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離島編
第三十四話 神様と私の感覚共有
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濃い紫色の瞳は私の事をじっと見つめていたので私も神様の紫色の瞳を見つめ返していた。私と神様の間に入っている忍ちゃんは基本的には神様の事を見ているようなのだけれど、神様の視線が忍ちゃんに向かっていないという事に気付いてからは私と真白先生の事を見るようになっていた。
「さすがにそれだけ真っすぐ見つめられると照れてしまうな。幽霊ちゃんはいつもそうやって誰の事でも真っすぐに見つめてしまうのかな?」
『そんなことは無いと思いますけど』
「そんなことあると思いますよ。ヒナミさんは僕の事もじっと見つめてきてますからね。最初はちょっと怖かったですけど、悪意とか敵対心があるわけじゃないって気付いてからは見つめられるのも気にならなくなっちゃいました。だって、私の恥ずかしい姿も全部見られちゃってるわけですからね。今更恥ずかしがるのも変な話かなって思いますよ」
「恥ずかしい姿って、さっきまでアタシがあの子と一緒にしてた前戯とかだよね?」
「そうですけど、そんなハッキリ言わないでください。そう言う事言われるの僕は恥ずかしいですから」
神様は恥ずかしがっている忍ちゃんをからかうように後ろから抱きしめると、私の事を見つめながらゆっくりとその手を動かして忍ちゃんの体を弄りだしたのだ。
忍ちゃんは抵抗するようなそぶりは見せずに神様の行動を受け入れている。その表情はやや恍惚したように見えており、自ら体を動かして神様の手を誘導しているようにも見えていた。
「幽霊ちゃんはさ、アタシと繋がってるんでアタシの事も見えるようになったと思うけどさ、まだ物に触ったりすることは出来ないんでしょ?」
『そうだと思います。試してないんでわからないで、ちょっとその辺にあるもので試してみますね』
「すぐには無理だと思うよ。このまま三年くらい続ければ何かに触った時だけ実体化出来るようになるかもしれないけどね。ただ、実体化には相当なエネルギーを要すると思うんで難しいかな。そこにあるスプーンを五分使おうと思っただけで生きている人間何人分かの生体エネルギーを集めないといけないんだよね」
私は万が一の可能性があるかもしれないという思いで忍ちゃんの持ってきたカトラリーセットからスプーンを取り出そうとしたのだけれど、そもそも鞄に触れることも出来ないので鞄からカトラリーセットを取り出すことすら出来なかった。
カバンから取り出すことも出来ないのにスプーンを持てるはずもなく、気を使ってくれた忍ちゃんがカトラリーセットのカバーを外してスプーンを簡単にとれる状態にしてくれていたのだ。
だが、そんな風に優しくされたところで私がスプーンを持つことなんて不可能であるし、私は食事を必要としていないのでスプーンを持つ理由だって何も無いのだ。それなのに、忍ちゃんは私がスプーンを持ち上げる様子を温かく見守ってくれているのだった。
『やっぱり無理ですよ。それに、それだけの時間をかけて燃費効率って物凄く悪いですね。車とかと違って中身をアップグレードすることも出来ないので私には本当に必要ないものって事になると思いますよ』
「だろうね。アタシもそんなにすぐに触れられるようになるとは思ってないからさ。その代わり、今までになかったものを感じてるんじゃないかな?」
『今までになかったもの?』
私は神様が何に対してそんなことを言っているのだろうと思って聞いていたのだが、何となく私の左手が若干暖かくて締め付けられているようにも感じてしまっていた。
どうしてそんな事になっているのか考えていたのだが、その答えにたどり着くことは出来ずにいた。かと言ってこのまま締め付けを放置しておくのもいい気分はしないともう。
「どうだい、その左手に感じているぬくもりはアタシが今こうして女ちゃんに抱き着かれているのを共有しているからなんだよ」
確かに、今までは何も感じなかったのに、今では忍ちゃんが抱きしめているその腕が自分の腕なのではないかと思うような状況に陥ってしまっているのだ。
『人のぬくもりを感じるのは久しぶりですけど、忍ちゃんって見てるだけじゃわからくらい柔らかいんですね。見た目は男の子っぽいのに、そう言うところはちゃんと女の子なんだなって思うよ』
「ちょっとやめてくださいよ。僕だって別に好きでこうしているわけじゃないですからね。たまには女の子っぽい格好もして満たないって思う事もありますけど、そう言うのってあんまり需要が無いですからね」
正直に言えば亀島でそんな事をやろうにも忍ちゃんと年が近い人もいないだろうし、やったところで亀島の人達に受け入れられることも難しそうだ。
「うまい事成功したみたいだし、幽霊ちゃんにはこれからアタシと少しだけ感覚を共有するんだよ。幽霊ちゃんにしてもらうことは特にないんでアタシたちの事をちゃんと見ててね。見逃してしまったら後悔するような事があるかもしれないよ」
『何もしないで見てるのと変わらないと言えば変わらないんでしょうけど、さっきよりも電車の音も車の音も虫の声もはっきり聞こえているように思えるんですよ。ハッキリというよりも、音が立体的に聞こえているような感じですね』
触覚だけではなく聴覚も共有されているという事なのだろう。私が普通に聞いている音がどの方向から聞こえてきているのかハッキリと理解出来るようになっていた。
今はわからないが、嗅覚や味覚も共有されているのかもしれないけれど、なぜか視覚は共有されていないようだ。もしも同じものを別の場所で見ていたとしたら、私にかかるマイナス要素が大きすぎると思う。
触ったり聞いたり味わったりすることは共有しても平気だとは思うけれど、視覚を完全に共有する事は危険でしかないとあらためて気づいたのだった。
「さすがにそれだけ真っすぐ見つめられると照れてしまうな。幽霊ちゃんはいつもそうやって誰の事でも真っすぐに見つめてしまうのかな?」
『そんなことは無いと思いますけど』
「そんなことあると思いますよ。ヒナミさんは僕の事もじっと見つめてきてますからね。最初はちょっと怖かったですけど、悪意とか敵対心があるわけじゃないって気付いてからは見つめられるのも気にならなくなっちゃいました。だって、私の恥ずかしい姿も全部見られちゃってるわけですからね。今更恥ずかしがるのも変な話かなって思いますよ」
「恥ずかしい姿って、さっきまでアタシがあの子と一緒にしてた前戯とかだよね?」
「そうですけど、そんなハッキリ言わないでください。そう言う事言われるの僕は恥ずかしいですから」
神様は恥ずかしがっている忍ちゃんをからかうように後ろから抱きしめると、私の事を見つめながらゆっくりとその手を動かして忍ちゃんの体を弄りだしたのだ。
忍ちゃんは抵抗するようなそぶりは見せずに神様の行動を受け入れている。その表情はやや恍惚したように見えており、自ら体を動かして神様の手を誘導しているようにも見えていた。
「幽霊ちゃんはさ、アタシと繋がってるんでアタシの事も見えるようになったと思うけどさ、まだ物に触ったりすることは出来ないんでしょ?」
『そうだと思います。試してないんでわからないで、ちょっとその辺にあるもので試してみますね』
「すぐには無理だと思うよ。このまま三年くらい続ければ何かに触った時だけ実体化出来るようになるかもしれないけどね。ただ、実体化には相当なエネルギーを要すると思うんで難しいかな。そこにあるスプーンを五分使おうと思っただけで生きている人間何人分かの生体エネルギーを集めないといけないんだよね」
私は万が一の可能性があるかもしれないという思いで忍ちゃんの持ってきたカトラリーセットからスプーンを取り出そうとしたのだけれど、そもそも鞄に触れることも出来ないので鞄からカトラリーセットを取り出すことすら出来なかった。
カバンから取り出すことも出来ないのにスプーンを持てるはずもなく、気を使ってくれた忍ちゃんがカトラリーセットのカバーを外してスプーンを簡単にとれる状態にしてくれていたのだ。
だが、そんな風に優しくされたところで私がスプーンを持つことなんて不可能であるし、私は食事を必要としていないのでスプーンを持つ理由だって何も無いのだ。それなのに、忍ちゃんは私がスプーンを持ち上げる様子を温かく見守ってくれているのだった。
『やっぱり無理ですよ。それに、それだけの時間をかけて燃費効率って物凄く悪いですね。車とかと違って中身をアップグレードすることも出来ないので私には本当に必要ないものって事になると思いますよ』
「だろうね。アタシもそんなにすぐに触れられるようになるとは思ってないからさ。その代わり、今までになかったものを感じてるんじゃないかな?」
『今までになかったもの?』
私は神様が何に対してそんなことを言っているのだろうと思って聞いていたのだが、何となく私の左手が若干暖かくて締め付けられているようにも感じてしまっていた。
どうしてそんな事になっているのか考えていたのだが、その答えにたどり着くことは出来ずにいた。かと言ってこのまま締め付けを放置しておくのもいい気分はしないともう。
「どうだい、その左手に感じているぬくもりはアタシが今こうして女ちゃんに抱き着かれているのを共有しているからなんだよ」
確かに、今までは何も感じなかったのに、今では忍ちゃんが抱きしめているその腕が自分の腕なのではないかと思うような状況に陥ってしまっているのだ。
『人のぬくもりを感じるのは久しぶりですけど、忍ちゃんって見てるだけじゃわからくらい柔らかいんですね。見た目は男の子っぽいのに、そう言うところはちゃんと女の子なんだなって思うよ』
「ちょっとやめてくださいよ。僕だって別に好きでこうしているわけじゃないですからね。たまには女の子っぽい格好もして満たないって思う事もありますけど、そう言うのってあんまり需要が無いですからね」
正直に言えば亀島でそんな事をやろうにも忍ちゃんと年が近い人もいないだろうし、やったところで亀島の人達に受け入れられることも難しそうだ。
「うまい事成功したみたいだし、幽霊ちゃんにはこれからアタシと少しだけ感覚を共有するんだよ。幽霊ちゃんにしてもらうことは特にないんでアタシたちの事をちゃんと見ててね。見逃してしまったら後悔するような事があるかもしれないよ」
『何もしないで見てるのと変わらないと言えば変わらないんでしょうけど、さっきよりも電車の音も車の音も虫の声もはっきり聞こえているように思えるんですよ。ハッキリというよりも、音が立体的に聞こえているような感じですね』
触覚だけではなく聴覚も共有されているという事なのだろう。私が普通に聞いている音がどの方向から聞こえてきているのかハッキリと理解出来るようになっていた。
今はわからないが、嗅覚や味覚も共有されているのかもしれないけれど、なぜか視覚は共有されていないようだ。もしも同じものを別の場所で見ていたとしたら、私にかかるマイナス要素が大きすぎると思う。
触ったり聞いたり味わったりすることは共有しても平気だとは思うけれど、視覚を完全に共有する事は危険でしかないとあらためて気づいたのだった。
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