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離島編
第二十八話 今夜は野外で鍋を食べるそうです
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雨は降らなそうな天気ではあるのだが、風が強いせいかかなり高い位置にある鳥居にも波しぶきがかかるようになっていた。真白先生と忍ちゃんの髪を見てもそこまで強い風は吹いていないように思えるのだが、時間が経つにつれて鳥島にぶつかっている波の数も多くなっていて数も増えているように思えたのだった。
「海に近い鳥居を調べるのは無理そうですね。僕は変えのパンツなんて三枚しか持ってきてないからあんまり濡れたくないんですよね」
「三枚って、連泊するつもりなの?」
「そう言うわけではないんですけど、まあ、何があるかわからないじゃないですか。そう言うことですよ」
忍ちゃんのこのアピールが真白先生に通じていないのかただはぐらかしているだけなのかはわかりませんが、真白先生は忍ちゃんの言っていることを広げようとはしませんでした。今までも数回チャレンジして失敗してるわけですし、こんな何もない開放的な場所でやろうなんて考えるわけないですよね。
「僕がもってきたのってお鍋セットなんですけど、鵜崎先生って辛いのと辛くないのだったらどっちが好きですか?」
「どっちかって言うと辛くない方が好きかな。あんまり辛いのは食べないってのもあるけど、辛いのを食べると余計に水とか飲むことになりそうだしね」
「そうですよね。鳥島には水道も井戸もないですから水は持ってきた分しかないですもんね。明日の天候次第ではじいちゃんも迎えに来れないかもって言ってたんですけど、そうなると二日分の水も節約して使わないといけなくなっちゃいますもんね」
「そうなっちゃうかもな。でも、天気予報を見る限りでは明日の昼には風もおさまってるみたいだけど」
「風がおさまっても波が高いってことはありますからね。それに、じいちゃんの船が無事でも僕たちが乗るボートは進めないって事もありますからね。そうなると帰れなくなっちゃいますし」
「そうか。そう言うことだったのか。帰れなくなる可能性があるから忍ちゃんはパンツを三枚も持ってきてたって事なんだね。それならそうと俺にも教えてくれたら良かったのにな。今履いてるパンツを洗って使うってのも水を無駄にするだけだし、予備のパンツをもっと持ってくれば良かったな」
「ヒナミさんはお鍋でも大丈夫かな?」
『私は何でも大丈夫ですよ。真白先生が美味しく食べてくれればそれで満足ですからね。忍ちゃんの作るご飯はどれも美味しいって真白先生も言ってますし、料理に関しては信頼してますから』
「そう言ってもらえると嬉しいんだけどさ、今日は手抜きで鍋のもとを持ってきてるんだよね。本当ならじいちゃんの獲ってきた魚で作りたかったんだけど、それはまた家に帰ってからって事でね。でも、出汁が出そうな貝とかは色々持ってきたからね。市販のやつを使ったとしてもちゃんと亀島流のお鍋になるはずだからね」
「じゃあ、暗くなる前に準備だけしておこうか。頂上のお社のある場所まで荷物も持っていかないとね」
こんな時に物を持てない幽霊である自分の事を恨んでしまいそうなんですが、そう言う感情を持つのは良くない事だと常々言われているので気にしないことにするのでした。真白先生がたくさんモノを持っているのは当然だと思うのですが、忍ちゃんも真白先生に負けない位に大きなカバンとクーラーボックスを持っているんですよね。一度で全部運ばなくてもいいような気もするんですが、桟橋の近くに置いておくと波しぶきがかかってしまうかもしれないですもんね。
「これだけの荷物があるとさすがに疲れちゃうね。忍ちゃんも疲れたら俺に合わせなくていいから休憩してん」
「大丈夫ですよ。これくらいの荷物だったら結構運んでるんで。今は軽トラがあるんで楽になりましたけど、僕が中学生になるまではみんな船から加工場までリヤカーを使って運んでましたからね。僕も一回くらいはリヤカーを引いてみたかったなって思うですよね。今日みたいに泊りの時は鳥島に持ってくるチャンスなのかなって思ったんですけど、亀島にあるリヤカーは手漕ぎボートに乗るようなサイズじゃないんですよ。ボートに乗るようなサイズだったら手で荷物を運んでも変わらないと思いますしね」
「それで忍ちゃんは体力があるってわけなのか。言われてみれば、俺もリヤカーって引いた事ないかも。見た事はあるけど、本当に小さい時だったからな。言われるまで忘れてたよ」
「鵜崎先生は疲れているみたいですし、僕が先に頂上まで行ってテントを組み立てておきますね。テントって、そっちのバッグに入ってるんでしたっけ?」
真白先生と忍ちゃんが荷物の交換をしたのですが、全くつかれていない忍ちゃんはそのまま荷物を持ってスタスタと進んでいきました。一方の真白先生はまだ疲れがとれていないのか動くそぶりすら見せていませんでした。まだ日も高い時間帯なので急ぐ必要はないと思うのですが、女の子一人にテントの設営を任せてこの人は何も思わないんでしょうかと思ってしまいました。
「ヒナミはさ、気付いてないよね?」
『何がですか。忍ちゃんが真白先生に対して本気になっているって事ですか?』
「そうじゃなくてさ、この島に来てからずっと感じてる視線の事だよ」
『視線……ですか?』
「うん、たぶん、忍ちゃんは気付いていないと思うんだけど、ヒナミも気付いていないって事かな?」
急に変なことを言いだした真白先生の事をじっと見てしまったのですが、その顔は冗談を言っている時の顔ではありませんでした。
真白先生だけが感じて私も忍ちゃんも感じない視線の正体。それはいったい何なんでしょうか。私にはさっぱりわからないのでした。
「たぶんだけど、最初にこの島を見た時にヒナミが見た人影とは違う何かだと思うんだよ。もしかしたら、鳥居の中にいた人が外に出てきてるって事なのかもね」
「海に近い鳥居を調べるのは無理そうですね。僕は変えのパンツなんて三枚しか持ってきてないからあんまり濡れたくないんですよね」
「三枚って、連泊するつもりなの?」
「そう言うわけではないんですけど、まあ、何があるかわからないじゃないですか。そう言うことですよ」
忍ちゃんのこのアピールが真白先生に通じていないのかただはぐらかしているだけなのかはわかりませんが、真白先生は忍ちゃんの言っていることを広げようとはしませんでした。今までも数回チャレンジして失敗してるわけですし、こんな何もない開放的な場所でやろうなんて考えるわけないですよね。
「僕がもってきたのってお鍋セットなんですけど、鵜崎先生って辛いのと辛くないのだったらどっちが好きですか?」
「どっちかって言うと辛くない方が好きかな。あんまり辛いのは食べないってのもあるけど、辛いのを食べると余計に水とか飲むことになりそうだしね」
「そうですよね。鳥島には水道も井戸もないですから水は持ってきた分しかないですもんね。明日の天候次第ではじいちゃんも迎えに来れないかもって言ってたんですけど、そうなると二日分の水も節約して使わないといけなくなっちゃいますもんね」
「そうなっちゃうかもな。でも、天気予報を見る限りでは明日の昼には風もおさまってるみたいだけど」
「風がおさまっても波が高いってことはありますからね。それに、じいちゃんの船が無事でも僕たちが乗るボートは進めないって事もありますからね。そうなると帰れなくなっちゃいますし」
「そうか。そう言うことだったのか。帰れなくなる可能性があるから忍ちゃんはパンツを三枚も持ってきてたって事なんだね。それならそうと俺にも教えてくれたら良かったのにな。今履いてるパンツを洗って使うってのも水を無駄にするだけだし、予備のパンツをもっと持ってくれば良かったな」
「ヒナミさんはお鍋でも大丈夫かな?」
『私は何でも大丈夫ですよ。真白先生が美味しく食べてくれればそれで満足ですからね。忍ちゃんの作るご飯はどれも美味しいって真白先生も言ってますし、料理に関しては信頼してますから』
「そう言ってもらえると嬉しいんだけどさ、今日は手抜きで鍋のもとを持ってきてるんだよね。本当ならじいちゃんの獲ってきた魚で作りたかったんだけど、それはまた家に帰ってからって事でね。でも、出汁が出そうな貝とかは色々持ってきたからね。市販のやつを使ったとしてもちゃんと亀島流のお鍋になるはずだからね」
「じゃあ、暗くなる前に準備だけしておこうか。頂上のお社のある場所まで荷物も持っていかないとね」
こんな時に物を持てない幽霊である自分の事を恨んでしまいそうなんですが、そう言う感情を持つのは良くない事だと常々言われているので気にしないことにするのでした。真白先生がたくさんモノを持っているのは当然だと思うのですが、忍ちゃんも真白先生に負けない位に大きなカバンとクーラーボックスを持っているんですよね。一度で全部運ばなくてもいいような気もするんですが、桟橋の近くに置いておくと波しぶきがかかってしまうかもしれないですもんね。
「これだけの荷物があるとさすがに疲れちゃうね。忍ちゃんも疲れたら俺に合わせなくていいから休憩してん」
「大丈夫ですよ。これくらいの荷物だったら結構運んでるんで。今は軽トラがあるんで楽になりましたけど、僕が中学生になるまではみんな船から加工場までリヤカーを使って運んでましたからね。僕も一回くらいはリヤカーを引いてみたかったなって思うですよね。今日みたいに泊りの時は鳥島に持ってくるチャンスなのかなって思ったんですけど、亀島にあるリヤカーは手漕ぎボートに乗るようなサイズじゃないんですよ。ボートに乗るようなサイズだったら手で荷物を運んでも変わらないと思いますしね」
「それで忍ちゃんは体力があるってわけなのか。言われてみれば、俺もリヤカーって引いた事ないかも。見た事はあるけど、本当に小さい時だったからな。言われるまで忘れてたよ」
「鵜崎先生は疲れているみたいですし、僕が先に頂上まで行ってテントを組み立てておきますね。テントって、そっちのバッグに入ってるんでしたっけ?」
真白先生と忍ちゃんが荷物の交換をしたのですが、全くつかれていない忍ちゃんはそのまま荷物を持ってスタスタと進んでいきました。一方の真白先生はまだ疲れがとれていないのか動くそぶりすら見せていませんでした。まだ日も高い時間帯なので急ぐ必要はないと思うのですが、女の子一人にテントの設営を任せてこの人は何も思わないんでしょうかと思ってしまいました。
「ヒナミはさ、気付いてないよね?」
『何がですか。忍ちゃんが真白先生に対して本気になっているって事ですか?』
「そうじゃなくてさ、この島に来てからずっと感じてる視線の事だよ」
『視線……ですか?』
「うん、たぶん、忍ちゃんは気付いていないと思うんだけど、ヒナミも気付いていないって事かな?」
急に変なことを言いだした真白先生の事をじっと見てしまったのですが、その顔は冗談を言っている時の顔ではありませんでした。
真白先生だけが感じて私も忍ちゃんも感じない視線の正体。それはいったい何なんでしょうか。私にはさっぱりわからないのでした。
「たぶんだけど、最初にこの島を見た時にヒナミが見た人影とは違う何かだと思うんだよ。もしかしたら、鳥居の中にいた人が外に出てきてるって事なのかもね」
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