったのだって俺にそこまで期待はしていなかったと思うからね。たぶんだけど、俺が亀島に行かされた目的ってあの島に住んでる人の霊感を高めてからヒナミと一緒に現地の幽霊とコンタクトを取らせようってだけだったと思うからね。ヒナミがいなければ何も出来ないってのもあるしね」
『そんな事ないですって。真白先生って私以外の幽霊は見れなくても神様とか精霊とかは見れるじゃないですか。私には見えないものが見えるんだから何も出来ないってことは無いと思いますって』
 なんだか悲しそうな顔をしている真白先生を抱きしめたいと思ってしまった。でも、今の私は真白先生に触れることは出来ないし、真白先生も私に触れることなんて出来ないのだ。それをお互いに理解しているからなのか、二人で見つめ合ったままぎこちない笑顔を交わしてしまっていたのだ。
『それと、どうして忍ちゃんとは最後までエッチ出来なかったんですかね。真白先生は経験豊富なんで出来そうなのになって思ってたんですけど、なんで最後までしなかったんですか?』
「それはさ、ちょっとした理由があったんだよね。別にやろうと思えば最後まで行けたと思うんだけどな。でも、ずっと小さい声で『お母さんごめんなさい。お母さんごめんなさい』って言われ続けたらそう言うことを続けられる感じじゃなくなったって言うのがあるんだよね。あと、忍ちゃんって意外と筋肉質なんでガッチリと閉じられていたってのもあるんだろうな。いれたらどんな感触だったのか気にはなるけどさ、あんまり無理矢理ってのは俺も好きじゃないからね」
 私には聞こえない声でそんな事を言ってたなんて思いもしなかったですね。でも、その気持ちは何となくわかるような気がしてますよ。私のお母さんがどんな人だったのかなんて覚えてもいないですけど、私にも何かあったらお母さんに話しかけてしまうような気もしてますね。そんな事をぼんやりと考えてはいたのですけど、私のお母さんってどんな人だったんでしょうね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

噺拾い

かぼちゃ
ホラー
本作品はフィクションです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...