53 / 64
離島編
第二十五話 鳥島で感じる違和感
しおりを挟む
鳥島にいる時間は毎回三時間ほどなのだけれど、常に私達三人は一緒に行動している。真白先生も忍ちゃんも何度も同じ場所を捜索しているのだけれど変わったところなんてどこにもなかった。
「これだけ探してもあの鳥居に囲まれた場所が見つからないって事はさ、あの時だけここに似ている別の島に来てたって可能性はないのかな」
『さすがにそれは無いんじゃないですかね。亀島から漁船ですぐの距離にあるわけですし、そんな距離にこんなに鳥居が目立つ島が他にもあれば気付かないわけがないですよ。それに、私が幽霊らしき人を目撃したのだってあの桟橋のところですからね。あれ、ちょっと待ってください。あの時見た幽霊らしき人影の近くに鳥居は無かったような気がするんですけど。前に来た時も桟橋のすぐ側から鳥居はありましたよね?』
「うん、ボートから降りてすぐに鳥居があるんだって思ったくらいだからね。ヒナミが最初にこの島を見た時って鳥居は桟橋の近くに無かったって事なのかな?」
『ハッキリと覚えているわけではないんですけど、私が最初に見た時って幽霊の近くに鳥居は無かったと思うんですよ。誰かが手を振ってるなって思って見てたんですけど、その場所からこんなに近くに鳥居があれば気付かないはずもないと思うんですよね。だって、私って幽霊だけど神社とかお寺とか好きですからね』
「僕も気のせいかなって思ってたんですけど、一番最初に鳥島に来た時って今よりも鳥居の数が少なかったような気がしてたんですよね。数を数えていたわけじゃないんで何とも言えないですけど、鳥居と鳥居の間ってもう少し距離があったような気がしているんですよ。今は何だか、まっすぐな道に向かっていると鳥居が攻めてきてるような圧迫感があるくらい多くの鳥居が建っているように思えるんですよね。鵜崎先生ってそう感じてたりしませんか?」
「そう言われると数が増えているような気もするんだよね。でも、どれもこれも建ってる鳥居は最近できたような感じでもないし、一つ一つも微妙に傷や書かれている文字が違ったりしてるんだよな。その事を誰かに聞くにしたってさ、亀島の人で鳥島に来たことがあるのって何人かしかいないし、俺達の前に上陸したのだって漁協の人達だって話だからな。今日はいったん鳥居が何基あるか数えてみてさ、次に来た時にどうなってるか調べてみようよ」
『ちょっと待ってください。それって、前に来た時も真白先生が同じ提案してませんでしたっけ。その時に鳥居が何基あったか思い出せないんですけど、前に来た時も、もしかしたらその前に来た時も同じように鳥居の数を数えてたような気がしているんですよ。忍ちゃんはそんな記憶ないですか?』
「そう言われたら数えたような気もするんですよね。数えながら斜面を登るのって意外とつらいなって思っていたような気がします。でも、私もいくつ数えたか思い出せません」
私たち三人はその場で固まってしまったのだけれど、時間もそれほど残されていないので今回ももう一度数えてみることにしたのだ。ただ、今回は数えるだけではなく真白先生と忍ちゃんがスマホで撮影をしながら数えていくことにしたのだ。動画に残しておけば後で見返すことも出来ると思うし、チェックをする際にも変化があればわかりやすいと思うのだ。
そのまま頂上まで数を数えつつ撮影を続けていたのだけれど、三人とも数はぴったりと一致していた。前回に数えた時に比べて大幅に増えているような気もするのだけれど、前回の答えを思い出せないので比べること自体は出来ずにいたのだ。ただ、それでも今回のように三桁の数になることは無いような気もしていた。
そして、問題の山頂には見慣れた社があってここから見える景色は亀島を除けば海と空しかない状況なのであった。一番最初に私が見た島や私たちが初めて上陸した時の島が別の島だとしたら全方位が見える死角のない場所から見ている海に鳥島と亀島以外の島がある事なんて確認出来なかった。亀島の陰に隠れて他の島がある可能性もあるのだろうけれど、そこまで高い場所があるわけでもない亀島の裏に他の島が隠れているとは到底思えない。私は亀島と鳥島の全てを知っているわけではないのだけれど、亀島の陰に隠れるくらいの大きさの島があったとしても場所的に私が見た島とは違うという事が言えるのだ。
「何回来ても新しい発見ってないもんですね。鳥居の数が変わってるかもしれないというのは数少ない収穫の一つかもしれないですけど、僕はもっとこの島の抱える問題の核心に迫りたいと思ってます。鵜崎先生もヒナミちゃんも何度も何度もこの島に足を運んでくれてますし、僕だって亀島の住人として気になることは色々ありますからね。ヒナミちゃんが最初に見た人影が僕のお母さんかばあちゃんかもしれないという可能性もあるんですしね」
「確かにな。その可能性もあると思うんだけど、別の力が働いている可能性だってあるからね。普通の人でも普通の幽霊でもない何かという可能性もあったりするんだろうし、そうなると俺やヒナミの力じゃ何もできない可能性もあるからな。いつかどこかであった神様は人の話を聞かないような感じだったけど、この島一帯にいる神様って恥ずかしがり屋なのかもしれないな。とりあえず、忍ちゃんの家に戻ったら伝八さんも加えて鑑賞会でもやることにしようよ。もしかしたらさ、最初にこの島に来た時に鳥居の中の女の人が見えるかもしれないしね」
私はスマホに触ることが出来ないので撮影をする事は出来ないのですが、真白先生も忍ちゃんもあまりブレないようにしっかりとスマホをもって撮影しているのである。
何か変わったものが映っていればいいのになと思いつつも、そのような変わったことが起きているのだとしたら、さすがに三人のうち一人は気付くと思う。撮影もしていない私は二人の近くを歩いているだけなんですが、私の目からは世界が変わっているという実感は全くないのでした。
とにかく、今日撮影した映像をもとに今後の対策を立てる必要があるんだよね。撮影した映像を何度も何度も見てちょっとした違和感を探す作業なのですが、そんなに簡単に見つかるはずもないと思っているのであった。
「これだけ探してもあの鳥居に囲まれた場所が見つからないって事はさ、あの時だけここに似ている別の島に来てたって可能性はないのかな」
『さすがにそれは無いんじゃないですかね。亀島から漁船ですぐの距離にあるわけですし、そんな距離にこんなに鳥居が目立つ島が他にもあれば気付かないわけがないですよ。それに、私が幽霊らしき人を目撃したのだってあの桟橋のところですからね。あれ、ちょっと待ってください。あの時見た幽霊らしき人影の近くに鳥居は無かったような気がするんですけど。前に来た時も桟橋のすぐ側から鳥居はありましたよね?』
「うん、ボートから降りてすぐに鳥居があるんだって思ったくらいだからね。ヒナミが最初にこの島を見た時って鳥居は桟橋の近くに無かったって事なのかな?」
『ハッキリと覚えているわけではないんですけど、私が最初に見た時って幽霊の近くに鳥居は無かったと思うんですよ。誰かが手を振ってるなって思って見てたんですけど、その場所からこんなに近くに鳥居があれば気付かないはずもないと思うんですよね。だって、私って幽霊だけど神社とかお寺とか好きですからね』
「僕も気のせいかなって思ってたんですけど、一番最初に鳥島に来た時って今よりも鳥居の数が少なかったような気がしてたんですよね。数を数えていたわけじゃないんで何とも言えないですけど、鳥居と鳥居の間ってもう少し距離があったような気がしているんですよ。今は何だか、まっすぐな道に向かっていると鳥居が攻めてきてるような圧迫感があるくらい多くの鳥居が建っているように思えるんですよね。鵜崎先生ってそう感じてたりしませんか?」
「そう言われると数が増えているような気もするんだよね。でも、どれもこれも建ってる鳥居は最近できたような感じでもないし、一つ一つも微妙に傷や書かれている文字が違ったりしてるんだよな。その事を誰かに聞くにしたってさ、亀島の人で鳥島に来たことがあるのって何人かしかいないし、俺達の前に上陸したのだって漁協の人達だって話だからな。今日はいったん鳥居が何基あるか数えてみてさ、次に来た時にどうなってるか調べてみようよ」
『ちょっと待ってください。それって、前に来た時も真白先生が同じ提案してませんでしたっけ。その時に鳥居が何基あったか思い出せないんですけど、前に来た時も、もしかしたらその前に来た時も同じように鳥居の数を数えてたような気がしているんですよ。忍ちゃんはそんな記憶ないですか?』
「そう言われたら数えたような気もするんですよね。数えながら斜面を登るのって意外とつらいなって思っていたような気がします。でも、私もいくつ数えたか思い出せません」
私たち三人はその場で固まってしまったのだけれど、時間もそれほど残されていないので今回ももう一度数えてみることにしたのだ。ただ、今回は数えるだけではなく真白先生と忍ちゃんがスマホで撮影をしながら数えていくことにしたのだ。動画に残しておけば後で見返すことも出来ると思うし、チェックをする際にも変化があればわかりやすいと思うのだ。
そのまま頂上まで数を数えつつ撮影を続けていたのだけれど、三人とも数はぴったりと一致していた。前回に数えた時に比べて大幅に増えているような気もするのだけれど、前回の答えを思い出せないので比べること自体は出来ずにいたのだ。ただ、それでも今回のように三桁の数になることは無いような気もしていた。
そして、問題の山頂には見慣れた社があってここから見える景色は亀島を除けば海と空しかない状況なのであった。一番最初に私が見た島や私たちが初めて上陸した時の島が別の島だとしたら全方位が見える死角のない場所から見ている海に鳥島と亀島以外の島がある事なんて確認出来なかった。亀島の陰に隠れて他の島がある可能性もあるのだろうけれど、そこまで高い場所があるわけでもない亀島の裏に他の島が隠れているとは到底思えない。私は亀島と鳥島の全てを知っているわけではないのだけれど、亀島の陰に隠れるくらいの大きさの島があったとしても場所的に私が見た島とは違うという事が言えるのだ。
「何回来ても新しい発見ってないもんですね。鳥居の数が変わってるかもしれないというのは数少ない収穫の一つかもしれないですけど、僕はもっとこの島の抱える問題の核心に迫りたいと思ってます。鵜崎先生もヒナミちゃんも何度も何度もこの島に足を運んでくれてますし、僕だって亀島の住人として気になることは色々ありますからね。ヒナミちゃんが最初に見た人影が僕のお母さんかばあちゃんかもしれないという可能性もあるんですしね」
「確かにな。その可能性もあると思うんだけど、別の力が働いている可能性だってあるからね。普通の人でも普通の幽霊でもない何かという可能性もあったりするんだろうし、そうなると俺やヒナミの力じゃ何もできない可能性もあるからな。いつかどこかであった神様は人の話を聞かないような感じだったけど、この島一帯にいる神様って恥ずかしがり屋なのかもしれないな。とりあえず、忍ちゃんの家に戻ったら伝八さんも加えて鑑賞会でもやることにしようよ。もしかしたらさ、最初にこの島に来た時に鳥居の中の女の人が見えるかもしれないしね」
私はスマホに触ることが出来ないので撮影をする事は出来ないのですが、真白先生も忍ちゃんもあまりブレないようにしっかりとスマホをもって撮影しているのである。
何か変わったものが映っていればいいのになと思いつつも、そのような変わったことが起きているのだとしたら、さすがに三人のうち一人は気付くと思う。撮影もしていない私は二人の近くを歩いているだけなんですが、私の目からは世界が変わっているという実感は全くないのでした。
とにかく、今日撮影した映像をもとに今後の対策を立てる必要があるんだよね。撮影した映像を何度も何度も見てちょっとした違和感を探す作業なのですが、そんなに簡単に見つかるはずもないと思っているのであった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。
鞠目
ホラー
さくら急便のある営業所に、奇妙な配達員にいたずらをされたという不可思議な問い合わせが届く。
最初はいたずら電話と思われていたこの案件だが、同じような問い合わせが複数人から発生し、どうやらいたずら電話ではないことがわかる。
迷惑行為をしているのは運送会社の人間なのか、それとも部外者か? 詳細がわからない状況の中、消息を断つ者が増えていく……
3月24日完結予定
毎日16時ごろに更新します
お越しをお待ちしております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる